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8話「絶望の始まり」
「帝国って結構色々あるんだな…」
「ですです!ボスはどこから来たんですか?」
「親龍ルグニカ王国。」
「__え?」
「そことここって仲悪いですよね?」
「うん。」
「うん!?」
二文字で済まされたことに驚くも「後で百倍問い詰めます」と言って元気を取り戻した。少し歩いてると…
「兄ちゃんたち、ひょっとしてナツキ・スバル皇帝閣下と『青き電光』か?」
「そうです。少し恥ずかしいですけど…」
「なら気をつけてください。ここの人たちはあなた様をよく思っていないです。」
「え?どういうこ___」
閃光が走る
「セッシー!!」
「ボ…ス…トッ……」
「セッシー?セッシー!!!!」
また閃光が走る。スバルの急所を避けるようにスバルを貫く。
「がはっ!」
痛い。熱い。死ぬ?死ぬのか?傷口から血が垂れていく。
__皇帝は…大変だ。
「__セッシー…がはっ!トッ…がはっ!メッセージ…受け取った…!」
時間が戻る。
「帝国をブラブラしましょうか。」
「__あ」
「ボス?」
今しがた全身を襲った、あの胸を焼き焦がすような熱さと、口の中に広がった鉄の味が、嘘のように消え失せている。スバルは自分の胸に手を当て、服の上から心臓の鼓動を確かめた。規則正しく打つ脈拍。血など一滴も流れていない。
また、死に戻った……!
つい数秒前、閃光が走り、セッシーが倒れ、そして自分も急所を外されながらも致命傷を負って命を落とした。あの感覚だけが、脳裏に生々しくこびりついている。「ここへ来る人たちはあなた様をよく思っていない」という謎の警告。そして、セッシーの「ボ…ス…トッ……」という最後の言葉。
「ボス? どうかしましたか? まるで幽霊でも見たような顔をしてますよ?」
覗き込んできたのは、つい先ほど目の前で光に呑まれたはずのセシルだった。その顔には、先ほどの凄惨な最悪の結末など微塵も残っていない。
「いや、なんでもない。ちょっと立ち眩みがしただけだ」
スバルは強引に笑みを作って誤魔化したが、背中には冷たい汗が伝っていた。時間が戻ったということは、このまま普通に歩いていけば、またあの場所で正体不明の「閃光」による襲撃が起きる。セシルが狙われ、自分も殺される。何より、セッシーが死の間際に遺した「トッ……」とは一体何だったのか。時間が巻き戻る直前、彼は何かに気づいていたはずだ。
「なぁ、セッシー。……さっき、何か妙な予感とか、誰かからの『伝言』みたいなものを感じたりしなかったか?」
「へ? 伝言ですか? いえ、ボスの突拍子もない質問には慣れてますけど、さすがに今は何もありませんよ? 強いて言えば、お腹が空いたな〜という胃袋からのメッセージくらいです!」
けらけらと笑うセシルを見て、スバルは確信する。死に戻りの記憶を持っているのは自分だけだ。しかし、あの死の間際、セシルは確かに何かを掴んでいた。
あの襲撃を回避して、セッシーの『メッセージ』の正体を突き止めなきゃならない
「よし、セッシー。ちょっと予定変更だ。このまま真っ直ぐ進むのはやめて、あっちの路地裏から回り道をしよう」
「おや、ボスの気まぐれですか? 構いませんけど、そっちはちょっと薄暗くて物騒な雰囲気がしますねぇ」
スバルはセシルの軽い調子に救われつつも、表情を引き締めた。ここからは、二度目の運命の分岐点だ。物陰に潜む見えない敵の正体を暴き、このループの因果を断ち切るために、スバルは再び歩き出した。
「__え…」
閃光が走る
「セッ……ぐ…」
上を見ると…
「お前さん、まるで何か知ってるみたいな動きだな。」
「トッド……!!」
薄暗い路地、建物の屋根の上にしゃがみ込み、冷徹な一瞥を投げ下ろしてくる男。城郭都市での悪夢が、スバルの脳裏に最悪の形でフラッシュバックした。トッド・ファング。その手に握られた斧が、鈍い光を放っている。
「セッ、シー……っ!」
スバルが足元に目を落とすと、セッシーが胸を深く切り裂かれ、壁に寄りかかるようにして崩れ落ちていた。一度目の大通りでの襲撃ではなく、ルートを変えた路地裏。なぜ、トッドがここに先回りしているのか。なぜ、世界最強の一角であるはずのセッシーが、こうもあっさりと不意を突かれたのか。
「悪いな。お前さん、まともにやり合ったら怪物なのは分かってたからな。お前さんが『そっちじゃない道』を選んだ瞬間を狙って、背後から一撃で仕留めたよ。」
トッドは屋根から音もなく飛び降りると、凍りつくような笑みを浮かべてスバルに歩み寄ってくる。
「確信したよ、ナツキ・スバル。お前さんはやっぱり気味が悪い。まるで、これから何が起きるかを知っていて、それを必死に避けようとしているみたいだ。……大通りに伏せておいた罠を避けて、わざわざこっちの死地を選んでくれるなんてね」
__ハメられた……!?
スバルは奥歯を血が出るほど噛み締めた。トッドはスバルを泳がせ、動きを観察していたのだ。大通りにも網を張りつつ、スバルが不審な動きでルートを変えた瞬間、その先で確実に仕留められるよう、二重の罠を仕掛けていた。セシルという最大の脅威を、対話の余地すら与えない「完全な不意打ち」で排除するために。
「がはっ……ボス、すき、だらけ……っ」
息絶え絶えのセッシーが、血に染まった手を伸ばそうとする。だが、トッドはその手を無慈悲に踏みつけ、冷たく言い放った。
「さて、お前さんのその『異常な勘の良さ』の種明かしを聞きたいところだが……お前さんは生かしておくと、巡り巡って俺の平穏を脅かす。だから、ここで確実に終わらせる」
トッドが斧を振り上げる。スバルの胸に、死の恐怖と、己の浅はかさへの激しい後悔が渦巻いた。
また、俺のせいで……ッ!
「待て、トッド、お前は一体何を__」
「じゃあな。」
容赦のない一閃。視界が赤く染まり、スバルの意識は再び、あの暗黒の底へと叩き落とされた__