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いつまでも 君の隣にー悪夢編ー
※〇〇な声…という表現がありますが、僕の中で「この子はこんな声かな?」というのを妄想したものなので、イメージと違っても何も言わないでください。
いつまでも 君の隣にー悪夢編ー
コツコツ‥
メトリ「うーん、どこに行っちゃったんだろう‥」
ヴィス「さぁな‥
寝てる時に落としているなら、あの部屋にあるはずなんだが。」
メトリ「ね〜。隅々まで探したのに、見つからないや‥」
メトリは、分かりやす過ぎるほどにガックリと肩を落とした。その原因は、僕の失くした眼鏡にある。
メトリにも手伝ってもらったのに、どこかで落とした眼鏡が見つからなかったのだ。一体、どこにあるというのだろうか。
もし、一つだけあるとするなら_
ヴィス「__誰かが、持ち出した__‥」
メトリ「えっ?」
ヴィス「‥いや、なんでも。」
メトリ「イヤイヤイヤっ、今『誰かが持ち出した』って言ってたじゃん!!?」
ヴィス「__なんだ__聞こえてるんじゃないか、そう言う時は聞き返すんじゃない。」
メトリ「そ!!れ、は……その通りなんだけど‥!
じゃなくてっ」
ヴィス「、」
メトリは少し声を荒げ、両手両足を広げて僕の前に立ちはだかる。
ヴィス「‥なんだ。」
メトリ「そのさ、『誰かが持ち出した』って‥何のために?」
ヴィス「…確定したわけじゃないが‥まあ、武力削減じゃないか?無難に考えて。」
メトリ「武力って、ヴィスは……その〜‥戦えないじゃん‥?」
ヴィス「イラ‥ 僕だって武術の一つや二つ、扱える。馬鹿にしているのか‥?」
メトリ「ごッごめん‥!!でも、イメージなくてさ‥」
ヴィス「…」
メトリ「__あう__」
メトリ「じゃあこれ、最後の質問!」
メトリ「なんで?」
ヴィス「‥何がだ。言葉足らず過ぎるぞ。」
メトリ「あ、えっと。なんで眼鏡を持ち出したって思ったの?ってこと!」
ヴィス「‥感‥。「感!!」__フ‥__」
メトリ「あ今笑ったでしょ‥!!」
僕はメトリの少し馬鹿な質問に、淡々と答えた。
すると、『何故そう考えた』と言う質問を僕に投げかけた。そんなアホが考えそうな質問に、少し戸惑いながら『感』と答えると、メトリはオウム返しをしてくる。
少し面白くなって笑った僕に向かい、ぷくりと頬を膨らますその姿は…多少、可愛らしいと思う。もちろんリーヴァには劣るが…。
ヴィス「_兎にも角にも、僕は眼鏡がないとまともに行動ができない。つまりは能力を使用したとて、誰も裁判に巻き込まれないんだ。」
メトリ「えっ??」
ヴィス「‥僕の力は、簡単に言えば能力使用時に、視界に入っていた人物裁判に巻き込む、というものだ。
この力の言う“視界”は、僕の目で見てその人物が誰か認識できてることを指すらしい……__日本語がおかしいから、僕はこの説明を変えた方がいいと常に思っているんだが…__
ともかく、眼鏡を外した状態で試しに使ってみたが、間近にいたトラウム以外巻き込めなかった。」
メトリ「人形なのに、不思議だね‥」
ヴィス「目のパーツが劣化しただけだろう。」
メトリ「…‥ヴィスっていつ作られたの‥?目ってそんなすぐに劣化しないでしょ?」
正論を言われた。‥珍しく。
そうだな‥トラウムとあったのが………うん。
ヴィス「_少なくとも七十年と半年以上は前だな。」
メトリ「__ヴィスおじいさん__…」
は?
ヴィス「ギロ」
メトリ「ゴメンナサイ。
__眼鏡ないと、目つき悪いのが目立って余計怖い__‥」
ヴィス「誹謗中傷で訴えるぞ、メトリ。」
メトリ「あーっごめんなさいってば〜!
