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月の麓に集まって 第十一話「辺獄、リンボ」
時雨とモロトフが会話を続けている…
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時雨視点
「だから、目の前で起こったからこうするしかなかったんだって!」
「エコーに目覚めてねぇ奴らのお守りしてる余裕なんてねえぞ」
「時雨ひとりでも席を外してこればよかったじゃねえかって言ってんの」
「全く、分かってくれないね」
「いいよモロトフなしで」
「3人で行くから」
「ちょ、お前何言って…」
俺のエコーは現実世界からここにワープするゲートを作り出すこと
ここは一部異世界に詳しいやつはリンボと呼ぶ
異世界への入り口はこのリンボにあるんだが、その点有用に見えるが戦闘には役立たない
なのでモロトフなしでは戦力が心もとない
それでもあの担任の様子を見に行くだけなら特に戦闘も起きないだろう
「行くから」
俺は愛用しているショットガンを背中に担ぐ
両手でberiとフェンリルの腕を掴み無理やり小屋の外へと引きずり出した
「何何!」
「本当にモロトフいなくていいの?」
「フェンリルも私も戦えないよ?」
フェンリルはこちらを向いてコクリと頷く
「極力戦闘を避ければ済む話だ」
「モロトフが気にしすぎなんだよ」
「二人とも、まだここまでしか来たことないね?」
ここリンボは現実世界と異世界が混ざったような場所だ
リンボにある異世界への入り口をくぐって、異世界へ行ったことがないのならエコーの覚醒も望めるわけだ
「ない…ね、多分」
「ないと思う…」
「異世界に行くことでエコーに目覚めるのは知ってるか?」
「もちろんみんながみんなそうじゃないんだが、ここに来て元気ならエコーの適正があるやつが多い」
そんな事を言ってみたは良いものの
半分2人に付いてきてもらうために言ったようなものだ
能力が手にはいるかも!?なんて言われたら行きたくもなるだろう
どうして半分なのかと言うと、エコーに目覚めたとしてそれが有用なものなのかは完全に運であるからだ
俺が過去に見てきたものだとエコーに目覚めた瞬間に四肢がもぎ取れて死んだやつとか、希死念慮にかられて自ら敵に殺されに行ったやつがいる
俺の知り合いが動物にもエコーがあるのか知りたくなって持ち込んだネズミはみんな内臓から破裂して死んでいった
というわけで…モロトフに無事を証明するためには2人には有用なほうのエコーを引き当ててもらわなければならない
そう思うと危ない気もしてきたが、生憎この2人はただのクラスメイト
Flareまでいたら思いとどまっていたかもしれないが、運良くいないときた
「今から異世界への入り口に向かう」
「付いてきて」
まだ2人は迷っているらしかったが俺が歩き出すと付いてきた
このまま上手くいくと良いんだが
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???視点
時雨がこちらに向かってきている
あいつ、リンボにすぐ来れるから俺より圧倒的に早い
俺はあの教師に現れた`前兆`を見て駆けつけたと言うのに
先を越されてしまっては負けたような気がする
しかし浅いところにあの教師はいないようで参っている
異世界は入り口を中心として円状に広がっていて、入り口から近いほど浅い場所と言われる
深いところへ行けば行くほどエコーの副作用が強くなるし、敵だって一筋縄ではいかなくなってくるのだ
もういっそ時雨を待ったほうが良いのだろうか
あいつがスマホを確認するとは思えないから、その場合俺は入り口に戻らなければ…
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時雨視点
しばらく歩いて入り口にたどり着いた
小屋はリンボの中でも比較的入り口に近い場所にあるので助かる
そんな中2人は辺りをキョロキョロ見回して不思議そうな顔をしている
無理もない
何もなかった森の中、急にぽつんと建物があるのだ
それは円柱状に伸びた古い遺跡のような外見で、太陽の光も良く差し込む
(本物の太陽ではないんだろうが…)
円柱状の建物の中心にはぐるぐると渦を巻き、今にも落ちてしまいそうなほど綺麗な宇宙が広がっているように見える
俺も初めてこれを見たときには驚いたものだ
まあ異世界は全くもって綺麗なもんじゃないんだが
「これが…入り口?」
beriがゲートを覗き込みながら言った
「そうだよ」
「今からこれに入る、準備はいい?」
「まあ何かあったら時雨が助けてくれるよね…?」
フェンリルのその一言に少し息が詰まる
戦闘を避けるとは言ったもののあまりうまくいった試しがないことを今思い出した
感情的になって適当なことを考えてしまったのだと少し後悔する
けどもう、行くしかないんだ
「もちろん」
「ほら行くよ」
苔を被った石の枠に手をかける
なんだかいつもより重く感じる体を腕で持ち上げゲートの中へ飛び込んだ
一瞬重力が反転したように体の向きが変わると、ストンと異世界の地面に足がつく
目を開くとそこにはペンタがいた
「ペンタ?なんで?」
俺が聞くと後ろからドサドサっと重たいものが落ちた音がした
beriとフェンリルに詳しいゲートのくぐり方を説明することをすっかり忘れていた
「いってぇ…」
「フェンリルちょっとどいて!髪踏んでる!!」
「あ、ごめんごめん」
ペンタは俺の後ろにいる2人を見つめている
「えっと…どなた?」
「誰を連れてきたんだよ時雨」
俺はペンタに事の経緯を話した
学校であったこととモロトフと話したことなど話している途中、ペンタがチラチラ2人を見ていることに気付く
「えっと…聞いてる?」
「あぁ、ごめんごめん」
「けどあれ見てよ」
「片方男の方失敗じゃね?」
こんな浅いところでエコーに目覚めることはないだろうと思っていた
けれどその俺の考えはどうやら間違っていたらしい
「ふぇ…フェンリル!?」
beriは足元から凍りだすフェンリルを見て後退りを始めた
「え!?助けてよ!ねえ!」
俺はペンタに目配せをした
するとペンタは下を向いて横に首を振る
典型的な失敗作といったところか
せめて死ぬところは最期まで見てやろう