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10話「青き電光」
次回予告今回もありますよぉ〜
「__来るぞ、セッシー!」
スバルの鋭い警告と同時に、大通りの喧騒を切り裂いて、あの最悪の『青い一閃』が放たれた。建物の屋上、遥か遠方の死角から超高速で飛来する、トッドの冷徹な狙撃。初撃のループでスバルの急所を正確に貫き、二撃目のループで路地裏へ追い詰めるための絶対の初手。その閃光がスバルの眉間に到達するよりも早く、世界最強の怪物が動いた。
「おっと、ボスの進路を邪魔する不届き者は、このボクがすべて叩き斬ると決めていますからね!」
セシルス・セグムントは歪んだ無邪気な笑顔のまま、神速で刀の柄に手をかける。彼の足元から爆発的な衝撃波が走り、大通りの石畳が放射状に爆砕した。常人の目にはただの『青き電光』としか映らない超絶の踏み込み。一瞬にしてスバルの前方に回り込んだセシルスの手から、陽光を反射して怪しく煌めく魔剣が引き抜かれる。
キィィィィィィン!!
空間そのものが悲鳴を上げるような硬質な金属音が響き渡り、大通りに猛烈な突風が吹き荒れた。トッドが放った不可視の狙撃
__その大気を切り裂く必殺の一撃を、セシルスはただの一太刀で、正面から完璧に両断してみせたのだ。火花が激しく散り、引き裂かれた衝撃の残滓が周囲の建物の壁を深く削り取る。
「あはは! 素晴らしい手応え! 脇役にしては上出来な一撃じゃないですか!」
セシルスは涼しい顔で刀を振るい、切っ先についた衝撃の余韻を払う。大通りを進めばトッドは路地裏から出てこない。そして大通りの狙撃さえセシルスが防ぎきれば、トッドの二重の罠はその前提から跡形もなく崩壊する。スバルの読みは完璧に的中していた。弾かれた。あの絶対の死線が、完全に弾き返された。スバルは激しく脈打つ心臓を押さえ、全身から吹き出す冷や汗を拭うことも忘れて、目の前の背中を見つめた。1億回自分を殺し続けた、あの絶望の象徴である最悪の怪物。しかし今、その圧倒的な理不尽の刃は、トッドの『平穏』を完膚なきまでに叩き潰すための、最強の味方としてここに並び立っている。
「……っし、完璧だセッシー! お前が前を見てるなら、俺はもう、何一つ後ろを恐れる必要はねえ!」
「御意、ボス! では、このままあのコソコソ隠れている狙撃手の舞台裏へ、一気に押し入るとしましょう!」
セシルスの身体から再び青い雷光が迸る。狙撃を破られたトッドが、今頃あの高い場所でどれほどの驚愕に目を見開いているか、想像するだけでスバルの奥歯が歓喜で震えた。次でお前の『平穏』を、俺たちの手で完全に終わらせてやる。スバルはセシルスの背中を追い、狙撃の飛んできた時計塔の屋上へと一気に駆け上がった。セシルスの神速の跳躍によって、時計塔の頑丈な鉄扉は一瞬で紙切れのようにバラバラに引き裂かれ、屋上の開けた視界へと躍り出る。そこにいたのは、予想通り、手斧を構えたまま微動だにせず佇むトッド・ファングの姿だった。
「へえ……。まともにやり合ったら怪物なのは分かってたが、まさかあの距離の不意打ちを正面から叩き斬るとはね。お前さんたちの異常さは、本当に俺の計算の枠に収まらないな」
トッドは驚く風でもなく、いつも通りの凍りつくような冷たい笑みを浮かべてスバルを見つめた。その鋭い眼光が、スバルの魂の奥底を見透かすように細められる。
「だが、お前さんは大きな勘違いをしているよ、ナツキ・スバル」
トッドの言葉が終わるよりも早く、セシルスが動こうとした。しかし、その瞬間、時計塔の屋上全体の床に仕込まれていた『極小の魔石』が一斉に赤黒い光を放った。
ドガァァァァァン!!!
