廃工場のビスクドール 【 いつまでも 君の隣に 】
編集者:ミルクティ
Sui様の書かれた「廃工場のビスクドール」のスピンオフ作品をまとめたシリーズです。
スピンオフ許可取り&原作シーン使用許可取り⭕️
【注意事項等】
・原作のシーンを含むため、原作(廃工場のビスクドール)を見てからをお勧めします。
(https://tanpen.net/novel/series/f4252576-6626-4000-931f-1e5918286e72/)
・原作通りの設定、キャラの口調ではない可能性があります。
・登場キャラクターの口調や性格が原作通り又設定通りではないかもしれません。
・このスピンオフ作品は、僕のオリジナルキャラクターである“ヴィス”の視点で
書かせてもらっています。
・上記にある通り、既にスピンオフなどの許可取りは完了しています。
・この作品に似てる、原作シーンのコピーだ、ヘタクソ、キャラクターがキモい などの意見は
一切受け付けません。
もしした場合は、普通に無視させて頂きます。(キャライジリの場合即刻ブロックさせてもらいます。二度と見ないでいただきた(((((
※このキャラクターはこうではない、誤字脱字 などの意見は受け付けています。その辺りで問題があれば、教えていただければ修正出来るかもしれませんので、見つけたら報告して下さい。
無事完結いたしました!見てくれた皆様、どうもありがとうございます。
ぜひ原作の方もご覧下さい!!
https://tanpen.net/novel/series/f4252576-6626-4000-931f-1e5918286e72/
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目次
いつまでも 君の隣に ー前編ー
いつまでも 君の隣に 過去編
??「__初めまして‥“ヴィス”」
ヴィス「……?」
目が覚め、初めて目にしたものは、一人の老人だった__
--- これは、とある工場で生まれ暮らしてきた ---
--- “ヴィス”と呼ばれる人形の物語__ ---
--- そして ---
--- 唯一無二で ---
--- 最高で ---
--- 最愛の ---
--- `彼女`と出会う物語___ ---
ヴィス「…ここは‥」
意識が朦朧としている…一体、僕の身に何があったのだろう
老人「ここは“アミアンジュファクトリー”。‥しがない、工場だよ」
ヴィス「アミアンジュファクトリー‥工場‥?」
何故工場に僕はいるんだ‥?
嗚呼、目覚める前の記憶が一切ない‥思い出せない。何故だ?
ヴィス「‥ッ‥ズキン」
頭が軋むように痛い。どこかで頭を打ったのだろうか…
パキッ
おかしな音が、部屋に響いた。
老人「!大変だ。ヒビが‥」
ヒビ?《《人間に》》ヒビなんて、そうそう出来るはずはない。
僕は違和感の出来た額へと手を伸ばす。すると、右半分の額に、小さいがヒビが入っていた。
ヴィス「なっ!?」
人間が骨にヒビが出来ることは、まああるだろう。こんな風にいきなりなることなんてないのだが。
しかし、僕の額にできたヒビは皮膚にヒビができていたのだ。人間ならばあり得ない。裂けることがあったとしても、多少は血が出るはず。
老人「すぐに直さなければ‥少し待っていなさい」
老人が立ち上がると同時に、息が上がる。
ヴィス「ッ、は…!!?」
何故、どういうことだ
《《人間なら》》、痛みが、血が………
ヴィス「……人間‥なら‥」
自然と口から出た言葉は、考え出た予想は‥僕の心を多少抉った。
信じられないと現実逃避をしたくていっぱいになった僕はそばにいた、僕の正体を知っているであろう老人にこう言った。
ヴィス「僕は…一体何者なんだ……?」
老人「‥」
口から漏れ出たように思うほど小さくか細いその声を、老人は聞き取った。いや、《《聞き取ってしまった》》
老人「…時間が経つと、直せなくなってしまう。直した後に、話そう」
ヴィス「いい。こんな傷、大したことではない。
そんなことより、僕の‥僕は何者なのか‥教えてくれ‥」
老人「…」
話を逸らしたいという気持ちが丸見えな老人に放った言葉は、どうやら老人の心に刺さったらしい。少しばかり手を震わせながらこちらを向き、老人は口を開いた。
老人「君は‥、…
--- ヴィス メイ《《人形》》 ---
…私が今この工場で作った、人形だ」
ヴィス「ッ!!」
人形 ?人形
人形 人
人形 人形
人形 人形 人形
人形 人形
人形¿
その言葉だけが、頭に響く
ヴィス「……人、形‥」
老人「っ…」
少しばかりの虚無感が、僕を襲う。
ヴィス「……そうか‥ありがとう‥ろう、、創造主」
タタッ
老人「待ちなさい!!!」
スタッと自分が寝っ転がっていた台から降り、僕はその場を去った。
ヴィス「……少し、頭を冷ましたいんだ‥ボソリ」
---
---
---
あれから数日…僕は誰とも会わず過ごした。もちろん、あの心優しい老人ともだ。
頭は十分覚めているはずなのに、未だ信じられないと言う自分がいる。現実逃避も、いい加減にしなければいけない……
ヴィス「…」
ここは静かだ。
ここは、他の人形たちはいないし、話し声も聞こえない…
ヴィス「…__はぁ__‥」
小さくため息をつき、僕は立ち上がった。
--- ゴツンッ ---
ヴィス「っ!?」
??「~‥。
!すみません大丈夫ですか?」
ヴィス「あぁ…平気だ、心配ない‥」
??「、ヒビが‥」
ヴィス「これは…今ので出来たものじゃない。気にしないでくれ」
??「そうですか?ならいいんですけれど‥」
ヴィス「‥君、名前は?」
??「え?自分ですか?」
ヴィス「、失礼した‥普通、自分が名乗ってからだね。
僕は‥ヴィス、正式にはヴィスメイ 人形というらしい」
??「ご丁寧にどうも。自分は“トラウム”と申します。ヴィスさんはいつからこの
工場に?」
ヴィス「僕は…ほんの数日前………《《作られた》》」
“作られた” その言葉は、今の僕には重く感じた。自分は産まれたのではなく作られたのだと、実家をさせられる。
トラウム「そうなんですね‥‥正確にいつなのかは覚えてないんですけど、自分は
工場がオープンしたすぐ後に作られました。ココにはかなり長い時間住んでいます。
‥そうだ。ここの人たちとは、もうお会いになられましたか?」
ヴィス「、やっぱり僕以外にも居るんだね」
トラウム「もちろんですよ。殆どの“人形”が貴方と同じように、《《彼》》の手で作られ
ました。既に50体は超えてるんじゃないですかね‥」
ヴィス「人形‥」
トラウム「、……人形の自分に、違和感がありますか?」
ヴィス「…ああ」
目が覚めた時は人間だと思っていたのに、数分後には人形だと告げられる。いきなり過ぎて、その場で飲み込むことができなかった。‥信じきれなきれなかった。
トラウム「ですよね…自分も人形だって言われた時は、思わず『嘘だ』ってなっちゃ
いましたから」
ヴィス「…」
トラウム「…」
ヴィス「…そろそろ、失礼するよ」
トラウム「え?もうですか?」
ヴィス「君、静かな場所が好きだろう。僕がいたんじゃ、落ち着けない」
トラウム「あ……」
ヴィス「またどこかで会えれば、その時話そう」
トラウム「…うん‥そうですね。またいつか。ニコ」
コツコツ‥
…人形だとしても、感情はある。人間と変わりはないのだ。なら‥__
ヴィス「僕なりに、人間と同じように振る舞おう」
---
---
---
数年後………
僕は、あれからすぐにあの老人に会い、突然逃げてしまったことを謝罪した。老人は謝ることじゃないと僕を宥めて、記念にと一つのマフラーをくれた。そのマフラーは白くて、とてもキレイだった…もちろん受け取ったし、初めてプレゼントだと嬉しく思った。今も大切に着けている。
嗚呼それと…どうやらこの額のヒビは、もう修復が出来ないらしい。人形の自分ならと思ったのだが、少しばかり残念だ。
あれから僕は老人の作業部屋で過ごした。ただ室温が丁度いいから居るだけだ。そう室温が。別にマフラーが嬉しかったからとかではない。本当に。
ヴィス「…」
ペラ‥
老人「…」
カチャカチャ‥
老人は、僕を作った後も人形を作り続けていた。あれから十体以上は作っただろうか…人形を作る技術はもちろん、根気も凄いと、僕はとても尊ン、感心した。
ヴィス「‥‥」
ペラ‥
老人「…」
カチャ‥
…何よりも凄いのは、老人が作った人形には魂が宿ることだ。作った人形には魂が宿り、動き、思考し、判断し、表情を変え、笑い、泣く。不思議なものだ。僕やトラウムという人形もその一つで、他にも何十体と魂の宿った人形たちが居る。彼の手には、一体どんなモノが宿っているのだろうか………今度、遠回しにでも聞いてみよう‥。
ヴィス「____フ‥__」
--- こうして、ヴィスと老人は穏やかで平和な日々を過ごした ---
--- 数日後 彼が還らぬ人となってしまうとも知らずに___ ---
今日の文字数
3255文字
あるあるな終わり方。閉めやすいよね、うん。「〇〇とも知らずに…」…うん(?)
前編は完全原作シーンなしのヴィス過去編。設定の後付けがちょこちょこある←おい?
それと、多分僕だけだが、ヴィスの声は斉木楠雄の声だと思ってる((
いや、一回それで想像してから、ヴィスのセリフが全部斉木楠雄になって別の声だと違和感感じちゃうんだ‥でも個人的にピッタリだと思ってる()
一人称と、超能力者で普通の“人間じゃない“、人形として生まれ“人間じゃない”、のが被ってる(?)んだろうか‥
というか老人はこんな感じだろうか…?本編登場はしてないはずなので完全に僕の想像。想像と違ったらすみません。
後、トラウムさんはまだ“変化”を嫌いになる前、精神がまだすり減っていない時です。そんな時なので、僕の方で勝手に明るい感じかな?とか思ってトラウムさんのセリフに「…」少なくしました。問題があればご連絡下さい!
いつまでも 君の隣に ー前編IIー
※今回は時の流れが早めです。
時系列が原作と違かったらすみません。
※原作に入り始めるのは7000文字超え辺り
いつまでも 君の隣に 『世界で一番尊いもの』編
あれから、約一年の時が過ぎた。
僕は…いつものように、老人の作業部屋で本を読んでいる。
ヴィス「ペラ‥」
--- ペラ… ---
虚しく響く、
--- ペラ…… ---
紙を捲る音
--- __パタン ---
ヴィス「チラ ……」
スタ…コツコツ__
僕は、老人の座っていた椅子へと視線を向ける。
少し考えた後に、自身が座っていた椅子から立ち上がり本を置き、老人の座っているはずの椅子へと、足を運んでいく。
ヴィス「…」
スウ‥
埃を被り、少し触れるだけで埃が舞い上がる。
…もう、一年は誰も座っていないのだから、当然だ。
ヴィス「アレからもう、一年は経ったのか‥…」
あの心優しい老人は__ある日突然、`亡くなった`。
死因などは分からない。僕たちドールでは、人間に尋ねることもできないからだ。
老人は最期の別れの言葉も言えず、いってしまった。連れていかれてしまった。
そして、僕はあの日から、人間が‥いや、哺乳類が嫌いになった
親しくなれても、すぐに死んでしまうから。仲良くなったって、壊れない限り死なない僕たちより早くいってしまうから‥…あの、老人のように
ヴィス「__未だに信じられない僕は…現実を見れていないな‥ボソリ」
工場は、僕たちビスクドールの人気が落ちたのもあってか、廃れていった。
きっと、外から見たら完璧に廃工場だろう。
新たなドールが作られることも、魂を宿すこともない……後はもう、減っていくだけ。
ヴィス「また夜がやってきた__
…今日の夜は別の場所で過ごすつもりなんだ‥そろそろ行くよ」
少しばかりの名残惜しさを押し殺し、僕は部屋を出た__
---
あれから数年後のある日……
?「こんにちは!」
ヴィス「ビク」
いつものように、老人の作業部屋で本を読んでいたら、いきなり背後に現れた。何者だ…?
?「|私《わたくし》は…|X《エックス》と申します。この工場をまた動かす者です!」
ヴィス「…この工場を?」
X「はい」
ニッコリと笑顔を見せたその人物は、Xと名乗った。そして、この工場をまた動かす者、とも言った。
ヴィス「…この工場は既に廃れた。製造ラインや人形製造機も、埃をかぶって壊れたり壊れかけているものが大半」
X「製造ライン類は新しいものに変えたり直せば動かすことができます」
ヴィス「…ドールを作っても魂が宿ることはない‥例え製造ラインを再び動かすことができても、それはただの《《人形》》だ」
X「それはどうでしょうか…《《その目で》》、見てみてはいかがです?」
ヴィス「…」
顔が胡散臭い
何より、大嫌いな哺乳類を信用するほど、僕に心の余裕はない……
Xと名乗る人物をギロリと睨みつけ、老人の作業部屋から追い出した。
X「、わ、わ。
あ、明日の✖️時に周回を開きます。《《必ず》》来て下さい!」
ヴィス「…ペラ」
そんな胡散臭い人間の胡散臭い集会、行くわけがない
---
---
---
X「___それでは開始いたします!ミュージックスタート!!」
〜〜♪
ヴィス「__ベートーヴェン作曲、交響曲第7番 イ長調、か…」
というか、結局来てしまったな…なんとなく、嫌な予感がしたから来てみたが‥。特におかしなことはしていないようだ。安__
ヴィス「……嘘‥だろう‥?」
復旧作業がいつされたかは知らないが、動くようになった製造ラインを通って来たのであろう…音楽が始まると同時に、奥の暗闇から人形製造機が現れた。
そして、その人形製造機から次々に新たなドールたちが作り出されていた。それも__
--- 踊りながら ---
続々とドールが生産されていく…作られたドールたちは、流れるクラシック曲に合わせながら踊る。マリオネットのような、操られているような不自然さは一切ない。自身の意思で踊るような自然さ、あるものは激しく、あるものは儚く、あるものは大きく、あるものは美しく__個性豊かな、ドールたち。
なんと美しいのだろう…
ヴィス「…嗚呼‥この感覚は‥」
あの時と同じ…作業部屋で、ドールが作られる工程を見ている時と同じ…懐かしい感覚。
中身を作っている様子などを見ることは出来ないが、作られてすぐのその真新しい姿は、匂いはあの時の感覚そのままだ。
X「__君たちは命を持っています…
もう、ただの人形ではないのです!」
わあぁああっ…!!!
…意外と良いことを言うな、胡散臭い顔のくせして。
僕は、上手い具合にXからは見えない位置で、一方的に集会の様子が見れる場所でその様子を見ていた。他のドールもあまり来ない場所だからから、埃の溜まり具合が酷い……マフラーは、床につかないよう、万が一を考えギリギリまで巻いている。そのせいで少しばかり苦しいが……埃で汚れてしまうことよりずっとマシだろう。
人形「ねえ、外に行きましょう!」
人形「街に行きたい!」
人形「行こうぜ!俺らもう自由なんだよ!!」
ザワザワザワ‥
ヴィス「、‥」
工場を捨てるつもりか?彼らは…
X「待って下さい!!!」
人形達「?」
X「_ごめんなさい‥
この工場を出ることができるのは、“選ばれしドールだけ”なんです」
人形「え‥?」
人形「嘘だろ?せっかく自由になれると思ったのに‥」
人形「そんなあ!!!」
X「この中で最も優秀なドールだけが、この工場を出られる…それを確認する方法は、この工場から出ることだけですしかし‥!!」
ヴィス「‥__碌でもないことになりそうだな__‥ボソ」
X「…工場を出れば‥、一歩でも外に踏み出してしまえば、貴方達は壊れてしまう…死んでしまうんです‥」
ザワザワ‥!
人形「壊れる‥?」
人形「どうして工場を出たら壊れるの?!」
人形「外に行きたいよ…っ」
X「ごめんなさい。それは、言えません」
ザワ…
集会場はさらに騒音が大きくなる。優秀なドールか確かめるためには外に出なければならないのに、出たら死ぬ?…めちゃくちゃだ。
大勢が一度に喋るせいで、とんでもなくうるさい。
ヴィス「…外、か」
クルリ
哺乳類だらけの
《《癒しのない》》の世界になんて
僕は
--- `興味ないな` ---
コツコツ__コツ コツ__
--- この中で最も優秀なドールだけが ---
--- 工場から出ることができる__ ---
こうして、工場に現れた謎の人物Xの手により、工場は再び稼働し始めた。
そして___それと同時に、仲の良かったドールたちの間には…大きく深い亀裂が走った
---
---
---
あれから何年、いや何十年の時が過ぎただろう…
Xと名乗る人物は、一年に一度の頻度で工場に来ては曲を流し、新たなドールたちを作り出していった。作り出されたドールたちは自我を持ち、感情を持ち、動いた。
“アレ”さえなければ、ドールたちは古参新人関係なく仲良くしていたのだろうが……今の状態では、無理だろう。かく言う僕も、一部のドールを除き関わりを以前より避けている。
“アレ”というのは、ドールたちの間に空いた大きな亀裂のことだ。
彼らは、自分こそが優秀なドールなのだと証明するべく、他のドールたちを襲い壊している。あの日、ある者たちはXの言葉を信じず工場を出ようとしたが………無理だったようだ。ソレを見たドールたちは過激なドールとなりドールたちを壊しまわっている。
……意味がないと言うのに。
ヴィス「ペラ……」
ざわざわ…てくてく……
ヴィス「………うるさいな…」
今日は何かあっただろうか……
??「あなた、今日は《《あの日》》なの忘れたの?」
ヴィス「…レイアか」
レイア「わたしで悪かったかしら…イラ」
彼女はレイア、かなり古参のドールだ。
外にいた時代、持ち主にかなり乱暴に扱われたらしく…ここに来た頃には既にボロボロだった。ドールたちを癒すことのできる力の持ち主であり、人間と外の世界が大嫌いなドールである。普段はドールたちの材料や加工道具が用意されていた倉庫で、怪我をしたドールを治療や寝泊まりをしている。ドールに対しては心優しく、人間に対しては容赦ない。普段はおとなしい方なのだが。
ちなみに、人間嫌いなので…
ヴィス「いや‥そんなことはない。
にしても…本当に騒がしいな。Xが来るだけだと言うのに…」
レイア「|人間《X》が来るのだから大事でしょう!」
もちろんXも嫌っている。
ヴィス「……そうだな‥」
レイア「何よその子供をあやすような言い方…!!!」
ヴィス「分かったからやめてくれ、耳鳴りがする」
レイア「なんですって…?!!」
??「よくないですよ、レイアさん、、、」
レイア「!」
ヴィス「トラウム」
トラウム「嗚呼、、ヴィスさんもここにいたんですね、、、」
彼はトラウム、この工場がオープンしてすぐ作られたドールだ。そして、僕の昔馴染みでもある…数十年前、初めて会った時から時折話すようになった。その頃から既に元気はなさげだったが…Xが来てからはさらに元気がなくなり、初めて会った時よりも酷く疲れた様子がよく見られる。
ヴィス「トラウム…ちゃんと休んだのか?顔色が悪いぞ」
トラウム「あれ、そんなに酷いですかね、、ちゃんと休んだんですけど、、、」
ヴィス「君の“休んだ”は信用できないんだが‥」
トラウム「酷いなぁ、、」
レイア「ちょっと、わたしを置いて話をしないでくれる?!」
ヴィス「、悪い」
トラウム「すみません、、」
レイア「ふん。
ともかく、人間がこの場所に来るなんて大事なの!!集会に来ないと大変なことになるし…!」
トラウム「まあ、、、確かにアレは、酷いですよね、、」
レイア「アレさえなければ、わたしは人間の開く集会になんて行かないのに…最悪だわ!」
二人のいう“アレ”というのは、この工場に新しくできたルールのことだ。もちろん、Xが作った。
ルールその1 勝手に外へ出てはいけない
ルールその2 優秀なドールは外へ出てもいい
ルールその3 能力を乱用してはならない
ルールその4 年に一度ある集会に必ず出ること
…二人が“アレ”と言ったものはルールその4。ルールを破り集会へ出ないと、焼き殺されるのだ。このルールがあるせいで、どんなに嫌でも集会に出なければいけない。それはもちろん、人形嫌いのレイアにも適応されるため、渋々集会に出ている。トラウムは焼き殺すということを嫌がっている。もちろん他のドールも異常だと思い怖がったりしているだろう。僕も、殺すまでしなくてもいいんじゃないかと思っている。
その3は…後で説明しよう。
ヴィス「落ち着けレイア。そうは言ったってどうにかする方法はないんだ」
レイア「あなたは好んで行ってるんだからいいじゃないの!もうっ」
ヴィス「ピク‥好んで行ってるわけじゃないと何度言ったら分かるんだ君は…」
レイア「好んで行ってるじゃない!」
ヴィス「‥なんだ、僕に喧嘩を売るつもりか…ギロリ」
レイア「…キッ」
トラウム「、、、、__|En forme d'éternité《アンフォームド・エターナイト》__」
トラウムが小さくソレを口にした瞬間、トラウムの視界内にいた全てが止まった。これはトラウムの“能力”である。この工場にいるものは、全員特別な能力を持ちそれを使用することができるのだ。
トラウムの場合は『|En forme d'éternité《アンフォームド・エターナイト》』という能力名で、能力を発動している間はトラウムが顔、または物の全体を認識したものは10分間動けなくなるというもの。詳しくは本人でないので分からないが…大体30個程度のものなら同時に止めることができるのだろう。トラウムは、主に喧嘩の仲裁やバトルで有利に立つことなどに使っている。現に今、トラウムは僕とレイアの喧嘩を仲裁するために能力を使用した。
ちなみに、ルールその3にあるように能力の乱用はルールに反する。使いすぎると体が崩れてしまうのだ。
ヴィス「、トラウム‥!」
レイア「ちょっとトラウム!これはヴィスとわたしとの」
トラウム「良くないですよ、やめましょう、、、それに、、、、」
ザワザワザワ‥
トラウム「そろそろ集会場へ行かないと、間に合わなくなります、、、」
ヴィス「…」
レイア「わたしたち喧嘩なんてしようとしてないわよ!」
トラウム「ならさっきのあれは何だったんですか、、
ほら、行きましょう、、」
ヴィス「いや…君の能力を使われたら10分間動けなくなるんだろう‥?」
トラウム「あ……」
レイア「…」
--- ・・・・ ---
レイア「ちょっとどうしてくれるのよッ?!!」
ヴィス「焼き殺されるのはごめんなんだが…」
トラウム「ごめん、、どうにかして運ぶよ、、、💦」
ヴィス「通常の三倍の力が必要なんだろう?大丈夫なのか?」
トラウム「原因は自分ですし、どうにかします、、、」
……集会に間に合えば良いのだが…
---
トラウム「ふう、、、」
レイア「ま、間に合ったわ‥」
ヴィス「−、‥」
ざわざわ…
カチッ
ヴィス「時間だ‥」
レイア「!」
ザワ…………
僕たちが最後だったようだ。丸いステージ周辺に僕たちが集まると、赤い幕が開き始め真ん中にスポットライトが当てられる。それと同時に、ざわついていたドールたちは静まり返った。
?「レディースアーンドジェントルメーン!ようこそお集まりいただきありがとう!」
ヴィス「…」
あまり好きではない男の声が、スピーカーから流れ出す。音量設定を誤ったのか、キーンとハウリングを起こした。
そんなのお構いなしに、静まり返っていた集会場は、ざわつき始める…
隣にいるレイアは、少しばかり険しい顔しているが、いつものことなので気にしない。
コツコツ‥
靴の音が鳴り響き、ステージの奥の暗闇から一人の人間の男が現れる。
男は、微笑みながら人形たちに向かい一人拍手する。
X「初めて会うドールも、1年ぶりに会うドールも素晴らしい美しさです!」
ザワザワザワ‼︎
X「まあまあ、落ち着いてください…知っているものも多いと思いますが、|私《わたくし》は一年ごとにこの工場にやってきて、新しいドールを作っています。
去年作ったドールを思い出すと…たくさんのドールを作りましたね。そして、今日!また新しいドールの誕生をお祝いしましょう!」
--- わぁああぁああっ ---
騒音かと思うほど、ドールたちの歓声によりうるさくなる集会場。僕はいつも通り耳を塞ぎ、ため息をついた。
毎年コレだ。いい加減冷めて欲しい。
去年と同じ定文をペラペラと喋り、仮面をつけているかのようにニッコリと笑うX……僕は気味が悪く感じて仕方がない。そして冷めた。
何度もやっていると飽きるし冷める。周りのドールは洗脳か何かされているんだろうか…。
X「それでは開始いたします!ミュージックスタート!!」
__〜♪
Xの合図と同時に、どこからか流れ出すクラシック曲。今年は…
ヴィス「_ヴィヴァルディ作曲、四季より『春』か」
レイア「頼んでもいないのに説明ありがとう」
ヴィス「ありがとう、が感じられないんだが」
レイア「……」
ヴィス「無視か‥」
きっと、レイアは今日一日機嫌が悪いままだろう。|人間《X》が来るといつもそうだ。
…明日には通常運転のため、僕は気にしない。
去年と同じように、奥の暗闇から人形製造機が現れる。音楽に合わせ、次々と生み出され踊るドールたち__
ヴィス「…」
……なんて、美しいのだろう
隣にいるレイアも、先ほどまでの険しい顔を少し緩めていた。レイアは、工場にいるトールが大好きななのだ…それは、新しく生まれてきたドールもまた然り。
僕も、Xの定文も笑顔や周りのドールたちの歓声は全て好きではないが…この時だけは、この瞬間だけは___好きだ
トラウム「、、ヴィスくんは、この時だけいつも表情を和らげますね、、、、」
ヴィス「ハッ ………いや、別に‥」
トラウム「フフ、、、、、」
ヴィス「トラウム‥!!」
トラウム「、すみません、、、」
ヴィス「………」
僕は、すぐに視線を作られている人形たちへと移す。
ヴィス「…!!?」
その瞬間__
--- `胸に電流が走った` ---
??「…」
銀色の長い巻き毛を下ろした、ピンク色の瞳を持つドール…
ヴィス「……………」
トラウム「、、ヴィスくん?、、、」
レイア「ヴィス、どうしたのよ‥そんな、世界で一番尊いものを見つけたみたいな顔をして‥」
ヴィス「………………世界で一番、尊い者を見つけた‥‥」
二人「_え???/えっ?、、、」
この日この瞬間、僕は___
--- 世界で一番 ---
--- 守るべき ---
--- `愛`すべき ---
--- 最`愛`の女性を見つけた___ ---
---
---
---
|あれ《彼女に出会って》からはや一週間………
新たなドールたちとはまだ、一切の会話をしていない。…もちろん、《《彼女》》とも。
ヴィス「はあ…」
せめて壊れるまでに、一言言葉を交わしたいが……出来そうにないな‥
そうだ‥この工場に、人との付き合い方についての本はあっただろうか。あるならそれでも読んで、少し学ぼう。
庭を通っていけば近い…庭を通ろう。
テクテク‥
_______
ドンっ
ヴィス「わっ!」
?「わあっ!」
曲がり角で誰かとぶつかってしまった。その拍子に、持っていた本が宙を舞い、近くの床に落ちる。
ヴィス「っ……
、__すまな__ぃ‥」
ぶつかってしまった相手を視界内に入れる。
?「ごめんなさい…前を見ていなかったから…」
嗚呼、彼女だ……愛しの我が君、女神に愛されしドール、僕の__
--- 最愛の女性 ---
僕は神が与えてくれたチャンスに感謝していると、スッ、と彼女が顔を上げる。
ヴィス「ヒュッ」
銀色の美しい髪、きらりと光る可愛らしいピンクの瞳、その瞳を際立たせる綺麗な白い肌……そんな美しい顔に見合うほど可愛らしいレースのあしらわれた白いロングドレス、頭にはピンク色をしたレースカチューシャを着けていた。まるで、彼女のために作られた世界で一つだけの代物のようだ……
イヤ、実際そうなのだろう。別の人物が来ていたらその人物を壊し 説得している。
?「あの…ぶつかってごめんなさい、これ…」
スッ
彼女は僕が聞こえてないと判断したのか、もう一度謝り、僕の落とした本を拾い渡してくれた。
ヴィス「|僕はヴィス メイ人形…ヴィスとでも読んでくれ…君は…君の名前は…?《ありがとう。こちらこそ、ぶつかってしまいすまない》」
ア
まずい引かれる心の声と実際に出た言葉が逆だこれが俗にゆう“オワッタ”というやつか
?「あたしは《《リーヴァ》》。よろしくね」
!!!終わってない!!!それも名前を教えてくれた…!!?
ヴィス「リーヴァというのか…素敵な名前だね」
多分、僕は今人に見せられないほど表情筋を緩めているだろう……そんなことはどうでもいいが。
リーヴァ「!//」
心なしかリーヴァの顔が赤い……人間の病気にある風邪、というやつか?しかし彼女はドール‥いや、現代はドールでも病気になる時代なのかもしれない。横になった方が__
「にゃー」
ヴィス「…」
リーヴァ「……」
ダダダダダッ
ヴィス「__哺乳類‥!!!__」
突如現れた灰色の毛並みの|哺乳類《猫》は、他のものに目もくれず僕の愛しい人であるリーヴァに一目散。流石はリーヴァ、どんな生物にも好かれる…だが、僕が哺乳類なんかにリーヴァを渡すわけがない。
リーヴァ「や、やめてー!!」
ヴィス「!?」
今日の文字数
8355文字
本当はここで終わりにするつもりが、リーヴァに会うまでの前置きが死ぬほど長くなった…!!
