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月の麓に集まって 第八話「フロンティア」
今回ちょっと長いっす
よろこべ
beriは謎の男に言われるがまま付いていくことにした…
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beri視点
ひしめき合うようにぎっしり詰まった木の葉がこの森の不気味さを増長させる
この薄暗い森の中を、男は何の迷いもなく歩いていく
そばを流れる川の音
どこかで鳴いた鳥の声
湿った土を踏む自分たちの足音
その全てにどこか不思議な感覚を覚える
まるで夢を見ているみたいなのに、やけに感覚はリアルに伝わってくる
「ここだ」
男はそう言って足を止めた
よそ見ばかりしていた私は男が止まるまで気が付かなかったが、目の前には小さな小屋があった
今にも崩れてしまいそうなのにどこか安心感を感じる
「入るぞ」
「はい…」
きぃーっと高い悲鳴を上げながらドアが開く
小屋の中は生活感で溢れていた
生活感といっても、ここで暮らしているような生活感ではないが…
中央に置かれた古い木のテーブルの上にはいくつもコップや食器が置かれ、すぐ横の椅子には銃がいくつも積み重ねられていた
壁のハンガーには衣服の代わりに銃弾が入った袋がかけられている
「悪かったな汚くて」
「俺は少し用事があるから外に行く」
「ちょっとここで待ってろ」
俺は銃に弾を詰めると再びドアを開け外へ行ってしまった
小屋には私一人…と、この銃や食器たちのみ
奥の方を見るとちゃんとキッチンらしきものがあった
試しにシンクの水道をひねってみると綺麗に澄んだ水が出てくる
「暇だし…良いよね片付けくらい」
何か自分にも出来ることがしたいと思った私はこの小屋の掃除をすることにした
まずはテーブルの上からだ
食器は最近に使われたようなものから、中が完全に干からびているものまである
とりあえず全ての食器をシンクに移動させ水をかぶせた
これだけでもかなりの数だったもので重労働である
食器の汚れが浮くのを待つ間に散らかった銃を整理していく
ホコリを払い大小様々な銃をガンラックに立てかけておく
多分これで大丈夫…なはず
ドアの近くにあったほうきで適当に掃き掃除をしてから洗い物に取り掛かる
「これ何食べたんだ…?」
びっくりするくらい油でギトギトの皿や、明らかに食べ物ではなさそうな色の液体の残ったコップ
刃先がボロボロになっているナイフ
しかしなぜかフォークやスプーン、箸などは一切見当たらない
「変わってるなあ」
考えていても仕方がないので洗剤を駆使しつつなんとか全ての食器を洗い上げた
丁寧にタオルで水気を拭き取り食器棚に戻していく
「ナイフはどこだろ」
色んな引き出しを手当たり次第開けてみる
そこには火薬っぽいものが入っていたり、空き瓶だけが大量に並べられた引き出しもあった
「ここか…?」
そう言いながら開いた引き出しにはチョコレートらしきお菓子が入っていた
ぐぅ…
私のお腹の音だ…
本来なら夜ご飯を食べていただろうか
これだけ掃除頑張ったし…いいよね
私はチョコレートを取り出しそこにナイフをそっとしまった
銃を下ろして綺麗になった椅子に座りチョコレートの包装を破る
それは小指ほどのサイズのブロックのチョコレート
一口かじってみると中に白い粉のようなものの塊があった
砂糖の溶け残りだろうか?
チョコレート自体は普通のチョコレートといった感じだ
お腹が空いていたのもあって普段より美味しく感じる
最後の一口を口に入れゴミを捨てようとしたときあの男が帰ってきた
「すまん遅くなっ…」
「お前…何してんだよ」
男は大きな袋を抱えて帰ってきた
綺麗になった小屋を見て唖然としているようだ
「暇だったんで、掃除してました」
「いやそれはありがたいんだが」
「そのゴミ、お前何食った」
ひえーー!!バレた
バレてしまったよ
こうなったらもう言うしかない
「チョコレート…いただいちゃいました」
「はぁ…お前ほんと無能だな」
「それ怪しいやつからもらったんだよ」
「だから食べずに取っておいたんだ」
「中に何も入ってなかったか?」
男の話を聞くうちにお腹がキュルキュル言い出した
軽く目眩がする
「えっと…白い塊が…」
男は大きくため息をついた
「帰りが遅くなった俺も悪いが勝手に食べるとは思わないだろ…」
「しかも案の定、毒盛りやがったなあの野郎」
「毒!?」
えっ!ど、毒!?