_って、なにあれ?」
ヴィス「?」
メトリは少し離れた場所に置かれている木箱を指差す。
が、眼鏡のない僕にとって何故メトリが木箱を指差しているのかは分かるはずもなかった。
ヴィス「‥どれだ?」
メトリ「あれだよ!なんか、灰色っぽい‥」
ヴィス「‥」
眉間に皺を寄せ、目を細める。目の悪い人間が何かを見ようとする時にやる、アレだ。
…確かに木箱とは別の色の何かがあるが‥やっぱり無理だ。どれだけ頑張ったとて、見えないものは見えない。諦めて、近くまで寄ろう。
コツコツ‥
タタタ…
メトリ「あーっこれって!!!」
ヴィス「、どうした。」
たた…
メトリがいきなりを大声を出すせいで、耳鳴りがする。メトリはもう少し、声のボリュームの抑え方を知った方がいいと僕は思う。
メトリ「ほらこれ、ヴィスのメガネだよ!__いつもヴィスは眼鏡掛けてるから分かるよ私!__」
カチャ
ヴィス「ん、」
いきなり近寄ってきて、そっと眼鏡を僕に掛けると、メトリは満足そうに頷く。
メトリ「…うんうん、やっぱりヴィスはこうでなくっちゃ!」
ヴィス「強引に掛けるな、壊れたらどうする。」
メトリ「あはは、ごめんって‥」
ヴィス「…メトリ」
メトリ「、どうしたの?」
ヴィス「この眼鏡、どう言う状態で置いてあった?」
メトリ「ん?んっとね。普通に、綺麗に畳まれてたよ。どこか壊れてる様子も無いし、落とした眼鏡を誰かが拾って置いてくれたんじゃ無いかな?」
ヴィス「…そうか‥」
僕は、何故あの部屋から少し離れた木箱の上に眼鏡が置かれていたのか、とても気になった。いくらなんでも、寝ている時にもつけていたのにあの場所に落とすはずがない。そもそも落とすなんてこと事態、ありえないのだ。
僕の眼鏡は、後から僕が細い糸で右のテンプルと左のテンプルを繋げてたのだ。仮に、糸が切れて落ちたとしてもあんな場所に落ちない。僕の真下へ打ちるはずだ。もしあそこに実際落ちたと言うなら、ドールの力でワープしたくらいしか、僕は考えられない。それに綺麗に畳まれて置かれていたとメトリは言っていた‥。いくらなんでもおかしい。
ここまでくると、誰かが盗ったとしか考えられなくなる。
メトリ「それより早くリーヴァのところに行こうよ!眼鏡も無事見つかったことだしさ。」
ヴィス「…そうだな。」
僕は、少し周辺を調べたかったが、リーヴァに会える、という一つの目的が出来たことにより、そんな疑問はすぐに打ち消された。
あの場所は、帰って来た時に見ればいいだろう…。
---
---
ヴィス「り‥リーヴァ‥?」
リーヴァが、いつもの場所に……いない。
メトリ「ッ‥リーヴァ?リ〜〜ヴァ?あ、あれ‥?ギュ‥」
メトリは、いつもいるはずの埃っぽい階段下やその周辺にリーヴァがいないことに酷く混乱し、持っているぬいぐるみをギュウと皺が寄るほど抱きつく。
もちろんリーヴァだってただの人形じゃない。自分の意思で歩く。でも、少し離れた場所に行ってもいないのだ。僕とリーヴァが出会った庭にも、彼女はいなかった。
メトリ「ど、しよ……リーヴァ‥!!」
さっきよりも強く、ぬいぐるみに抱きつくメトリの目尻には、少し涙が溜まる。
ヴィス「っ…メトリ、落ち着け。」
メトリ「でッ、でもリーヴァがいないッ!!!もしかしたら‥もしかしたら「落ち着け!!!」ッ」
ヴィス「…平気だ。よく見ろ‥」
僕は声を荒げ過呼吸になり、取り乱しそうになるメトリの両肩に手を置き、辺りを見るよう指示する。ゆっくりと当たりを見渡し、少し落ち着いたのか息を落ちつけながらこちらを見るメトリに、僕はこう言う。
ヴィス「‥争った形跡、壊された形跡_何もない。《《いつもの場所》》だ。」
メトリ「‥」
ヴィス「確か、今日はアレがこれからあるはずだ‥ひとまず、君の生まれた、リーヴァの生まれた“あの場所”へ向かおう。」
メトリ「‥うん。」
メトリは、溜まった涙を拭き前を向く。
メトリ「ところで、“あの場所”‥ってどこなのさ‥?」
ヴィス「‥🌀」
頭痛がするのは、きっと、僕がリーヴァを心配したいるからだ……きっと、そうだ……
---
しばらく歩き、僕たちは、丸いステージと赤い幕が特徴的な“あの場所”へやってきた。
といってもここはそのステージへ向かう途中の集会場だが‥ここにいなかったら、時間的にも大変なことになる。なんとしてでも見つけ出さなければならない。
メトリ「わ~…広いね、ココ‥」
ヴィス「当たり前だ。毎年増え続ける工場中のドールが、ここに来るんだぞ。」
メトリ「………そうなんだ‥」
静かに驚くメトリを他所に、僕は五感をフルに活用する。愛しのリーヴァを見つけようと必死になった。
…にしてもうるさいなここは。リーヴァを見つけないとなんだから、静かにしろ。
ヴィス「_!!」
メトリ「、」
そんな文句を心の中で垂れていると‥今一番求めている声が、僕の耳に入ってきた。
__「て_たんですね…」__
__「_あえず、拭い_。」__
少し鼻声になったあの鈴のような美しい声と、僕の知っているドールの会話が聞こえてきた。
メトヴィ「…コクリ」
メトリも同じく声を聞いたらしい。僕たちは互いに顔を見合わせ、そして深く頷く。
大勢のドールたちを掻き分け、その声のした場所へと僕たちは大急ぎで向かった。
僕の左斜め45°の位置で、ズビズビエグエグと泣くのを必死に我慢している、ぬいぐるみを抱えた一人の少女がいるのは…誰にも言わないが、きっと僕たちが掻き分けたドールたちはみんな分かってる。
というのは、この少女に言わないであげよう…。