いつまでも 君の隣に ー人形ゴロし編ー
※相変わらず長め
※原作コピペ多用
いつまでも 君の隣に ーチーム分け編ー
そんなことを考えていると、猫がリーヴァの元へ辿り着き、リーヴァのドレスを物凄い勢いで引っ張っていた。
ヴィス「おい!僕のリーヴァから離れろ!」
僕はリーヴァから猫を離そうとリーヴァを引っ張る。
リーヴァ「二人ともやめて!壊れる壊れるっ!」
__タッタッ__
__リーヴァが壊れる‥?そんなことがあってはならない!!
僕がリーヴァから腕を離し猫の方をリーヴァから引き離そうとし瞬間、水色の布がヒラリとしたのが視界の端に映った。
ヴィス「__誰だ?__」
その布の正体は、キャラメル色の髪のドールが着ている水色の長いワンピースの一部だった。
?「猫はまかして!《《サイコキネシス》》!」
彼女がそう言い手を広げると同時に、猫のみが浮かび上がる。地に足がつかず浮遊感がすることに驚いた猫は、すぐさまリーヴァのドレスを離した。
二人「おお〜」
思わず感嘆の声を漏らす。リーヴァと被ったことに少し気恥ずかしさを覚えたが……まあいい。
下ろされた猫は、大慌てで逃げていく。水色のワンピースの彼女はため息をついた。
?「あの猫いっつもリーヴァに絡んでくるから困る。何か取り憑いてるのかなぁ?」
そう言って元気そうに笑顔を見せる。
……一体何者なんだ、彼女は。『いつも』と言っていたぞ?確か彼女もリーヴァと一緒に作られたはずだ…いつからあのような仲__
リーヴァ「ありがとう!《《メトリ》》!」
___
--- リーヴァが彼女に抱きついた ---
一体僕のリーヴァとどう言った関係だ恋仲か?許さないぞそんなの僕の了承もなしにふざけるなリーヴァを離せ名はメトリと言ったか覚えたぞ絶対に___
ヴィス「ギロリ…………」
僕は自然とメトリと呼ばれた彼女にに冷たく鋭い視線を送った。
メトリ「ところで、あなたは?」
ヴィス「__……__
僕はヴィス…そういう君は?」
彼女は僕の視線に気づかず、呑気に名前を聞いてきた。
メトリ「私はメトリ。リーヴァの相棒なのさ!」
ヴィス「そうか…相棒か…」
『相棒』その単語がメトリから出た時ひどく安堵した。ただ、リーヴァに抱きつかれたことを許した覚えはないので勘違いしてもらうと困る……
‥まあ………、リーヴァのことを詳しく知れる情報源だろうし‥半分は許すか‥。
ヴィス「そうだ、リーヴァのこと聞かせてくれるかい?」
リーヴァ「あたしのこと?そーだな…あっ、春が好き!花がいろんなとこに咲き乱れて綺麗だから。雪も綺麗だけどね?」
春か……確かに、可愛らしい彼女にはピッタリだ。雪の中に佇む彼女も美しいだろうが……
ヴィス「そうか…僕も花は綺麗だと思う。‥まあ、そんなものどうでもよくなるほど、リーヴァの方がキレイなんだが」
おっと……本音を少し分かりやすくしたものが漏れてしまったか…。
メトリ「んんん〜?もしかして、ヴィスって…」
それに反応したメトリが、ニヤリとした表情でこちらを見つめてくる。
ヴィス「…何?」
リーヴァ「なになに?」
メトリ「……ううん、なんでもないよ!」
リーヴァ「、そう‥?」
ヴィス「……」
もし気づいているのなら……メトリの口からリーヴァに伝わったらまずい…
僕はそう思い、『絶対に言うなよ』という意味を込めメトリを軽く睨んだ。
??「もうすぐ夜が来るよ」
ヴィス「、…」
そう聞こえたのは木の上から。見上げると、木の上に男のドールが立っていた。
??「見慣れない顔が一人いるね。俺はアレン。以後お見知りおきを。」
そう丁寧に挨拶をされ、反射的に会釈する。
アレン「リヴァは夜が苦手だろう?みんなも早く戻ったほうがいい。また始まるよ、あれが。」
どいつもこいつも、リーヴァと随分親しいようだ…僕は今さっき会ったばかりだというのに。
それにしても、リーヴァは夜が苦手なのか。月が出る日はとても綺麗なのにな……イヤ、リーヴァの方が綺麗なのだが。リーヴァより美しいものなど存在しない‥存在してはならない。
__カー____
鴉の鳴き声がする。どうやら、アレンの言った通り夜が近いようだ。辺りは薄暗くなり始めている。
ヴィス「__また夜がやってきた__……
‥そうだね。帰ろう。」
メトリ「私もいつもの製造ラインに戻るね。バイバイ、リーヴァ。」
アレン「みんなの幸運を祈るよ」
リーヴァ「また明日、必ず会おうね。」
『リーヴァがそこにいるのなら、必ず__』‥そう言おうとした口を閉じ、僕は老人の作業部屋へと向かった。
--- もしもの時に辛くなるのは、自分だからな ---
---
キィ…
ヴィス「…」
すっかり日は落ち、目を凝らさなければ辺りが見えないほど暗くなった頃……僕は老人の作業部屋へと着いた。
ヴィス「…、‥本を戻すのを忘れていたな‥」
明日、朝早くから戻しにいけばいいか。
それにしても、リーヴァはいつもどこで身を潜めているのだろう?‥他の人形たちを壊している側だったりしてな‥どちらでもいいか。
リーヴァは外に出たいと思っているのだろうか‥もしリーヴァが行くのなら、僕も行こう。リーヴァがいるなら僕はどこへだって付いて行くと決めたのだから。
もしかしてリーヴァは、猫が嫌いなのか?先程、リーヴァのドレスを千切ろうとした猫に対して、大袈裟なくらい嫌がっていた……それなら、僕と同じだ。嬉しい。
………リーヴァとアレンはどんな関係なんだ‥?友人なら、いいのだが‥
そうだ‥リーヴァは花が好きだろうか?もし好きなら、赤いアネモネやガーベラ、四つ葉のクローバーで出来た花束でも送ろう‥シロツメクサで作る冠もいいかもしれないな…
ヴィス「__ふふ__‥」
--- ドーンッ“‼︎‼︎ ---
ヴィス「、」
リーヴァのことを考えていると、突然轟音が鳴り響いた。その中には、ドールの悲鳴と思われる音もある…
ヴィス「始まったか‥」
夜になると、外に出たいと願う派閥のドールたちが能力を使った乱闘を起こす。自身こそ優秀なドールであると、自身こそが外に出るのにふさわしいと‥確かめるために。
無関係のドールが戦闘に巻き込まれ壊れることも多々ある。だから、壊れたくない、外に出ようとは思わない派閥は物陰に息を潜め、朝が来るまで縮こまっていることしかできない……僕もこの派閥のため、夜は決めた場所から動かず本を読んだりして夜が明けるのを待っている。
同じ場所に居続けると、居場所がバレて襲われるかもしれないので、ある程度居続けたら待機する場所を変えるようにしている。今日は老人の作業部屋だ。
ヴィス「リーヴァが夜を嫌う理由は‥コレなのかもしれないな‥」
悲鳴、怒鳴り声、壁が破壊される音、建物が軋む音、能力により聞こえる不思議な音…聞こえる音は様々だが、どれも不安を感じさせる音だ。この音が聞こえるようになる夜を恐ろしく感じるのは不思議ではない。
この部屋にはドール自体近寄ってこないようで、近くで乱闘が始まることはないが…それでも轟音は聞こえてくる。
ヴィス「……キュ‥」
今日は本を借りてくるのを忘れたため、マフラーに顔を埋めて朝まで待つ…いわゆる睡眠だ。なんやかんやでコレが一番時間の過ぎが早いのだ。
ヴィス「リーヴァも‥トラウムたちにも、何事もありませんように__」
今日も祈り、一日を終える。
---
---
---
ドドォン‥ドンッ__
--- ・・・・・ ---
ヴィス「…鳴り止んだ‥朝か‥」
今日はいつもより乱闘が長引いていた…一体、何人の、何体のドールが壊れただろう‥。
ヴィス「‥そうだ。リーヴァは…!」
タタ…
僕は、リーヴァの安否が気になりいつの間にか駆け出していた。
---
??「あ、ヴィス!」
ヴィス「、メトリか」
昨日リーヴァとあった庭の近くに来たところで、メトリが声をかけてきた。
メトリ「ヴィスもリーヴァのところに?」
ヴィス「色々と‥心配でな」
メトリ「そうなんだ!私もなの、一緒に行こうよ!」
ヴィス「ああ。‥リーヴァがいつもどこにいるか、知っているのか?」
メトリ「もっちろん!だって私、リーヴァの相棒だしっ」
ヴィス「そうか‥」
僕が知らないことを他のドールに知られているのは、少し妬けるな…
メトリ「__後ね、リーヴァは埃っぽいところ好きだよ」
ヴィス「それは何故だ?」
メトリ「う〜ん‥なんでだろう‥」
ヴィス「まあ、理由なんてどうでいいか‥」
フ_
メトリにリーヴァについて話してもらっていると、ウィステリアミスト色のクラゲカットをしたドールが横を通った。
メトリ「__わ、キレイ__…!」
ヴィス「待ってくれ」
?「、…」
こちらを振り返る人物は、予想通り。
ヴィス「こんなところでどうしたんだ?“シャルル”」
シャルル「‥別に、どうもしない。
お前こそなんで出歩いてるんだよ。いつもあの部屋にいるのに」
彼はシャルル。五十年ほど前にこの工場へやってきたドールだ。言い方で察するかもしれないが、この工場で生まれたドールではない。
彼も人間から嫌な目に遭わされたのだろう。人間が嫌いで、僕らと同じ外に行こうとは思っていない派閥…かもしれない。この辺は話そうとしてくれないからな、詳しくは分からない。
常に先のことを考え行動する良き友人‥友ドールだ。
ヴィス「僕はこっちに用があってな‥。
今日はなんだが急いでるようだし、失礼する。また今度」
シャルル「…ああ」
ヴィス「フイ」
コツコツ‥
メトリ「今のドール、知り合いなの?」
ヴィス「もちろん。彼は五十年程くらい前からいるドールだからな」
メトリ「……__ヴィスっていつからココにいるの‥?__」
ヴィス「?」
メトリ「、何でもないのさ!
…あ、リー「どこだ」ヴァ………__反応速度すごいね‥!?__」
ヴィス「あれか」
スタスタ‥
僕は愛しのリーヴァに少しでも早く会うため、でもリーヴァがこちらに気付き見られた時に勘付かれたりしないように、少しだけ歩く速度を早めた。
リーヴァ「…」
メトリ「おはよう。リーヴァ」
ヴィス「おはよう。愛しのリーヴァ。今日も綺麗だね」
リーヴァ「そ…そうかなぁ〜//」
ひとまず出てきたリーヴァへの挨拶。それに対して照れたのか、リーヴァは頬をほんのり赤く染めた。なんとも可愛らしく愛らしい。どんなリーヴァでも大好きだ。惚れ直すと言うのはこのことだな。
「__ぅなあん__」
ヴィス「!__この声っ__」
聞き慣れた‥と言うほど聞いたわけじゃないが、忘れるはずもない鳴き声だ。
この鳴き声の主は__
ヴィス「また来たのか、貴様。」
昨日の夕方ごろに、リーヴァの服をちぎろうとした灰色の毛並みの|哺乳類《猫》…!!!!!
メトリ「デジャブ…今回も私が…」
??「猫ちゃん、こっちおいで〜!」
メトリが昨日のように猫に向かおうとすると、少し離れたところから声が聞こえた。
すぐに声の方へ振り向くと、青緑色のハーフアップをした腰までの長い髪を持つ一人のドールが猫に向かい手招きしていた。
それにしても、あの言うことを何一つ聞かない|哺乳類《猫》が、ああも素直になるとは……猫は、警戒心が強い。あの猫は野生のため通常より警戒心は強いはず、こんな一瞬で手懐けられるはずはない。
…そもそも、僕らは人じゃあ、なかったか‥。
リーヴァ「あれ?すっごく素直だなぁ」
メトリ「いつもと人が…じゃなくて猫が変わったみたい。」
リーヴァとメトリも同じようなことを思ったらしい。
猫はドールの元へ着くとするりと手の中に。しかもゴロゴロと喉を鳴らしている…とんでもない速さの手のひら返しに、もはや言葉も出ない。
リーヴァ:「あのー!すごいですね!その猫は手懐けるのとっても難しいのに!」
僕らは猫を抱いたドールの元へと近づいていった。
抱かれた猫は相変わらず喉を鳴らし続けている。
ルオナ「まぁ、これが僕の能力だからね。ちなみに僕は“ルオナ”!よろしくね!」
リーヴァ「あたしはリーヴァ。こっちはメトリで、こっちはヴィス。よろしく。」
メトリ「よろしくね〜」
ヴィス「よろしく。」
ルオナ「じゃ、私はこの子とどっか行くから、じゃ〜ね〜」
簡単に自己紹介を済ませ挨拶すると、ルオナと名乗るドールはそそくさと去っていってしまった…猫を抱いて。
それにしても、あれは彼女の能力だったのか…動物関係の能力なんて初めて見たな‥面白そうだ。
コツコツ…
ヴィス「、…」
アレン「さっきの猫って?」
彼女が去っていった道から、アレンが歩いて来た。
『あの猫は昨日の?』とでも言うかのようにこちらへ問いかけてくる。
リーヴァ「そう。いつもあたしを襲ってくる猫。ルオナさんが連れてってくれたの。」
アレン「ふーん…あのめんどくさがりのルオナがね…」
ポツリとアレンが呟いた一言に、
??「ルオナお姉ちゃんやさしー!」
リーヴァ「ミーフィ!」
ミーフィ「リーヴァお姉ちゃん!」
ミーフィと呼ばれるドールが、リーヴァに“抱きついた”
ヴィス「__ピキ__………」
ミーフィ「みんな今日も生きててよかったー!」
そんな平和を喜ぶ声をよそに、僕は怒りをどうにか沈めた。
リーヴァのことになると、すぐに癇癪を起こす。僕の良くないところだな…
僕たちは近くにあった階段に腰掛け話をし始める。
リーヴァ「アレンとミーフィは何しにきたの?」
アレン「実は「実はね、最近悪質な`人形ゴロし`がこの工場に紛れてるみたいで…しばらくは一人行動はやめておいた方がいいって伝えにきたの!」
『人形ゴロし』
少しおかしなワードが出て来た。人形は殺すのではなく壊すのだ。正しく言うのなら、『人形ゴワし』又は『人形コワし』などだろう。
…まあ、人形は壊れたら死ぬのだから、“殺し”と言う言葉は間違ってはいないのかもしれないな…。
アレン「貴方たちは俺らの大切な友人だからね。失いたくないんだ。」
リーヴァ「でも…人形のコロしあいはいつも起きていることじゃ…?」
アレン「それが、人形を殺すのが目的、みたいなそんな犯行なんだ。ここでは内容は伏せるけれど…」
先ほど空気の読めない妹気質なドールに会話を遮られたアレンはそう言う。
すると、アレンは《《あるドール》》へと視線のみ移す。
……なるほど‥
ヴィス「ここでは言えない内容だってことだな。」
メトリ「怖いね。」
アレン「そこで、提案があるんだ。」
またチラリとアレンはミーフィに視線を移す。目配せだったのだろう。ミーフィは役目を貰えて、喜び、話を始めた。
ミーフィ「そこで、提案があるの!『みんなで3人1組になれば、怖くない!』っていう作戦!どう?」
ヴィス「…__何だか、__…__純粋な作戦名だな__……………?」
自分でもよく分からないことを口走った。
…運良く誰にも聞かれていないようだったのでよかったが、もしリーヴァに聞かれていたら…そう思うとゾッとする。
ちなみに、作戦自体には賛成だ。もし人形ゴロしが複数人いたとしても、組になって動いていれば問題ない。何故なら、同じチームの人形を壊せば自分が人形ゴロしだと知られてしまうからだ。
人形ゴロし、なんてやっているのだから、それくらいの考えにくらい至るだろう。
メトリ「じゃあ、じゃんけんで決める?」
とんでもないこと言い出した。
今、ここにいるには何人だと思っているんだ??
ヴィス「いや、今ここにいるのは5人だから、奇数だと分かれられない。それに…僕は絶対、リーヴァと共に行動する。これは《《断じて譲らない》》。」
訂正し、少し満足した僕は付けていたメガネを人差し指を使い押し上げる。
アレン「へ、へぇ。」
……何故顔が強張った。何もおかしいことはしていないだろう。
メトリ「じゃあ、どうする?」
ミーフィ「そうだ!あの人に入ってもらおうよ!」
ミーフィが階段の上を向く。そこには懐かしい人物が経っていた。
濃い紫色のロングヘアをした、目の色が左右で違うオッドアイをしたドール。
??「早くどいて。めんどくさい。」
ヴィス「__ライル__…?」
彼女はずっと昔に少女の元へと引き取られたはず…‥戻って来たのか?でもいつ?僕は気づかなかったのか…?
…なんて奴なんだ、僕は…。この工場へ戻る理由は、数個しか思い浮かばない。持ち主に捨てられたか、捨てられたか、酷い状態にされ逃げて来たか……
ミーフィ:「最近人形ゴロシが現れたから、みんなでチーム作って過ごすことにしたの!君も入ってくれない?」
ライル「ーー……なんで私なの?」
メトリ:「そりゃ、あなたが偶然ここを通りかかったから」
ため息をつき、ライルはミーフィへ聞き返す。するとすぐに半端な答えが返ってくる。
ライル「めんどくさい。そもそも私が人形殺しだったらどうす「よし!お姉ちゃんに決定ー!名前はなんていうの?」
正論を言おとしたライルをよそにまた割り込みミーフィは身勝手に決定する。
ライル「名前は…“ライル”…でも」
ミーフィ「ライルお姉ちゃんね!私はミーフィ。こっちがアレンで、こっちがメトリ、それとこっちがヴィスで、こっちがリーヴァ!よろしくね!」
ライル「はぁ…」
ミーフィ「それじゃ!ヴィスお兄ちゃん以外でくじ引きしよー!」
早口になっているくらい間髪入れずにそういうと、ライルの手をギュと握りブンブン振るくらいの勢いで握手する。
そしてまたすぐに動き始め、くじ引きを開始した。
……自由奔放、迷惑なくらい元気だな‥。
リーヴァやアレンたちもポカンとしている。僕はそんな顔をしていたも見られないように、マフラーを少し上に上げておいた。
くじ引きの結果は
第一チーム
メトリ、ミーフィ、ライル
第二チーム
僕(ヴィス)、リーヴァ、アレン
だった。
メトリ「リーヴァ、そっちのチームで大丈夫?」
リーヴァ「うん。大丈夫だよ。」
アレン「大丈夫。何かあったら必ず俺が守るから。」
意味深な発言をする二人。
そしてアレンはチラリと僕の方を見る。
ヴィス「なんだよ」
咄嗟にそうぶっきらぼうに言ってしまったが、仕方がないと思う。何故ならこの二人が意味を分からないことを言うからだ。
僕が人形ゴロしで、リーヴァを壊そうとするとでも思っているのだろうか?そんなことするはずがないだろう。僕の`愛しの人`なのだから__
今日の文字数
7779文字
ほとんど原作のコピーなの申し訳ない…多分コレからも多用以上の多用すると思いマス‥。
その代わりヴィスに考えはちゃんと書こうと思います(((
[質問返信]
Q.タイトルにも“編”前書きにも別の“編”なんかおかしくないでしょうか…?
A.そうですね!!一番初めっから気づいてました!!
でも、前編の中でもコレを中心に〜ってやつで分けたらどうしてもこうなっちゃいましたね((
[小話]
赤いアネモネの花言葉は「君を愛す」
ガーベラの花言葉は 「神秘の愛」「崇高な愛」「究極の愛」
四つ葉のクローバーの花言葉は「私のものになってください」
シロツメクサの花言葉は「私を思ってください」
と言う意味。花言葉までリーヴァちゃんへの愛でいっぱい、流石ヴィス…!
ヴィス「当たり前だろう。リーヴァへの愛は尽きることを知らな((」
はいはい大好きなんだよねーよかったね〜(棒)
ヴィス「おい…!!」
[本編に入れれなかったヴィスの考え]
本編に入れると違和感になっちゃうのでこちらに…。
ライルちゃんの紹介↓
彼女はライル、ずっと昔にある少女の元へ引き取られていったはずのドールだ。
めんどくさがりで、とても綺麗好き。寝ることが好きなようで、僕が見かけた時は基本寝ていた。そんなこんなで、僕は彼女と話したことはほとんどない。それなのに僕が覚えていたのは……彼女が哺乳類(猫)好きだからだろう…。
何故工場に戻って来たかは、なんとなく想像は付く。やはり“外の世界”というのは恐ろしい。僕は、可能なら出たくはない。
いつまでも 君の隣にー人形ゴロし編IIー
※いつもの如く長め
いつまでも 君の隣に ー裁判編ー
今日はよく晴れていたため、月がよく見える。
ヴィス「また夜がやってきた」
アレン「そりゃやってくるだろ」
ヴィス「文句あんの?」
アレン「別に」
リーヴァ「喧嘩?」
ヴィス「喧嘩ではない。
それより今宵も綺麗だね、リーヴァ」
ぶっきらぼうにツッコまれれば、そりゃ誰でもイラつくだろう。なんなんだ、彼は。
まあ、どうでもよくなる程リーヴァが綺麗なのだが…
アレン「はいはい、ちょっと離れてくださいね〜」
グイグイ
ヴィス「ピキ 邪魔すんな」
アレン「俺にできることがあったら、なんでも言ってね。リヴァ」
ヴィス「は“」
リーヴァ「?う、うん‥」
リーヴァとの距離を無理やりアレンに離される。
“少し”
怒りが湧いたせいで、口が悪くなってしまった。リーヴァに悪い影響を与えてなければいいが…
にしてもアレン‥リーヴァと親しい仲だという事を僕に見せつけるんじゃない。
そして無許可に触るな。
ヴィス「ギロ‥」
アレン「……何です」
ヴィス「いや、なんでも。フイ」
ー数十分後ー
二人「バチバチバチ‥」
リーヴァ「コク…、んん‥」
ヴィス「、アレン」
アレン「何、ヴィス‥」
ヴィス「(リーヴァの方を指差す)」
アレン「、」
リーヴァ「ん………コクン‥コクン…」
ヴィス「…リーヴァが眠たそうにしている。
…__一時休戦だ‥__」
アレン「‥まあ、リーヴァが可哀想だし…そうしよう」
リーヴァ「……スヤスヤ」
ああ、なんて可愛らしいんだろう。
寝ている姿は、まるでスーパーチュニア・ビスタのミニ ピンクスターのようだ……。
本当なら、アレンなんぞに見せたくないが致し方ない。
アレン「…俺らも寝るか」
ヴィス「…やる事は特にないしな‥
……アレン、君はリーヴァと少し近いんじゃないか?」
アレン「はい??適切な距離でしょ」
ヴィス「どうだろうね、測ってみようか??」
アレン「貴方ホントにめんどくさい人だな…!!?
もしリーヴァに何かあったら、どうする。すぐ助けれないでしょう」
ヴィス「その時は僕が助けるからなんら問題はない。自分の心配をしたらどうだい」
アレン「マジ‥ギリ‥」
僕たち二人は、リーヴァの後を追うかのように眠った。
……グチグチと、お互いがお互いを貶しながら
---
---
ヴィス「……、__ん__」
『おはようリーヴァ』
そう、眠っているはずの彼女へ声をかけようとした。しかし、彼女の姿が見当たらない。
リーヴァ「二人とも…!」
リーヴァの声が、少し上の方から聞こえると同時。いや、それよりも早く僕は体を無理やり起こしリーヴァを取り戻した。
アレンも……“は”、声と同時に起きたのだろう。僕と同じようにリーヴァの方へ手を伸ばしこちらへ引き寄せていた。
??「あれぇ?そっちの|左腕《さわん》もいいわん」
独特な語尾を付けた声がした方を向く。
すると、そこには牡丹色のドレスを着た、紫色の瞳をしたの人形が“左腕”を欲しそうにこちらを眺めていた。
ヴィス「君が『人形ゴロし』か?」
??「人形ゴロし?巷じゃそんなふうに言われているのね。私の名前は“マリィ”。覚えておきなさい!」
咄嗟にその言葉が出てきたが、まさかの本人だったらしい。
名をマリィと、そう名乗った。
アレン「リーヴァは下がってて…」
リーヴァ「うん」
マリィ「|左腕《さわん》|左腕《さわん》|左腕《さわん》…」
アレンがリーヴァを自身の後ろへ隠す。
リーヴァが下がったのを確認し、僕とアレンの二人が構えたその瞬間
--- 人形ゴロしの姿が 一瞬にして消えた ---
アレン「グラン・カルマ!」
アレンは咄嗟に能力を使う。
彼の能力は重力や圧力を操ることができるのだ。いくら早くとも、重力が強くなれば強制的這いつくばることになる……アレンの判断は、正しい。
マリィ「ふふ…やるじゃない__
少し、本気で行くわね。“ミラージュ・ソワレ”!」
人形ゴロしは不敵に笑い、自身の能力を使用した。
人形ゴロしがドンドン分身し増えていく。きっと、自身を分身させることの出来る能力なのだろう。
本体がどれか分からず混乱させられる…良い能力だ。ぜひ味方に来て欲しかった。
マリィ「ふふふ…この数に勝てるかしら?」
どうやってこの数の分身の中から本体を見つけ出そうか…そんなことを考えていると、別れていた別のチームが合流して来た。
メトリ「なんか、胸騒ぎがして。思った通り!」
ミーフィ「あれが、人形ゴロし?」
ライル「めんどくさ…」
さてと…本格的に彼女と戦うことになるらしい。僕は、逃げる、ということも考えていたのだが…。
人形ゴロし、基マリィの分身は、既に五十は超えている。この大群の中から、たった一人、マリィ本体を探し出すのは困難極まりない。それに、あのイかれたドールが大人しく|本体《自分》を探させてくれるとは思えない。
一体、どうすれば本体を見つけ出せるだろう。
僕は、周りが戦闘体制に入っているのにも気づかず思考を巡らせた
ああ_
そうか。
どうして僕は、
“自分”
がいることを考えなかったんだろう?
あるだろう。本体を一発で見つけ決着をつけることが出来てしまう“能力”が
リーヴァに被害を出した“罪”は、酷く‥酷く、重いぞ?
ヴィス:「…
--- `|ジャッチ・アイ《裁判長の目》` ---
」
僕は、長い間使わなかった自身の能力の名を口にした。
その瞬間、その場にいた全員が《《とある場所》》へ飛ばされる。外に出たドールですら、なかなかお目にかかれない場所だ。
工場にある本を読むドールでも、|哺乳類《人間》の政治には興味がない者もいる。知る者は数少ないだろう。
|全員《-ヴィス》「はぁ?」
ここは《《裁判所》》
ドールの僕たちでは滅多に来れない…というか、来れる可能性が0%に等しい程の場所。二足歩行をする知的生命体、哺乳類に分類される人間が罪について話し合いをする場だ。
傍聴席には途中で合流した別のチーム全員とマリィの分身たちが、
証人席にはリーヴァが襲われている場面を一緒に見ていた“証人”アレンが、
被告人席には“マリィの本体”が座っている。
リーヴァはもちろん、被害者のため当事者席に………
ほぼ全員、何故かポカンとした表情で座っている。‥何故だ?
ちなみに僕が座っているのは__
ヴィス「僕のこの目からは、逃れられない____これより、裁判を開始する。」
裁判席だ。
その理由は、まあ…これから何となくわかるだろう。
僕はメガネを指で押し上げた。
ヴィス「被告人は、今日の深夜2時ごろ、リーヴァの寝込みを襲い、リーヴァに恐怖を植え付けた。
その罪を認めますか」
僕は、《《意味のない質問》》を、マリィへ…被告人へと、問いかける。
マリィ「はぁ?何よそれ?」
ヴィス「__そうなるだろうね‥__それでは、証人尋問です。
君はリーヴァが襲われているところを目撃しましたね?」
予測していた返答が返ってくることに少々呆れてしまったが、口を止めることなく証人であるアレンへと問いかける。
アレン「え?あ、はい。」
ヴィス「被告人マリィ。君はリーヴァに危害を加えた…この罪は重罪だ…」
僕の愛しのリーヴァを傷つけた罪は、どんな罪よりも重いぞ?
