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【第七話】九尾の狐はメンヘラでした (後編)
前編から見ることをおすすめします!
二人が一触即発の空気に包まれた、その時。
カツン、と湯呑みが机に置かれる音が響いた。
「勝手に盛り上がってるところ悪いんだけど」
冷ややかな声の主は、雫だった。彼女は最後の大福の粉をパッパと払い、いつも通りの無表情のまま、白蓮をジロリと見下ろす。
「勝手に辞めた奴に、助手の資格なんてないわよ」
「し、雫様……っ!?」
白蓮の顔がサッと青ざめる。
「大体、何が勝負よ。あんた、20年前から何にも変わってないのね。見た目は前より磨いてきたみたいだけど、私、あんたの中身を恋愛対象として見てないから。中身変えて出直してきなさいよ」
ドガシャァァン!!!(?) と、白蓮の脳内に特大の雷が落ちたような衝撃が走った。
見た目は最高なのに、中身(粘着質なストーカー気質)を完全否定されるという、20年ぶりの秒速KOである。
「う、うわあああああん!!! 中身ってなんだよぉぉ! 20年間の僕のリサーチ努力を全否定かよぉぉぉ!!」
白蓮は床に突っ伏し、九つの尾を激しくバタバタさせながら号泣し始めた。
「(うわぁ、見た目超絶イケメンなのに、泣き方が完全に面倒くさいメンヘラじゃんか……)」
あおいはドン引きしつつも、自分のために(?)ハッキリ言ってくれた雫をチラッと見た。
すると、雫はボソッと付け加えた
「……あと、あれはデートじゃないから。チュロス食べに行っただけだから」
「そこはちゃんと全否定するのかよ⋯」
「だーーーっ!!! やっぱりデートじゃないか! 雫様がーっ!20年間一度も見たことない可愛い顔してるーーーっ!!! 許さん、許さんぞあおいーーーっ!!!」
血涙を流さんばかりに絶叫した白蓮は、「覚えていろよ!!」と言い残し、爆発的な煙と共に、窓から一瞬で夜空へと飛び去っていった。
「……嵐みたいなキツネだったな」
静かになった相談所で、あおいは大きくため息をついた。
「ほんとだぜ。せっかくの俺様の最凶オーラが、あいつの生霊みたいな重いオーラでかき消されるところだったわ」
ワラビィがやれやれと首を振る。
「……あおい」
窓辺の席で、雫がまた新しいお菓子の袋を開けながら、ぶっきらぼうに声をかけてきた。
「ん? 何だよ」
「……明日も、ちゃんと来なさいよ。剥がし忘れのチラシを見つけたんだから、責任持って働きなさい」
ポテチをサクサクと音を立てて食べる雫の横顔を見ながら、あおいは苦笑して
「はいはい、分かってますよ〜⋯」
と返した。
「⋯てゆーかそんな食べていいのか?太るぞ」
「私は太らない。時給のうまい棒2本に減らすわよ。」
「理不尽すぎだろ⋯」
こうして今日も相談所の仕事は平和に終わったのだった。