メトリ「ああ〜!リーヴァいた〜!」
その美しい銀色の髪をゆらりと揺らす後ろ姿はまさしく女神。なんて美しいのだろう…
これほど僕を熱中させるドールはこの世にたった一人しかいない_
メトリ「いつもいるとこにいなかったから、心配したよ〜!」
??「ご、ごめん、はい、ハンカチ。」
ヴィス「今日も一段と綺麗だ…**愛しのリーヴァ**…ゴフッ」
僕はリーヴァの顔を見た瞬間血を吐いた。人間の世界でいう、“尊い”というやつなんだろうか。
コロコロとした可愛らしい声で、我慢できなかった鼻水と涙でぐしゃぐしゃのメトリへ“涙を拭かせるため” 可愛いピンクのハンカチを差し出すリーヴァは、昨日よりも美しくなっている。日に日に美しくなる彼女に困ったものだ。
しかし、僕のすぐ横でズビーっ‥と躊躇なく鼻をかむメトリに少し嫌悪感を抱いたのは……誰にも言わない。鼻をかむならテッシュや使わない布でやってほしい。そのハンカチは、まだリーヴァが使っているもの……
リーヴァ「…」
見ろ!!あの可愛らしい笑顔だったリーヴァも、一ミリ顔を引き攣らせているじゃないか…!リーヴァはあれで隠したつもりなんだろうか?可愛いな…
そして、メトリはその手の中でくしゃくしゃになってるハンカチを、一体どこにやるつもりなのだろうか。まさか、リーヴァに返すなんてことしないだろうな…?!いくら女神より優しいリーヴァでも、そんなことされたら引くぞ‥。
…‥そんなリーヴァも、一度くらい見てみたいものだが‥
脳が『リーヴァ』『幸せ』『可愛い』の三つの言葉で埋め尽くされる直前、視界の端でドールたちが間に割って入ってくるところが映された。
直後、僕は何者かによって軽く押される。
ヴィス「__うわ。__」
ミーフィ「お姉ちゃんおひさ〜」
アレン「久しぶり。」
ルオナ「リーヴァ、目がちょっと赤いよ?大丈夫?」
ルーク「やぁ。」
メアリー「この前はありがとう。」
次々と見知った顔がリーヴァやメトリへ挨拶をする。一部は僕へ目線を合わせなかったが、僕から合わせてやった。
挨拶を終えると、|皆《みな》次々にステージのある方へ向かった。
ライル「何ここ…薄気味悪い。しかも汚っ!帰る!」
ミーフィ「帰っちゃダメだよ、おねーちゃん!”マリオネット”!」
ライル「うう…」
ライルももちろん、アレがあるためここへやって来た。
が、埃っぽいところが苦手なのか、すぐに『帰る!』と体の向きを180°ほど回転させ歩み始めた。すかさずミーフィが力を使い強制的に強いて行った。‥何かの芸に見えてしまうな。
まあ仕方がない。アレには参加しないと、彼に焼き殺されるのだから__
シャルル「じゃ。」
シャルルもいつの間にか来ていたらしい…先に降りていってしまった。
ヴィス「…」
メトリ「…シャルルは元々ここに居たからね‥?」
ヴィス「…………分かってる。」
…分かってたぞ。
レイア「腕の調子は大丈夫?」
しばらくすると、僕のよく知る凛とした、よく通る綺麗な声が聞こえてきた。
リーヴァ「はい。おかげさまで…あの、レイアさんの腕は…?」
レイア「もう完治したわ。私はみんなと違って、あの程度の傷なら寝れば治るの。だから心配しないで。」
リーヴァ「ありがとうございます!」
レイア「…」
ヴィス「、」
チラリと僕の方を見るレイアは、なんだか気恥ずかしそうにしていた。きっと、昨夜のことが彼女のポリシーの傷をつけてしまったのだろう。
僕がレイアの視線の気づいたかのように、レイアの方を向くと、慌ててステージの方へ行ってしまった。
……あれは、余計なお世話だったかもしれないな‥
ヴィス「…」
フと、ステージ全体を見渡す。シャルル、ミーフィ、ライル、ルーク、ルオナ、アレン、トラウムに、先ほど降りていったレイアもすぐ下にいた。その他ドールも、僕たちともう一人を除き全員が下に揃っているようだ。
あと一人は一体どこだろうか…もうそろそろ時間になってしまう。
リーヴァ「これで全員なのかな‥?」
メトリ「私たちもそろそろ降りないと、時間になっちゃうよ!」
いそいそとメトリが降りようとしたその時、男性とも女性とも取れる声が話しかけてくる。
「|私《わたくし》をお忘れですか?」
ヴィス「ブロード、」
小さくコツコツと音を鳴らし、優雅に歩いてくる人物は、先日絶望の迷宮で出会ったブロードだった。
リーヴァ「あ!ブロードさん!」
ブロード「ペコ_」
リーヴァが声を上げると、ブロードは帽子を取り上品にお辞儀する。
リーヴァとメトリは少し深めに礼をし、僕はブロードを真似るかのようにお辞儀をした。
ブロード「|私《わたくし》はあなたと同じく、去年生まれたばかりの身ですが、風の噂で聞きました。|私《わたくし》たちの創造主がお目見えすると。」
ブロードはリーヴァと同じ年に生まれたドールだったか…。絶望の迷宮に一人でいたから、そう言われると納得がいく。
あの場所は、二年もいれば噂で危険な場所だと知ることができる。そうなればまず、一人で行こうと思わないだろう。よくよく考えれば、あそこに一人で居たブロードは不自然である。
リーヴァ「創造主って、エックス?のこと?」
ブロード「正確な名前はそうではないようですが…ここのものは皆 X と呼んでいますね。」
リーヴァ「本名じゃないんだ。」
ヴィス「普通そうだろう‥」
メトリ「ヴィスは知ってるの?」
ヴィス「本名自体は知らないが、人間というのは基本苗字と名前、二つ持っていると本で読んだことがある。|X《エックス》という名前の人間はなかなかいないだろう‥__きっと。__」