どんな判決を下すかは、能力を使った直後から決めている…というか、僕はこれ以外の判決を被告人マリィに下すつもりはない。
これほどの重罪を犯した者を、生かしておく義理なんて…僕にはない。
ヴィス「よってこの裁判の判決__**`死刑`**(ドス声」
ミーフィ「メチャクチャな裁判…」
メトリとライルがうんうん、と分かりやすく頷くが、どうでもいい。リーヴァに恐怖を植え付けた罪を酷く重いのだから。当然だ。
マリィ「何が死刑よ。フン
__!!」
マリィの死刑には何が相応しいか…考えた結果、斬首刑が良いと判断した。
すると、僕が瞬きする間に、マリィの頭部は宙を待っていた…
うん、よく似合っている‥それに、|彼女《マリィ》は左腕が好きなのだろう?なら、自分の左腕でも眺めていればいい。
僕の能力は_
|全員《-ヴィス》「!!」
ヴィス「これにて裁判を終わる。」
自身を“裁判長として”裁判を起こせる能力
自身が真実だと思ったことを真実に嘘だと思ったこと嘘に、強制的にさせる能力
言ってしまえば、その二つを兼ね備えた能力…|ジャッチ・アイ《裁判長の目》だ。
詳しくは、またいつか_
---
ー二日後ー
僕たちは人形ゴロしを倒し、平穏な日々を過ごしていた。今日は、そんな“平穏な日”のお昼真っ盛り。
僕はいつもの如く癒されに、リーヴァの元に来た。
リーヴァ「あの時とっても恐ろしかった…」
メトリ「あはは、確かに、すごい怖かったね…」
ヴィス「、リーヴァ‥__/__」
ほんの少し頬が緩んだ気がしたが、気のせいだろう。
……念の為、マフラーを少し上の方に上げとくか…
リーヴァたちのよくいる場所に行くと、やっぱりリーヴァ(メトリと共にいる)がいた。何やら二人の怖かった出来事の話をしているようだ…
二日前にあった、あのイかれたドールの‥人形ゴロしの話かな?リーヴァは左腕目当てで寝込みを襲われたわけだし、きっと軽いトラウマになってしまったんだろう。
ヴィス「人形ゴロしの話かい?」
僕はひょっこり顔を出し、そう言った。
もし人形ゴロしのことを恐れてしまっているのなら、僕がこの工場で一番気に入ってる場所にでも連れて行ってあげよう。
きっと、そんなことすぐ忘れ
リーヴァ「ヴィス、あなたの話。」
メトリと一緒に首を横に振る。それと同時に、信じられない言葉がリーヴァ本人の口から飛び出してきた。
ヴィス「__僕のことを、おそ、れ……ぇ‥??__」
大好きで、愛していて、最愛の、リーヴァの口から、僕を恐れている…??
メトリ「__ん??__おーい、ヴィス‥?だいじょーぶ〜‥?」
ヴィス「…__は、はは‥__
ちょっと外で本を読んでくる…」
メトリ「__ありゃりゃ‥これはダメだねぇ__
ところでさ〜_」
リーヴァが……リーヴァが…僕を‥
僕はのそのそとリーヴァと出会ったあの庭へと出た。
僕にとっては平穏な日とお昼ではなく、人形生で最も辛く悲しい日のお昼だったらしい…それに、僕のダメージは、とても大きかったようだ…その後の記憶はあまりない。庭に生えてしまっていた雑草を抜いていた気もするし、本を膝に乗っけてぼぅとしていた気もする……
??「_ヴィスじゃない。こんなところで何をしてるのかしら」
後ろから、聞き慣れた声がする…
振り向くと、そこには紫色のボブカットをしたドールが立っていた。
ヴィス「__レイア…」
レイア「わたしで悪かったかしら…イラ
__というかこの|件《くだり》、随分前にもやった気が…__」
ヴィス「……君ならどうする」
レイア「は」
ヴィス「最愛の人に恐れられていたら、君はどうする」
レイア「はあ‥?あなた、どうしちゃったのホントに‥」
ヴィス「…」
レイア「…わたしなら‥」
ヴィス「…」
レイア「わたしなら、怖がられないように努力するわよ‥だって、わたしはその人のこと好きなんだから‥」
ヴィス「、…」
そうか……確かにそうだな‥最愛の人ならば、めげずに追いかけるべきか…。
ヴィス「‥はは、」
レイア「ちょっと…いきなり笑わないでちょうだい。言っとくけどそれ、不気味よ?」
ヴィス「いや、何‥やっぱり誰かの話すことは大事なんだなと、ちょっとな‥」
レイア「ホントにどうしちゃったのかしらこの人…」
ヴィス「…」
レイア「はあ‥わたし、もう行くわよ?」
ヴィス「ああ、ありがとう」
レイア「、…‥ヴィスがわたしに、お礼を言うなんて‥これ夢だったりするかしら」
ヴィス「失礼じゃないか君」
??「二人とも」
二人「、トラウム」
トラウム「よかった、そんなに離れていなくて、、」
レイア「ちょ、どうしたのトラウム。そんなに息をあげて、‥
‥何か‥よっぽどのことがあったのね?」
トラウム「うん、、ヴィス、貴方にとっては本当に大事なことだと思いますよ、、、、だって、《《彼女の身の危険》》の話なんですから「リーヴァに何があったすぐに話してくれトラウム」食いつき凄いですね、、、」
ヴィス「当たり前だ。リーヴァと身に危険が及ぶなんて‥僕自身が壊れるよりも恐ろしい出来事なんだからな。
それより、リーヴァに何があったんだ、早く話してくれ」
トラウム「あはは、、、
_さっき、リーヴァさんとその友達が、ルークさんと話をしていたんです」
レイア「ルークと話し?なんら問題なさそうだけど…」
トラウム「それだけならよかったですよね、、、」
ヴィス「続けてくれ」
トラウム「コク ルークさんとメアリーさんが一緒にいなかったんです」
二人「!」
ヴィス「いつも、あの二人は一緒にいるだろう?何故‥」
トラウム「えぇ、、でも僕が見た時は確かにいませんでした、、、もしかしたら、逸れてしまったのかも知れません、、」
レイア「ってなると、あの人ならなりふり構わず探すわよね‥?大丈夫なのかしら‥」
トラウム「ええ、、あの方はメアリーさん一筋ですから、、、
多分、メアリーさん探しをリーヴァさんたちと、やるんだと思います、、」
ヴィス「どの辺りに向かっていたか分かるか?」
トラウム「…《《絶望の迷宮》》の方かと‥」
レイア「なっ‥__?!っ」
僕はその名を聞いた瞬間走り出した。
一歩遅れて、レイアも走り僕に着いてくる。
`絶望の迷宮`___それは、この工場にある一つの場所の名だ。
パイプが張り巡らされ、まるで迷路になっているエリア。そこは、一度入れば出ることができないと言われており、工場にいる者は誰一人として入ろうとしない。そんな、ドールたちの間で噂されている恐ろしい場所だ…
そんな場所に、リーヴァたちは向かっている。
もし、リーヴァがそこに入ったら?
噂の通り、一度足を踏み入れたら出てこられないとしたら?
そんな不安がドッと押し寄せる。
ヴィス「__リーヴァッ__…!!!!」
その時の感情は、自分でもよく分かっていなかった。とにかく、リーヴァの安否が心配で心配で、仕方がなかった。僕は、今まで生きてきた中で最も不安になっただろう。
愛しの人が、最愛の人が、心を常に許せる人が__《《また》》僕の前から居なくなってしまうじゃないかと、そう、覚えてる中で思っていたからだ。
もう僕は、あんな辛い思いをしたくない。
何より、リーヴァに怖い思いをして欲しくない。
僕は、
--- 彼女のためなら壊れたっていい ---
今日の文字数
6309文字
ヴィスとリーヴァちゃんとメトリちゃんのコンビももちろん好きなんだけど、個人的に、
ヴィスとレイアちゃんとトラウムくんのコンビも好き。古参組、人間嫌い組(一人は哺乳類全部苦手)
[小話]
スーパーチュニア・ビスタ ミニ ピンクスターとは…
スーパーチュニア・ビスタ ミニとは、スーパーチュニア・ビスタをコンパクトにした品種のこと。
“ビスタ”には「大きく拡がる」という意味があり、スーパーチュニアよりもさらに強健で大きく拡がって地面を覆い尽くす性質から、スーパーチュニア ビスタと名付けられた。
春から秋に咲き、ホワイトベースに、ピンクの星形模様をした可憐で美しい花。時にピンクのベースカラーに、濃いピンクの星形模様を魅せる時もある。
花言葉は“心の安らぎ”“自然体”
いつまでも 君の隣にー絶望の迷宮編ー
いつまでも 君の隣に ー旧友の溜め込んだ編ー
しばらく走り、絶望の迷宮近くへと来る。ここまでで、絶望の迷宮まで一直線でやって来たが、リーヴァたちはもちろん、他のドールの影一つ見ることがなかった。
たったっ…
レイア「この辺りにいないとなると、絶望の迷宮には行ってないか、既に着いちゃってるかよね…」
僕も、リーヴァたちがそもそも絶望の迷宮に向かっていないことも考えた。だが、もし絶望の迷宮へ向かっていたら?既に中に入ってしまっていたら?
…想像もしたくないな‥。
ヴィス「…急ごう」
レイア「‥そうね」
タッタッ__
---
絶望の迷宮の入り口へ到着すると、三人のシルエットが見えてくる。
ヴィス「あれかっ‥!」
レイア「ホントにこんな場所に…」
僕たちはいっそう速く走る。
彼女らが絶望の迷宮へ足を踏み入れてしまう前に、止めたかったから
シルエットの人物が誰か分かり始める。
ルークにメトリ、そして…リーヴァ
レイア「貴方たち!そこは危険よ!」
レイアが声荒げ、リーヴァたちを引き止める。
よかった‥リーヴァたちが迷宮へ入ってしまう前に止めることができそうだ。
リーヴァ「レイアさん、ヴィスも!」
ヴィス「__ハ、‥__…『レイアさん』?」
レイアとリーヴァはどこかで知り合ったんだろうか。リーヴァはレイアのことを知っているような口ぶりだ。
そんな話、レイアから一言も聞かされていないが……
レイア「えっと、ごめんなさい…誰だったかしら?」
レイアをチラリと見てみると、珍しくキョトンとした面白い顔をしていた。
どうやら、出会った際に名乗っていなかったらしい。
リーヴァ「あたしはリーヴァ。こっちはメトリで、こっちはルーク。」
どうも、とメトリとルークは頭を下げる。
レイア「どうも。
じゃなくて、ここは立ち入り禁止よ?」
ヴィス「__全くだ__なぜこんな危険な場所にいるんだい。」
ルーク「‥実は‥」
レイアと僕が質問すると、ルークがここに来た経緯を話し始める。
レイア「そう…なら、私もついていくわ。」
ヴィス「、」
意外な答えだ。
僕はてっきり、『もう誰にも居なくなってほしくないから』と行くのを止めるのかと…
レイア「こう見えてこの工場には長いこと住んでるの。迷宮には入ったことはないけれど。それに何かあっても私の力で助けられるし。」
仕方がない…リーヴァもレイアも行くのなら、僕も行こう。
僕もそこまでここの知識がありわけではないが、万が一の時肉壁にくらいなれるだろうしな。
ヴィス「僕も行く。愛しのリーヴァのために。」
|全員《-ヴィス レイア》「ありがとうございます!」
こうして僕らは、工場で最も恐れられているであろう場所に足を踏み入れてしまった。
---
迷宮内は想像以上に多くのパイプが四方八方に伸びていた。パイプ同士が近くを交差していたり、なんなら接してしまっていたり……
この工場が稼働していた頃、こんなパイプの設置の仕方をして、よく支障をきたさなかったものだな‥
ルーク「メアリー!いるのかー!」
リーヴァ「メアリー!」
メトリ「出ておいでー!」
--- からんからん… ---
三人がメアリーを探していると、足音らしき反響音が鳴り響いた。
ルーク「!!メアリー!どこにいるんだー!」
ルークが声を張り上げ相棒の名を呼ぶ。メアリーのことが心配で仕方がないと言うことが、それだけでも感じ取れた。
から…ん
??「__誰かいる?」
一人の少女の声が、僕たちの元へ届く。
姿は無数のパイプにより見えないが、確かに聞こえた。
反響の仕方や声の大きさなどからして、本当にすぐ近くだろう。
僕たちは横のパイプの裏へ回る。すると、
ルーク「メアリー!!」
メアリー「ルーク!?」
この埃だらけの場所にいたとは思えないほど、全身が純白に包まれたドールの姿が見える。メアリーだ。
ルーク「大丈夫か?怪我してない?一人でどこかへ行くな。」
メアリー「ルーク、大丈夫。私そんなに脆くないよ。少し、ゼンマイ人形に熱中しちゃっただけ。だって、まるで生きてるように動くんだもの。」
ルークはメアリーに対し、まるで赤子に説教するかのように優しく喋りかける。
メアリー「、貴方たちは?」
僕たちは、順番に自己紹介していく。
ちなみに、僕は二人と面識はない。僕が一方的に知っているだけだ。
メアリー「そうだったの…心配しすぎよ、ルーク。皆さんにも迷惑かけてごめんなさいね」
メアリーは申し訳なさそうに顔を俯かせそう言う。僕的には問題ない。
メトリ「けっこー楽しかったよ!」
ヴィス「工場についてさらに知ることができたし。」
リーヴァは可愛らしい笑顔を二人に向け頷く。
ルーク「それでは帰ろう。みんなもありがとう。」
__グラ__
ヴィス「__?__」
ルークが「帰ろう」というと、頭上から声が聞こえてきた。僕たちは上を見上げる。
そこにはパイプの上に、腰を掛ける美しいダークグリーンの髪をしたドールがいた。見たことがない顔だ…基本的に、ドールの顔や能力は覚えているつもりなのだが。
……それにしても、いつの間に現れたのだろう。
??「みなさん、恐縮なのですが、もうすぐでこのエリアは崩壊します。早く逃げてください。」
ヴィス「崩壊?」
リーヴァ「崩壊するって…?」
--- __ゴォオ__ ---
リーヴァが焦る様子を見せないドールへ質問すると同時に、遠くの方から反響して、何かが崩れた鈍い音が響いた。
レイア「みんな!急いで逃げて!」
メトリ「わかりました!」
ルーク、メアリー「はい!!」
僕たちは少し間を置き一斉に迷宮の外へと走り出す。
レイアが先頭となり、出ることができないと言われている迷宮を逆走していく
リーヴァに『急いで走れ』と言い残し、僕は
ヴィス「君も逃げろ。」
未だに焦った様子を一切見せないドールへ声をかける。
??「もちろん、そういたします。」
壊れるのが怖い言う感情がないのか、それとも精神的に問題があるのか分からないが、一定の音程で喋るドールは スタ、と静かにパイプから降りると、走り始める。
僕も、それを追いかけるように走った
僕らは後ろから鳴り響く恐ろしい轟音から走って逃げる。
ガコ_
周りのパイプがドンドン落ちていく…このままでは生き埋めになってしまう。いや…こんなものに埋められたら、ドールなんて簡単に壊れてしまうのだが‥
ガッ“
リーヴァ「痛っ!」
リーヴァが痛みを訴える。
ヴィメト「「リーヴァ!?」」
メトリと僕は大急ぎでリーヴァの元へと駆け寄る。
近くには、砕けたパイプが転がっていた。リーヴァは崩れたパイプに腕が当たってしまったのだ。痛みを訴えた箇所を見ると、腕の半分以上が粉々になっていた。
ヴィス「ッ‥」
メトリ「リーヴァ…腕が…」
リーヴァ「…大丈夫!早く行って!」
ヴィス「僕が連れてく。」
僕は 守れなかった、という後悔と悔しさをすぐに捨てリーヴァを担ぎ上げる。
もう少しリーヴァが楽な持ち方はないか少し考えたが、全力で走ってこの場から逃げるためにはこうするしかない。
ふわりと綿のような軽さのリーヴァを担ぎ、僕たちは先頭を走るレイアたちの元へ急いだ
---
---
ヴィス「ハッ“…!!」
命からがら、全員が逃げ延びることができた。
後ろをチラリと見ると、絶望の迷宮のあった場所は見事なまでに崩れ原型を留めていなかった。入り口は、パイプや崩れた壁などにより塞がれ、小動物や昆虫でないと通れないほどになっている。入り口近くの地面は地割れを起こしていて、あっちこっちヒビ割れている。
僕は全員逃げれたことに安堵しつつ、リーヴァをそっと地面に置く。
誰もかけることなく帰ってはこられたが…
誰も怪我をしなかったわけじゃない
メトリ「リーヴァ…どうしよう腕…」
メトリはその目に涙を浮かべ、ポロポロと涙を流す。近くへ行くと、リーヴァの腕をこれ以上傷つけないように、そっと抱きしめた。
ヴィス「リーヴァ…」
僕も、リーヴァの近くに寄り、涙でぼやける視界へリーヴァと壊れた腕を入れ見つめる。
どうすればいい?
僕が代わりになれるならいくらでもなるのに、僕は代わりになれない
今リーヴァが感じている痛みも悲しみも僕には感じることができない。
リーヴァ「っ…」
リーヴァは、メトリをこれ以上泣かせないようにか、痛みを我慢しているのか、はたまたその両方か…普段はぱっちりとした可愛らしい目を細め、涙を流すことを必死に堪えている。
僕たち三人が、悲しみに明け暮れていると、レイアが近寄ってきた。
レイア「大丈夫。腕は残っているから、元通りになるわ。」
レイアはしゃがみ、リーヴァの腕があるはずの位置に手を当てる。
__レイアの能力は…?
ヴィス「__待ッ__」
僕が“ソレ”をやめさせる前に、レイアは唱えた。
レイア「ドールズケアラー…」
みるみるうちにリーヴァの腕が修復されていく
ヴィス「元に…戻った!!」
リーヴァ「レイアさん!ありがとう…」
リーヴァは我慢していた涙をポロポロと溢れさせる。
僕はリーヴァの腕が戻ったという最大の喜びと、ソレを止めることができなかった後悔で、ポタ、と涙を流す。
レイア「いいのよ、リーヴァ。これが私の生き甲斐だもの。」
レイアの腕には、大きなヒビが入っていた。
リーヴァ「レイアさん…それって…」
レイア「、
なんでもないわ。じゃあ、私、もう帰るから。」
リーヴァ「まって…」
レイアは腕を後ろへ隠し、逃げるかのようにその場を去ってしまう。リーヴァは悲しげな声を、レイアの向かった方へ投げた_
僕は‥レイアを追いかけたい気持ちと、腕が直ったばかりのリーヴァの介護をしたい気持ちがぶつかっる。
しばらく考えて、リーヴァの介護をすることにした。レイアが直したのだから、不自由はないのだが…‥《《万が一を考えて》》、リーヴァの近くにいることにする。
ルーク「ところで、君は一体誰なんだ?」
ルークは話題を変えるかのように、ドールの方へ問いを投げる。
??「申し遅れました。|私《わたくし》はブロードです。以後、お見知りおきを。」
メアリー「ブロードさん…聞いたことない名前ね…」
ブロード「最近作られたものでして。」
最近‥なら、リーヴァたちと一緒に作られたのだろうか?僕はあの日、リーヴァに魅入り過ぎて他のドールのことよく覚えていないのだ。
そうなれば、僕が覚えていないのもおかしくはないだろう。
ブロードのことは、これを気に覚えれば良い。
ブロード「それでは、またお会いしましょう。」
さてと、とブロードは被っていたシルクハットの傾きを直しどこかへ行ってしまった。
ヴィス「ブロード…か。」
メトリ「なんだったんだろ…」
リーヴァ「ね。」
僕とメアリーは、そんなブロードのことを訝いぶかしげな表情で見送った。
その後、僕とリーヴァ、メトリはルークたちと別れ、いつもの場所へと帰ることになった。
ヴィス「また夜がやってきた…」
そうだ…レイアは今、どこにいるだろうか?
ヴィス「‥__嗚呼__‥すまない二人共」
リーヴァ「、どうしたのヴィス?」
ヴィス「その‥少し、レイアの様子を見たいんだ。」
リーヴァ「レイア…って、」
メトリ「さっき、リーヴァの腕を直してくれたあの人形?」
ヴィス「嗚呼、そうだ。僕の昔馴染みでね‥心配なんだ。
だから、今日はこれで失礼するよ。」
リーヴァ「そうなんだ‥分かった。
会えたらその、私からって…お礼を言って欲しいな。『怪我を直してくれてどうもありがとう』って。さっきは言いそびれてしまったし‥」
ヴィス「もちろんだ。リーヴァからの頼み事なら、なんでも頼まれるよ。」
リーヴァ「本当に?ありがとうヴィス!」
ヴィス「嗚呼。それじゃあ、また明日。」
メトリ「じゃあね〜!」
僕は嬉しそうにするリーヴァとメトリに背を向け、レイアがいるかもしれない場所を回った。
---
コツコツと、珍しく静かな夜の廊下を歩く音が響き渡る。
ヴィス「レイア…どこまで行ったんだ‥?」
いつも彼女がいる倉庫にも、庭にも、Xが来ると集まるあのステージの辺りにも、レイアはいなかった。
となると、後一つくらいしか彼女がいる場所は思い浮かばない_
僕は早速、その場所へ向かうことにした。
---
ザッ…
「、」
ヴィス「__レイア」
ここは、工場のとある隠された道を通ることによって辿り着ける小さな花畑。工場に長年いるドールでも、知っている者は数少ない。今では、殺し合いなどが多発して、更に少なくなってしまった。
レイア「…ヴィス‥よくここが、分かったわね‥」
ヴィス「感だよ‥ここにいなかったら、もう分からなかった。」
レイア「そう。」
ヴィス「…腕の調子は?」
レイア「これくらいならまだ、平気よ。寝たら元通りだもの…不気味なことにね。」
レイアは少し顔をしかめ、腕のヒビにそっと触れそう言った。
ヴィス「‥そうか‥」
レイア「あの子は…リーヴァは平気なの?腕が動かしにくそうだったり、まだ痛みがあるとか‥そう言うのは。」
ヴィス「リーヴァなら平気だよ。とても元気そうだった。
それと、これはリーヴァから…『怪我を直してくれてどうもありがとう』‥と。」
レイア「…」
レイアは、嬉しそうな悲しそうな、そんな何とも言えない表情をする。
レイア「ねぇヴィス。」
ヴィス「、どうした?」
レイア「…わたしは‥人間が大嫌い。」
ヴィス「…ああ」
レイア「こっちの気持ちは露知らず‥暴力をふるって壊して傷つけて。挙げ句の果てに狭くて暗くて埃っぽい屋根裏に閉じ込めたあの子が…わたしに、心を植え付けたあの子が大嫌い。」
レイアは、一つの雲も見当たらない空を、美しく輝く月を見ながら 語る。
レイア「心なんてなければ、こうして過去を思い出さなかったのに。“辛い”って…思わなかったのに。痛みを感じなかったのに。」
自身の過去について、酷くか細い、震えた声で
レイア「でもね、嫌なことに…感謝しているところもあるのよ‥
だって__
--- 心を宿して逃げ出さなければ、 ---
--- |ここ《工場》に戻ってあなたたちに会うことは出来なかったもの ---
」
レイアがそう言って下を向くと同時に、風が吹き花びらが僕たちの周りを舞った。まるで、月明かりに照らされるレイアを引き立てるかのように…
ヴィス「…」
レイア「人間は大嫌い。でも、それと同時に感謝もしてる…皮肉よね。」
俯きながらヘラリと悲しそうに笑うレイアは、月明かりに照らされたりしているのもあるのか、とても美しく見えた_
ヴィス「‥レイア、僕は」
レイア「皆まで、言わないでちょうだいヴィス
溜め込んでた物、我慢してた物全部溢れちゃいそうで、怖いのよ‥」
レイアは僕の方を向き、そう言った。
しかし、一粒の涙が流れるのと同時に、慌てて顔を逸らしてしまった。
ヴィス「…」
かける言葉に、迷った。
泣いてる女性には、何と声をかければよかったか…
多くの本を読んで、学んだのに、肝心な時に限って出てこない。学んだ意味が無いじゃないか。何のために学んだ?これ以上大切な人をナくさないためだろ…?!
レイア「…それじゃあ、わたし行くわね。」
ヴィス「ぁ…」
少し霞んだ声でそう言い、レイアは行ってしまった。
月明かりのせいもあって、表情はよくわからなかったが、アレはきっと_
ヴィス「……僕も、そろそろ戻るか‥」
僕は心が落ち着かなかったため、老人の作業部屋で寝ることにした。
あそこにいると、とても心が安らぐのだ。
---
---
次の日…僕は、周囲の騒音により不機嫌な状態で目を覚ました。
ヴィス「………」
騒がしい‥一体何なんだ、全く‥。
というか、視界がぼやけてる。もしかして眼鏡を落としてしまったのだろうか…
??「あ、ヴィス!」
一人の何かを持ったドールが走って近寄ってくる。
が‥ダメだ。誰か一切分からん。声から判断…嗚呼、周りがうるさ過ぎて掻き消される。本当に何なんだ、うるさい‥。
??「?ヴィスどうしたの、そんなに眉間に皺寄せちゃってさ。」
ヴィス「…すまない、君は誰だ‥」
??「エッ」
ヴィス「眼鏡をどこかに落としたらしい‥顔から判断できない。声も、殆ど雑音に掻き消されるんだ。」
??「あっそういう…えっとね、私はメトリ!これなら分かる?」
ヴィス「ん…メトリか。こんなところでどうしたんだ。」
メトリ「リーヴァのところに行くの、ここからの方が早くからさ!」
ヴィス「そうなのか‥…」
メトリ「…」
ヴィス「……」
メトリ「………」
ヴィス「………メトリ、」
メトリ「?」
ヴィス「‥眼鏡を探すのを手伝ってくれないか‥?」
メトリ「あはは、もちろんさ!」
メトリはニッコリ笑って僕の眼鏡探しの手伝いを承諾してくれた。
が‥多分、メトリは僕が頼むのを待っててくれたんだと思う。さっき妙な間が空いたからな‥凄く申し訳ない‥。
そうして僕たちは、落としてしまった眼鏡を探すことになった……
今日の文字数
7309文字
ァアアァアアア
主人公との組もメトリちゃん入れた組もいいしレイアちゃんとトラウムくんとの組も……しかしヴィスレイの組み合わせも捨てがたい…。
書けば書くほど好きな組み合わせが生まれていく。本当に、素敵なキャラと小説ですわ…
[小話]
ヴィスの心の中「何のために学んだ?これ以上大切な人をナくさないためだろ…?!」と言った時について…
「ナくさない」の“な”が部分がカタカナになっているのは、亡くさない、失くさない、無くさないの三つとかけてるからです。
作ってくれた老人を“亡”くしてしまった
最愛のリーヴァの腕を一度“失”くしてしまった
大切な旧友(トラウムくんやレイアちゃん)を“無”くさない
この感じの意味合い?意味?でかけたつもりです。
無理矢理感が半端ない()
いつまでも 君の隣にー悪夢編ー
※〇〇な声…という表現がありますが、僕の中で「この子はこんな声かな?」というのを妄想したものなので、イメージと違っても何も言わないでください。
いつまでも 君の隣にー悪夢編ー
コツコツ‥
メトリ「うーん、どこに行っちゃったんだろう‥」
ヴィス「さぁな‥
寝てる時に落としているなら、あの部屋にあるはずなんだが。」
メトリ「ね〜。隅々まで探したのに、見つからないや‥」
メトリは、分かりやす過ぎるほどにガックリと肩を落とした。その原因は、僕の失くした眼鏡にある。
メトリにも手伝ってもらったのに、どこかで落とした眼鏡が見つからなかったのだ。一体、どこにあるというのだろうか。
もし、一つだけあるとするなら_
ヴィス「__誰かが、持ち出した__‥」
メトリ「えっ?」
ヴィス「‥いや、なんでも。」
メトリ「イヤイヤイヤっ、今『誰かが持ち出した』って言ってたじゃん!!?」
ヴィス「__なんだ__聞こえてるんじゃないか、そう言う時は聞き返すんじゃない。」
メトリ「そ!!れ、は……その通りなんだけど‥!