凄まじい爆音と共に、屋上の石床が完全に吹き飛んだ。トッドはセシルスの武力を警戒し、最初からこの場所を『第二の死地(爆破トラップ)』として作り変えていたのだ。
「しまっ__」
スバルの叫びは、爆風の轟音にかき消された。セシルスはその超人的な反射神経で爆発の直撃を回避し、空中で体勢を立て直したが、ただの人間であるスバルの身体は、爆風の凄まじい圧力によって無残に吹き飛ばされ、崩落する時計塔の瓦礫の中へと叩きつけられた。
痛い。熱い。また、俺のせいで。
背中を強打し、肺の空気をすべて吐き出したスバルは、視界がチカチカと明滅する中で必死に身悶えした。右腕が不自然な方向に曲がり、全身を灼熱の激痛が支配する。ガレキの隙間から見えたのは、爆煙の中から音もなく這い出てくる、トッドの冷酷な影だった。セシルスは爆発の衝撃で生じた崩落の壁の向こう側へと分断され、一瞬だけスバルの元へ駆けつけるのが遅れている。トッドはその『一瞬の隙』を、絶対に逃さない執念の男だった。
「俺は多分…お前さんの前のループの時、こう言った。お前さんは生かしておくと、巡り巡って俺の平穏を脅かす。だから、ここで確実に終わらせる。お前さんが大通りを選ぼうが、ここへ突入してこようが、俺のやるべきことは何一つ変わらないのさ」
トッドは容赦なくスバルの胸元を踏みつけ、曲がった右腕を容赦なく踏み潰した。
「ぎ、あああああああああああッ!!!」
スバルの絶叫が、壊れた時計塔に木霊する。骨が砕ける嫌な音が脳内に直接響き渡り、激痛のあまり涙と涎がボロボロと溢れ出た。トッドの冷徹な目は、スバルの苦しむ姿をただの『作業』として淡々と見つめている。感情がない。だからこそ、1億回死んだあのセシルスの狂気とはまた違う、完全な『生物としての絶対的な拒絶感』がスバルの精神をズタズタに引き裂いていく。
「お前さんは、これから何が起きるかを知っている。だが、知っているからといって、それをすべて防げるわけじゃない。お前さんのその『死に戻り』だか何だか知らない異常な力も、俺の合理性の前には、ただの無駄な足掻きに過ぎないんだよ」
トッドが静かに手斧を振り上げる。刃の冷たい輝きが、スバルの怯えきった瞳に映り込んだ。嫌だ。死にたくない。またあの暗黒の底へ戻るのか。日本の部屋で、何も返せずにただ引きこもっていた時のあの無力感。両親の優しさに押しつぶされそうになっていたあの恐怖が、トッドの冷たい合理の刃と重なり合って、スバルの心を精神崩壊の寸前まで追い詰めていく。自分は結局、何者にもなれない。1億回死んでセシルスに勝ったところで、この世界の冷酷な現実の前には、ただの無力な子供に過ぎないのではないか。
「じゃあな、ナツキ・スバル。お前さんの平穏は、ここで終わりだ」
斧が振り下ろされる。スバルは恐怖に目を瞑り、死を受け入れようとした。
__だが。
バリバリバリバリッ!!!
空間を焼き尽くすような、凄まじい青き電光が爆発の煙を完全に吹き飛ばした。
「そこまでですよ、脇役さん。ボスの舞台をこれ以上汚すのは、このボクの役者としてのプライドが許しません」
崩落の壁を文字通り『光速』で消し飛ばし、割って入ったのは、全身に青い雷撃を纏ったセシルス・セグムントだった。彼の持つ魔剣が、トッドの振り下ろした手斧を、その根元から一瞬で消滅させる。
「チッ__!」
トッドは即座に危険を察知し、後ろへと大きく跳躍して距離を取った。彼の冷徹な顔に、初めて明確な『焦り』の表情が浮かぶ。セシルスの強さは、トッドが用意した罠の限界を遥かに超越していた。
「ボス、お待たせしました! さあ、ここからはボクたちの、最高の大逆転劇の幕開けです!」
セシルスは倒れるスバルの前に立ち、その鋭い黒眸を時計塔の闇の向こうへと向けた。彼の背中から溢れる圧倒的な覇気と電光が、スバルの凍りついた心をジワジワと溶かしていく。俺は、もう一人じゃない。スバルは激痛に耐えながら、血に染まった顔を上げて、トッドを真っ直ぐに睨みつけた。右腕は砕け、全身はボロボロだ。しかし、その瞳の奥には、1億回の地獄を生き抜いた男の、絶対におれない執念の炎が再び燃え上がっていた。
「トッド……お前のプロットは、ここで完全におしまいだ。俺と、この最高の怪物の手で……お前の平穏を、完膚なきまでにぶち壊してやる……ッ!!」
青き電光が、暗闇の時計塔を白日の如く照らし出した。勝てる。これなら確実にトッドを仕留められる。スバルの確信を前にして、しかし、トッドは小さく息を吐くと、その懐からボロボロに擦り切れた魔石の束を取り出し、足元へ投げ捨てた。
「……お前さん。気づかないのか? 俺がこれだけの対策で青き電光を相手にするとでも?」
え? どういうこ__
スバルの思考がフリーズした、その一瞬の隙だった。時計塔の開けた屋上の外――大通りの四方八方の建物の影から、無数の黒い影が飛び交い、風を切る嫌な音が鼓膜を打った。スバルの後ろから何かが猛烈な速度で飛んできて……深く、容赦なくその背中に刺さって。
「__あ? あ……ああ……あああああああああ!! いた……っ! だれが……っ」
背中を貫いたのは、毒を塗られた無数の黒い投擲矢だった。内臓をドロドロに溶かすような凄まじい激痛と熱が背後から這い回り、スバルは床に両膝をついて激しく吐血した。
「お前さん。この街はみんなお前さんを敵として見ている。お前さんはここに入った時点で……袋のねずみだったんだよ」
トッドの冷酷な声が、崩壊した時計塔の空気に冷たく響く。大通りにも、路地裏にも、そしてこの時計塔の周囲にも、トッドは最初から『街の住民に偽装した私兵の軍勢』を完璧に配置し終えていたのだ。スバルがどのルートを選ぼうが、この街全体がナツキ・スバルを殺すためだけの巨大な檻だった。
うそ……だ……ろ……?