メトリ「へぇ〜‥」
ブロード「さて、|私《わたくし》たちも参りましょう。リーヴァさん。」
リーヴァ「うん!」
メトリ「ちょっと急ごう三人とも!」
リーヴァ「わっ、本当だ。いそげ〜💦」
僕たちは早足でステージの方へと降りていった。しかし、ブロードは時間にまだ少しだけ余裕があると感じているのか、リーヴァたちより歩みが遅い。
軽くブロードの方を振り向き、
ヴィス「‥ブロード、この工場にある時計は針が進むのが遅れている。急いだ方がいい。」
ブロード「えぇ…そういえば、ヴィスさん?」
ヴィス「どうした‥」
ブロード「無くされた眼鏡、見つかったのですね。」
ヴィス「ん?ああ‥見つかって良かったよ。
でもそんな過去のことはどうでもいいだろう。急ごう」
---
ヴィス「、__は、‥__間に合ったみたいだな…」
いつものように、ステージ周辺に工場中のドールが集合した途端、閉められていた赤い幕がバーッと開いていき、同時に中心へスポットライトが一つ当てられる。
始まるぞ、いつもの聞き飽きた定文が…。
『レディースアーンドジェントルメーン!ようこそお集まりいただきありがとう!』
スピーカーから、姿の見えないあの男の声が聞こえてくる。
すると、周りのドールたちは「なんだなんだ?」「来たぞ来たぞ!」とザワつき始める。
コツコツ__
シャルル「あいつが、X だ。」
ステージの奥から、少しずつ、Xの姿があらわになる。
X「パチパチパチパチッ」
Xは気味の悪い笑みを浮かべながら僕たちドールに向かい拍手する。
X「初めて会うドールも、1年ぶりに会うドールも素晴らしい美しさです!」
「「おおおおおお!!」」
X「まあまあ、落ち着いてください。
知っているものも多いと思いますが、|私《わたくし》は一年ごとにこの工場にやってきて、新しいドールを作っています。去年作ったドールを思い出すと…ライル、ミーフィ、それから…リーヴァ、他にもたくさんの人形を作りましたね。
そして、今日!また新しい人形の誕生をお祝いしましょう!」
「「わああああああ!!!」」
ステージは、一瞬Xの指示で静かになったものの、その一言でまた歓声に包まれていった。その中に僕やレイア、トラウムの声は一切入っていない。
しかし、今回は歓声だけではないようだ。
メトリ「ほとんど去年と同じこと言ってる〜」
ミーフィ「私、先輩になるんだ!やった!」
リーヴァ「新しい…仲間?」
去年生まれたリーヴァたちは先輩になれると喜んだり、困惑したり、去年より前に生まれたドールたちは殆どが歓声をあげたり、一部の者は定文じゃないかとXに呆れを示す。
これを聞く限り、これからの集会は多少楽しくなるようだ。
X「それでは開始いたします!ミュージックスタート!!」
〜♪
Xが合図をすると、聞き慣れたクラシック曲が流れ始めた。それと同時に、機械が動き始め大きな音を立てている。
ヴィス「ピョートル・チャイコフスキー作曲、くるみ割り人形より『金平糖の精の踊り』だ。」
僕は独り言として、流れるクラシック曲の名前を発する。
きっとみんな、聞いたら『ああ、これか』となる曲だ。
ここからは、僕が毎年唯一楽しみにしているところ。今回はどんなドールが生まれるのだろうか…?
〜♪
音楽に合わせ一つの機械が前へ出てくる。そして定位置に止まるとまた音楽に合わせ、次々とドールを作っていった。
作り出されたドールたちは、「本当に作りたてか」とツッコんでしまいたくなるほどスルスルと踊りを始めた。今年も、その踊りが目立つドールは一定数いるらしい。
…奇麗だ。
リーヴァ「…!」
隣に立っていたリーヴァは、軽く息を呑んだ。それが何故なのか気になり、リーヴァが釘付けになっている視線の先を辿ってみると、一人の一際目立つドールがいた。
ヴィス「…これは‥」
コクリ‥と、少し息を呑む。
薄桃色の髪の色をした編み込みツインテールのドール…幼い顔立ちにも関わらず、シャルルに負けないくらい綺麗な踊り魅せてくれる。
もちろん、作られたばかり過ぎてほんの少しぎこちないところはあるが、それ込みでも十分美しい。
レイア「あの人‥すごく綺麗に踊るわね‥」
ヴィス「、……ああ。“あの時”とはまだ別の‥何かが身体中を駆け巡る感覚がある…」
レイア「あの時、って…ああ‥!」
いつの間にか真隣へ来ていたレイアは、独り言か僕へかけたのかどちらか僕には分からなかったが、そう、目を細め…本当に嬉しそうに言った。僕の言葉に反応すると、クスクスと小さく笑ったのが多少きたが…愛嬌ということにしておこう。
しばらくして、他のドールも少しずつその踊りに気づき始め、一気にザワついた。
フとリーヴァの方に目線をやる。
リーヴァ「…」
ヴィス「、っ‥!!?/」
リーヴァはなんともこう‥あんまり他のドールには見せたくないような‥…イヤ違う。なんでもない。気のせいだ…
とても可愛らしい、顔で‥見惚れていた。
僕はそんなリーヴァに、怖いほど見惚れた。
ヴィス「…」
リーヴァに見惚れてジッとリーヴァのことを見ていたら、流れていたクラシック曲がプツと終わってしまった。
その瞬間、リーヴァはハッとなり見惚れていた顔を元に戻す。
まずい…僕も戻さなければ。いくら周りが薄暗くても、近くにいたらすぐ分かってしまう‥。こんな表情、誰かに見せられるわけがない。
レイア「‥チラリ」
ヴィス「フル‥」
ああ……僕としたことが、くそ………。
顔が熱い気がする。ドールに熱を発する機能は付いてない、はず。一体なんなんだコレ‥!