じゃなくてっ」
ヴィス「、」
メトリは少し声を荒げ、両手両足を広げて僕の前に立ちはだかる。
ヴィス「‥なんだ。」
メトリ「そのさ、『誰かが持ち出した』って‥何のために?」
ヴィス「…確定したわけじゃないが‥まあ、武力削減じゃないか?無難に考えて。」
メトリ「武力って、ヴィスは……その〜‥戦えないじゃん‥?」
ヴィス「イラ‥ 僕だって武術の一つや二つ、扱える。馬鹿にしているのか‥?」
メトリ「ごッごめん‥!!でも、イメージなくてさ‥」
ヴィス「…」
メトリ「__あう__」
メトリ「じゃあこれ、最後の質問!」
メトリ「なんで?」
ヴィス「‥何がだ。言葉足らず過ぎるぞ。」
メトリ「あ、えっと。なんで眼鏡を持ち出したって思ったの?ってこと!」
ヴィス「‥感‥。「感!!」__フ‥__」
メトリ「あ今笑ったでしょ‥!!」
僕はメトリの少し馬鹿な質問に、淡々と答えた。
すると、『何故そう考えた』と言う質問を僕に投げかけた。そんなアホが考えそうな質問に、少し戸惑いながら『感』と答えると、メトリはオウム返しをしてくる。
少し面白くなって笑った僕に向かい、ぷくりと頬を膨らますその姿は…多少、可愛らしいと思う。もちろんリーヴァには劣るが…。
ヴィス「_兎にも角にも、僕は眼鏡がないとまともに行動ができない。つまりは能力を使用したとて、誰も裁判に巻き込まれないんだ。」
メトリ「えっ??」
ヴィス「‥僕の力は、簡単に言えば能力使用時に、視界に入っていた人物裁判に巻き込む、というものだ。
この力の言う“視界”は、僕の目で見てその人物が誰か認識できてることを指すらしい……__日本語がおかしいから、僕はこの説明を変えた方がいいと常に思っているんだが…__
ともかく、眼鏡を外した状態で試しに使ってみたが、間近にいたトラウム以外巻き込めなかった。」
メトリ「人形なのに、不思議だね‥」
ヴィス「目のパーツが劣化しただけだろう。」
メトリ「…‥ヴィスっていつ作られたの‥?目ってそんなすぐに劣化しないでしょ?」
正論を言われた。‥珍しく。
そうだな‥トラウムとあったのが………うん。
ヴィス「_少なくとも七十年と半年以上は前だな。」
メトリ「__ヴィスおじいさん__…」
は?
ヴィス「ギロ」
メトリ「ゴメンナサイ。
__眼鏡ないと、目つき悪いのが目立って余計怖い__‥」
ヴィス「誹謗中傷で訴えるぞ、メトリ。」
メトリ「あーっごめんなさいってば〜!
_って、なにあれ?」
ヴィス「?」
メトリは少し離れた場所に置かれている木箱を指差す。
が、眼鏡のない僕にとって何故メトリが木箱を指差しているのかは分かるはずもなかった。
ヴィス「‥どれだ?」
メトリ「あれだよ!なんか、灰色っぽい‥」
ヴィス「‥」
眉間に皺を寄せ、目を細める。目の悪い人間が何かを見ようとする時にやる、アレだ。
…確かに木箱とは別の色の何かがあるが‥やっぱり無理だ。どれだけ頑張ったとて、見えないものは見えない。諦めて、近くまで寄ろう。
コツコツ‥
タタタ…
メトリ「あーっこれって!!!」
ヴィス「、どうした。」
たた…
メトリがいきなりを大声を出すせいで、耳鳴りがする。メトリはもう少し、声のボリュームの抑え方を知った方がいいと僕は思う。
メトリ「ほらこれ、ヴィスのメガネだよ!__いつもヴィスは眼鏡掛けてるから分かるよ私!__」
カチャ
ヴィス「ん、」
いきなり近寄ってきて、そっと眼鏡を僕に掛けると、メトリは満足そうに頷く。
メトリ「…うんうん、やっぱりヴィスはこうでなくっちゃ!」
ヴィス「強引に掛けるな、壊れたらどうする。」
メトリ「あはは、ごめんって‥」
ヴィス「…メトリ」
メトリ「、どうしたの?」
ヴィス「この眼鏡、どう言う状態で置いてあった?」
メトリ「ん?んっとね。普通に、綺麗に畳まれてたよ。どこか壊れてる様子も無いし、落とした眼鏡を誰かが拾って置いてくれたんじゃ無いかな?」
ヴィス「…そうか‥」
僕は、何故あの部屋から少し離れた木箱の上に眼鏡が置かれていたのか、とても気になった。いくらなんでも、寝ている時にもつけていたのにあの場所に落とすはずがない。そもそも落とすなんてこと事態、ありえないのだ。
僕の眼鏡は、後から僕が細い糸で右のテンプルと左のテンプルを繋げてたのだ。仮に、糸が切れて落ちたとしてもあんな場所に落ちない。僕の真下へ打ちるはずだ。もしあそこに実際落ちたと言うなら、ドールの力でワープしたくらいしか、僕は考えられない。それに綺麗に畳まれて置かれていたとメトリは言っていた‥。いくらなんでもおかしい。
ここまでくると、誰かが盗ったとしか考えられなくなる。
メトリ「それより早くリーヴァのところに行こうよ!眼鏡も無事見つかったことだしさ。」
ヴィス「…そうだな。」
僕は、少し周辺を調べたかったが、リーヴァに会える、という一つの目的が出来たことにより、そんな疑問はすぐに打ち消された。
あの場所は、帰って来た時に見ればいいだろう…。
---
---
ヴィス「り‥リーヴァ‥?」
リーヴァが、いつもの場所に……いない。
メトリ「ッ‥リーヴァ?リ〜〜ヴァ?あ、あれ‥?ギュ‥」
メトリは、いつもいるはずの埃っぽい階段下やその周辺にリーヴァがいないことに酷く混乱し、持っているぬいぐるみをギュウと皺が寄るほど抱きつく。
もちろんリーヴァだってただの人形じゃない。自分の意思で歩く。でも、少し離れた場所に行ってもいないのだ。僕とリーヴァが出会った庭にも、彼女はいなかった。
メトリ「ど、しよ……リーヴァ‥!!」
さっきよりも強く、ぬいぐるみに抱きつくメトリの目尻には、少し涙が溜まる。
ヴィス「っ…メトリ、落ち着け。」
メトリ「でッ、でもリーヴァがいないッ!!!もしかしたら‥もしかしたら「落ち着け!!!」ッ」
ヴィス「…平気だ。よく見ろ‥」
僕は声を荒げ過呼吸になり、取り乱しそうになるメトリの両肩に手を置き、辺りを見るよう指示する。ゆっくりと当たりを見渡し、少し落ち着いたのか息を落ちつけながらこちらを見るメトリに、僕はこう言う。
ヴィス「‥争った形跡、壊された形跡_何もない。《《いつもの場所》》だ。」
メトリ「‥」
ヴィス「確か、今日はアレがこれからあるはずだ‥ひとまず、君の生まれた、リーヴァの生まれた“あの場所”へ向かおう。」
メトリ「‥うん。」
メトリは、溜まった涙を拭き前を向く。
メトリ「ところで、“あの場所”‥ってどこなのさ‥?」
ヴィス「‥🌀」
頭痛がするのは、きっと、僕がリーヴァを心配したいるからだ……きっと、そうだ……
---
しばらく歩き、僕たちは、丸いステージと赤い幕が特徴的な“あの場所”へやってきた。
といってもここはそのステージへ向かう途中の集会場だが‥ここにいなかったら、時間的にも大変なことになる。なんとしてでも見つけ出さなければならない。
メトリ「わ~…広いね、ココ‥」
ヴィス「当たり前だ。毎年増え続ける工場中のドールが、ここに来るんだぞ。」
メトリ「………そうなんだ‥」
静かに驚くメトリを他所に、僕は五感をフルに活用する。愛しのリーヴァを見つけようと必死になった。
…にしてもうるさいなここは。リーヴァを見つけないとなんだから、静かにしろ。
ヴィス「_!!」
メトリ「、」
そんな文句を心の中で垂れていると‥今一番求めている声が、僕の耳に入ってきた。
__「て_たんですね…」__
__「_あえず、拭い_。」__
少し鼻声になったあの鈴のような美しい声と、僕の知っているドールの会話が聞こえてきた。
メトヴィ「…コクリ」
メトリも同じく声を聞いたらしい。僕たちは互いに顔を見合わせ、そして深く頷く。
大勢のドールたちを掻き分け、その声のした場所へと僕たちは大急ぎで向かった。
僕の左斜め45°の位置で、ズビズビエグエグと泣くのを必死に我慢している、ぬいぐるみを抱えた一人の少女がいるのは…誰にも言わないが、きっと僕たちが掻き分けたドールたちはみんな分かってる。
というのは、この少女に言わないであげよう…。
メトリ「ああ〜!リーヴァいた〜!」
その美しい銀色の髪をゆらりと揺らす後ろ姿はまさしく女神。なんて美しいのだろう…
これほど僕を熱中させるドールはこの世にたった一人しかいない_
メトリ「いつもいるとこにいなかったから、心配したよ〜!」
??「ご、ごめん、はい、ハンカチ。」
ヴィス「今日も一段と綺麗だ…**愛しのリーヴァ**…ゴフッ」
僕はリーヴァの顔を見た瞬間血を吐いた。人間の世界でいう、“尊い”というやつなんだろうか。
コロコロとした可愛らしい声で、我慢できなかった鼻水と涙でぐしゃぐしゃのメトリへ“涙を拭かせるため” 可愛いピンクのハンカチを差し出すリーヴァは、昨日よりも美しくなっている。日に日に美しくなる彼女に困ったものだ。
しかし、僕のすぐ横でズビーっ‥と躊躇なく鼻をかむメトリに少し嫌悪感を抱いたのは……誰にも言わない。鼻をかむならテッシュや使わない布でやってほしい。そのハンカチは、まだリーヴァが使っているもの……
リーヴァ「…」
見ろ!!あの可愛らしい笑顔だったリーヴァも、一ミリ顔を引き攣らせているじゃないか…!リーヴァはあれで隠したつもりなんだろうか?可愛いな…
そして、メトリはその手の中でくしゃくしゃになってるハンカチを、一体どこにやるつもりなのだろうか。まさか、リーヴァに返すなんてことしないだろうな…?!いくら女神より優しいリーヴァでも、そんなことされたら引くぞ‥。
…‥そんなリーヴァも、一度くらい見てみたいものだが‥
脳が『リーヴァ』『幸せ』『可愛い』の三つの言葉で埋め尽くされる直前、視界の端でドールたちが間に割って入ってくるところが映された。
直後、僕は何者かによって軽く押される。
ヴィス「__うわ。__」
ミーフィ「お姉ちゃんおひさ〜」
アレン「久しぶり。」
ルオナ「リーヴァ、目がちょっと赤いよ?大丈夫?」
ルーク「やぁ。」
メアリー「この前はありがとう。」
次々と見知った顔がリーヴァやメトリへ挨拶をする。一部は僕へ目線を合わせなかったが、僕から合わせてやった。
挨拶を終えると、|皆《みな》次々にステージのある方へ向かった。
ライル「何ここ…薄気味悪い。しかも汚っ!帰る!」
ミーフィ「帰っちゃダメだよ、おねーちゃん!”マリオネット”!」
ライル「うう…」
ライルももちろん、アレがあるためここへやって来た。
が、埃っぽいところが苦手なのか、すぐに『帰る!』と体の向きを180°ほど回転させ歩み始めた。すかさずミーフィが力を使い強制的に強いて行った。‥何かの芸に見えてしまうな。
まあ仕方がない。アレには参加しないと、彼に焼き殺されるのだから__
シャルル「じゃ。」
シャルルもいつの間にか来ていたらしい…先に降りていってしまった。
ヴィス「…」
メトリ「…シャルルは元々ここに居たからね‥?」
ヴィス「…………分かってる。」
…分かってたぞ。
レイア「腕の調子は大丈夫?」
しばらくすると、僕のよく知る凛とした、よく通る綺麗な声が聞こえてきた。
リーヴァ「はい。おかげさまで…あの、レイアさんの腕は…?」
レイア「もう完治したわ。私はみんなと違って、あの程度の傷なら寝れば治るの。だから心配しないで。」
リーヴァ「ありがとうございます!」
レイア「…」
ヴィス「、」
チラリと僕の方を見るレイアは、なんだか気恥ずかしそうにしていた。きっと、昨夜のことが彼女のポリシーの傷をつけてしまったのだろう。
僕がレイアの視線の気づいたかのように、レイアの方を向くと、慌ててステージの方へ行ってしまった。
……あれは、余計なお世話だったかもしれないな‥
ヴィス「…」
フと、ステージ全体を見渡す。シャルル、ミーフィ、ライル、ルーク、ルオナ、アレン、トラウムに、先ほど降りていったレイアもすぐ下にいた。その他ドールも、僕たちともう一人を除き全員が下に揃っているようだ。
あと一人は一体どこだろうか…もうそろそろ時間になってしまう。
リーヴァ「これで全員なのかな‥?」
メトリ「私たちもそろそろ降りないと、時間になっちゃうよ!」
いそいそとメトリが降りようとしたその時、男性とも女性とも取れる声が話しかけてくる。
「|私《わたくし》をお忘れですか?」
ヴィス「ブロード、」
小さくコツコツと音を鳴らし、優雅に歩いてくる人物は、先日絶望の迷宮で出会ったブロードだった。
リーヴァ「あ!ブロードさん!」
ブロード「ペコ_」
リーヴァが声を上げると、ブロードは帽子を取り上品にお辞儀する。
リーヴァとメトリは少し深めに礼をし、僕はブロードを真似るかのようにお辞儀をした。
ブロード「|私《わたくし》はあなたと同じく、去年生まれたばかりの身ですが、風の噂で聞きました。|私《わたくし》たちの創造主がお目見えすると。」
ブロードはリーヴァと同じ年に生まれたドールだったか…。絶望の迷宮に一人でいたから、そう言われると納得がいく。
あの場所は、二年もいれば噂で危険な場所だと知ることができる。そうなればまず、一人で行こうと思わないだろう。よくよく考えれば、あそこに一人で居たブロードは不自然である。
リーヴァ「創造主って、エックス?のこと?」
ブロード「正確な名前はそうではないようですが…ここのものは皆 X と呼んでいますね。」
リーヴァ「本名じゃないんだ。」
ヴィス「普通そうだろう‥」
メトリ「ヴィスは知ってるの?」
ヴィス「本名自体は知らないが、人間というのは基本苗字と名前、二つ持っていると本で読んだことがある。|X《エックス》という名前の人間はなかなかいないだろう‥__きっと。__」
メトリ「へぇ〜‥」
ブロード「さて、|私《わたくし》たちも参りましょう。リーヴァさん。」
リーヴァ「うん!」
メトリ「ちょっと急ごう三人とも!」
リーヴァ「わっ、本当だ。いそげ〜💦」
僕たちは早足でステージの方へと降りていった。しかし、ブロードは時間にまだ少しだけ余裕があると感じているのか、リーヴァたちより歩みが遅い。
軽くブロードの方を振り向き、
ヴィス「‥ブロード、この工場にある時計は針が進むのが遅れている。急いだ方がいい。」
ブロード「えぇ…そういえば、ヴィスさん?」
ヴィス「どうした‥」
ブロード「無くされた眼鏡、見つかったのですね。」
ヴィス「ん?ああ‥見つかって良かったよ。
でもそんな過去のことはどうでもいいだろう。急ごう」
---
ヴィス「、__は、‥__間に合ったみたいだな…」
いつものように、ステージ周辺に工場中のドールが集合した途端、閉められていた赤い幕がバーッと開いていき、同時に中心へスポットライトが一つ当てられる。
始まるぞ、いつもの聞き飽きた定文が…。
『レディースアーンドジェントルメーン!ようこそお集まりいただきありがとう!』
スピーカーから、姿の見えないあの男の声が聞こえてくる。
すると、周りのドールたちは「なんだなんだ?」「来たぞ来たぞ!」とザワつき始める。
コツコツ__
シャルル「あいつが、X だ。」
ステージの奥から、少しずつ、Xの姿があらわになる。
X「パチパチパチパチッ」
Xは気味の悪い笑みを浮かべながら僕たちドールに向かい拍手する。
X「初めて会うドールも、1年ぶりに会うドールも素晴らしい美しさです!」
「「おおおおおお!!」」
X「まあまあ、落ち着いてください。
知っているものも多いと思いますが、|私《わたくし》は一年ごとにこの工場にやってきて、新しいドールを作っています。去年作ったドールを思い出すと…ライル、ミーフィ、それから…リーヴァ、他にもたくさんの人形を作りましたね。
そして、今日!また新しい人形の誕生をお祝いしましょう!」
「「わああああああ!!!」」
ステージは、一瞬Xの指示で静かになったものの、その一言でまた歓声に包まれていった。その中に僕やレイア、トラウムの声は一切入っていない。
しかし、今回は歓声だけではないようだ。
メトリ「ほとんど去年と同じこと言ってる〜」
ミーフィ「私、先輩になるんだ!やった!」
リーヴァ「新しい…仲間?」
去年生まれたリーヴァたちは先輩になれると喜んだり、困惑したり、去年より前に生まれたドールたちは殆どが歓声をあげたり、一部の者は定文じゃないかとXに呆れを示す。
これを聞く限り、これからの集会は多少楽しくなるようだ。
X「それでは開始いたします!ミュージックスタート!!」
〜♪
Xが合図をすると、聞き慣れたクラシック曲が流れ始めた。それと同時に、機械が動き始め大きな音を立てている。
ヴィス「ピョートル・チャイコフスキー作曲、くるみ割り人形より『金平糖の精の踊り』だ。」
僕は独り言として、流れるクラシック曲の名前を発する。
きっとみんな、聞いたら『ああ、これか』となる曲だ。
ここからは、僕が毎年唯一楽しみにしているところ。今回はどんなドールが生まれるのだろうか…?
〜♪
音楽に合わせ一つの機械が前へ出てくる。そして定位置に止まるとまた音楽に合わせ、次々とドールを作っていった。
作り出されたドールたちは、「本当に作りたてか」とツッコんでしまいたくなるほどスルスルと踊りを始めた。今年も、その踊りが目立つドールは一定数いるらしい。
…奇麗だ。
リーヴァ「…!」
隣に立っていたリーヴァは、軽く息を呑んだ。それが何故なのか気になり、リーヴァが釘付けになっている視線の先を辿ってみると、一人の一際目立つドールがいた。
ヴィス「…これは‥」
コクリ‥と、少し息を呑む。
薄桃色の髪の色をした編み込みツインテールのドール…幼い顔立ちにも関わらず、シャルルに負けないくらい綺麗な踊り魅せてくれる。
もちろん、作られたばかり過ぎてほんの少しぎこちないところはあるが、それ込みでも十分美しい。
レイア「あの人‥すごく綺麗に踊るわね‥」
ヴィス「、……ああ。“あの時”とはまだ別の‥何かが身体中を駆け巡る感覚がある…」
レイア「あの時、って…ああ‥!」
いつの間にか真隣へ来ていたレイアは、独り言か僕へかけたのかどちらか僕には分からなかったが、そう、目を細め…本当に嬉しそうに言った。僕の言葉に反応すると、クスクスと小さく笑ったのが多少きたが…愛嬌ということにしておこう。
しばらくして、他のドールも少しずつその踊りに気づき始め、一気にザワついた。
フとリーヴァの方に目線をやる。
リーヴァ「…」
ヴィス「、っ‥!!?/」
リーヴァはなんともこう‥あんまり他のドールには見せたくないような‥…イヤ違う。なんでもない。気のせいだ…
とても可愛らしい、顔で‥見惚れていた。
僕はそんなリーヴァに、怖いほど見惚れた。
ヴィス「…」
リーヴァに見惚れてジッとリーヴァのことを見ていたら、流れていたクラシック曲がプツと終わってしまった。
その瞬間、リーヴァはハッとなり見惚れていた顔を元に戻す。
まずい…僕も戻さなければ。いくら周りが薄暗くても、近くにいたらすぐ分かってしまう‥。こんな表情、誰かに見せられるわけがない。
レイア「‥チラリ」
ヴィス「フル‥」
ああ……僕としたことが、くそ………。
顔が熱い気がする。ドールに熱を発する機能は付いてない、はず。一体なんなんだコレ‥!
ひとまずマフラーで隠しておこう…見られたらまずい‥。もしお喋りなドールにバレてみろ。一瞬で工場中に噂として広まり僕は誰でも顔を合わせれなくなる。
そんな事態になったら、僕は作業部屋に引き篭もってしまうだろう。
そんな事態になる前に、表情をいつものようにし、また緩めないように気をつけようと顔を上げると、既に赤い幕は閉じられ、周りにいたドールたちはまばらになっていっている。
リーヴァは…先ほど見惚れていた、薄桃色髪のドールの下へと駆けていた。
ヴィス「リーヴァ……」
レイア「‥‥
全く‥__どこまで惚れてるんだか‥__
ほら行くわよ。」
ヴィス「、」
リーヴァ「とても綺麗だった!あの踊り、見惚れちゃった…!」
??「ありがとう、です。」
リーヴァ‥あんなに楽しそうに、声を荒げて『綺麗だ』『見惚れた』と……その言葉は、僕に言ってほしいものなのに。
レイア「ちょっと‥私あんまりここ居たくないのよ‥行きましょうヴィス。」
ヴィス「…ああ‥」
あんまりリーヴァに引っ付くと、全員からよく思われない、そう分かっているが、体はその場に留まろうと足を止めてしまう。
レイアは何やら愚痴愚痴と言っているが、そう言いつつ僕を待ってくれている。
レイア「置いてくわよ‥?」
ヴィス「すまない‥」
口ではそういうものの、足にはまるで枷が付いているかのように重くなっており、足取りが遅くなる。
のそのそと進んで行き、ようやく会場から出る、となったところで後ろから話し声が聞こえて来た。
その声が聞こえた瞬間、レイアはツカツカと声の主の元へ歩き出す。
「えー!X もう帰っちゃったの!?」
レイア「ルビー!まだあの人に心酔しているの?
何度も言っているじゃない!外に出たって意味がないわ!みんなで仲良く暮らすのが一番よ。」
ルビー「僕の気持ちなんてわからないくせに!知ったような口聞いてんじゃねぇ!」
レイア「はぁ?外に出るなんて、最悪の一言に尽きるわ!」
レイアは、残念そうに大きな声をあげるドールへ何度も怒鳴る。そんなレイアの声は、心からソレを願ってるかのように声を震わせていた。ルビーと呼ばれていたドールは、ぶっきらぼうにレイアへそう言い放つ。
もしかして知り合いなのだろうか?
ルビー「〜!!」
レイア「ー~!!!?」
二人の言い合いがヒートアップして来ている。良い加減止めなければ‥これ以上ヒートアップすると、能力を使用する喧嘩沙汰になるぞ‥!
??「ちょっと、いいですか、|En forme d'éternité《アンフォームド・エターナイト》」
喧嘩を止めようと、レイアたちの方へ行こうとする。すると、僕の一番聴き慣れている、落ち着いた声が耳に入ってきた。
チラリと声の聞こえた方を見てみると、宝石のような美しいミント色の瞳を持つ旧友が、自身の能力を使い二人の喧嘩を止めている。
ヴィス「あの、他のドールと接触したがらないトラウムが、自分から行くなんて‥」
僕はなんだか、子供の成長を目撃した母親の気分になる。トラウムにとって、相当うるさかったようだ。
ひとまず、トラウムが止めるなら、特に問題は起こらないだろう‥。
僕は、出口の影へと移動し、レイアたちからは見えないよう少し奥に隠れた。‥まあ、いわゆる盗み聞きだ。
リーヴァ「ちょっと!二人に何したんですか?」
トラウム「とても騒がしかったので、少し黙ってもらおうと思いまして。」
リーヴァ「二人は元に戻るの?」
トラウム「貴方は二人にとってのなんなのですか?」
トラウムはすぐに帰ろうとしたが、リーヴァに質問をされる。その質問に、トラウムは何を思ったのか答えず、逆に質問を返し、リーヴァから返答を待つ。
リーヴァ「私はリーヴァ。二人…というかレイアさんの友達よ!」
トラウム「そう…友達…安心してください。10分も経てば元通り騒がしくなりますよ。その前に自分は去りますがね。」
トラウムはそれを聞いて満足したのか出口まで歩く。すると「ああ‥」と何をか思い出したかのように振り返りこう言った。
トラウム「そういえば、相手にだけ名乗らせるのは少々|不躾《ぶしつけ》ですね。自分は、トラウムと申します。では。」
簡略な自己紹介を済ませ集会場を出た。
トラウム「、、、ヴィスさん、貴方って人は、、」
ヴィス「、」
どうやら盗み聞きをしていたのはバレていたらしい。
弁解なんて無駄なことはせず、素直に謝る。
ヴィス「すまない。ちょっとな‥」
トラウム「あんまりこういう事してると、いつか友人がいなくなりますよ、、?」
ヴィス「‥以後、気を付けよう。」
トラウム「そうして下さい、、
それじゃあ、自分はもう行きますね。また、、」
ヴィス「トラウム」
トラウムを少し声のボリュームを上げて呼び止める。
僕は、朝から今まで引っかかることがいくつもあった。眼鏡のことといい、ブロードのあの発言といい‥今日はなんだか色々と変だ。
それに……
少し前に考えた一つの予想がまた、僕の頭の中に浮かんだ。
トラウム「、はい?」
ヴィス「今夜だけは僕と一緒にいてくれ」
トラウム「、、、」
ヴィス「…?どうしたんだ?」
トラウム「、、、、、ヴィスさん、珍しく日本語が紛らわしいですよ、、」
ヴィス「‥何がだ。」
トラウム「、、、、、、」
トラウムは困ったような、呆れているような‥そんな顔をして顔に手を当て少し俯く。
僕は、相手にやってほしいことを時間と共に言っただけなのだが、何か問題があっただろうか‥。
ヴィス「_ともかく。
今夜は凄く嫌な予感が‥いや、大変なことが起きると思っている。」
トラウム「大変なことって?」
ヴィス「‥ここじゃ言えない。あの部屋で話すから着いてきてくれ」
トラウム「、、分かりました、、、ヴィスさんがそこまで言うなら、着いていきます」
ヴィス「ありがとう、トラウム」
僕とトラウムは、老人の作業部屋へと急いだ。
リーヴァたちにも話そうか少し悩んだが、混乱を招きリーヴァに怖がられると僕が大変困るので、トラウム以外には話さないことにした。
---
---
ヴィス「__じゃないかと、僕は思ってるんだ。」
トラウム「、、、なかなかに恐ろしい予想をしますね。ヴィスさん、、」
ヴィス「まあな‥。でも、もしこれが実際に起こるとしたら__`今夜だ`。」
トラウム「だから、、ヴィスさんと自分、二人は一緒にいると言うことですか、、、
でも、人数が多ければ多いほど狙われるのでは、、?」
ヴィス「その可能性ももちろんあり得るが、メリットもある。」
トラウム「、、、武力、、。」
ヴィス「ああ。」
トラウム「確かに、、多い方が力を増しますよ、、でも、ヴィスさん一人でも十分戦えるでしょう、、?その辺にいるドールの100倍は、その身一つで戦える。」
ヴィス「何を言ってるんだ‥そんなことない。」
トラウム「自覚してないんですね、、、」
トラウムは呆れたような顔をするが、実際そうなのだから仕方がない。
僕は確かに、ある程度のはこと出来るだろう。しかし、その辺のドールの100倍なんて強さだったら、人形ゴロし‥マリィに、リーヴァを取られることなく圧勝出来ていただろう。それが出来てないのだから、100倍も強いわけがない。
トラウム「数年前、、寝込みを襲って来た大勢のドールをたった一人で、それも片手で薙ぎ倒して追い払ったのは、、、、どこのどいつなんでしょうね、、、」
ヴィス「ただ相手が弱かっただけだろう。そろそろ揶揄うのもやめてくれ。」
トラウム「__はあ__、、、」
ヴィス「‥少し気になることがある。すぐに戻ってくるから、待っていてくれ。」
トラウム「、分かりました、、」
ヴィス「何かあったらすぐに大声を出すんだぞ。」
トラウム「分かってますよ、、そっちこそ、気をつけて下さいね、、」
ヴィス「ああ。」
僕は、今朝眼鏡を見つけた木箱のところへ向かった。
---
ヴィス「ー‥」
僕は木箱のある場所へ移動し、その周辺を色々と見て行った。しかし、特におかしな点はなく探し終えてしまう。
あと探していないのは__
ヴィス「木箱の中くらいか‥」
そう独り言を言うと、僕はすぐに三つ置かれている木箱の前まで来た。
二つ並ぶ木箱の上のちょうど真ん中に一つ木箱が置かれていて、下の木箱は開けられない。退かそうと押してみたが、何かがどこかに引っかかっているらしく、殆ど動かすことはできなかった。
そのため、すぐさま下の木箱を開けることは諦め、上に置かれている木箱だけを開けることにする。
ヴィス「、__フ‥__」
下に置かれている木箱の上に乗り、木箱を少し見てみる。木箱の蓋は、まるで大量のナイフで刺したかのように穴だらけだった。よく見ると、今僕が乗っている木箱も少し穴が空いている。
その隙間から木箱の中を見ることは暗すぎて叶わなかった。僕は少し力を入れて木箱の蓋を開ける。
ヴィス「ケホ‥ 一体いつからあるんだ。この、きば‥こ……」
舞う埃で咳をし、文句を垂れる僕の目に入って来た木箱の中身は__
--- `たくさんのドール`だった ---
---
トラウム「_、おかえりなさい。“気になること”は、どうなりました、、、、?」
ヴィス「…」
トラウム「何か、、、あったんですか、、?」
ヴィス「、ぁあ‥。いや、なんでもない。気になることも解消した。問題ないぞ。」
木箱の中身で、帰りながら考え事をしていたら、いつの間にか着いていたらしい。トラウムの話が一切入ってこなかった。
眼鏡をカチャリと押し上げながら僕は問題はない、というが、トラウムはクスクスと少し嬉しそうに笑い始めた。
トラウム「ふふ、、、ヴィスさんって本当に、、いつまで経っても変わらず、嘘をつくのが下手ですね、、、、」
ヴィス「?そうか‥?」
トラウム「初めは分かりにくいですけど、、これだけ長い間付き合ってたら、イヤでも分かるようになりますよ、、、」
ヴィス「ん…気をつけるようにする。」
トラウム「、、、__変わらないで欲しいですけれどね__、、、、、」
ヴィス「?何か言ったか、トラウム。」
トラウム「いいえ?なんにも言ってないですよ、、」
ヴィス「?」
今日のトラウムはなんだか少し変だな‥
そう思い、僕はほんの少し首を傾ける。でも、たまにはこんな日があってもいいかとすぐに元に戻した。
そのあと、僕たちは軽く世間話をして眠りについた_
微かな音が聞こえた瞬間、僕はすぐさま起き上がり部屋外へ出る。
ヴィス「…誰だ。」
物音の正体はドールだと確信をしていた僕は、相手に聞こえるように少しだけ声のボリュームを上げた。
その時、突然どこからかナイフが飛んでくる。
ヴィス「ッ」
反射で横へ飛び、ギリギリで避けるがすぐさま次のナイフが降ってくる。また避けると、次々とナイフが飛んできた。
物相手に、力を使うことはできない。僕は落ちたナイフを拾い、避けれなさそうなナイフは弾くようにした。
「ここまで抵抗したのは、貴方が初めてですよ。」
つい最近聞いた声が、上の方から聞こえる。
声の聞こえる方を向くと、そこには空中に浮かぶ一人のドールのシルエットがあった。しかし、今日は運が良いのか悪いのか、月光が強く、相手の姿をハッキリと見ることは叶わない。
ヴィス「っ‥誰なんだ!」
「名乗る程のものではありません。
ですが、|私《わたくし》の攻撃を掠りもさせなかったのは褒めましょう。今宵はこの辺で、では。」
謎のドールがそう言いながら小さく拍手する。しかし、次の瞬間そのドールは忽然と姿を消していた。
ヴィス「く‥っ」
ここで捕まえられるのであれば、捕まえてしまいたかった。リーヴァや他のドールに危険が及んでからでは、遅いのだ。
「ヴィスさん!!」
老人の作業部屋から慌てて来たのは、トラウムだった。
トラウム「よかった、、このナイフの量、、少なくとも50はありますよ、、?一体何が、、、いえ、それよりケガはありませんか、、?