完璧なクリアルートを見つけたはずだった。トッドの裏をかいたはずだった。それなのに、トッドの慎重さはスバルの想像を遥かに超越した『地獄の物量』を用意していたのだ。
「ボス!!!!」
セシルスは周囲の建物から次々に飛んでくるき避けながら、必死の形相でスバルへと近づく。世界最強の怪物ですら、数千発に及ぶ同時多発的な遠距離攻撃を捌きながらでは、その神速にわずかな狂いが生じていく。そして、その『わずかな狂い』を待っていたトッドの手斧が、セシルスの死角から、その首筋を音もなく完璧に捉えた。崩落する瓦礫と無数の矢の雨に視界を奪われたセシルスは、防ぎきれずに胸と首を深く引き裂かれ、その圧倒的な電光を失って床へと崩れ落ちた。結局、世界最強の怪物すらも、トッドの徹底した『作業としての謀殺』の前に殺される。
「セッ……シー……トッドぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」
スバルは血の海に沈むセシルスの姿を見つめ、届かない手を伸ばしながら、喉がちぎれんばかりの絶叫をトッドに向けて放った。悔しさと、絶望と、自分の浅はかさへの怒りが、涙とともに溢れ出す。トッドはそんなスバルの前に静かに歩み寄ると、冷え切った目で最後の手斧を振り上げた
「お前さん……それは……負け犬の遠吠えって言うんだぜ」
また、暗黒の底へ。視界が真っ黒に染まり、スバルの意識は三度目の最悪のループへと叩き落とされた。
11話次回予告
「なぁぁぁぁんで!?トッド恐ろしすぎるだろぉぉぉぉ!!!!」
「ええ、毎回思います!恐ろしいです!僕も数回殺されました!」
「お前が言うって相当だぞ…」
「もう街から出るのがクリアルートなんじゃないんですか!?」
「核心に迫ったな…でもセーブポイントがセーブポイントだから…多分出る前に殺されて終わり」
「へえ、確かに!ボスは天才ですね!」
「もてはやしても何もないぞ」
「次はトッドとの最終決戦にするつもりらしいですよ!作者が言ってったってラインハルトが言ってました!」
「そこの2人知り合いなんだ!?」
「__今、授かった。作者のお言葉の加護だよ。とか言ってましたよ!」
「チート!」
「次回、11話「トッド・ファング」お楽しみに!」
「名前回は過去がかかれる…それで…最終決戦もやる…?一万文字超えそう!」
「作者が死なない程度に頑張ります!」
「セッシーはアシスタントかなんかかよ!?」
【作者あとがき】ここまでお読みいただきありがとうございました! トッドの第三の罠、街全体が巨大な檻という絶望をぶつけてみました。スバルと一緒に作者の脳みそもバグりかけています。でも、スバ虐やめらんねえ!待って…もう10話?早い!!そして実は8話投稿ら辺から日本にいなかったんですよ〜。8月18日帰国なので、18から、三日間は、家に帰る期間が続くのでそこから更新ないですね。そこまでこれが続いていると言う保証はありませんが。続いてると信じて。今話すことじゃないですね。絶対8月10日とかになったから話すべきだった…まぁいいですよ。当日になってもう一回話せばいいんですし。
次回はついにトッドの名前回&最終決戦! 作者が死なない程度に頑張りますので、もし応援していただける方は、画面下の【応援】や【ファンレター(感想)】をぽちっと押して、作者に「執筆の加護」を授けてください!よろしくお願いします!