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Nice Ball‼︎ 第五話
また大会がやって来た。今日はいつも以上に気合いが入っている。
「おはよう峯田。昨日はよく眠れたか?」
顧問の山崎先生が話しかけてくる。
「バッチリですよ。今日は北原と再戦ですし」
そうか、と短い返事をして先生はプログラムを配り始めた。
最初の相手は木戸という選手だった。随分と顔に余裕が見える。
「お願いしまーす」
「お願いします」
試合が始まった。木戸のサーブが地面に直撃する。スピードは遅い。簡単にスマッシュできる。
木戸とすれ違いながらコートにインしたボールは観客席の壁にぶつかり跳ね返った。
木戸の表情は死んでいたに等しい。怒りや悔しさを全面に押し出したような顔だった。
「ありがとうございました」
__「……ざした」__
か細い声を出し観客席へ戻っていく木戸を横目に彼の顧問の先生へ挨拶に行く。かなりおじいさんの先生だった。
「ありがとうございました」
「どうも。あれ、緑第一高校だっけ?」
「はい」
「そうかぁ。山崎先生が顧問だろう?よろしく言っておいてくれ」
そう言うと彼はスポーツドリンクを一口飲み「んじゃ」と発した。
「やあやあ峯田くん。いよいよだね」
「調子乗んなよ。小城とアタる前に帰らせてやる。安心しろ」
北原と一言交わしたのち試合が始まった。
前回のサーブとは打って変わってスピード感のあるサーブだった。あいつは確かバックハンドが弱点だったような……
互いの傷に唾を吐き合うように僕らは失点していく。弱点をなぞり、姑息な全力を出す。
相手から気力を奪い合うような試合は、北原の勝利だった。
「ありがとうございました」
「くっそ…」
僕らは散っていく。ふと見上げるとさっきの木戸が座っていた。頬には涙が伝っていた。俺に似ていた。