どうして、、どうして自分を起こしてくれなかったんですか、、、?!貴方が自分で二人のメリットを言ったんじゃないですか、武力って、、、!」
珍しく焦った顔をし、一方的に質問を投げかけてくるトラウムは少し面白かったが、今は笑える場面じゃない。
ヴィス「新しい人形ゴロしが…いや、人形ゴロしは元々、別のドールが個々に動いていたのかも。二人だったのかもしれない。
ともかく、人形ゴロしが奇襲を仕掛けて来た。いくらトラウムでも、寝起きでは危険だと考えたんだ。だから」
トラウム「だからって!」
ヴィス「、」
トラウム「、、、貴方、一人で戦うこと、、ないでしょう、、、、?」
トラウムが、僕にこんな|表情《カオ》をしたことがあっただろうか?どうしてそんなに、悲しそうな、辛そうな顔をするんだろう。
やっぱり、今日のトラウムは何かおかしい。
ヴィス「…すまな、かった‥」
そんなトラウムの威圧感に僕は、自然とそう、口に出していた。なんだかおかしな声をしている気もしたが、気にしないことにしよう。
トラウム「、っ、、、わかってます、、ヴィスさんは、そう言う人ですから、、、、
、、すみません、、自分もガッついちゃいました、、、」
ヴィス「いや‥僕も独断で動いて危険に晒されていたのは事実だ。謝るのは、僕だけでいい。」
いつもと違うおかしい僕らは、落ち着きを取り戻して老人の作業部屋へと戻る。
リーヴァたちに、大変なことが起こっているとは露知らず__
---
---
ヴィス「!!!?」
朝、僕は飛び起きた。久しく見た夢の中で、リーヴァが僕を襲ったやつと対峙している夢を見たのだ。
ヴィス「っ…まずい‥!!」
部屋を出るすんでのところで、僕はトラウムも一緒にいることを思い出す。
流石に、何もなしにまた一人にさせるのは、昨日のこともあるから申し訳なさすぎるよな‥。
僕は殴り書きに近しい文字を、置いてあった紙に書き、見つけやすいところに重しとしてペンと一緒に置いて慌てて部屋を出て行った_
---
ヴィス「はあっ、はあ‥!!」
絶望の迷宮で、パイプから逃げている時と同じくらいかもしれない…僕はあの時と同じくらいのスピードで、リーヴァがいつもいる階段へとやってきた。
ヴィス「リーヴァ!無事かっ!!?」
階段を降りながらリーヴァを呼んでみるが、応答はない。
もし、リーヴァが寝込みを襲われたとすると…嫌な予感がいくつもいくつも頭の中に出てくる。必死にその考えを消し、恐る恐る階段下を除いた。
ヴィス「……リーヴァ‥?」
暗くて良くは見えないが、少なくともドールの姿やその残骸がないことは確認できた。
「ヴィ、す‥お兄ちゃ‥」
ゼエ‥ゼエ‥と、荒々しい呼吸音が聞こえる。微かに「ヴィスお兄ちゃん」と呼ぶ声も聞こえた。こんな特徴的な呼び方をするのは、彼女しかいない。
ヴィス「ミーフィ!」
ミーフィ「ヴィス‥お兄ちゃ、リ-、ヴァ‥お姉ちゃ、んが……っ!!」
肩を上下させるミーフィは、今にも泣きそうな顔をしている。僕はたまたま持っていたハンカチを彼女に渡し、落ち着かせ話を聞いた。
ミーフィ「っ……昨日は‥やけにドール同士の戦いが酷かったから、リーヴァお姉ちゃんが心配で見に来たらっ‥姉ちゃんがいなくて、あっちこっち探したんだけど、いなくって…!!!」
いつも以上に子供っぽく喋る彼女からは、最悪を想定してしまったのかポロポロと涙がとめどなく溢れてくる。僕だって、する必要のない我慢をしていた。しかし、彼女がポロポロと溢れさせるのを見て、僕まで溢れそうになってしまう。
もし‥もし、リーヴァの身に何かあったら……もし、壊されていたら、僕はこの先どうやって生きればいいのだろう‥?
--- `リーヴァの消えた生活` ---
いくら考えても、世界から全ての色が消えて、声が消えて‥真っ黒な闇に包まれる気しかしなかった。
こんな生活に、僕は耐えられるだろうか?‥否。無理に決まっている。
リーヴァの鈴のような綺麗な声に、心底楽しそうに笑ってくれたあの可愛らしい笑顔に、僕たちを笑わせてくれるあの思いつきに、君を見つけさせてくれたあの美しい舞いに、……僕は、リーヴァに生かされている。リーヴァを知った今、リーヴァなしの生活なんて考えたくもない。
ミーフィ「もしリーヴァお姉ちゃん“に、何かあったら‥!!!!ッッ」
ミーフィは、そんな想像でキャパオーバーしてしまい、まるで意識を失うかのように倒れて来た。そっと彼女を寝かせ涙を拭く。
とっくの昔にキャパオーバーしていた僕は、リーヴァの危機かもしれないという考えで立っていられた。しかし、ミーフィと同じく、想像だけで死ねるような考えをいくつもしたせいで、余計にオーバーし、意識を失った
---
---
---
次に目覚めると、メトリが前に座っていた。
ヴィス『どうしたんだ?メトリ。
‥リーヴァは‥?』
やけに落ち着いた声で僕が聞くと、メトリは虚な目をし、答えた。
メトリ『ヴィスが、リーヴァを守らなかったせいで_`死んじゃったよ`。』
ヴィス『…え‥?』
“リーヴァの死”
その一つの事実が、僕を闇に突き落とした。
ヴィス「ッ“ヒュ‥」
暗い。周りを見渡そうと起き上がる前に、いきなり、僕は息苦しくなった。息が吸えなくて、仮に吸えても、今度は吐けない。
チラリと僕の上を見てみると、そこには誰かがいた。ふわふわした巻き毛の、この真っ黒闇でも強く光るピンク色の光。きっと、それは目なのだろう。とても、綺麗だ。
しかし、その人物が僕の呼吸を妨げている張本人のようだ。手を伸ばし、僕の首を力一杯締めている。
苦しくて、苦しくて、僕はリーヴァに助けを願った。
ヴィス『リー、ヴァ‥ッ“』
『なぁに?ヴィス!』
鈴みたいな、綺麗な声
明るくて、元気があって、とても優しい声がする。
僕が世界で一番大好きな声がする__
僕は、必死に声のする方を…上を見た。
そして視界に映ったのは、今まで一番楽しそうに笑う、リーヴァの姿。ふわふわの、思わず撫で回してしまいたくなるような巻き毛、こんな真っ暗なのに、強く光って僕だけを見つめている、ピンク色の綺麗な瞳。
昨日よりも、今日の方がかわいいな‥そんなことを考えていたら、首を絞める力が強くなった。
ヴィス『っ“あ‥カヒュッ』
息が完全にできなくなる。吸うことも、吐くことさえもできなかった。
そういえば、リーヴァのいたところには、誰かよくわからない人がいたはず。その人は、今も僕の首を締め続けている。
一体、どこから?
純粋に、ただ気になった。
だから、首を締めている手を辿って、視線を動かす。さっき見た時はわからなかったが、白いの袖の服だ。肘の辺りまでくると、短いケープを羽織っているのが分かった。
なんだか、すごく見覚えがある。
少しずつ上に上がっていく。そして、顔までたどり着いた。
しかし、僕は信じられない事実に絶句する。
リーヴァ『なぁに?ヴィス!』
ふふふっ!と、楽しそうに笑うリーヴァ。
でも、手は僕の首を締めていた。
ヴィス『ッ“……ぅ、て……?』
ああ‥なんで‥僕が、リーヴァを怒らせちゃったのかな‥?
とめどなく、涙が溢れる。
リーヴァ『なぁに?ヴィス!』
同じことをいい、ニッコリと、僕にだけ笑ってくれるリーヴァ。僕だけを映してくれる目。
確かに、大好きなリーヴァ。
なのに、何故かチガウんだ、リーヴァ。
薄れゆく薄れゆく意識の中、僕は何度も何度も、『ごめんね』と言い続ける。
きっと、何か、リーヴァをこれ程までに怒らせることをしてしまったんだ。
ごめんね、リーヴァ。ごめん。
ずっと、ずっと、僕は、君だけを、
`愛`しているから
--- どうして…? ---
--- ヴィス!ミーフィ! ---
---
「__ィス!ミーフィ!」
優しい声がする。
でも、なんでだろう?すっごく、悲しそうな声でもあるよ。どうしたんだ?
世界で一番、大好きな__
ヴィス「__ハッッ!!!!?__
リーヴァ!!」
ミーフィ「お姉ちゃん!!」
僕は飛び起きてリーヴァの元へ走った。目覚めてすぐ飛び起きて走ったせいで頭が酷く痛い。
でも、そんなの関係ない。どうでもいい、僕のことなんかどうでもいい!!!!
ヴィスは走ってきて、リーヴァを抱きしめた。
ヴィス「心配した…無事で、よかった…」
バクンバクンと、ないはずの心臓の鼓動がドンドン速くなる。走ったからとか、そんなんじゃない。
リーヴァが生きているという、人生で一番の喜びともう一つ。今自分がリーヴァになにをしているのか気付いた時には遅かった。
コレ…彼女に伝わってしまっているだろうか‥?
リーヴァの鼓動も、微かに分かった。
ヴィス「___生き、てる‥__」
ミーフィ「二人とも無事でよかった〜!いなくなっちゃったかと思ったよ〜!」
ミーフィは、無事なことが分かり安心して糸が解けたのか、泣きじゃくる。その涙は、止まる気配を見せなかった。
それを横目で見ていたら、僕まで泣きそうになる。リーヴァの前でそんな失態許されない。僕は目を伏せて、さっきよりも強く、彼女を抱いた。
もうなんか、やってしまったことはしょうがないし‥__これで新ステップ進めただろうし‥__いいや。
僕は周りの目とかすらどうでも良くなり、ほんの少し、彼女の肩に顔を埋める。
リーヴァ「二人とも…」
メトリ「私たちは無事よ。」
メトリは、泣きじゃくるミーフィの頭をしゃがんでゆっくりと撫でる。それにもっと安心したのか、ミーフィは少しずつ落ち着き、涙を止めた。
僕も見切りをつけて一度離れたが、代わりにとミーフィが抱きつこうとしたので、続けて抱くことにする。
**二度と、彼女から離れるか。**
僕は、ミーフィとメトリをチラリと見てから睨みつけた。
今日の文字数
17896文字
ヴィス…君はなんだか、埃っぽい階段の近くでよく泣きそうな女の子と一緒にいるね。
ヴィス「君がそう言うシーン、好きなだけだろ。」
そう言う、一部以外には心開かない‥淡白で冷たいところも大好きだよ僕‥。
ヴィス「‥疲れてるのか‥??」
いつまでも 君の隣にー決戦編ー
※原作のセリフとスピンオフ(本作)の日時が噛み合わないところがありますが、ご了承下さい。
いつまでも 君の隣にー決戦準備編ー
僕たち二人のリーヴァの取り合いが落ち着いてきた時、リーヴァがとあることについて聞いてくる。
リーヴァ「二人ともアレンから、昨晩のこと聞いた?」
ヴィス「人形の大量殺戮についてだろう。」
僕はここへ向かう道中に、誰かとぶつかりそうになり、その誰かに丁度良かったと話されたことを思い出す。
あの時はその話を聞いて、「僕が呑気に寝ている間にリーヴァに危険に及んだ!!?」と余計にパニックになったため、誰かも分からず「分かったからさっさと退け」と強く言って去ってしまったが、まさかアレンだったとは……
もしかしたら、アレンは怒ってるかもしれないな…次に会ったら、何か言われるかもしれない。謝っておこう。
まあ、話の内容は一言一句間違いなく言えるので問題はないだろう。
ミーフィ「アレンお兄ちゃんが夜までに安全策を考えておいてって言ってた。」
ミーフィも聞いたらしく、僕がアレンから聞いたことと同じことを言った。
それを聞くと、リーヴァは「う〜ん‥?」と首を傾げ、真剣に何かを考えているのが見てとれる。なんて分かりやすく可愛いのだろう?この世にリーヴァ以外要らない気がしてきた。
おっと。リーヴァは可愛いが、ひとまず落ち着いて策を考えなけばだったな‥。
僕はパッとすぐに出てきた案を提示する。
ヴィス「バリケードを作るのはどうだ?」
メトリ「いや、もしも昨晩私たちが遭遇した謎の人物が犯人だった場合、バリーケードは意味をなさない。」
出した瞬間、メトリに却下される。
別にパッと浮かんだ案を出しただけだし気にはしてないが、そんなにすぐ却下しなくてもいいんじゃないか??
ミーフィ「どんな人と会ったの?」
メトリ「姿は一切見えなかったけど、空間を操ったり、離れたところから攻撃ができる厄介な能力持ちだよ。」
ヴィス「、__なんだって…?__」
ミーフィが質問をすると、メトリがそう答えた。
“空間を操る”“離れたところから攻撃ができる能力”
昨晩僕が会った刺客と合致する。もしやあの後、リーヴァたちの元へ…?
なんてこった‥!!?僕が取り逃したばっかりに、リーヴァに危害が及んだだと‥…………今すぐ自分を殺してやりたい。なんて奴なんだ、僕は‥。
今ここで自決するのは簡単だが、リーヴァのトラウマになったら僕が困る。そのため自決はやめにして、策をもう一つ提示した。
ヴィス「では、みんなで集まって、返り討ちにするというのはどうだ。」
ミーフィ「それいいね!仲間がたくさんいれば、どんな敵も怖くない!」
リーヴァ「それならこれ以上犠牲が出なくて済むかも。」
メトリ「それ以外ないよね!」
三人は「うんうん」と賛成し、頷く。
リーヴァはいつでも自分より他のドールのことだ。そんな優しさも大好きだが、僕はもう少し自分を大切にしてほしい。リーヴァがいなくなったら、僕が死んでしまうのだから。
メトリ「_でもさ…ずっと言いたかったんだけど…
**そろそろリーヴァから離れてくれない?**」
しかし、そんな良い雰囲気にメトリが水を差す。
僕は、ミーフィとのリーヴァ取り合い合戦に見事なまでに勝利し、現在リーヴァを思い切り抱きしめている。大人気ないとかそんなのはどうてもいい。せっかく次のステップへ進めたのだから、もう少し堪能したい。
それに、あんな悪夢を見たんだ。子供っぽいかもしれないから口には出さないが……正直、まだ少し震えている。
ともかく!!
そんな幸せの真っ最中なのに、リーヴァから離れろだと…?
ヴィス「いやだ。リーヴァのことはもう絶対離さない。」
`断固拒否`。それ以外の返答の仕方は、今僕の中にある辞書にはない。どうせ離したら二人がリーヴァを取るんだろう?尚更嫌だ。
メトリ「何それ!!」
ミーフィ「ヴィスお兄ちゃんだけズルい〜っ。」
リーヴァ「あはは…💧」
ほら、あんなに優しいリーヴァですら愛想笑いしてるじゃないか。見苦しい争いはやめろ。
リーヴァは僕だけの大切な人だ
メトリ「リーヴァだって嫌がってるよ!」
リーヴァ「えっ」
ヴィス「えっ」
リヴィ「…」
ミーフィ「あははははっ!被った!」
メトリ「空きありッ。」
リーヴァ「わっ。」
ヴィス「!?オイ、何する!!!」
リーヴァとセリフが被ってお互い驚いたところを狙われ、リーヴァを離されてしまう。
というか、リーヴァも驚いていたんだから嫌がってないってことだろ。僕の元に返して欲しい。
メトリ「にげろーっ。」
ヴィス「アッ。こら待て!!」
メトリ「わッ、そっちが離せばいいじゃん!!」
リーヴァ「ちょっと、メトリ!ヴィスまで‥!やーめーてーっ。」
メトリが逃げようとしたため、咄嗟にリーヴァの腕を掴んでしまう。
しかし、メトリも取られてたまるか、とそのまま自分の方へ引っ張ってしまうせいでメトリとリーヴァを引っ張り合う形になってしまう。
すぐにリーヴァが嫌がったため、二人して手を離す。引っ張りあっていたのを突然やめてしまったため、リーヴァは前へ倒れそうになる。
ヴィス「危ない。」
リーヴァ「ごめんヴィス、ありがとう。重いから離していいよ?」
ヴィス「リーヴァが重いだなんてとんでもない。羽以上に軽いよ。このまま僕に身を預けてもらっても構わない」
リーヴァ「もうっ!__/__」
リーヴァは自分を謙遜するが、すぐに僕がフォローする。
しかし、その度にリーヴァは顔を赤らめてくれるので、その反応にいちいち嬉しくなってしまう。そんな反応をされると、このまま褒め倒してしまいたくなるので、やめて欲しくないけれどやめて欲しい。
メトリ「はいはいイチャつかないで〜。」
リーヴァ「い、イチャ…!!?//
そんなことしてないから!!!やめてよメトリっ!!!/」
メトヴィ「__かっっわい。__」
ミーフィ「リーヴァお姉ちゃん顔真っ赤だよ?大丈夫‥?」
リーヴァ「えっ嘘?!恥ずかしい……」
メトリ「…」
ヴィス「…」
メトリとセリフが被ると、どうしてこんなに屈辱的な気分になるんだろう。
メトリを軽く睨むように見ると、メトリは僕以上に睨みを聴かせて見てきていた。なんだコイツ。
リーヴァ「そ、それより…二人とも危ないよ。次に同じことしたら、私怒っちゃうからね?」
メトヴィ「もちろんだよ、リーヴァ。」
メトリ「!」
ヴィス「…」
またセリフが被ったため、お互いさっきよりも強く睨み合った。
メトリは良い友人だと思っていたが、勘違いだったか?
リーヴァ「二人とも!!」
メトリ「、ごめんねリーヴァ?怒った…?」
ヴィス「すまないリーヴァ‥」
いい加減嫌になってしまったのか、リーヴァは声を大きくして僕たちを呼んだ。
メトリも僕もすぐに謝り、座り直す。
リーヴァ「怒ってないよ!
でも、これ以上待つのも出来ないから、話戻そう?」
ヴィス「うん、そうだね。
それじゃあまず、いつ返り討ちにするか決めよう。それを決めないと、まず始まらない。」
メトリ「うーん…」
ミーフィ「今日の夜はどう?」
リーヴァ「これから仲間集めをするし、無理じゃないかな…?出来るだけ早く倒すのも大事だけど‥」
僕たちは、この作戦の決行日をいつにするかを話し合う。今日の夜は、リーヴァの言った通りの理由で不可能。明後日となると遅すぎる。
となると…
ヴィス「__|明日《あす》の夜か‥?__」
メトリ「なら、明日の夜なら?」
ヴィス「‥それなら仲間集めも出来るだろうし、いいかもしれないな。」
ミーフィ「じゃーそうしよ!明日の夜決行!」
メトリ「っなったら次は仲間集めだよね!!」
メトリに先を越されてしまったのを少し悔しがるが、お構いなしに話は進んでいく。
次は仲間集めのようだ。
リーヴァ「うん。
まずは、身近なところからアレンとかルオナとか…」
メトリ「シャルルさんとか、レイアさんとか…」
ミーフィ「ライルお姉ちゃんとか…」
僕は、すぐに一人の旧友の顔が出てきた。彼は何よりも“変化”を嫌い、永遠を好む。この工場でこんな大きな“変化”が起こっているのだ。彼だって多少なりとも怒りは湧いているはず。
しかし彼は他者と関わりを持ちたがらない性格だからな…そこが彼の中でどうなるかで、賛否どちらになるか分からない。
あとは、少し申し訳ないが、メアリーと…
??「貴方埃まみれじゃない!。せっかくのドレスが台無しだわ」
ヴィス「…__これは偶然なのかはたまた‥__」
頭に思い浮かんでいたドールが現れた。
リーヴァ「あ、あたしですか?」
その人物はコクリと頷く。リーヴァがドレス見てみると、確かに埃だらけ。
まあ、致し方ないと僕は思う。何故ならこんな埃っぽい場所にいるのだから。これで一切埃がつかなかったら、それこそおかしい。
慌てて埃を払い、物前の人物に向かってお礼を言う。
リーヴァ「ありがとう!気づきませんでした…あ!あたしはリーヴァといいます。こっちは左からメトリ、ミーフィ、ヴィス。」
シルヴィー「私は“シルヴィー”。人形は美しく完璧でないと。」
彼女は|ココ《工場》が全盛期だった頃からいる古参のドール、シルヴィー。
トラウムの後輩、僕やレイアの先輩の立ち位置にいるドールで、“完璧な人形”に強く憧れを抱いている。彼女の言う完璧な人形は、きっと‥誰かに買われた意識のない、ただのドールのことだ。
また彼女は、酷く自分を卑下しているようで、自分は無価値のドールだと言っている。全盛期の頃に色々とあったのが原因だと思われるが…ここではあまり語らないでおこう。
特に苦手そうなものはないが、唯一汚い場所…埃っぽい場所や虫を苦手としている。さっきみたいに、自分以外のドールにもいい意味であれこれ言う。
実はシルヴィーも僕も、お互いを知っているのに殆ど接点がない。集会の時やたまたま会った時に多少話すが、それ以外に記憶に残っているものはないのだ。
昔からこの場所に“残り”続けているのに…不思議なものだな。
誰かに紹介するかのように心の中でそんなことを思っていると、シルヴィーの後ろからひょっこりとどこか見覚えのあるドールが現れる。
リーヴァ「イヴ!」
イヴ「リーヴァ、さん!」
ヴィス「…?」
リーヴァとイヴと呼ばれるドールは手を取り合い、とても嬉しそうした。
リーヴァとの交友があるのに、僕が知らない…?この前の集会で新たに生まれたドールか?
チラリと横を見てみると!メトリとミーフィも、僕と同じ考えのようで、頭にハテナマークを大量に浮かべている。
メトリ「リーヴァ、知り合いなの?」
リーヴァ「うん!新人さんのイヴだよ!この前エックス?がきた時、とっても踊りが綺麗だったあの!」
『踊りが綺麗だった』の一言でなんとなく思い出した。リーヴァを釘付けにしていた、あの、ドールだ。確かにこんな感じだった気がする。
何故だか全て思い出せない…あの時僕が忘れたいと思うほどの何かがあっただろうか…?
ヴィス「あぁ、あの子か。よろしく、僕はヴィス。」
ミーフィ「私はミーフィ!」
メトリ「私はメトリ!リーヴァの相棒やってます!」
イヴ「イヴ、です。これから、宜しくお願いします、です。」
特徴的な喋り方だな…語尾に「です。」をつけている。
…この方が誰だか分かりやすいな。
そんなバカみたいなことを考えていたら、リーヴァは人形ゴロし‥殺人鬼の話を二人にする。
シルヴィー「昨晩の殺人鬼を返り討ちにする、ですって?」
イヴ「イヴ、怖いです。」
二人とも黙り、考え込んでしまう。
それはそうだろう、何故なら今、死ににいかないか?と言われているようなものなのだから。
シルヴィー「『殺人鬼』なんて変よ。ドールなら『壊す』が正しいわ。私達は魂が宿っただけの人形だもの」
メトリ「まぁ、そうなんだけどね…って、そこは今重要じゃない!」
メトリが的確なツッコミを入れる。珍しいな…。
いや、それこそどうでもいいか。
イヴ「イヴ、戦うのいや、です。ごめんなさい。」
シルヴィー「私も。ドレスが汚れるのはいやだわ。それでは。」
イヴは出来たばかりだってこともあるし、仕方がないが…。相変わらずだな。シルヴィーは‥。まさかドレスが汚れるからと断られるとは‥。
こうなったら仕方がない。
ヴィス「協力してくれそうな人形に、片っ端から当たるか。」
ミーフィ「あ!大変!」
ミーフィは突然そう言い出し、慌て出した。
リーヴァ「どうしたの!?」
ミーフィ「ルオナお姉ちゃんに呼ばれてたんだった!急いで行かなきゃ!またねみんな!」
ミーフィはそう言って、リーヴァたちが何も言えないまま去ってしまった。
リーヴァ「そうなの…?またね。」
リーヴァが一歩遅れて別れの挨拶する。
ミーフィが抜けて三人になった僕たちは、続けて協力者を探す旅に出る。
---
リーヴァたちが進む方へ、珍しく何も考えずついて行っていたら、懐かしい場所へやって来た。
蜘蛛の巣が張り巡らされ、窓ガラスは白く曇り光を通さなくなっている。ロフトのように狭い通路に数個の家具が置かれている…ここは_
--- トラウムの住処 ---
まさかこんな早い段階で誘うことになるなんてな…。作業部屋に、昨晩色々出会ったのにも関わらず置いて来てしまったので、少々気まずいんだが、そんなこと言っていられないか‥。
腹を括り、音が鳴る方へと足を運ぶ。
音の正体は、揺れるロッキングチェアだった。そのロッキングチェアに、一人腰を掛けてゆっくりとくつろいでいる人物は、この場に一人しかないない。
チラリと目線だけを移しこちらを見て、とても小さなため息をつく。
トラウム「自分、一人が好きなんです。静かな時間を邪魔しないで下さい。」
家の主人であるトラウムは出て行け、と出口の方へと指を指す。しかし、こんなことでそそくさと帰るようなドールはこの場にいない。
リーヴァ「トラウムさん。あたしたち昨晩の事件の犯人を返り討ちにするべく、仲間を集めているんです。あなたの力が必要なんです!」
リーヴァは、先程シルヴィーたちにあっさりと断られてしまったからか、今回は少し力強くトラウムへ訴えた。
トラウム「後ろの《《二人》》は誰ですか?」
…二人、か‥。
ヴィス「…僕はヴィスといいます。彼女はメトリ。」
メトリ「初めまして。」
トラウムはこのままじゃ一生帰らないと諦めたのか、本を読みながらこちらを振り向き、僕たちは何者かを問う。
きっと、僕もその中に含めたのは今朝の仕返しだ。後でちゃんと謝ろう…。
トラウム「そうですか。しかし、なぜ自分に協力を頼むのです。」
リーヴァ「少しでも多くの力が必要なんです!なにせ、相手は強大な力を持っているので。」
トラウムは少し考え込み、決心がついたのか本を読むのをやめ隣に置かれているミニテーブルへと置く。
トラウム「正直なところ、自分はあまりそう言ったことには関わりたくありません。…しかし」
座ったまま、視線のみをこちらに向けて言う。
トラウム「…このらんちき騒ぎには腹が立っているんです。一応、自分もかなり昔からここで暮らしているので荒らされたくはないですし。」
つまり…これは、**了承**。
リーヴァとメトリはパァっと顔を明るくさせ、笑顔でトラウムへと礼をする。もちろん僕も、深々とトラウムに礼を言う、
三人「ありがとうございます!」
すると、
トラウム「お三方は、この工場についてどの程度ご存じですか。」
ヴィス「_、」
メトリが急にこちらを見るものだから答えられなかったじゃないか…確かに昨日、七十年以上前からいるとは言ったがそんな見なくてもいいだろう‥?