ひとまずマフラーで隠しておこう…見られたらまずい‥。もしお喋りなドールにバレてみろ。一瞬で工場中に噂として広まり僕は誰でも顔を合わせれなくなる。
そんな事態になったら、僕は作業部屋に引き篭もってしまうだろう。
そんな事態になる前に、表情をいつものようにし、また緩めないように気をつけようと顔を上げると、既に赤い幕は閉じられ、周りにいたドールたちはまばらになっていっている。
リーヴァは…先ほど見惚れていた、薄桃色髪のドールの下へと駆けていた。
ヴィス「リーヴァ……」
レイア「‥‥
全く‥__どこまで惚れてるんだか‥__
ほら行くわよ。」
ヴィス「、」
リーヴァ「とても綺麗だった!あの踊り、見惚れちゃった…!」
??「ありがとう、です。」
リーヴァ‥あんなに楽しそうに、声を荒げて『綺麗だ』『見惚れた』と……その言葉は、僕に言ってほしいものなのに。
レイア「ちょっと‥私あんまりここ居たくないのよ‥行きましょうヴィス。」
ヴィス「…ああ‥」
あんまりリーヴァに引っ付くと、全員からよく思われない、そう分かっているが、体はその場に留まろうと足を止めてしまう。
レイアは何やら愚痴愚痴と言っているが、そう言いつつ僕を待ってくれている。
レイア「置いてくわよ‥?」
ヴィス「すまない‥」
口ではそういうものの、足にはまるで枷が付いているかのように重くなっており、足取りが遅くなる。
のそのそと進んで行き、ようやく会場から出る、となったところで後ろから話し声が聞こえて来た。
その声が聞こえた瞬間、レイアはツカツカと声の主の元へ歩き出す。
「えー!X もう帰っちゃったの!?」
レイア「ルビー!まだあの人に心酔しているの?
何度も言っているじゃない!外に出たって意味がないわ!みんなで仲良く暮らすのが一番よ。」
ルビー「僕の気持ちなんてわからないくせに!知ったような口聞いてんじゃねぇ!」
レイア「はぁ?外に出るなんて、最悪の一言に尽きるわ!」
レイアは、残念そうに大きな声をあげるドールへ何度も怒鳴る。そんなレイアの声は、心からソレを願ってるかのように声を震わせていた。ルビーと呼ばれていたドールは、ぶっきらぼうにレイアへそう言い放つ。
もしかして知り合いなのだろうか?
ルビー「〜!!」
レイア「ー~!!!?」
二人の言い合いがヒートアップして来ている。良い加減止めなければ‥これ以上ヒートアップすると、能力を使用する喧嘩沙汰になるぞ‥!
??「ちょっと、いいですか、|En forme d'éternité《アンフォームド・エターナイト》」
喧嘩を止めようと、レイアたちの方へ行こうとする。すると、僕の一番聴き慣れている、落ち着いた声が耳に入ってきた。
チラリと声の聞こえた方を見てみると、宝石のような美しいミント色の瞳を持つ旧友が、自身の能力を使い二人の喧嘩を止めている。
ヴィス「あの、他のドールと接触したがらないトラウムが、自分から行くなんて‥」
僕はなんだか、子供の成長を目撃した母親の気分になる。トラウムにとって、相当うるさかったようだ。
ひとまず、トラウムが止めるなら、特に問題は起こらないだろう‥。
僕は、出口の影へと移動し、レイアたちからは見えないよう少し奥に隠れた。‥まあ、いわゆる盗み聞きだ。
リーヴァ「ちょっと!二人に何したんですか?」
トラウム「とても騒がしかったので、少し黙ってもらおうと思いまして。」
リーヴァ「二人は元に戻るの?」
トラウム「貴方は二人にとってのなんなのですか?」
トラウムはすぐに帰ろうとしたが、リーヴァに質問をされる。その質問に、トラウムは何を思ったのか答えず、逆に質問を返し、リーヴァから返答を待つ。
リーヴァ「私はリーヴァ。二人…というかレイアさんの友達よ!」
トラウム「そう…友達…安心してください。10分も経てば元通り騒がしくなりますよ。その前に自分は去りますがね。」
トラウムはそれを聞いて満足したのか出口まで歩く。すると「ああ‥」と何をか思い出したかのように振り返りこう言った。
トラウム「そういえば、相手にだけ名乗らせるのは少々|不躾《ぶしつけ》ですね。自分は、トラウムと申します。では。」
簡略な自己紹介を済ませ集会場を出た。
トラウム「、、、ヴィスさん、貴方って人は、、」
ヴィス「、」
どうやら盗み聞きをしていたのはバレていたらしい。
弁解なんて無駄なことはせず、素直に謝る。
ヴィス「すまない。ちょっとな‥」
トラウム「あんまりこういう事してると、いつか友人がいなくなりますよ、、?」
ヴィス「‥以後、気を付けよう。」
トラウム「そうして下さい、、
それじゃあ、自分はもう行きますね。また、、」
ヴィス「トラウム」
トラウムを少し声のボリュームを上げて呼び止める。
僕は、朝から今まで引っかかることがいくつもあった。眼鏡のことといい、ブロードのあの発言といい‥今日はなんだか色々と変だ。
それに……
少し前に考えた一つの予想がまた、僕の頭の中に浮かんだ。
トラウム「、はい?」
ヴィス「今夜だけは僕と一緒にいてくれ」
トラウム「、、、」
ヴィス「…?どうしたんだ?」
トラウム「、、、、、ヴィスさん、珍しく日本語が紛らわしいですよ、、」
ヴィス「‥何がだ。」
トラウム「、、、、、、」
トラウムは困ったような、呆れているような‥そんな顔をして顔に手を当て少し俯く。
僕は、相手にやってほしいことを時間と共に言っただけなのだが、何か問題があっただろうか‥。
ヴィス「_ともかく。
今夜は凄く嫌な予感が‥いや、大変なことが起きると思っている。」
トラウム「大変なことって?」
ヴィス「‥ここじゃ言えない。あの部屋で話すから着いてきてくれ」
トラウム「、、分かりました、、、ヴィスさんがそこまで言うなら、着いていきます」
ヴィス「ありがとう、トラウム」
僕とトラウムは、老人の作業部屋へと急いだ。
