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【第六話】特級呪物は呪いたい (後編)
あらすじ
自称特級呪物である「ワラビィ」という不気味な人形を拾ってきたあおい。
ワラビィはあおいの事を呪おうとするが⋯?
「はぁ、はぁ……! な、なぜだ……! なぜ俺様の呪いが、ことごとく通用しねぇんだ……!」
相談所のソファーの上で、呪いの人形ワラビィは息も絶え絶えに横たわっていた。
あおいの家で夜中にポルターガイストを起こそうとスプーンを曲げたら「あ、1〇0均のだから元から脆かったか」と片付けられ、雫に金縛りをかけようとしたら「うるさい、寝苦しい」と頭の下に敷かれ、枕代わりにされてペシャンコに潰された。
現代の常識と、雫の圧倒的なパワーの前には、昭和生まれの呪いなど無力だったのだ。
しかも、無理に妖力を使いすぎたせいで、ワラビィのチャームポイントである濃い紫の布の継ぎ目がベリベリと裂け、中から白い綿が溢れ出していた。
「あーあ、中身出ちゃってるじゃん。もう妖力も残ってないみたいね。あおい、今度こそ燃えるゴミに出してきなさい」
雫は新しいおやつの「豆大福」を頬張りながら、冷淡に言い放つ。
「おい、待てコラ……俺様は、最凶の、呪物……」
ワラビィはボタンの目を弱々しく点滅させ、がっくりとうなだれた。その姿は、あまりにも哀れだった。
あおいは深いため息をつくと、自分のカバンから、授業で使っている小さな裁縫セットを取り出した。
「ちょっとじっとしてろよ、ワラビィ」
「あ? なんだ、トドメを刺す気か……」
あおいは無言で、太めの黒い糸を針に通した。そして、ワラビィの裂けた紫の布地をやさしく手繰り寄せると、一針、一針、丁寧に縫い合わせ始めた。
溢れ出そうになっていた綿は、収まっていく。
「……てめぇ、何してやがる」
ワラビィが呆然と呟く。
「何って、修理。お前、せっかくそんな独特なデザインで可愛いのに、バラバラになったらもったいないだろ。はい、これでよし」
あおいはパチンと糸を切り、少し不格好だが、しっかり補強されたワラビィの体をポンポンと叩いた。
ワラビィは自分の体を見つめた。ドス黒い呪いのオーラは消えていたが、あおいに縫ってもらった部分から、じんわりと温かい、新しい力が湧いてくるのを感じた。
人間からこんなに優しく触れられたのは、何十年ぶりのことだろう。
「……お前、バカだろ。俺様は、お前を呪おうとしたんだぞ」
ワラビィのガラガラ声が、心なしか少し震えている。
「知ってるよ。でも、お前も前の持ち主に捨てられて寂しかっただけだろ。行き場がないならさ……」
あおいは、相談所の部屋を見回した。
「時給う〇い棒3本の超絶ブラックだけど、ここなら、お前みたいな変な奴でも居場所くらいはあるだろ」
ワラビィのボタンの目に、じわりと涙が浮かぶ。
「……お前、いい奴だな。気に入ったぜ。今日からお前を、俺様の『一等家来』に任命してやるぅ⋯!」
「なんで上から目線なんだよ! 友達とかでいいだろ!」
その時、二人のやり取りを黙って見ていた雫が、最後の大福をゴクンと飲み込み、フンと鼻を鳴らした。
「んじゃ、今日からその生ゴミは、相談所の『マスコット』兼用心棒。あおい、あんたが拾ってきたんだから、餌はあんたが責任を持ちなさい」
「生ゴミって言うな! あと俺が世話係かよ!」
「よろしくな、相棒! 俺様、人間の愚痴を聞くのだけは得意だからよ、相談の受付は任せろ!」
ワラビィは嬉しそうに、短い手足をバタバタさせてあおいの肩に飛び乗った。
こうして、妖怪相談所にまた一人(一匹)、賑やかで頼もしい(?)仲間が加わったのだった。
ワラビィ 可愛いですよね(圧