トラウム「…そうですか。せっかくですので、この工場の秘密について話しておきましょう。」
トラウムは、一度聞いたことのある話を話し始める。
途中からの話は、僕が実際にこの|身体《からだ》で、心で体験した話を_
---
この工場はかつて『舞台のような工場』と呼ばれていました。
しかし、時が経つにつれ、人間たちは飽き、
だんだんとこの工場にも活気がなくなっていきました。
そんな時、工場の設備に欠陥があったことで
ここで働いていた従業員の一人が命を落としてしまった。
その責任を取るため、この工場は閉鎖されて誰も出入りしなくなり、
自分たち人形もこの工場に置き去りになりました。
年月が経ち、工場もペンキが剥がれたり蜘蛛の巣ができたりと散々な状態になってきていた時、
X が現れました。
X が人形を一つ残らず修理すると不思議なことに、人形たちに命が吹き込まれました。
そこまではよかったのです。
それで終われば自分は X を軽蔑することはなかったと思います。
1年後、
また X が現れました。
そしてこう言ったのです。
「すまない。この工場を出られるのは、選ばれしドールだけなんだ」
そう言ってこの工場の周りに人形に対する、強力な結界をはった。
人形は自由に工場に出入りすることを禁じられた。
---
トラウム「__そうして、今まで外に出たい人形たちは争う羽目になった、と言うことです。」
リーヴァとメトリは、初めて聞いたのであろうその話に、あんぐりと口を開け驚愕していた。
リーヴァ「なぜ、 X は人形たちを閉じ込めたの…?」
トラウムもエスパーじゃないため、Xが何を考えていたのかまでは分からない。首を横に振る。自分で言うのもなんだが、割と人の考えていることを分かってしまう僕でも、彼の心理は一切わからない。彼の考えは、あの不気味な笑顔に隠されてしまっている。
メトリ「トラウムさんは、そんなに昔からこの工場にいるんですね…」
チラリと僕を見ながら言うメトリは、一体何を考えているんだろうか…想像はつくが、口に出したくない。
トラウム「そうですね。ですが、いまだに X のことはよく知りません。…では、夕方にまた会いましょう。どこへ向かえば良いですか?」
三は顔を合わせハッとする。
前にいるトラウムは「まさか‥」とでも言いたげな呆れた顔をした。
リーヴァ「そういえば、決めてなかった!」
---
---
あれから僕たちは、危険な夜になる前にライルの元へ行き、あっさりと了承を得た。あんまりにもあっさり過ぎて、熱でもあるのか疑ってしまった件については謝った。
そして、今朝‥いつもよりも早く起きて行動した。
まずレイアの元へ向かった。彼女が一番なんだかんだありそうだと思い、次の日に誘おうと僕が言ったのだ。
レイアのいる倉庫へ向かうと、たまたまそこにアレンとシャルル、そしてもう一人‥ブロードも居合わせていたため、その事を伝えた。アレン、シャルル、ブロードはすぐに了承をしてくれたが、レイアは僕の予想通り、「危険よ、危ないわ!」と僕たちを止めようとしてくれていた。
まあ、最後は全員からの圧もあり参加することになったのだが……ただ彼女は戦闘要員ではなく、怪我の処置などをしてもらう救護として参加してもらった。戦闘向きの能力でもないし、仕方ない。
そんな風にレイアたちと話しをして、次の協力者を求めて去ろうとした時、イヴが現れ自分も戦うと言い出した。断ったのに何故だと聞くと、真剣な表情で「怖いけれど、戦いが少しでも早く終わってほしい」と言ってくれた。そんな彼女を拒む理由はないため、もちろん了承する。
次にルオナ。ルオナに用事があると途中で抜けたミーフィもいた。ルオナ本人は、ものすぐい集中力で自身の能力で情報収集をしているようだったが、あらかじめミーフィが聞いておいてくれたのか、ルオナも参加することがわかった。
最後に、メアリーの元へと向かった。
メアリーは、リーヴァたちが刺客に襲われた時にもいたと話に聞いている。そして、その時にメアリーを庇ったルークが……壊されてしまったと言うことも_
メアリーは、そこに悩んではいたがすぐに決断してくれた。「私も行く」‥と。メアリーは、ルークが残してくれた想いが
きっとルークは、あの時にメアリーを守れてとても嬉しかったと思う。ルークのためにも、メアリーを壊させるわけにはいかない。ルークと同じところにメアリーがいってしまったら、それこそルークが悲しむだろう‥。
ルークも、その他のドールも…僕があの時、刺客を仕留めていればなかった犠牲だ。これ以上の犠牲を出さないためにも‥リーヴァを守るためにも、僕は命を《《賭》》けて戦う。
正直、この戦い…僕は勝てると思っていない。たった一夜で、弱いわけではないであろうドールたちを…大勢壊したのだ。アレンの情報によると、工場の半分以上のドールが壊されたと言う。そんな相手に、決して多くはない人数で勝てるだろうか?
まるで、勝つか負けるか‥賭博をしている気分になるな。
僕は何があってもリーヴァだけは助ける。
他のドールがどうなっても……`リーヴァだけは`
ヴィス「フー‥。」
フと、空を見上げると辺りはオレンジ色に輝いていた。後一時間ほどで夜が来るだろう…
工場で見る“夜”は、これで最期かもしれないな‥。
…せっかくだ。思い出の場所でも、最後に回ろうか?この工場は何十年も前に作られたせいで、あっちこっちボロボロなんだ。いつ崩れてもおかしくはない‥今回の戦いで限界を迎えることだろう。
それならばせめて、最後に‥この目に焼き付けて戦いに挑もうじゃないか。
ヴィス「また、夜がやってきた_」
そんな捨て台詞のような言葉を吐き、その場を去る。
--- 今宵 ---
--- このアミアンジュワァクトリーの平和を天秤にかけた ---
--- `決戦`が始まる__ ---
今日の文字数
9073文字
一晩集中して書いたら8300文字いったのは秘密だかんね…!!!((
いつまでも 君の隣にー決戦編IIー
※10000文字越え
※後書きの小話とかなんかよく分かんないけど許してネ☆((
いつまでも 君の隣にーただ一つの熱願編ー
空を見上げる。
ヴィス「今日は、美しい星空が広がっているな‥」
今日は朝から晴れていたため、夜は雲ひとつない星空が見えた。キラリキラリと光るその星たちは、今日も懸命に生きている。
この美しい空を見るのも、最後かもしれないのか…。
そう考え、僕は少ししんみりした。
メトリ「急にどうしちゃったのさ!ヴィスらしく‥は、あるのか。」
すると、横からひょっこりメトリが現れ、いつものように元気一杯の笑顔を僕に向けた。
ヴィス「‥今日で、全てが決まるんだと思ってな‥」
メトリ「あはは!全てが決まるだなんて、大袈裟だよ!!
…でも、まぁ‥確かに、そうなのかもしれないね‥」
ヴィス「…」
声色を変え、ほんの少し俯くメトリ。その目尻には、キラリと光る何かが見えた気がした。
メトリ「‥、ねえヴィス!」
次にこちらを向く頃には、その光るものも綺麗さっぱり消えていた。
同時に、メトリの声はさっきと同じような明るい声になっている。
ヴィス「どうした?」
メトリ「‥必ず生きて、また会って‥もっと、もっともっと楽しいことをいっぱいしよう!」
メトリは、腕を上に向けて大きく広げた。片手には、いつも持っているめいぐるみがぶら下がっている。
メトリ「ミーフィとも、シャルルとも、アレンとも、ルオナとも、メアリーとも、ライルとも、ブロードとも、シルヴィーとも、イヴとも、レイアとも、トラウムとも_リーヴァとも。《《みんなで》》たくさん楽しいことしよう。鬼ごっことかかくれんぼとか‥後、人形遊びとか!それから_」
一人一人名前をあげて行くメトリのその声は、今から友人と目一杯遊ぶ子供のようだった。クルクルと楽しそうに回り、何をしたいか挙げていく。
メトリ「_ルークも、ルビーも、他のたくさんの人形たちも、みんな逝なくなっちゃったけど、私たちだけでも生き残って、みんなの、分まで楽しく‥!__生きよう__‥!!」
ヴィス「‥嗚呼。必ず勝って、最期のその時まで楽しく生きよう。きっと、それが残された僕たちに求められる生き方だ。」
メトリ「__うん__‥!‥ありがとう、ヴィス‥。」
少しずつ小さくなった声。あの声には、一体どんな想いが込められているのだろう?
きっと、僕には想像できない沢山の感情が、想いが込められている。僕はそう感じた。
しかし、『《《みんなで》》』‥か。メトリの願いは、本当に叶うのだろうか?
僕の予想が正しく、その人物がこの場にいなかったら…それは叶わないかもしれない。
そんな不吉なことを考えながら、メトリに持っていたハンカチを渡し、その場から離れる。後ろから啜り泣く声が聞こえたのを、聞こえなかったフリをして。
ヴィス「ー‥」
ふうと息を吐き、辺りを見てみると、既に殆どのドールたちが集まっていることが分かった。半分以上のドールが何かを決意したような、そんな真剣な顔をしてこの場にいる。残ったドールたちは、少し強張った顔をするのが見える。
しかし、ブロードの姿だけはどこにも見えなかった。彼は‥どこに居るんだろうな。
「ヴィス。」
「ヴィスさん。」
二つの声が、僕の名を呼んだ。
僕は振り返り、その声の主たちを見る。
ヴィス「レイア?トラウムも。どうしたんだ?」
レイア「なんだか落ち着かなくてね‥この三人で雑談でもしたら、少し気が紛れるかと思って。」
トラウム「自分も、、レイアさんと同じです、、、」
ヴィス「はは。なんだ、それ。」
レイトラ「「……」」
ヴィス「__なんだよ、その顔‥」
なんだか無性に面白くなり、表情を緩ませクスクスと笑った。何故だか、二人は驚いたような顔をして固まっている。
僕はすぐに元の表情に戻った。
トラウム「あ、いや、、、まさかヴィスさんが笑うなんて思わなくて、、」
レイア「貴方がそんな風に笑うだなんて、思わなかったのよ‥」
レイトラ「「《《初めて見たから》》」」
ヴィス「はぁ‥?」
二人は似たようなことを言って、お互いを見た。「ねぇ?」とレイアがトラウムに同意を求めると、「ですよね、、」とトラウムも頷く。
失礼じゃないか、二人とも‥。
レイア「ふふ、ごめんなさいヴィス。だって貴方、本当に全く笑わないんだもの。」
トラウム「自分がヴィスさんの笑った顔をしっかりと正面から見たの、、これが初めてですよ、、?」
ヴィス「冗談よしてくれ‥ちゃんと笑ってるぞ、二人の前でも。」
レイア「嘘ね」
トラウム「嘘ですよね、、」
ヴィス「オイ‥」
二人が困ったような笑顔で僕の表情筋の話をしていると、集会場の入り口の方でシルヴィーとリーヴァが会話をしているのに気がついた。リーヴァは、いつにもなく真剣な表情で何か言った後、シルヴィーは去っていく…
そろそろか。
ヴィス「すまない二人とも。そろそろ‥」
レイア「、…‥もっと早くから話せていたら良かったのに‥」
トラウム「まあまあ、、、ヴィスさんが想い人と過ごす時間なんですから、良いじゃないですか、、」
ヴィス「トラウム!!」
レイア「あら。貴方にもようやく春が来たのね!私、応援してるわよ?」
ヴィス「ホントに、よしてくれ‥。」
トラウム「__ふふっ。__」
二人はクスクスと口に手を当てて笑っている。
二人とも、いつになく楽しそうだ。レイアの言う通り、もっと三人の時間も作っていたら良かったな__
トラウム「_ほら、行かないんですか、、?メトリさんに取られちゃいますよ。」
トラウムが指を指す方向を見ると、メトリがリーヴァの方へ駆け寄っているのが見えた。
ヴィス「‥《《次やったら》》承知しないからな。」
レイア「耳が真っ赤。説得力ないわ。」
トラウム「あ、本当だ、、」
ヴィス「‥」
ギロリと睨むと、二人は何事もなかったかのようにしだす。
ヴィス「__全く…__
‥それじゃあ、《《また》》」
トラウム「はい。《《また》》」
レイア「怪我をしたら私のところに来なさいよ?…必ず《《また》》、会いましょう。」
僕たちは、お互い背を向けてそう言い、その場を去っていった。
三人の時間なんて、これから作ればいいのだ。そう…
--- |ブロード《新たな人形ゴロし》を倒して__ ---
帰っていくシルヴィーの背中を見つめるリーヴァの元に着くと、メトリも既に来ていたようだ。僕が来たことを見計らい、リーヴァへ声をかけた。
メトリ「リーヴァ。準備はOK?」
ヴィス「リーヴァ、僕から離れないように。」
リーヴァは決意に満ち溢れた真剣かつ明るい表情、声で返事をしてくれる。
リーヴァ「うん!」
僕、リーヴァへとあることを言うために一歩近づく。
--- バチバチッ ---
ヴィス「!?」
その瞬間、集会場が突然停電した。廊下があるであろう方向を見ても明かりは見えないため、工場中が停電したと考えられた。
突然の出来事に人形たちはざわめき、一瞬にして騒がしくなる。
ミーフィ「真っ暗!」
イヴ「どうして、です?」
アレン「何が起きてる?誰か、ブレーカーの場所知ってるか!」
人形たちの様々な会話が聞こえてくる中、アレンは冷静に対処を始める。ブレーカーの位置を知っている者はあまり多くない。僕は知っているが、リーヴァから離れるわけには…。
シャルル「俺がブレーカーを戻してくる。」
僕がアホみたいなことを考えていると、シャルルがブレーカーを上げに向かおうとした。
その瞬間_
「レディースアーンドジェントルメーン!ようこそお集まりいただきありがとう!」
いつもXが登場する際に言う、あの定文。しかし、その声はXのものではなく、男性とも女性とも取れる不思議な声をしている。声の主が誰か分かっているのはほぼゼロであろう。
いつの間にか、いつもみたくスポットライトがステージの中心へ当てられてい。
他のドールもこのセリフを聞いたことがあるため、さらにざわつき始めた。
ドールたちは、次第にスポットライトの当てられたところより少し先に視線を向けるようになる。
リーヴァ「このセリフ…」
??「お待ちしておりました。皆さま!」
いつも被っているシルクハットを手に取り、集会の時に会った時と同じ、優雅なお辞儀をする人物。それは_
メトリ「《《ブロード》》…?」
ヴィス「やっぱりか…!」
僕は、最後に工場を見て回りながら考えていたんだ。“新たな人形ゴロしは一体誰か”を…
僕が持っていた情報は、『一人称が|私《わたくし》であること』『敬語』『空間を操る能力で、遠距離からの攻撃が可能なこと』『主な武器はナイフであること』‥など。見てわかる通り、限りなく少ない。
まず、一つ目の情報でだいぶ絞られた。この工事にあの一人称の者は然程多くないのだ。敬語であるドールも少ないわけではないが、絞ることはできる。
次の能力の情報は、能力自体の情報が少なすぎてあまり絞ることができない。代わりに、僕が『能力をよく知らない相手』で絞る。ナイフが武器というのは、そもそも武器自体見られないので犯人は絞れないため諦める。
人形ゴロしなんてやるくらいだ。ドールや工事を好まないドールであること、外へ出たい派閥であることでさらに絞り、数人へと犯人候補を減らした。
ここまで絞れば、後はただ怪しい人物をピックアップするだけ。
その中にブロードはいて、僕は眼鏡の件や絶望の迷宮で一人でいたことを考慮し、要注意していた‥。
この時だけは、僕の記憶力と、覚えていた過去の僕に拍手と感謝を送りたくなったというのは、心の中に留めておく。
そして今日、あの集会場に集まるドールたちで、怪しかったドールの有無を確認し、ブロードのみその姿を見ることができなかったため、僕はブロードが犯人だと断定したのだ。
しかし、犯人が分かってもこうなったら意味がない。リーヴァたちに伝えようと思っていたのだが、遅すぎたようだ。
この考察も、無駄になってしまったな…。
ドール「誰だあれ?」
ドール「見たことないなぁ」
ドールたちの声は止めどなく流れてくる。その声の話題は、現れたブロードのことと、突然の停電のことしかない。
ブロード「皆様、不思議に思っていることでしょう。|私《わたくし》がなぜ急にステージの上で話し出したのか…それは」
ブロードは、喋りながらモニターを下ろし始めた。
この場にいる全ドールがそのモニターに視線を向ける。
ライル「はぁ?めんどくさ…」
トラウム「何が起きるのでしょうか。」
メアリー「一体何をしているの…?」
全員が頭にハテナマークを浮かべ、モニターを凝視する。
すると、突然映像が流れ出した。流れる映像は、人間の映った古そうなビデオ…音声はなく、ただただ人間たちが動く様子が撮られたもの。
ブロード「人間はとても魅力的です。」
ブロードは、そんなつまらない映像をうっとりと眺めながら語っている。その姿はまるで、人間に恋でもしているかのような_
ブロード「人間は良いですよね。人形とは違い、美しい腕、足、指、目…全てを持っています。それなのに、人形という人もどきを作って美しいと鑑賞する、その不思議さもまた奥深い。
|私《わたくし》は人間になりたい訳では無いが、周りのドールは人間になっても良いと思います。」
ブロードは、自身を落ち着かせるように一息つく。殆ど一息で喋ったんじゃないだろうか?
ブロード「長々と話していると、夜が明けてしまいますね。それでは、そろそろ始めましょう。」
そう言うと、ブロードは右手を掲げた。
この瞬間…
ブロード「ショーの始まりです!」
--- `パリンッ` ---
リーヴァたち「!!!」
ステージ周辺の空間が歪み、ソレに近くにいたドールたちが巻き込まれてパリンと耳をつんざくような音を立てて、割れた。
ブロードの能力であろう。Xを思わせる不気味な笑みを浮かべ、一瞬にしておよそ五十のドールを壊してしまった。ステージの周りには、割られたドールの残骸が落ちている。どの破片がどのドールのものか判別する術は、ない。
呑気にそんなことを考えていると、僕のすぐ近くにいたドールが割られた。感情を出す前に、反射で後ろへ下がり、巻き込まれないよう退避する。
レイア「なんてことをするの!!」
アレン「みんな下がって!」
イヴ「どうして、こんなこと、する、です?」
ブロード「ふふふ‥。
どうして、ですか。答えは簡単です。|私《わたくし》が選ばれしドールになるためですよ!」
そんな“自己中”の塊発言をするブロードは、片手間にドールたちを次々に割っていく。
パリン
多分今ので百…これ以上は不味いな‥。
仲間がやられているというのに、どうしてこんなにも冷静なのだろう‥僕は、少し自分が恐ろしくなった。
リーヴァ「あなた、あの時パイプが倒れてくるって教えてくれたよね?親切な人だと思っていたのに…」
ブロード「あはは!え?まさか本当に|私《わたくし》のことを信じていたのですか?馬鹿らしい、嘘だとも思わないなんて。
あのパイプは、|私《わたくし》が倒したのですよ。」
リーヴァが、怪我をした原因は、|アイツ《ブロード》か__
ヴィス「何のために!」
メトリ「許せない!」
僕は、『何のためにリーヴァを傷つけるようなマネをした』という意味でそう言った。メトリもきっと、そう言った意味を込めて言ったのだろう。
しかし、そんな二人の発言に、ブロードは面倒臭い、とでも言うかのように深くため息をつく。
ブロード「鬱陶しいんです。さっさと私の踏み台になってください。」
…|アイツ《ブロード》には一体どんな罰が似合うだろうな。
自己中心的な発言を言い終えると同時に、唯一の明かりだったスポットライトが消えてしまった。ブロードの姿も見えなくなってしまい、見失ってしまう。
その瞬間、ブロードの能力であろう。大きな空間の歪みが、押し寄せてきた。
**「みんな!一時退散!!」**
この声は‥ルオナか!
いつになく大きな声で、ルオナはそう叫ぶ。
生き残っていたドールたちは、その声でよくやくまともに体を動かし、大急ぎで集会場の外へ逃げ出した。
リーヴァを視界に入れつつ逃げていた僕は、逃げるドールたちの波によりリーヴァを見失い、さらにその波で外へと押し出されてしまった。
僕が外に押し出され、数秒後先程まで無事だった集会場は、空間の歪みにより無惨にも崩れた。
ヴィス「__リーヴァ‥!__」
ドールたちを掻き分け、リーヴァを探す。
周りのドールたちは、この暗闇の中集会場の成れの果てを見てざわついている。
ドール「あいつが人形ゴロしか?」
ドール「やばくね?一瞬で集会場が崩れたぞ。」
ドール「戦うなんて、やっぱ無理。」
「ヴィス、!」
少し苦しそうに僕の名前を呼ぶ声はメトリのもの。声のする方へ急いで行くと、メトリは他のドールによって壁に押し付けられている状態になっていた。
ヴィス「メトリ!
オイ、どけ。邪魔だ」
メトリの周辺にいるドールを、無理やり押しメトリを解放する。軽く咳き込むと、「向こうにリーヴァが」と指を指す。
メトリと共に、指を指した方へ行くと、そこには、血の気の失せた表情でリーヴァが何か呟いていた。きっとその内容は、ブロードへの何か。怒りか、悲しみか、困惑か、疑問か…それがどんな感情によるものかは、僕には分からない。
メトリ「リーヴァ!無事!?」
ヴィス「怪我は?擦り傷一つでもないか‥?もしあったら死んででも|アイツ《ブロード》を|止めて《叩きのめして》くるよ‥?」
リーヴァ「‥う、うん‥大丈夫。だから、やめてねヴィス‥」
ヴィス「それなら、良かった。
あいつ、何を考えているのかわからないな。」
少し背伸びし、辺りを見る。
レイアとトラウム、メアリーとシャルル、ミーフィ…僕が親しくしているドールは全員無事。少しずつ仲間同士で集まっているようだ。
メトリもその様子を見たようで、酷く安心している。
メトリ「良かった…知り合いはみんな無事ね。」
ヴィス「‥ルオナ?」
メトリ「えっ?」
ルオナがドールたちを押し除け、急いでこちらへやってきた。呼吸を少し落ち着かせ、ゆっくりと衝撃の事実を言葉にする。
ルオナ「聞いて!さっきのやつなんだけど…
鳥たちに聞いた情報によると、あの人…
**Xが最初に作ったドールらしい。**」
リーヴァ「えっ…」
その話を聞く全てのドールがゴクリと息をのみ、その事実を耳にする。
Xが、あの手で初めて作ったドールがブロード…‥なんとなく、納得がいってしまう。
ヴィス「!」
崩れた集会場の方から、ブロードの高笑いが聞こえる。
ブロード「誰一人として逃しませんよ。|私《わたくし》が外に出られるまで。」
ミーフィ「ヒィ…き、きた…」
アレン「みんな、下がって!」
ライル「い、言われなくても…」
ミーフィは殆ど泣いてるに等しい顔し、一目散という言葉が似合うほど素早く後ろへ下がった。リーヴァたちもすぐ後退りする。
すると、ブロードは早速攻撃を繰り出す。
ブロード「スペースモディファイ!」
リーヴァ「避け…」
ヴィス「__リ-ッッ“」
工場の床や壁、様々な箇所が歪んでいく…そのすぐ近くには、リーヴァの姿があった。避けれるような場所は近くにない_
必死に手を伸ばし、リーヴァを助けようとするが、間に合いそうもない。
僕は、“力を使えば、リーヴァ含め一部のドールを救うことは可能だが、残ったドールはどうなる?”なんてことを考える。
もし、リーヴァや他数人だけが助かったとなれば、リーヴァは僕をどう思うだろう…?
シャルル「水晶監獄!」
そんなことを考えていた瞬間、シャルルの力によってリーヴァは水晶の中に閉じ込められる。その水晶により、リーヴァを空間の歪みに巻き込まれることはなかった。
リーヴァ「!?」
シャルル「大丈夫だ。一時的なシェルタみたいなものだ。だが、気を抜いている暇はないぞ。」
リーヴァ「ありがとうございます。」
リーヴァはすぐに解放され、ブロードのことを見据える。
ヴィス「_」
リーヴァが壊されなかったことに、ほっと息をつく。
安心した途端、僕の中からは自分でリーヴァを助けられなかったことに悔しさが湧き出てきた。しかし、今はそんな個人的な感情に浸ったりする時間はない。
僕はすぐに、その悔しさの湧き出る穴に栓をする。
落ち着いて周りを見渡してみると、ブロードの攻撃を避けることしかできていなかったドールたちもそれぞれ力を使い戦っているのが見えた。
僕の力は|ジャッチ・アイ《裁判長の目》…この力は、被告人席に座る者を視界に捉えなければいけない。被告人‥つまりはブロードを、視界に入れなければならないのだ。
この力はブロードが隠れれてしまう壁やドールたちの力‥遮るものがあると使えないし、ブロードがワープを使うせいで、視界に捉えられない。
さらには照明がなく月明かりだけが頼りのこの場所じゃ、ブロードの位置すらハッキリわからない。
これでは…
トラウム「|En forme d'éternité《アンフォームド・エターナイト》!」
ブロード「おっと!」
トラウムも自身の力を使いブロードを止めようとするが、すんでのところでブロードも力を使いワープしてしまう。転送先は、トラウムの死角。
トラウムの場合、彼が力を使いたい相手の顔を見なければ使えない。そのため、相手の顔をトラウムが見なければ使えないのだ。ブロードはそのデメリットを使い、トラウムに自分の顔が見えないよう、死角にワープした。
これでは、僕はもちろんトラウムも無力だ。
アレン「狡猾な…!」
ブロードは、そんなワープでの回避をする性悪な方法を繰り返し、|最《いと》も簡単にドールたちの攻撃を避けてしまう。
ヴィス「これでは攻撃が当たらない。」
メトリ「どうしたらいいっていうの〜!」
ブロード「あっははは!やはり|私《わたくし》がこの工場で最も優秀なドールだぁ!」
どこからか、ブロードの高笑いが聞こえてくる。ブロードがワープを繰り返すせいで、どこにいるかがわからない。
ライル「ベルフェゴール!ベルフェゴール!ちっともあたりゃしない。めんどくさ!」
ドール「もうヤダっ!!!」
ドール「これじゃあ、能力の無駄遣いじゃねぇーか!!!」
ドール「死にたくないよ‥!」
ヴィス「_士気が落ちてる‥!!」
ルオナ「これはまずい。相手の思う壺だね。」
ブロード「今度は逃しません。スペースモディファイ!」
こちらの攻撃が当たらないせいで、士気がドンドン下がっている。
その様子を見ると、ブロードは今までよりも笑みを深めさらに余裕そうな表情をする。力の名前を唱えると、先ほどよりもずっと大きな空間の歪みがこちらへ押し寄せてくる。
メトリ「まずい!全員巻き込まれる!!」
ヴィス「逃げれる場所は___ない‥!!!?」
迫ってくる歪みが大き過ぎる。身の安全が保障できる場所に駆け込むまでの時間がない。
その時…
イヴ「っっビューティフリュバン!!」
先程まで後方にいたイヴが、ドール全員の前に庇うかのように出ていた。
もしかして、イヴの力は_!