リーヴァたちにも話そうか少し悩んだが、混乱を招きリーヴァに怖がられると僕が大変困るので、トラウム以外には話さないことにした。
---
---
ヴィス「__じゃないかと、僕は思ってるんだ。」
トラウム「、、、なかなかに恐ろしい予想をしますね。ヴィスさん、、」
ヴィス「まあな‥。でも、もしこれが実際に起こるとしたら__`今夜だ`。」
トラウム「だから、、ヴィスさんと自分、二人は一緒にいると言うことですか、、、
でも、人数が多ければ多いほど狙われるのでは、、?」
ヴィス「その可能性ももちろんあり得るが、メリットもある。」
トラウム「、、、武力、、。」
ヴィス「ああ。」
トラウム「確かに、、多い方が力を増しますよ、、でも、ヴィスさん一人でも十分戦えるでしょう、、?その辺にいるドールの100倍は、その身一つで戦える。」
ヴィス「何を言ってるんだ‥そんなことない。」
トラウム「自覚してないんですね、、、」
トラウムは呆れたような顔をするが、実際そうなのだから仕方がない。
僕は確かに、ある程度のはこと出来るだろう。しかし、その辺のドールの100倍なんて強さだったら、人形ゴロし‥マリィに、リーヴァを取られることなく圧勝出来ていただろう。それが出来てないのだから、100倍も強いわけがない。
トラウム「数年前、、寝込みを襲って来た大勢のドールをたった一人で、それも片手で薙ぎ倒して追い払ったのは、、、、どこのどいつなんでしょうね、、、」
ヴィス「ただ相手が弱かっただけだろう。そろそろ揶揄うのもやめてくれ。」
トラウム「__はあ__、、、」
ヴィス「‥少し気になることがある。すぐに戻ってくるから、待っていてくれ。」
トラウム「、分かりました、、」
ヴィス「何かあったらすぐに大声を出すんだぞ。」
トラウム「分かってますよ、、そっちこそ、気をつけて下さいね、、」
ヴィス「ああ。」
僕は、今朝眼鏡を見つけた木箱のところへ向かった。
---
ヴィス「ー‥」
僕は木箱のある場所へ移動し、その周辺を色々と見て行った。しかし、特におかしな点はなく探し終えてしまう。
あと探していないのは__
ヴィス「木箱の中くらいか‥」
そう独り言を言うと、僕はすぐに三つ置かれている木箱の前まで来た。
二つ並ぶ木箱の上のちょうど真ん中に一つ木箱が置かれていて、下の木箱は開けられない。退かそうと押してみたが、何かがどこかに引っかかっているらしく、殆ど動かすことはできなかった。
そのため、すぐさま下の木箱を開けることは諦め、上に置かれている木箱だけを開けることにする。
ヴィス「、__フ‥__」
下に置かれている木箱の上に乗り、木箱を少し見てみる。木箱の蓋は、まるで大量のナイフで刺したかのように穴だらけだった。よく見ると、今僕が乗っている木箱も少し穴が空いている。
その隙間から木箱の中を見ることは暗すぎて叶わなかった。僕は少し力を入れて木箱の蓋を開ける。
ヴィス「ケホ‥ 一体いつからあるんだ。この、きば‥こ……」
舞う埃で咳をし、文句を垂れる僕の目に入って来た木箱の中身は__
--- `たくさんのドール`だった ---
---
トラウム「_、おかえりなさい。“気になること”は、どうなりました、、、、?」
ヴィス「…」
トラウム「何か、、、あったんですか、、?」
ヴィス「、ぁあ‥。いや、なんでもない。気になることも解消した。問題ないぞ。」
木箱の中身で、帰りながら考え事をしていたら、いつの間にか着いていたらしい。トラウムの話が一切入ってこなかった。
眼鏡をカチャリと押し上げながら僕は問題はない、というが、トラウムはクスクスと少し嬉しそうに笑い始めた。
トラウム「ふふ、、、ヴィスさんって本当に、、いつまで経っても変わらず、嘘をつくのが下手ですね、、、、」
ヴィス「?そうか‥?」
トラウム「初めは分かりにくいですけど、、これだけ長い間付き合ってたら、イヤでも分かるようになりますよ、、、」
ヴィス「ん…気をつけるようにする。」
トラウム「、、、__変わらないで欲しいですけれどね__、、、、、」
ヴィス「?何か言ったか、トラウム。」
トラウム「いいえ?なんにも言ってないですよ、、」
ヴィス「?」
今日のトラウムはなんだか少し変だな‥
そう思い、僕はほんの少し首を傾ける。でも、たまにはこんな日があってもいいかとすぐに元に戻した。
そのあと、僕たちは軽く世間話をして眠りについた_
微かな音が聞こえた瞬間、僕はすぐさま起き上がり部屋外へ出る。
ヴィス「…誰だ。」
物音の正体はドールだと確信をしていた僕は、相手に聞こえるように少しだけ声のボリュームを上げた。
その時、突然どこからかナイフが飛んでくる。
ヴィス「ッ」
反射で横へ飛び、ギリギリで避けるがすぐさま次のナイフが降ってくる。また避けると、次々とナイフが飛んできた。
物相手に、力を使うことはできない。僕は落ちたナイフを拾い、避けれなさそうなナイフは弾くようにした。
「ここまで抵抗したのは、貴方が初めてですよ。」
つい最近聞いた声が、上の方から聞こえる。
声の聞こえる方を向くと、そこには空中に浮かぶ一人のドールのシルエットがあった。しかし、今日は運が良いのか悪いのか、月光が強く、相手の姿をハッキリと見ることは叶わない。
ヴィス「っ‥誰なんだ!」
「名乗る程のものではありません。
ですが、|私《わたくし》の攻撃を掠りもさせなかったのは褒めましょう。今宵はこの辺で、では。」
謎のドールがそう言いながら小さく拍手する。しかし、次の瞬間そのドールは忽然と姿を消していた。
ヴィス「く‥っ」
ここで捕まえられるのであれば、捕まえてしまいたかった。リーヴァや他のドールに危険が及んでからでは、遅いのだ。
「ヴィスさん!!」
老人の作業部屋から慌てて来たのは、トラウムだった。
トラウム「よかった、、このナイフの量、、少なくとも50はありますよ、、?一体何が、、、いえ、それよりケガはありませんか、、?