私死ぬの?
人生高2でサ終しちゃう感じ?
毒なんて聞いてしまって私は大焦りだ
男は袋を置くとコップに謎の粉を水で溶いたものを持ってきた
「これ飲んで」
目眩がさっきよりひどい
バランス感覚が完全におかしくなってきた
視界が暗転しているうちにガクンと椅子が倒れてしまう
「…まずいなこれ」
男はコップを私の手に握らせた
本能的にこれを飲まなければ本当に死んでしまう気がして、私は意識があるうちに一瞬でコップの中を飲み干した
震える手で床にコップを置き、私はそのまま眠ってしまった
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どれくらい時間が経ったんだろうか
私が目を覚ますより先にガチャガチャと騒がしい音が耳に飛び込んできた
「起きたか」
男は椅子に座って何やら銃をいじっているようだった
「先ほどは申し訳ございませんでした…」
「お前のおかげでこんなに広くテーブルを使えるしな」
「今回だけだからな?次はないぞ」
男は銃を持って立ち上がるとガンラックへと立てかけた
「俺はモロトフ」
「お前、名前は?」
「beriです…」
「お前は何しにここに来たんだ」
男はモロトフと言うらしい
声に威圧感はなく、はじめとは違ってこちらに語りかけてくるように話始めた
「友達を探してたんです」
「そしたらこんなとこに来ちゃって…」
モロトフは少し考えるような顔をしてから口を開く
「その友達の名前、フェンリルじゃないか?」
「もしそうなら心配いらない」
「俺の友人が現実に帰したと聞いた」
フェンリルは無事なんだ
そう聞くとふっと肩の荷が下りたような気がする
だがちょっと待てよ…?現実に帰したってなんだ
「現実に帰したって言うのは…?」
「そこから話さないとだよな」
「いいか?まず俺等がいるここは現実世界ではない。まずこれを理解しろ」
なんだか納得できる言葉だ
今までの違和感の正体はこれだったのかもしれない
「ここは異世界と言うにはちょっと惜しいんだがな、ほぼそんな感じだ」
「異世界への入り口へと通ずる場所と言うのが正しいか」
話を聞けば聞くほどわからなくなっていく気がする
ここは異世界への入り口?
異世界っていうのはファンタジー的なあれなのか?
「一旦ここまでにしておくかな」
「何か質問は?」
そういえばモロトフは駅で見かけたスーツのあの男によく似ている気がする
私はそれを聞いてみることにした
「あの、駅前にいませんでした?モロトフさんの言う現実世界の…」
「駅前?知らないね。どこの駅のことだ」
「それと、さんはつけなくていい」
「あまり堅苦しくするな」
「|月ノ里《つきのざと》駅の前に、スーツの男がいたのを見て…」
「知らないね。人違いだよ」
モロトフは本当に知らないみたいだ
また少し話をした後ここを出ることになった
現実世界まで案内してくれるらしい
「そういえば銃を撃ったあと燃えてたような気がするんだけど、あれはそういう弾なの?」
「あれは俺のエコーのせいだ」
「異世界に現実世界の人間が入ることで、自分同士が共鳴し、一部の人間がまれに発現する」
「本当に少数だけど、なぜか最初からエコーを持つ人間も一応いるらしい」
何も知らない身からするとモロトフがただただ厨二臭いことを話しているように思えてしまう
けれど自分はこの目で見てしまったからやけに信憑性はある
「ちなみに俺のエコーは弾の軌道をある程度思い通りに出来る」
「90℃軌道を曲げたりとかは出来ないけどね」
「そして見てもらって分かった通り命中した場所を発火させることができる」
なんかすごいな〜と半分上の空になりながら話を聞きながら歩いていた
急に階段が集まれ、モロトフは足を止める
別れもそろそろらしい
「気を付けて帰れよ」
「うん!ありがとう!」
私は自分のスクールバックとフェンリルのリュックを持ったまま現実世界への階段を上がった
外に出るとそこはもう真っ暗
私が黒いもやを見つけた時と同じ場所に出ていた
こんな時間に神社なんて怖くて仕方がないので私はさっさと神社を後にした
溜まりまくっていたLI◯Eのメッセージに返信をしながら電車を待つ
「Flareごめん今気付いた」>
<「遅いよ心配した」
<「フェンリルは?」
「私は見てないけど多分無事っぽい」>
「明日には連絡返ってくると思うよ」>
<「はーん?」
<「明日何があったのか全部話せよ」
「分かったよ」>
こうして私は無事家に帰った