イヴがその名前を叫ぶと同時に、イヴの髪はパステルピンクの色をしたリボンが生成され、イヴの後方にいた僕たちドールを包み込んだ。
視界が暗くなり、外から耳をつんざくような騒音が聞こえてくる。
しばらくすると視界が晴れた。
視界が晴れるというのは、外の歪みがなくなったことを意味する。
ヴィス「_、」
辺りを見渡す。
イヴの力で作られたリボンは、ブロードの力によって一定の範囲にしか届かなかったらしく、リボンで包まれていた周りには、ドールたちの残骸が大量に転がっていた。
レイア「ヴィス!」
ヴィス「レイアか‥怪我は?」
レイア「私は平気。ヴィスの方こそ、平気なの‥?」
ヴィス「もちろん。
‥と言っても、この無傷な体はイヴのお陰なんだがな‥」
レイア「良かったわ…」
レイアはほっと胸を撫で下ろし、辺りを見回す。周りに落ちているドールの残骸を見て、息を呑んだことが分かる。
レイア「…外に取り残された人形は‥みんな……」
ヴィス「‥そうらしい。僕たちは、運が良かっただけ‥たまたまだ。
イヴの後ろにいたから、救ってもらえた‥」
レイア「ええ…」
何か恐れているような、悲しそうな声が隣からする。
「た、助かったよ…」
「ありがとう!」
イヴのいる辺りから声が聞こえ始める。
よく見ると、ルオナとミーフィがイヴに感謝しているシーンが見えた。イヴは力を使った代償なのか‥フラフラした足取りだ。
イヴ「よかった、です…」
そう言うと、イヴはパタリと意識を失い、眠るかのように倒れてしまった。それを見たレイアがすぐに駆け寄り、抱える。
レイア「大丈夫!?しっかり!この子は私が介抱するわ。」
イヴの力により生き残ったドールはホッと安堵している。
それを他所に、レイアはイヴを抱えブロードの攻撃の届かない場所への連れて行った。
しかし、戦いはまだ続いている。安心している余裕はない。
「まさかあの攻撃を防ぐとは…感心ですね。」
ほんの少し驚いたような顔をして、そう呟くのは空中に浮くブロードだ。
アレン「一体、攻撃を当てるにはどうすればいいんだ…」
ルオナ「一つ心当たりがあるよ。」
ルオナは、アレンのその発言にそう提案して、リーヴァの方を見る。
キョロキョロと自分の周りのドールを見るが、明らかにルオナの視線はリーヴァを見ていた。リーヴァはそれを確認して、自分を指差す。
リーヴァ「あ、あたし!?」
ルオナはそうだ、とでも言うように頷き喋り始めた。
ルオナ「確か、リーヴァの能力って辺りを照らす力だったよね?鳥から聞いたんだ。」
ヴィス「そうか。この場が明るくなれば、攻撃も当てやすくなる。少なくとも今よりは。」
メアリー「そういえば、あの時の光、とても眩しかった…」
メアリーは、何かを思い出したのか目を細めた。
リーヴァは決意し、自分の拳を見る。
リーヴァ「‥わかった。やってみる。」
ヴィス「リーヴァ、君なら出来るよ。」
リーヴァ「うん‥!」
リーヴァは、ブロードに向かって唱える。
最後のチャンスを生み出す、その言葉を…
リーヴァ「**ヴィトロルミエール!!**」
工場中が、まるで昼のように明るくなる。暗闇に慣れてしまった目には少し毒だ。
ブロード「またこの光かっ!!」
ブロードもあまりの眩しさに両手で顔を覆った。
その瞬間
--- パァンッ ---
ヴィス「?!」
リーヴァの力によって発した光の粒。それが破裂し始めたのだ。
ヴィス「、なんだこれは!?」
トラウム「光が…!」
破裂した光の破片らしきものがブロードの服につくと、瞬く間に炎で包まれ全身へと広がっていく。
ブロード「目が…服がぁ…!」
炎に包まれているブロードは、必死に燃え盛る炎を消そうと服を|叩《はた》いたりするが、それは逆効果…
ブロードは包む炎は、さらに勢いをました。
アレン「やるなら今しかない。」
アレンのその一言に、ドールたち頷き最後だと言わんばかりの猛攻撃を仕掛け畳み掛けた。当然、僕も_
ヴィス「|ジャッジ・アイ《裁判官の目》。」
メトリ「サイコキネシス!」
シャルル「水晶監獄!」
ミーフィ「マリオネット!!」
アレン「グラン・カルマ!」
ルオナ「ルボネテレパシー!」
ライル「っべルフェゴール!」
トラウム「|En forme d'éternité《アンフォームド・エターナイト》。」
全身を焼く炎と、ドールたちの攻撃によりボロボロと落ちてくるブロードの皮膚。もちろん、僕らはビスクドール、本物皮膚ではないく陶器の破片なのだが‥
ソレが下にいる僕らへと降り、コツコツと当たる。
ブロードはこれで倒せる。工場に平和が戻る‥!
--- あぁ…愚かですねぇ… ---
その考えは、どうやら___`甘かったらしい`‥。
ブロードを焼いた炎は、次第に収まっていく。
黒焦げの物体から、あの声が聞こえた__
そう言って鎮火したボロボロの姿で笑い、攻撃自体をワープさせた。
リーヴァ「なっ…」
ヴィス「ブロード‥!?」
ブロードは、全身がボロボロの酷い姿であるのにも限らず奇声にも聞こえる笑い声を発する。
その瞬間、ドールたちの出した攻撃は、自分たちの方へ牙を剥き襲いかかってきた。
ブロードの力により、ドールの攻撃は跳ね返ってしまったのだ。
ライル「まさか…自分自身に…グゥ。(眠りに落ちた)」
シャルル「嘘だろ…閉じ込められた。」
アレン「重力が…重い…!」
トラウム「ッ、、!」
メトリ「うわぁ?!」
次々と攻撃の跳ね返りを喰らっていく。ある者は自分の力で生み出した雷に打たれ、ある者は跳ね返った矢に当たり串刺しに、またある者はどこからか跳ねてきたナイフでズタズタにされている。
リーヴァ「_あぁッ“?!」
ヴィス「_リーヴァ!!!?」
リーヴァや僕の攻撃は、そもそも跳ね返ってくるものがないため安全_
そう思っていた。
実に‥馬鹿だ。少し考えれば分かったのに、リーヴァに危険が及ばなかったのに‥!!!
他のドールたちが出した攻撃がこちらにも跳ね、リーヴァに当たった。その衝撃で、リーヴァは跳ね飛ばされ壁に叩きつけられる。
攻撃は、ルオナやミーフィにも当たり跳ね飛ばされている。
ヴィス「くそっ‥リーヴァ!!」
すぐにリーヴァの元へ駆け寄り、声をかける。
ヴィス「大丈夫か、リーヴァ‥リーヴァ!」
リーヴァ「っ‥」
リーヴァは叩きつけられた反動により、軽い脳震盪のような状態になっているようだった。
ヴィス「レイア!
_は、ドールの手当でいないのか‥!」
レイアがイヴや他のドールの対処で近くにはいなかったため、リーヴァを抱えてレイアに預けようとする。
その時‥
ヴィス「_ガッ“‥?!!」
僕にも、他のドールの攻撃が跳ねてきた。
ブロードの方へは背を向けていたため、当たった背中からとても嫌な音がする。
ヴィス「ぐ‥」
背中からくる違和感には、覚えがある。僕が完成した直後の、《《あの感覚》》_
リーヴァ「_ヴィ‥__ス__‥?」
ヴィス「、リーヴァ‥良かった。ああ、傷だらけじゃないか‥キレイな顔にまで‥。服もボロボロだ。汚れもたくさんある。これ以上リーヴァを危険に晒したくない。すぐにレイアの元へ‥」
僕は、背中にある違和感や少しの痛みを隠すためにリーヴァへ目を合わせずに話す。背中からは未だに嫌な音がする。
リーヴァ「ヴィス‥体から変な音がするよ‥!怪我をして」
ヴィス「僕は大丈夫。ほら、立てるかい?肩貸そうか?」
リーヴァ「ねぇ、お願いヴィス。無理をしないで‥あたし、これ以上‥!!」
少し増えた声で、僕の服の袖を掴みそういうリーヴァ。君はいつもそうやって、自分よりも僕たちを優先してくれるんだな…。
この荒れた戦場で咲く一輪の花は、優しく暖かい_。
ブロード「終わりです。」
ヴィス「!」
ブロードが能力の名前を叫ぶと、周りの空間が一斉に歪み始めた。
ドール「もう、終わりだ‥」
ドール「死にたくない、死にたくない…ッ!!!!」
ドール「…」
この場の全員が絶望し、諦めかけた。
誰もが自分は死ぬんだと悟り最期の時間、死を覚悟する。
リーヴァ「そん、な‥」
ヴィス「‥」
リーヴァだけでも、どうにか助けよう
そのことで頭がいっぱいになったその時
「にャッ!!」
灰色の何かが、僕たちの横にある入り口からものすごい速さでブロードに飛びついた。
ブロード「な、なんです!?この猫!?」
「シャー!!」
よく見ると、リーヴァと出会ったあの日‥リーヴァに引っ付いてきた灰色の毛並みの哺乳類_猫だった。
ドール「うおおおおお!!」
ドール「いけええ!」
ドール「絶対に仕留める!」
ブロード「クッ…小癪な!」
ブロードは、いきなり自分へ飛びついてきた猫に動揺が隠しいれていない。そんなブロードの様子を見たドールたちは、「これが本当に最期のチャンスだ‥!!」と一斉に攻撃を始める。
しばらくは攻撃をどうにかしようと暴れていたが、次第にそんな体力はなくなってしまい、勢いよく倒れる。
ブロード「…はぁ…ここまでやったと…言うのに。」
深くため息をつくブロードは、四方八方から様々なドールたちからの攻撃を受け、まともに受け身などは取れなかったため全身ボロボロになってしまっていた。
何かの攻撃で衝撃が加わり崩れてしまったのだろう。そっと、右目の辺りをおさえている。
すると…
--- ボロっ ---
ヴィス「!」
おさえていた箇所からドンドンひび割れが広がってゆき、ついに頭の右半分はボロボロと、無惨にも崩れた。
ブロード「|私《わたくし》は…優秀ではなかったと言うのか…?」
最期にそう言い残し、悲しく、無念そうな表情のまま永遠の眠りへとついた_
---
終戦直後、僕はリーヴァをメトリに預け、ピクリとも動かないブロードの元へ近寄った。
ヴィス「‥」
ブロードの|身体《からだ》は、側だけの修復すら困難な程崩れており、綺麗な状態で眠らせることは不可能…それが、見ただけで分かるほどボロボロにだった。
ヴィス「終わりか‥」
“激戦の終了”‥僕はホッと安堵しつつ、メトリと一緒にいるリーヴァの方を見た。
いつも明るく、元気な笑顔を魅せてくれるその顔には、笑顔のかけらもない。脅威が去ったことへの安堵、失った多くの無実なドールたちへの悲しみ、ブロードへの怒りや悲しみ、他に方法はなかったのかと言う考え……様々な感情、思考が、リーヴァの中に渦巻いているのが見て取れた。
リーヴァ以外…この場の誰も、喜びも悲しみの表情もしていない。ただただ‥昨夜起きた、苦しい激戦の結末を見ているだけ_
朝日がボロボロになってしまった工場の至る所から差し込んで来る…それは、夜が明けた知らせだ。
キラキラと眩しいくらいに輝く朝日。ソレに照らされるブロードの亡骸を見て、僕の中に一つの、もう無意味な疑問が浮かび上がってくる。
ヴィス「僕たちにとってコレは……《《この結末》》は…本当に、最善だったのか‥?」
ポツリと独り言を呟く。呟いた既に遅い疑問は、あまりにも小さく、震えた声だ。
そんな声を聞いたのか、はたまたこの静寂を打ち越そうとしただけのたまたまなのか…この誰一人喋らない暗黙の空間を破ったのが、メトリだった。
メトリ「何はともあれ、これが《《最善》》だったんだよ。」
いつも見たく明るく振る舞い、周りのドールたちを励ます。メトリは本当に、人徳というかなんというか‥そういった類いのものを持っているのだろう。
その言葉に、ドールたちは「そうだよね‥」とほんの少しまだ暗い表情ながらも同意した。リーヴァも言葉こそ発さなかったが、コクリと静かに頷く。
ヴィス「…」
軽いため息をつきながら、顔を斜め上に向けて掛けている眼鏡を指で押し上げる。
差し込んでくる朝日が眩しいな‥。
_全てが終わった。
これで、リーヴァ《《たち》》との何気ない、ただの平和な日常が戻ってくる__
--- __ガタ‥__ ---
ヴィス「__‥なんだ?__」
今、揺れた気が‥。
レイア「ヴィス!」
ヴィス「、レイア…!
‥無事だったか、よかった。」
レイア「それはこっちのセリフよ!!わたしはただ、イヴや怪我をした人形の治療をしてただけ‥一番辛くて苦しかったのな、貴方たちでしょう‥?」
ヴィス「そんなの、変わらない。
確かに‥色々あったが、治療しなければ壊れるだけの運命だったドールだって山ほどいたんだぞ。それを治療して直すのだって大事な役目だし、辛いはずだ‥そんな風に卑下しないでくれ。」
レイア「、‥ごめんなさい。でも、だって‥」
ヴィス「‥どうした?」
レイア「‥」
チラリとレイアの目線をやったのは、ブロード。
その目線の意味は痛いほど、よく分かった。
ヴィス「‥何度でも言うが、こっちが辛いならそっちだって大変だし辛いだろ。色々ありはしたが、変わらないぞ。」
レイア「‥貴方って、自分の意見を全然曲げないから、意味はなかったわね‥ふふ。」
クスリと、いつもより子供っぽく笑う彼女は、リーヴァとはまた違う可愛らしさが垣間見える。
もしあの時リーヴァに出会わなかったら‥僕が恋に落ちてたのは、レイアだったりしたのかもしれないな。
--- __ガタガタ‥__ ---
トラウム「__事解決ですね。それでは。」
そんな冗談を考えていると、トラウムを含む数十人がそれぞれの場所に帰ろうとしていた。
ミーフィ「‥ねぇ!待って!工場の様子がおかしい!」
ミーフィはそう言って、辺りを見回した。
その様子を見て僕らも見てみると、工場の至る所に出来てしまったヒビが大きくなっていき、酷いところからガラガラと崩れ始めている…。
あの激戦に、工場が耐えられなかったのだ。
ヴィス「嘘だろう‥!!」
レイア「そんな‥」
トラウム「、、、」
ヴィス「ッ‥。
工場が崩れる!外に出ろ!」
僕は精一杯大きな声でそう叫んだ。この間にも、工場は唸るような音を上げている。
ミーフィ「外に…出るの!?」
アレン「確かな安全は保証できないけど…」
ルオナ「どっちにしろここにいたらみんな倒壊に巻き込まれて潰されるよ。」
優秀なドールでない者がこの工場の外に出れば、あのルールに則り焼き殺されてしまう。しかし、今はそんなことを言っている場合ではないのだ。諦めてここでたたずみ、崩壊に巻き込まれるのを待つのと、|一筋の光が差し込む希望《工場の外》に一か八か駆け込んでみるのと、どちらがいいだろう?
レイア「もう、それしかないわ‥。
わたし、人形たちの誘導をする。ヴィス、貴方は先に逃げていて!」
ヴィス「‥、…分かった。リーヴァを連れて、先に出てるぞ。」
僕は、何かをレイアに言おうとしたその口を紡ぐ。
これでお別れじゃないんだ。言う必要はないだろう。まだ、トラウムと、三人で集まっていないんだから‥。
レイア「出口はこっちよ!!」
「急いで!」
レイアと、もう一人‥メアリーは、迷うそぶりなくドールたちの誘導へと動く。僕は、リーヴァの元へ向かいながらどこへ行くか分かっていない新人のドールたちへ、目印になるようなものを教えて逃しながら向かった。
シャルル「行くぞ!」
ライル「めんどっ!」
イヴ「怖い、でも、行くです!」
トラウム「仕方ないですね…」
ドールたちは、次々と外に脱出をする。先に外へ出たドールたちが、ルールに則った罰を受けている様子はない。
ほんの少し、名残惜しそうな、浮かない顔を浮かべるトラウムも、仕方がなさそうに外を目指す。
一通りドールたちの誘導が終わるとレイアとメアリーも急いで出口へと向かった。
--- ゴォオオ_ ---
ヴィス「っ…まずいな…」
遠くの方からとんでもない音が聞こえてきた。落下してくる瓦礫も、初めより大きなものになりつつある。
これ以上長居すると、確実に巻き込まれてしまうだろう。
リーヴァとメトリの元へ合流すると、メトリはリーヴァを心配そうにしながらも「急いで出ないと‥!」と切羽詰まった声で話しかける。
メトリ「リーヴァ、ヴィス、私たちも行こう。」
ヴィス「ああ。そうだな。…大丈夫かリーヴァ。」
リーヴァ「…大丈夫。急ごう。」
未だふらついているリーヴァをカバーしつ、少しずつ前に進む…リーヴァが落ち着いてきたところで、メトリを先頭、僕が最後尾につく形で走り始める。
ヴィス「__!!」
僕は、リーヴァのことを前へ思い切り突き飛ばした
今日の文字数
15917文字
色んな意味で死(泣)にそう…。何がとは言わないけど、とても大まかに分けて三つの意味で死(泣)そう‥。
後多分、次の話で終わります。ついに…あの僕的には真面目に涙ボロボロなシーンの、あの…!!
この作品が終わったら、今度こそ本当に「廃工場のビスクドール”という一つの素晴らしい作品が終わったんだな」って実感しちゃうので、凄い悲しいです。
最後の話の後書きで少し‥話す予定です。長くなったら日記に書くかもですね。
ちなみこの話で一番好きなシーンは、ブロードとの戦いがようやく終わって、一息ついてるところ…。
「_全てが終わった。
これで、リーヴァたちとの何気ない、ただの平和な日常が戻ってくる__」
のところ。
本文見たら分かるけど、“たち”のところに傍点が付いてるんです。単純にこのシーンが好きだし、無意識に‥ねぇ?思ってるところで読んでたら「ン゛ぐ、ッ‥ゥ“‥!!!!(吐血」ってなるの。好き‥。
[小話]
ミニタイトル(?)に書かれている『熱願』とは、“熱心に願い求めること”を意味する。
ただただ純粋に『人間に会いたい』と願い、熱心に人間に会うための行動をしたブロードがメインの回をヴィス視点で語った話のため、このようなタイトルとなった。
さらに、僕の個人的に解釈と超絶こじつけでもう一つ意味を書くとするなら…
ブロードの作者様が書かれたスピンオフ作品「私の心残り」にて、最期にブロードの言った一つの心残りを、「もし出来たなら‥」って熱願している…
って意味がつけることができる(?)
無理やりだけど、タイトルの名前がああなったのはそう言う意味。
スピンオフ含め面白い作品。控えめに言って大好き(((殴
[小ネタ]
これは、悪夢編を書く時に思いついたことで、実際に使ってるんですけど、原作にあるブロードのナイフ不足に繋がるネタ(?)です。
まず前提、僕原作を読んでて、
「あのブロードさん(?)が、こんな肝心な時にナイフ不足するか???」
って思ってたんですよ。原作への文句とかそんなんじゃなくて、単純に。それはそれでいいし、ルークさんとメアリーさんの、あの泣かずにはいられない読者視点最高なお別れが描かれることができたわけですし、なんなら感謝してます。
まあとにかく、そんな疑問を僕が持っていたと。
で、悪夢編書いてていつの間にかヴィスとブロードさんの対峙(ヴィスが外出たところくらい)のところまで来て思いついたんです。
「これ、ヴィスにナイフ消費させれば疑問解消するんじゃね??」
って。つまりこう。
ヴィスとの戦闘でナイフ消費→ヴィスの元からブロードさんいなくなる→(原作)ブロードさんリーヴァたちの元へ移動→一方的な虐殺開始→ヴィスとの戦闘で消費したせいでナイフ不足→ルーク&メアリー最期の会話→……
つてこと。分かってもらえただろうか。
で、あのヴィスの反射力と運動神経に命をかけた、一方的な戦闘シーンができたって言う…。個人的には疑問解消出来たし、(一方的ではあるが)戦闘シーンもオリジナルで書けたし、万々歳。嬉しい(*´꒳`*)
説明が下手すぎて泣けるわ…(
いつまでも 君の隣にー二通の手紙ー
※特にグロ描写とかあるわけじゃないけど、生物(?)が死んでるわけだから念のため。
必要ないだろうけどね。
※トラウム視点で描かれたスピンオフ作品の内容がホントに少しだけあります。
ヴィスがこうした〜って言うのがあったので、せっかくですし入れました。解釈が違う可能性とかもあるので、問題があれば言って下さい。
※約15000文字
いつまでも 君の隣にー最期に見たBellepoupée編ー
--- 体が咄嗟に動いた ---
あの不穏な音と、リーヴァの頭上に現れた影を見て__咄嗟に。
リーヴァを突き飛ばした数秒後。影はドンドン濃くなって、僕の体を地面に叩きつける。
影の正体は、落ちてきた大きな瓦礫…僕は、その瓦礫の下敷きとなってしまった。
ヴィス「__ぐッ“‥!!!__」
ブロードとの戦いで負った背中のヒビが一気に広がる。幸いにも、胴が泣き分かれ、なんてことにはなっていないらしい。
リーヴァ「ヴィス!!」
ソレに気づいたリーヴァが、僕の近くにすぐさま駆け寄ってくれる。
リーヴァの方を見てみると、《《ナニカ》》が悲しくて怖くて‥泣きそうな顔をしていた。僕の名前を叫んで、僕の上にある瓦礫をどうにかしようと必死になっている。
そんなリーヴァは、一向に外へ向かおうとしない。
ヴィス「早く逃げてくれ…リーヴァ…」
僕は、今出せる精一杯の大きさで声を絞り出す。
もうすぐ工場の完全な崩壊が近い‥こんなところにいたら、リーヴァまで瓦礫の下敷きになってしまう。もしそんなことになったら、目の前でそんなことが起きたら_僕は感情に押し潰される
しかし、リーヴァは首を横に振る。
リーヴァ「イヤ…あなたと一緒に…」
ヴィス「っ‥」
そんなにも震えた声を出させてしまっているのは、僕のせいなのだろうか_
僕のためだけに、そんな風に泣きそうな顔になってくれているのだろうか_
嗚呼、リーヴァ__やっぱり君は、世界で一番優しいドールだ。
そして、僕の最初で最後の愛しい人。
ヴィス「…ダメだ。」
リーヴァ「っ。」
ねぇ、リーヴァ。君にはどんな|顔《表情》が似合うだろう…?
僕のために、|そんな顔《泣きそうな顔》をしてくれるのも、とっても嬉しい。
でもねリーヴァ。僕が、君に一番似合うと思う|顔《表情》は_
ヴィス「_リーヴァには`笑顔`でいて欲しいから…」
目を細め、眉を下げる。僕が今できる一番の笑顔を‥きっと僕は初めてする顔を、世界で一番愛しい人に見せる。
リーヴァ「ヴィス、っ‥!」
きっとリーヴァには、どんな服でも似合ってしまうんだろうから‥ヒヤシンス色の、ゴテゴテした飾りのないシンプルなドレスなんてどうだろう?今のドレスもピッタリだけど、そんなドレスもきっと、似合うと思うんだ。
ドレスじゃなくても、なんだって‥きっと似合う。いや、絶対に似合う!
どんなものでも似合ってしまう君は、本当に困ったものだ…。一体、どんな服を着て貰えば、僕の気は済むんだろう?
全部全部‥**リーヴァ、君の全てを知りたい。知りたかった_**
でも、僕の知ってる神様は、そんな願いは聞き入れてくれないらしい。
リーヴァ「、ヴィス‥?」
リーヴァに、自身が身につけていた白いマフラーをかける。
マフラー 一つ身に付けさせただけで、僕の胸は高鳴った。よっぽど嬉しかったのか‥僕は自然と、笑顔になってしまう。
かわいいリーヴァ。その顔が、いつもみたいな無邪気で明るい笑顔だったら、もっとステキだ!僕がいなくても、君は幸せだから…必ず、幸せになるから…。辛くて悲しいこともたくさんあったけれど、外には不思議で楽しいことがそれ以上にたくさんあるんだよ?
あの工場だって、元々はそんな綺麗で楽しそうな場所だった。人間たちで賑わって、|僕たち《ビスクドール》を楽しそうに見るんだ。
このマフラーは、僕を作った老人から貰った《《大切なもの》》。コレだけは、失くさないように、汚さないように、可能な限り傷つかないように`、誰にも触れられないように`してきた…
でも、リーヴァ。
--- 君になら__ ---
ヴィス「‥このマフラーを託す…」
|壊れ《死に》たくない…。
もっと、リーヴァのそばにずっと居たい。
もっと、リーヴァと色んなところに行きたい。
もっと、リーヴァの色んな姿を見たい。
もっと、リーヴァの色んな|顔《表情》を見たい。
もっと、もっと、もっと__!!!
外に出て、色んなものを見た君は、どんな顔をするんだい…?
僕も、外に出て‥新しい君を知りたい。僕の知らないリーヴァを知りたい…!!
ヴィス「‥僕も外の世界に連れて行って…__愛しのリーヴァ__」
リーヴァ「…ヴィ_」
最後の力を振り絞って、本音を言わないように…そう言いながら、リーヴァにしっかりとマフラー巻く。このマフラーは、僕にとって本当に大切な宝物だから…絶対に、落としてもらいたくない。
どうやら、終わりが近いらしい。視覚も聴覚も殆ど機能していない…分かるのは、目の前にいるリーヴァがほんやりと。そして、工場が崩れる轟音が小さく聞こえるだけ。
リーヴァが何かを言っていた気がするが、聞こえなくなってしまった。
ヴィス「ッ。」
そしてついに、限界が来たのだろう。どこからか小さくバキ、という音がなり、全身の力が抜けてしまう。上げていた腕は強く床に打ち付けられ、少し欠ける。しかし既に体の感覚はなくなっているため、痛み等は感じない。
その代わりに、今までとは比べ物にならないような眠気が襲ってきた。
ああ…すごく、眠い…。
でも、きっと‥このまま寝てしまったら、本当に`最期`なんだろうな…。
もっとリーヴァに、自分の想いを打ち明けておくべきだった。今更、遅いのだが…。
そんなことを考えていると、何かが顔に触れたような気がした。そして、小さく走り去る音が聞こえたように気がした。視覚を聴覚もまともに機能していない。
すると、周りがいきなり真っ黒になる。視覚の機能は全てなくなったらしい。
いや、機能がなくなったというか…ただ、僕が死に向かっているのか。最後までバカだな、僕は…。
もうそろそろ、工場が完全に崩壊する。リーヴァ、君は無事に外へ出られたかな…?
僕は、恥ずかしながら眠気が凄くて起きていられないや。
そうだ。最期に、届かないこの願いを心の中で願ってもいいだろうか?叶うことはない、浅はかで傲慢で身勝手な、この願い…
もし君が、いつか僕と同じところへ来てしまうとしたら…その直前は、僕のことを思い出してほしい。他には何も考えずに、僕のことだけを…。
最後にそんな馬鹿馬鹿しいこと考えながら、僕は眠りにつく。目覚めることはない‥幸せも、悲しみも、夢も見ることもない…
--- 深い ---
--- 深い ---
--- `眠り`へ_ ---
---
---
「___ぅに__‥バカよね、貴方って‥」
ヴィス「…」
光が差し込む
ゆっくりと目を開けると、なんだか懐かしい太陽の光が目を眩ませた。
「_!目が覚めたのね‥良かったわ‥。」
ヴィス「‥レイア‥?ここは…」
レイア「ここは工場の外よ。貴方、リーヴァのこと守って瓦礫に潰されたんですって?」
ヴィス「…」
頭がとてつもなく痛いし、ちょっと今の状況がよく分からない。僕は確かに、工場内で瓦礫に下敷きとなってしまったはずだ。
レイア「ふふ。その顔、さてはなんで自分が工場で瓦礫に埋もれず外に出て、生き残ってるのかよく分かってないわね?」
ヴィス「‥嗚呼…。それと、とんでもなく頭が痛い‥。」
レイア「頭に関しては仕方ないわ。だって、少し前まで生死を彷徨っていたのよ。」
ヴィス「…」
レイア「‥らしくないわね‥。頭が痛すぎて死にそうなら寝てていいんだからね?」
ヴィス「‥いや、大丈夫だ。ただ、なんだろうな…」
レイア「?」
僕は、太陽の方に右腕を挙げる。
ほんの少し腕が軋む音がするが、特に気に留めない。
ヴィス「生きていると言うのは__ここまで、嬉しいものなのか、と‥」
レイア「…ホント‥らしくないわ…。こっちまで変な気分になるじゃない。」
こちらを向いていたレイアは、反対を向いてしまった。よく見てみると、少し肩が震えている。これは笑ってるんだろうか?それとも__?
いや、どちらだとしても何か言われるのはレイアが嫌がるだろうから気にしなくていいか…。
レイア「_そうだわ。わたし、ちょっとトラウムたちのところに行ってくる‥。
まだ完治しているわけじゃないんだから、安静にしなさい。|壊れ《死に》たくないならね。」
少し怒ったような、強めの声でそう言いレイアは行ってしまった。
さて、どうしたものか‥安静にしておくよう言われたし、あまり動いたら怒られるだろう。
というか、腕を動かすだけで軋んでいるのに今起き上がったりしたらバラバラになる気がする。
ヴィス「…‥暇だな‥」
独り言を呟き、首を動かす。目線の先には見るも無惨な工場の姿がある。
|あの場所《アミアンジュファクトリー》には、好きな場所も、本も、思い出‥失いたくものばかりだったのだが、ブロードとの激戦があったのだから仕方ない……
ヴィス「いや、にしても本当に無惨に崩れたな‥?」
想像以上に崩れている工場を見て、思わずそう言ってしまった。
でも、本当にそうなのだ。もしあの中に僕がまだいたとしたら、まず亡骸を見ることもできないだろうな…。
これは人間たちが来たりしないのだろうか?かなりの轟音が鳴っていると思うんだが。いや‥ここれは人の住処より離れてる場所にあるから、案外聞こえてないのかもしれないな。
そんなどうでもいいことを考えながら数分後、レイアが戻ってきた。
レイア「__頭の痛みは引いたかしら?」
ヴィス「嗚呼、だいぶな。」
レイア「それなら良かったわ。他に気になる点とかはある?」
ヴィス「リーヴァが怪我なく外へ出たのか、それと‥僕を工場の外に連れてきた人物は今どこにいるんだ。」
レイア「、…リーヴァは無事。さっきも少しだけど話したわ。貴方を連れてきたのは…、‥」
ヴィス「…」
レイア「‥シルヴィーよ。リーヴァが出てきてすぐ、意識を無くした貴方を能力でアレ以上壊れないようにして、連れてきてくれたの‥。」
ヴィス「シルヴィーが‥?」
予想外だ‥。失礼を承知で思っているが、てっきり工場の異変をいち早く察知して、外に出てるものかと。
ヴィス「シルヴィーは今どこに」
レイア「貴方を引き渡して、|壊れて《死んで》しまったわ_」
ヴィス「‥そうか。」
さらに詳しく話してもらうと、シルヴィーの最期は酷いものだったが、れっきとした《《|人形《ドール》として》》、この世を去っていったという。
シルヴィーとはあまり関わりがなかったが、彼女が“完璧な人形”だと思ってもらえぬまま‥しかも、僕のせいでこんな結果になってしまったことに…謝罪したい。
どうか彼女が、向こうでは自分に自信を持ち、幸せでありますように_
そんな自分勝手な願いを、空を見つめながら願った。
レイア「‥あら、二人とも。もう治療は終わってるわよ。」
ヴィス「‥?」
レイアは誰かに向かってそう言った。
僕は、足音のする方を見て、顔の表情を和らげる。
だってそこには、僕が何よりも大切にしている、最`愛`の人が立っているんだから…。
ヴィス「…おはようリーヴァ。今日も一段と美しいね。」
いつものように、思ったことをそのまま言葉にした。
横になったままだと、格好がつかないな…あんなに色々言ったのに、結果的に生きているし。
リーヴァ「ヴィス!!」
リーヴァが僕の方に駆け寄ると、先ほどリーヴァのいた辺りにメトリが立っているのが見えた。メトリも来てくれたのか。
メトリ「…良かった。」
メトリはこちらに来ようとはせずに、ただそこで僕たちの様子を見ている。一体どうしたのだろう?