どうして、、どうして自分を起こしてくれなかったんですか、、、?!貴方が自分で二人のメリットを言ったんじゃないですか、武力って、、、!」
珍しく焦った顔をし、一方的に質問を投げかけてくるトラウムは少し面白かったが、今は笑える場面じゃない。
ヴィス「新しい人形ゴロしが…いや、人形ゴロしは元々、別のドールが個々に動いていたのかも。二人だったのかもしれない。
ともかく、人形ゴロしが奇襲を仕掛けて来た。いくらトラウムでも、寝起きでは危険だと考えたんだ。だから」
トラウム「だからって!」
ヴィス「、」
トラウム「、、、貴方、一人で戦うこと、、ないでしょう、、、、?」
トラウムが、僕にこんな|表情《カオ》をしたことがあっただろうか?どうしてそんなに、悲しそうな、辛そうな顔をするんだろう。
やっぱり、今日のトラウムは何かおかしい。
ヴィス「…すまな、かった‥」
そんなトラウムの威圧感に僕は、自然とそう、口に出していた。なんだかおかしな声をしている気もしたが、気にしないことにしよう。
トラウム「、っ、、、わかってます、、ヴィスさんは、そう言う人ですから、、、、
、、すみません、、自分もガッついちゃいました、、、」
ヴィス「いや‥僕も独断で動いて危険に晒されていたのは事実だ。謝るのは、僕だけでいい。」
いつもと違うおかしい僕らは、落ち着きを取り戻して老人の作業部屋へと戻る。
リーヴァたちに、大変なことが起こっているとは露知らず__
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ヴィス「!!!?」
朝、僕は飛び起きた。久しく見た夢の中で、リーヴァが僕を襲ったやつと対峙している夢を見たのだ。
ヴィス「っ…まずい‥!!」
部屋を出るすんでのところで、僕はトラウムも一緒にいることを思い出す。
流石に、何もなしにまた一人にさせるのは、昨日のこともあるから申し訳なさすぎるよな‥。
僕は殴り書きに近しい文字を、置いてあった紙に書き、見つけやすいところに重しとしてペンと一緒に置いて慌てて部屋を出て行った_
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ヴィス「はあっ、はあ‥!!」
絶望の迷宮で、パイプから逃げている時と同じくらいかもしれない…僕はあの時と同じくらいのスピードで、リーヴァがいつもいる階段へとやってきた。
ヴィス「リーヴァ!無事かっ!!?」
階段を降りながらリーヴァを呼んでみるが、応答はない。
もし、リーヴァが寝込みを襲われたとすると…嫌な予感がいくつもいくつも頭の中に出てくる。必死にその考えを消し、恐る恐る階段下を除いた。
ヴィス「……リーヴァ‥?」
暗くて良くは見えないが、少なくともドールの姿やその残骸がないことは確認できた。
「ヴィ、す‥お兄ちゃ‥」
ゼエ‥ゼエ‥と、荒々しい呼吸音が聞こえる。微かに「ヴィスお兄ちゃん」と呼ぶ声も聞こえた。こんな特徴的な呼び方をするのは、彼女しかいない。
ヴィス「ミーフィ!」
ミーフィ「ヴィス‥お兄ちゃ、リ-、ヴァ‥お姉ちゃ、んが……っ!!」
肩を上下させるミーフィは、今にも泣きそうな顔をしている。僕はたまたま持っていたハンカチを彼女に渡し、落ち着かせ話を聞いた。
ミーフィ「っ……昨日は‥やけにドール同士の戦いが酷かったから、リーヴァお姉ちゃんが心配で見に来たらっ‥姉ちゃんがいなくて、あっちこっち探したんだけど、いなくって…!!!」
いつも以上に子供っぽく喋る彼女からは、最悪を想定してしまったのかポロポロと涙がとめどなく溢れてくる。僕だって、する必要のない我慢をしていた。しかし、彼女がポロポロと溢れさせるのを見て、僕まで溢れそうになってしまう。
もし‥もし、リーヴァの身に何かあったら……もし、壊されていたら、僕はこの先どうやって生きればいいのだろう‥?
