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Nice Ball‼︎ 最終話
『訃報 テニス男子世界1位 石井健介選手』
2015年ワールドテニス選手権1位に輝いた、石井健介選手。「愛し愛されるような選手になりたい」という目標を掲げ、2009年にプロとして活動。様々な試合で記録を残した石井選手。今月17日、大会参加のためハートランドのカスティアの空港にて腹部を刺され、死亡。28歳でした。彼のプレーは幾多の人間に希望を与え……
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12月22日。市立森上スポーツ公園庭球場にて、今年最後の試合が行われようとしていた。
「山崎先生」
「なんだ?」
「俺、自信ないです。先生には申し訳ないけど」
数秒の沈黙。
「そうか。ただ、お前ならできると思う。先生はな」
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「よう峯田ぁ!応援来てやったよ!!」
遠くから声がする。入部してから幾度となく聴いた、あの声。
「立花先輩!!」
青いスクーターに乗る立花先輩は大きく手を振りこちらに向かう。このままだと轢かれる。
「危ねえじゃねえかそんなとこ立ってるとよぉ!これから試合なんじゃねえのか馬鹿野郎!!」
急ブレーキをかけた先輩が笑いながら怒鳴り声を上げる。向かって来たのはどっちかを考えて欲しい。気持ちが軽くなった気がする。
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第一試合。対戦相手はあの木戸だった。
「お願いします!」
「お願いします」
木戸のサーブ。俺が知っている木戸のサーブじゃない。球が速い。確実に成長している。
返せない球ではない。返球する。その隙に顔が見えた。随分と余裕のある顔だ。
息が詰まるようなラリーが続いたのち、木戸のラケットはついに球を捉えられなかった。
6-2で、俺の勝ち。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました!」
試合後の挨拶で俺は東先生のところへ行く。
「ありがとうございました。本当に強くなってましたね」
「ああ。また頼むよ。へへへっ」
東先生は軽やかな笑いを上げた。どこまでも明るい人だ。
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第二試合。
「やあ峯田くん、元気してたかい?」
対戦相手は北原だった。なんでよりにもよって…
「お前、今日だけはぶっ潰してやる」
「手加減しないよ?」
サーブ権は俺。力強いサーブを打つ。やはり北原は動じない。理由は慣れているから。
ただ、それはこちらも同じ。北原は持久戦に持ち込みたがる。パワーで押し切れば勝てるのだ。
スマッシュで後方ギリギリに押し込む。あと少しでも力が出ていたらアウトになっていた。
「そんな……」
6-4で俺の勝ち。
「ありがとうございました」
「ありがとうございました。あれ!?二回勝ったら優勝じゃん!峯田くん頑張って!」
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第三試合。試合相手は小城だった。準決勝まで勝ち上がった彼は俺の顔を見るなり
「げっ、峯田かよ…」
と失礼なことを言った。
「悪かったなぁ強くて!」
「本当だよ…」
試合開始。小城の荒々しく繊細なサーブがコートに滑り込む。ネットの際にボールを落とすと大抵ミスするのを知っている。
しかし、この時はそうではなかった。フラフラした芯のないボールであったが、しっかりと返球してきたのだ。しかし、そんなボールはもはやミスと同じ。スマッシュで得点する。
6-2で勝った。
「ありがとうございました。次決勝か。多分あいつだろうなぁ…相当強いから頑張れ」
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第四試合。
「お願いします」
いつだっただろうか。俺はこいつの顔を見たことがある気がする。
思い出した。米田商業高校との練習試合で戦ったあいつだ。
自分のサーブ。様子見で回転のかかるサーブを打つ。
爆発にも近い音と共に、ボールは自陣に叩きつけられ、失点。
その後もあっという間に試合は進み、3-5、15-40の窮地に立たされた。
「頑張れ峯田ぁ!!」
「集中!!」
相手のサーブ。力強い一撃。なんとか返球する。すぐさま体勢を立て直し、コースを攻めたラリーに切り替える。
一瞬の隙を見計らい、スマッシュ。
30-40。あと一回俺が得点すればデュースとなり、逆転のチャンス。もう後はない。勝つしかないのだ。
「いいぞ峯田くん!」
北原や小城、立花先輩、東先生、木戸の声も聞こえる。
「ナイスボール!!」
この声は……
声のする方へ、顔を向ける。
佳歩がいた。あの日、あんな酷いことを言ってしまったはずの。
「 !」
上手く聞こえなかった。なんと言ったんだろうか。
相手のサーブだ。先ほどのテンションから裏腹、スピードの出ない、緩いサーブだった。
打てる。
小学校5年生、暑い夏の日だった。俺はその日初めて“神”を見た。
俺は今、神になろうとしている。
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「ありがとうございました」
「ありがとうございました」
3-6。敗北。俺は負けた。負けたんだ。
どれだけ足掻いてもこれは変わらない。俺は負けたまま。今年最後の試合は二位になっておしまい。
「よく練習いくの?」
「え?」
「いつも河原で練習してるのかって」
なぜこいつが俺を知っているんだろう。どこで見た?誰だ?
「えっと…あれより前に会ったことありましたっけ?」
「俺は命の恩人だってのに…」
ますます何を言っているんだこいつは。
「俺、氷室勇吾って言うんだ。8月に熱中症で倒れてたとこ見つけたの、俺」
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結局今日の試合は負けておしまいだった。ただ、これをもっと前に体験していれば、挫折していたこと間違いない。
「これでよかったのかな」
そんなことない。絶対に勝たなきゃいけないし、このままじゃダメだと思う。
ただ…少し休もう。
俺は観客席へ走って行った。
終
スペシャルサンクス キャラクター原案
弐虎れいな 様/木戸 尊
読書が好き🍵 様/立花 俊介
エンディング
透明少女/ナンバーガール