ヴィス「‥リーヴァたちはこれからどうするんだ。」
リーヴァ「__あのね‥__あたしたち、外の世界に行くことにしたの。」
メトリ「あなたはどうする?」
ヴィス「…外の世界か‥」
リーヴァ「うん。イヴとかシャルルさんとか、外の世界に行く人が殆どみたい。もちろん、残る人もいるよ。」
メトリ「私とリーヴァはもちろん外に行く!」
レイア「‥わたしは|ここ《工場》に残ることにしたわ。トラウムは話を始めてすぐに残るって言って、いつもの椅子のところに行っちゃったみたい。
…ヴィス、貴方はどうするの?」
ヴィス「…」
僕は三人の話を聞いて、また空を見た。
この工場には、思い出がたくさんある。作られたあの瞬間から、工場が崩れた今さっきまで。全て思い出だ。工場は崩れてしまったが、一部の場所はかろうじて残っているかもしれない。レイアやトラウムという大切な友人はここに残ると言う。それに‥元々、僕は工場から出ようと心から思っていた派閥じゃない。以前の僕なら、迷わず工場に残ると即決していたのだろう。
しかし、今は|最愛の人《リーヴァ》がいる。
そうなれば、話は簡単だ。
ヴィス「_僕も行こう。」
そう言いながら、僕は立ち上がり服や髪についた草を払った。
この工場から去るのは、名残惜しいし、少し辛い…でも、戻って来れないわけじゃないんだ。時々戻ってきて、ここで一日過ごしたりしたってバチは当たらないだろう。
ヴィス「…、」
草を払い終わると、リーヴァが手に握っていたマフラーが目に入る。
きちんと巻いてあげたつもりなんだが、途中で解けてしまったらしい‥でも、落としたりはしてないみたいだな。
リーヴァは僕の目線の先にあるマフラーに気付き、返そうとしてきた。
ヴィス「それはもうリーヴァのモノだよ。自由に使っていい。」
リーヴァ「、…」
僕がそう言うと、リーヴァはマフラーを見てほんの少し笑みを浮かべた。いつもみたいな満開な笑みではなく、本当に嬉しい時にしか出来ない、可愛らしい笑み。
“むしよけ”になるだろうから、ちゃんとつけて欲しい。
リーヴァ「ありがとう。」
ヴィス「いいんだ。君にあげるつもりで渡したんだから。」
リーヴァ「‥うん、ありがたく貰うね!」
ヴィス「ああ。」
リーヴァは、マフラーを首に巻きながら嬉しそうに笑ってくれた。しかし、初めてマフラー巻いたのかなんだかおかしいことになっている。
ヴィス「リーヴァ、おかしなことになってるぞ‥」
リーヴァ「えっ?うそ…どこが変になっちゃってる?」
ヴィス「…全体的に。」
リーヴァ「えぇ‥」
可愛らしく困った顔をするリーヴァを少し眺める。こう言う|顔《表情》のリーヴァも良いな…。
ヴィス「‥僕が巻こうか?」
リーヴァ「、いいの?」
ヴィス「もちろん。
貸して。」
リーヴァ「はい。」
僕はリーヴァからマフラーを受け取った。
一歩近づき、リーヴァに似合う巻き方で首にマフラーを巻く。
上手く巻けたことと、マフラーがリーヴァにとても似合っているという紛れもない事実を目にして、自然と表情が柔らかくなった。
メトレイ「二人ともイチャつかないで|よ〜《ちょうだい》。」
ヴィス「は、」
リーヴァ「ちょ、ちょっと二人ともっ!?/」
メトリ「あっはは!!二人とも顔赤いよ、大丈夫?」
ヴィス「君らのせいだろ‥」
レイア「あら、わたしたちはただイチャイチャ目の前でしないでって言っただけよ?イチャついてないなら赤くなる必要ないわ。
‥イチャついている自覚があったから、顔を赤くしてるんじゃないかしらね?」
リーヴァ「?!」
ヴィス「…」
レイアは悪い顔で笑いながらそう言った。リーヴァも僕も、その発言にさらに顔を赤くする。リーヴァはマフラーで誤魔化そうとしてるが、残念ながら誤魔化せていない。
リーヴァ「もう‥!ほら、みんなのところに行こ?お別れ会‥じゃないけど、しばらく会えないだろうし!」
メトリ「ん、そうだね。行こっか!」
リーヴァとメトリは、ひと足先に工場の方へと戻っていった。僕もリーヴァたちのことを追いかけようと歩き出した時、隣にレイアがやって来た。
レイア「ヴィス、体調は平気?まだ優れないようなら、一日ここを出るのを遅らせたほうがいいわ。」
ヴィス「大丈夫だ。頭痛もすっかりなくなった。」
レイア「‥そう。それならよかった。
それじゃあわたしも先に行ってるわね。」
ヴィス「…__リーヴァたちに、少し工場に用があると言っておいてくれ。」
レイア「分かったわ。急がなくて良いからね。」
ヴィス「ああ。」
レイアは軽く目を細め、笑顔を作る。そしてそのまま歩く速度を早めて先に戻っていった。
あの笑顔‥どこか悲しそうな笑顔にも、僕には見えた。レイアは一体、何を考えていたんだろうか…?
---
ヴィス「_っと、‥」
ガラガラと音を立て、絶妙なバランスで積まれていた瓦礫が落ちていった。
ここは崩れた工場の中。埃だらけで静かだったあの工場は、完全に原型をとどめていなかった。どこからか流れた謎の液体が溜まっていたり、瓦礫がありすぎて一部は通れなくなっている。
ヴィス「…ここら辺か‥?」
もしかしたらここに来るのが最後になるかもしれないため、《《とある部屋》》があった場所へとやって来た。工場の入り口からやってきたため、頭の中で地図を作り歩いて来た道をなぞると、ここはそのとある部屋だろう。あまりにも崩れてしまっているため、本当にそうなのか定かではないが‥きっとここだ。
ヴィス「創造主_‥ここへ来るのは、これで最期かもしれないな。」
はにかむような笑顔でその場所を見る。
ここは、僕を含め多くのドールたちが|生まれ《作られ》た場所__`老人の作業部屋`だ。僕にとってこの場所は、工場の中でも数少ない、安息の地のような場所。老人が居た頃も、居なくなってしまったあの日からも‥何故か、他のドールはこの部屋へ長居しようとしない。そのため、ほぼ僕の部屋みたいになっていた。
まあ、瓦礫などのせいで置かれていた本や僕の私物は、全てダメになってしまったようだが…。
ともかく、そんな場所ともしばらくお別れだ。
ヴィス「、紙とペン?」
何故コレだけ無事なのだろうか…。
僕は不自然にも見える置かれ方をした紙とペンを手に取る。そして紙の裏面を見た。
ヴィス「‥《《コレ》》か。」
昔書いた覚えのあるソレに、僕は懐かしさともう一つの何かが込み上げてくる。覚えたての人間の字で、バカみたいに必死になって書いていたっけな‥。
ヴィス「‥そうだ。」
僕は紙を表にし、瓦礫をテーブル代わりにしてペンを走らせた。迷いなく、書くのにも読むのにも慣れた人間の文字を使い_
数分後。
書き終えたソレを見て、僕は満足げにフー、と息を吐く。我に帰ると、紙をどうするかに悩んだ。
コレ‥見られたら恥ずかしいな‥。
そう思い、瓦礫と瓦礫にある小さな隙間に丁寧に折りたたんで仕舞った。こんな場所、誰も見るわけないだろうし…見つかるとしても、それは僕のいなくなった工場でだ。何も心配はない…はず。
ヴィス「、そろそろ戻らないとか‥」
僕は最後に老人の作業部屋に向かって深く一礼する。
そして、足元に気をつけながら、小走りでリーヴァたちの元へと戻っていった_。
---
リーヴァ「みんな、しばしのお別れだね。」
リーヴァは少し俯いて、悲しそうにそう言った。
しばらくここに戻ってくることはないんだろう。いつでも戻ってくることは可能だが、外に出て、何事もなく過ごせる保証はない。
それを考えると、みんなとはこれで最期なのかもしれない。
フとそう考えて、僕はほんの少し寂しくなってしまう。
アレン「メトリ、ヴィス、そしてリヴァ。君たちとの日々はとても楽しいものだったよ。また会おう。」
ミーフィ「お姉ちゃんたち行っちゃうんだね…寂しくなるけど、いつか私が大きくなって外に行った時は、外の世界を案内してね!」
アレンとミーフィが明るい声でそう言うと、他の工場に残るドールたちも僕たちへ別れの言葉を言い始めた。
そして僕は、一人一人ドールたちの顔を見た。顔見知り程度だが、ほぼ全てのドールが知っている人物だ。
それにしても、|あの時《ヴィスが作られた当時》からいるドールは、もうほんの一握りしかいないんだな…。僕を引いて、15人程度だろうか?
長い年月が経ち、その間に色々な事件があったにしては、残った方なのだろう。しかし、あれほど多くの同胞がいたにも関わらず、数えれる数まで減ってしまったことに、僕は寂しさを覚えた。
トラウム「特に言うことはありません。」
ヴィス「…」
そんなことを考えていると、トラウムの番が回って来たようだ。大昔からの友人で、これからも大切な友として居てくれるだろう_。
そんな彼が話し始めてすぐ、僕は軽くトラウムを睨んだ。『特に言うことがない』と言われて良い気分がする人なんていないだろう。
しかし、彼は続けてこう言った。
トラウム「__きっとまた会えますから。」
『また会える』
そんな当たり前かのように思えるその言葉に、僕は暗い感情が溢れて来てしまった。何故ならコレは、必ず約束できるものではないのだ。
さっき言ったように、道中で壊れてしまう可能性もある。それに僕たちは所詮“ビスクドール”…人形なのだ。
手入れを怠れば、カビが生えたり肌が変色してしまうかもしれない。いつの間にか虫食いの被害に遭ってるかもしれない。体にあるヒビが広がっていつか壊れるかもしれない_
僕たちドールは、簡単に壊れてしまう。
でも、まあ…
レイア「怪我したらここに戻ってくるのよ。私が直してあげるわ。」
“そんなことになる前に、レイアが治療してくれるんだろうな。”と思うと同時に、レイアがそう言った。
レイアなら似たようなことを言うだろうと思って居たが…被るとは思わなかった。
メアリー「みなさん、お元気で。…ルークのことも忘れないでね。」
ルオナ「リーヴァ、お別れなんて言わないでよ。絶対にまた会おうね!」
メアリーとルオナも、寂しそうにしていたが明るくそう言ってくれた。
|壊れて《死んで》しまった彼らを、僕は死ぬまで忘れることはないだろう。
ルークを始め、シルヴィー、ルビー、他の多くのドールたち。そして、マリィやブロード…。多くの命を奪ったが、それでも一人のドール。仲間なのだ。忘れることはない。
---
全員の別れが済んだところで、早速出発だ。
リーヴァ「みんな、ありがとう!」
メトリ「またね!」
ヴィス「それじゃ。」
三人は、それぞれ性格の出る挨拶をして、工場から旅立った。
込み上げる何かが溢れぬよう。
そして、楽しそうに隣を歩くメトリに気づかれぬよう‥後ろを振り返らないようにして。
メトリ「外の世界には、一体どんなものがあるんだろう‥!」
リーヴァ「怖いこととかはあんまりないといいなぁ。」
ヴィス「…きっと、楽しくて幸せになるものばかりだよ。多少、怖くなることもあるかもしれないけれど‥」
リーヴァ「えっ‥あるの‥?」
ヴィス「‥本で読んだ限りはな。」
リーヴァ「‥」
メトリ「あはは。そんな顔しないでよ〜!せっかく外の世界をこれから体験するのに、そんな顔してたら楽しくなくなっちゃうよ?」
リーヴァ「それも‥そうだよね。うん、二人の言う通り、きっと楽しいこともいっぱいだよね!」
メトリ「♪」
ヴィス「‥嗚呼_。」
蕾が花開くように、美しく可愛らしい笑顔。君はきっと、僕の想像よりもたくさん‥楽しくて`幸せ`なことを考えているんだろうな。
君への想いが十分に届かなくても、隣で君が楽しそうにするのを見るだけで、僕は幸せだ。
でも…
--- いつかその想いが届いて、君と結ばれたら‥ ---
--- 僕は、**世界でいちばんの幸せ者**になるだろう。 ---
---
多くのドールが、この壊れた工場から去ってはや一年。明らかに、|人《ドール》の手によって仕舞われてたであろう一つの紙を見つけたドールが、ここにいる。
この者は、転んだ時に《《たまたま》》瓦礫の隙間に目がいき、《《たまたま》》その紙を見つけたのだ。
隙間に手を伸ばし、紙を掴み取る。取り出して見てみると、とても綺麗に折りたたまれ、両面に何か文章が書かれているのが見てすぐに分かった。
紙を開きザッと読んでみると、それは一人のドールによって書かれた“手紙”だと言うことが分かった。
そして、その手紙に興味を持ったこのドールは、もう一度、丁寧に手紙を読んでみることにした。
拝啓
僕は、ヴィスメイ 人形。この工場で、一人の老人の手により作られたドールだ。
…ということは、お前がいちばんよく分かっているだろう。何故ならコレを書いているのはお前であり、コレを読んでいるのもまた、僕なのだから。
さて、僕がこの手紙を書いた理由だが…一つは文章を書く練習がしたかったから。まあ、文章を書くだけなら、わざわざ手紙にしなくて良かったのだが、もう一つの理由によって手紙で練習することになったんだ。
そしてそのもう一つの理由と、言うのは、人間がやる、
--- 未来の自分へ宛てた手紙 ---
を書きたかったからだ。
あまりにも単純だが、それでいい。人間たちの言葉には、こんなものもあるらしい。“シンプルイズベスト”という言葉が。意味はそのままで、シンプルなのがいちばん良いと言うこと。つまりは、僕の手紙を書いた理由も、単純でいいのだ。
まあ、そんな理由で未来の僕へ手紙を書くことにした。字が汚かったり、文がおかしかったりするのは、愛嬌ということで、ほおっておいてくれ。
本題に入ろう。
人間たちが書く、未来の自分への手紙というのは、質問をするのが基本らしい。ということで、僕も未来の僕へ簡単な質問をしてみることにする。
一つ目は、そうだな。
トラウムが、この手紙を読んでいる今も友人かどうか、なんてどうだろう?
トラウムには、勝手に質問の材料に使ってしまって申し訳ないが、我ながら良い質問だと思う。友人というのは人間にとって大切なものらしいからな…きっと、僕たちビスクドールでも友人は大切だろう。
だから、この手紙を読んでいる今、僕とトラウムは友人なのか。一つ目の質問にしよう。
二つ目は、老人は元気にしているか。
最近、老人はあまり元気がない。この手紙を見ている頃によくなってると思うが、どうだろうか?元気にしていれば幸いだ。
三つ目‥この工場は変わったか。
今は全盛期より劣るが、工場は賑やかな方だ。でも、人間の飽きは早いと本で読んだ。きっとこの工場もいつかは廃れてしまうだろう。今コレを読んでいる時は、工場は前みたいに賑やかだろうか?僕はに賑やかな工場も静かな工場も好きだから、正直どちらでも僕にとって不利益になることはない。
もう質問が思いつかなくなって来た。思っていた以上に、気になることは少ないみたいだな。
…ここらで、この手紙も終わりにしても良いかもしれない。話すことはないし、手が疲れてきたし、練習にもなったし、十分だろう。
それじゃあ、これで終わり。
未来の僕も幸せなことを願って_
敬具
✖️○年△月☆日
ヴィスメイ 人形
ヴィスメイ 人形様
~~~
裏面には、`《《ヴィスメイ 人形》》`というどこかで聞いたことのある名の人物が、未来の自分自身へ送った手紙が書かれていた。
『確かこの人形、一年前この工場から出ていった人形の一人では?』
手紙を読んだドールは、手紙を書いた人物がこの工場から去った者の一人だということを思い出す。
そう、彼はこの工場に古くから…それこそ、“命あるドール”を作っていた人間が生きていた頃からいる、古参のドール。そしてたった一年前に、この工場から去ってしまったドールの一人だ。
まあいいか、と手紙を表にして内容を読み始める。
~~~
拝啓
あれから、ゆうに七十年は経過している。
色々話したいことはあるが、時間はないし早速質問に答えるとしようか。
一つ目の質問への答えは簡単だ。トラウムとは今も‥きっと仲がいい。つい最近喧嘩をしたが、ちゃんと仲直りもしたから問題ない。
トラウム以外にも、レイアやメトリという友人もできた。皆、良き友人。トラウム以上に仲がいいと思えるドールはいないが…。
二つ目の質問への答えだが…これに関して、僕はあまり答えたいと思《《え》》ない。
そのため、失礼だが答えないことにする。すまない。
三つ目、工場の状態はドールたちの様子は大きく変わった。例えるならば、トラウムが変化のあまり死ぬほど明るい笑顔をしてしまうくらいに…。
いや、この例えはよく分からないか。ともかく、それくらい大きく変わった。
まず人間は来なくなった。そしてドールの製造は終わり、工場は静まり返ってしまったよ。
でもしばらくして人間の男がやってきてな。ソイツがドールの製造を再開したんだ。しかも、命あるドールの製造を…。
その時その瞬間だけは、癒しもなにもない僕の生活で、唯一“なにか”の感情が湧き出てくる。
その感情なんなのかは、僕もよく分からない。楽しいとも言えるし、感動しているとも言える。
ともかく、面白いだろう?僕も、初めは驚いたよ。
だけど、それ以上に…**彼女**に魅了されたんだ。
~~~
何故か“彼女”の部分が大きく書かれていることに、ドールは呆れを示す。
『そういえば彼、とあるドールに酷いくらい|泥酔《恋》をしていたんだっけ。』
この手紙を書いたヴィスメイ 人形は今まで、無口で毒舌で、思ったことをハッキリ言う‥それはそれは、良い意味でも悪い意味でもクールなドールだったのだ。
しかし…《《ある日》》を境に、前の彼の面影はどことなくしか残らなくってしまう。そのある日というのは、手紙にも書かれていた人間の男が開く謎の集会があった日のこと。
その日は、工場中のドールが集まり、新たにドールが作られるのを見るのだ。
ドールは続けて、手紙を読むのを再開した。
~~~
さて…彼女について少し、話すとしよう。時間の問題でほんの一欠片しか話せないが許してほしい。
彼女の魅力は他のドールにはない。
あの美しい銀色の髪、恐ろしいほど似合う髪型。ぱっちりとした大きな目、可愛らしいピンクの瞳。ほんのりと赤みがかっている、自分と同じ陶器でありながら柔らかそうに見えてしまう頬。コロコロ変わる愛らしい表情。
彼女のためにだけ存在している‥彼女が着ることによって美しいと言える、レースのあしらわれた白色のロングドレス。頭つけられたピンク色のレースカチューシャ。
自分だって怖いのに、自分よりも他のドールを優先してしまうその優しい性格。そんな自己犠牲が少しばかり激しいところには、困ったものだ…。そんなところも僕は好きなのだが。
彼女が笑うたびに、僕の心は尋常じゃないくらいに跳ね上がる。
彼女が泣いてしまうたびに、その涙を僕が拭いてあげたいと、僕だけのものにうしてしまいたいと思う。
彼女が困った笑みをするたびに、僕は解決してあげたい、しかしもっと見たいと思ってしまう。
彼女が友人と楽しそうに話すたびに、僕は楽しそうで良かったと安堵し、同時に僕と会話すれば良いのにと嫉妬してしまう。
彼女は魅力的過ぎる。
ここからは彼女の好きなものなどについて話そう。
彼女は春が好きだ。春になれば、多くの生物は眠りから目覚め活動を再開する。そして、美しい花が咲き誇る。実に彼女らしい。
そうだな、あとは…埃っぽい場所も好きだな。彼女が寝床としているのは、埃っぽい階段下だ。埃っぽい場所は、好きじゃないが…彼女が好きなら、どんなに埃っぽいところにでも行ける。
そんな可愛らしい彼女が苦手なのは、夜と猫だ。僕と彼女が出会ったあの日も、突然やって来た猫が彼女のドレスに引っ付いて離れなかった。苦手なものに好かれる彼女もまた、魅力的だ。
猫は食肉目ネコ科ネコ属に分類されてるれっきとした哺乳類。英名ではHouse CatもしくはFeral Cat 。学名ではFelis catusとされている。
ちなみに、食肉目は大きく分けて二つあり、イヌ亜目とネコ亜目がある。犬と猫は、共通の祖先を持ちながらも進化の過程で途中からまったく異なる道を進んだのだ。
ネコ亜目の中にはマングースやジャコウネコも分類され、犬っぽい見た目のハイエナも普通にネコ亜目。猫はネコ亜目からさらに分けてネコ科に分類され、さらにさらに分けられ八系統に分かれる。人間が家で飼うようなイエネコ系統にヒョウ系統、オオヤマネコ系統などだ。
これ以上話すと時間がなくなるので終わりにするが、案外奥が深い。
こんな風に色々話したが、僕は哺乳類が大の苦手だ。見ることや調べることはまだしも、触るなんてことできない。可能なら一定の範囲内に入れたくないし見たくない。
__死骸なら話は別だが。__
|猫《哺乳類》が苦手な彼女と、哺乳類全てが苦手な僕…自分で言うのも何だが少し似ていると思う。とても光栄だ。
そんな魅力が多すぎる彼女の名前は、“リーヴァ”
美しく、可愛らしい彼女にピッタリな名だろう?
そうだ…忘れていたが、人間の男が工場にやってきてから工場にいる全てのドールに、特別な力が宿ったんだ。
僕は|ジャッチ・アイ《裁判長の目》という力を持った。力を使った時に、僕の視界内に捉えた者を裁判所に強制送還し、裁判を行うというもの。僕が嘘だと思ったものは全て嘘に、本当だと思ったことは全て本当の証言となる。判決も、僕の思い通りだ。
しかし、使い勝手は悪い方だ。僕の視界内に捉えなければならないのだが、加害者が視界内に入らなければその裁判は無駄なものになってしまう。上手くいかなければ、|僕《裁判官》だけが裁判所に行くなんてことも…。
まあそんなことはどうでもいい。リーヴァの話をしよう。
リーヴァの力は、ヴィトロルミエール。光の束を飛ばし周囲を明るくする力みたいだ。とある殺戮ドールとの激戦では、その光の束が燃えそのドールは炎に包まれた。そのお陰で、攻撃のチャンスを生み出せたから、彼女には本当に感謝している。
そして、この力は夜が苦手な彼女に、ピッタリだ。
そんな彼女に、僕は泥酔しているのかもしれない。でも、それは良いことだと僕は思う。
自分で言うのも何だが、僕は彼女に出会うまで他のドールと殆ど関わりを持たなかった。トラウムやレイアとしか、まともに喋らなかったのだ。我ながら、社交的でないと思う。
しかし、彼女と‥リーヴァと出会ってからは、メトリやアレンと言った他のドールたちとの関わりを持った。リーヴァは顔が広いし、その性格ゆえにどんなドールからも好かれる。だからこそこんな風にたくさんのドールと話すことができたのだが…。僕がどれほど苦労したか、彼女は分かっていないと思う。
そろそろ時間らしい。この崩れた工場の外から、一箇所にドールが集まって話をしてる音が聞こえ始めた。きっと、僕たちが外の世界へ旅に出るのを見送ってくれるのだろう。
まだ話し足りないし、リーヴァについてコレを《《勝手に》》読んでる君へ話してやりたいが…これ以上手紙を書いていると、レイア辺りから大声で呼ばれそうだ。失礼するよ。
いつか、またこの工場に戻った時に…
この手紙が、元の場所から無くなっていないことを‥**心から**願っている
敬具
♤♪年☆月✖️日
ヴィスメイ 人形
過去のヴィスメイ 人形様
~~~
“彼女”について語り出してから、なんだか文字が汚くなっているのは…興奮のしすぎで殴り書きになりそうなのを無理やり止めながら書いているからだろう。
このドールには面識はほぼないヴィスメイ 人形だが‥この手紙を読むと、親近感ではないがソレに近いものが湧く__気がする__。
と、考えるドールは、それはそれは楽しそうな笑みを浮かべ手紙を元の場所へ戻したと言う。
その様子を…同じく手紙を読んでしまった
--- `男女一組`がこっそり見ているとは知らずに_ ---
--- いつまでも 君の隣に ---
--- ♡。.+:❀完結❀:+.。♡ ---
今日の文字数
15058文字
ヴィスがリーヴァちゃんにマフラーをかけたところからボロ泣きしてました。表現とかではなくガチで。
後書き書いてる今でも泣きそう、今絶対顰めっ面になってる…!!もし、この顔親に見られたら親を処すわ(
[小話]
ミニタイトル(?)に書かれている『Bellepoupée(ペル・プペー)』とは、フランス語で“美しい人形”のことを指す。
つまりタイトルは日本語にするとこう。
[最期に見た美しい人形]
ヴィスにとって、この世で最も美しい、たった一人だけの愛しい人。それすなわち__
[小ネタ]
リーヴァちゃんにあげたヴィスのマフラーの話をしてる時の小ネタ(?)です。
ヴィスが心の中で言った「“むしよけ”になるだろうから」って言うのはちょっとしたくだらない遊び心がありまして…。
“むしよけ”って言うのは、二つの意味があって、一つは単純な虫除け。マフラーをするわけですから、虫が首に飛んできたり‥なんてこと多分無くなりますから。
もう一つは男性除けです。ヴィスのマフラーは別に、男ものってわけじゃないですが女ものってわけでもありません。なので、察せれる人なら気を遣ってリーヴァちゃんを狙うのはやめてくれるでしょう…ヴィスがいない時に、男の子のドールにリーヴァちゃんが狙われる可能性は0じゃないので、効果は薄いかもしれませんが男性除けにリーヴァちゃんにあげました。
後、あげた理由の一つとして、リーヴァに自分の私物を身につけて欲しかったってのがあります。可愛いし、可愛いし、嬉しいし。
ヴィスは設定に書いてはいませんが、お察しの通り独占欲が強めなのです。
…説明が下手すぎて泣きそうですが、ともかく男性除けです。
リーヴァちゃんは可愛すぎるんですよ、いつどこで、どこぞの馬の骨とも知らぬ奴(??)に掻っ攫われるか分かったもんじゃない。
[小ネタ?]
ヴィスが、リーヴァちゃんに着て欲しいものとして例を一つあげましたよね。
『ヒヤシンス色のシンプルなドレス』
と。まあ、ヴィスの容姿を理解してる人ならなんとなく分かると思うんですけど…。
“ヒヤシンス色”は、ヴィスが前髪で隠してる右目の瞳の色なんです。
で、わざわざシンプルな、って付けてるのは、ヴィスがゴテゴテしたものはあまり好きじゃないから。シンプルイズベストって言うでしょう?だからです。
ピンクの綺麗な瞳を持つリーヴァちゃんですが、ほぼ反対の色のヒヤシンス色のドレスもきっと似合うんでしょうね。多分、その姿を見たらヴィスは尊すぎてぶっ倒れるかな…(その前にきちんと写真とか撮ってるだろうね)
ちなみに右目の瞳は、歪んだ十字架みたいな形で、ヴィスんまりこの目が好きじゃないんですよね。だから隠してる。
今までに見せたのはレイアちゃんやトラウムくんくらい仲のいい旧友。あとは、そうですねぇ…__
いつかきっと、リーヴァちゃんにも、結婚を前提に告白する時とかに見せるんじゃないでしょうか。この、不気味で可笑しな右目を…。その時はどうか、その瞳ごと彼を愛してもらえれば幸いです。