--- `リーヴァの消えた生活` ---
いくら考えても、世界から全ての色が消えて、声が消えて‥真っ黒な闇に包まれる気しかしなかった。
こんな生活に、僕は耐えられるだろうか?‥否。無理に決まっている。
リーヴァの鈴のような綺麗な声に、心底楽しそうに笑ってくれたあの可愛らしい笑顔に、僕たちを笑わせてくれるあの思いつきに、君を見つけさせてくれたあの美しい舞いに、……僕は、リーヴァに生かされている。リーヴァを知った今、リーヴァなしの生活なんて考えたくもない。
ミーフィ「もしリーヴァお姉ちゃん“に、何かあったら‥!!!!ッッ」
ミーフィは、そんな想像でキャパオーバーしてしまい、まるで意識を失うかのように倒れて来た。そっと彼女を寝かせ涙を拭く。
とっくの昔にキャパオーバーしていた僕は、リーヴァの危機かもしれないという考えで立っていられた。しかし、ミーフィと同じく、想像だけで死ねるような考えをいくつもしたせいで、余計にオーバーし、意識を失った
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次に目覚めると、メトリが前に座っていた。
ヴィス『どうしたんだ?メトリ。
‥リーヴァは‥?』
やけに落ち着いた声で僕が聞くと、メトリは虚な目をし、答えた。
メトリ『ヴィスが、リーヴァを守らなかったせいで_`死んじゃったよ`。』
ヴィス『…え‥?』
“リーヴァの死”
その一つの事実が、僕を闇に突き落とした。
ヴィス「ッ“ヒュ‥」
暗い。周りを見渡そうと起き上がる前に、いきなり、僕は息苦しくなった。息が吸えなくて、仮に吸えても、今度は吐けない。
チラリと僕の上を見てみると、そこには誰かがいた。ふわふわした巻き毛の、この真っ黒闇でも強く光るピンク色の光。きっと、それは目なのだろう。とても、綺麗だ。
しかし、その人物が僕の呼吸を妨げている張本人のようだ。手を伸ばし、僕の首を力一杯締めている。
苦しくて、苦しくて、僕はリーヴァに助けを願った。
ヴィス『リー、ヴァ‥ッ“』
『なぁに?ヴィス!』
鈴みたいな、綺麗な声
明るくて、元気があって、とても優しい声がする。
僕が世界で一番大好きな声がする__
僕は、必死に声のする方を…上を見た。
そして視界に映ったのは、今まで一番楽しそうに笑う、リーヴァの姿。ふわふわの、思わず撫で回してしまいたくなるような巻き毛、こんな真っ暗なのに、強く光って僕だけを見つめている、ピンク色の綺麗な瞳。
昨日よりも、今日の方がかわいいな‥そんなことを考えていたら、首を絞める力が強くなった。
ヴィス『っ“あ‥カヒュッ』
息が完全にできなくなる。吸うことも、吐くことさえもできなかった。
そういえば、リーヴァのいたところには、誰かよくわからない人がいたはず。その人は、今も僕の首を締め続けている。
一体、どこから?
純粋に、ただ気になった。
だから、首を締めている手を辿って、視線を動かす。さっき見た時はわからなかったが、白いの袖の服だ。肘の辺りまでくると、短いケープを羽織っているのが分かった。
なんだか、すごく見覚えがある。
少しずつ上に上がっていく。そして、顔までたどり着いた。
しかし、僕は信じられない事実に絶句する。
リーヴァ『なぁに?ヴィス!』
ふふふっ!と、楽しそうに笑うリーヴァ。
でも、手は僕の首を締めていた。
ヴィス『ッ“……ぅ、て……?』
ああ‥なんで‥僕が、リーヴァを怒らせちゃったのかな‥?
とめどなく、涙が溢れる。
リーヴァ『なぁに?ヴィス!』
同じことをいい、ニッコリと、僕にだけ笑ってくれるリーヴァ。僕だけを映してくれる目。
確かに、大好きなリーヴァ。
なのに、何故かチガウんだ、リーヴァ。
薄れゆく薄れゆく意識の中、僕は何度も何度も、『ごめんね』と言い続ける。
きっと、何か、リーヴァをこれ程までに怒らせることをしてしまったんだ。
ごめんね、リーヴァ。ごめん。
ずっと、ずっと、僕は、君だけを、
`愛`しているから
--- どうして…? ---
--- ヴィス!ミーフィ! ---
---
「__ィス!ミーフィ!」
優しい声がする。
でも、なんでだろう?すっごく、悲しそうな声でもあるよ。どうしたんだ?
世界で一番、大好きな__
ヴィス「__ハッッ!!!!?__
リーヴァ!!」
ミーフィ「お姉ちゃん!!」
僕は飛び起きてリーヴァの元へ走った。目覚めてすぐ飛び起きて走ったせいで頭が酷く痛い。
でも、そんなの関係ない。どうでもいい、僕のことなんかどうでもいい!!!!
ヴィスは走ってきて、リーヴァを抱きしめた。
ヴィス「心配した…無事で、よかった…」
バクンバクンと、ないはずの心臓の鼓動がドンドン速くなる。走ったからとか、そんなんじゃない。
リーヴァが生きているという、人生で一番の喜びともう一つ。今自分がリーヴァになにをしているのか気付いた時には遅かった。
コレ…彼女に伝わってしまっているだろうか‥?
リーヴァの鼓動も、微かに分かった。
ヴィス「___生き、てる‥__」
ミーフィ「二人とも無事でよかった〜!いなくなっちゃったかと思ったよ〜!」
ミーフィは、無事なことが分かり安心して糸が解けたのか、泣きじゃくる。その涙は、止まる気配を見せなかった。
それを横目で見ていたら、僕まで泣きそうになる。リーヴァの前でそんな失態許されない。僕は目を伏せて、さっきよりも強く、彼女を抱いた。
もうなんか、やってしまったことはしょうがないし‥__これで新ステップ進めただろうし‥__いいや。
僕は周りの目とかすらどうでも良くなり、ほんの少し、彼女の肩に顔を埋める。
リーヴァ「二人とも…」
メトリ「私たちは無事よ。」
メトリは、泣きじゃくるミーフィの頭をしゃがんでゆっくりと撫でる。それにもっと安心したのか、ミーフィは少しずつ落ち着き、涙を止めた。
僕も見切りをつけて一度離れたが、代わりにとミーフィが抱きつこうとしたので、続けて抱くことにする。
**二度と、彼女から離れるか。**
僕は、ミーフィとメトリをチラリと見てから睨みつけた。
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ヴィス…君はなんだか、埃っぽい階段の近くでよく泣きそうな女の子と一緒にいるね。
ヴィス「君がそう言うシーン、好きなだけだろ。」
そう言う、一部以外には心開かない‥淡白で冷たいところも大好きだよ僕‥。
ヴィス「‥疲れてるのか‥??」