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最高のグループ_17話
ルアとカイト、二人が部屋の外へ出た瞬間、空気は一変した。
彼らは仲間たちの視線から逃れるようにして、廊下の隅へと身を潜める。
そこには誰もいないはずの静寂があったが、壁の向こう側では六人の動揺が渦巻いていた。
カイト「……あーあ。みんなに隠し事しちまったな」
カイトは自嘲気味に笑いながら、自身の掌を見つめた。
その手には、先ほど見せた圧倒的な魔力の残滓が微かに火花のように散っている。
ルア「しかたないじゃない。私とカイトが呪いで500異常の魔力を使うたびに体に傷が入るなんて言ったらみんな怒るでしょ? 那央は特にカイトに言うでしょうね。私も悠斗には言われたくないしね」
ルアの声は、いつもの凛とした響きとは異なり、どこか怯えを含んだ震えがあった。
彼女の指先――ウイルスを生成するための鋭い爪が、自身の皮膚を僅かに押し上げているのが見て取れた。
その瞬間だった。
背後の影から、六人の視線と魔力が一斉に突き刺さった。
那央「……隠し事?」
柚子が冷静な表情のまま、しかし底冷えするような声で問いかけた。
彼女は指示役として、そして仲間を守る者として、この違和感を見逃すことはできなかった。
莉音もまた、いつもの笑顔を消し、潤んだ瞳でルアとカイトを見つめている。
那央「……さっきの力、そして今の会話。お前たちは一体何を隠している? 500異常の魔力……呪い……なんだよ、その正体は!」
悠斗「姉貴……本当のことを言ってくれ。俺たちの仲間を救えなかったことの代償か? それとも、別の何かか?」
菜乃が盾を地面に突き立て、重圧を放つ。
彼女の瞳には…
仲間のために全てを投げ出しても構わないという強い意志と、それゆえの恐怖が同居していた。
夜雨は月を見上げることすら忘れ、青白い顔で呟いた。
夜雨「……僕にもわかる。その魔力、魂を削り取って無理やり引き出しているような不自然な響きだ。ルア、カイト……本当のことを話してくれ」
沈黙が支配する廊下。
ルアとカイトは顔を見合わせた。
そして数秒後、まるで合わせ鏡のように同時に口を開いた。
ルア「あ〜、聞かれちゃったね」
カイト「あ〜、聞かれちまったな」
そのあまりにも間のない、しかし絶望的なまでの開き直りを含んだ返答に、一同は言葉を失った。
那央「……ふざけるなよ! 冗談で済ませられることじゃないってわかってるのか!」
柚子「……問いただすわよ。逃げ道はないわ。その力がどこから来たのか、そして私たちの仲間たちがどうなったのか。すべてを話しなさい」
ルアは深くため息をつき、ログの首筋に手を添えた。
黒い狼・ログが低く唸り、周囲の温度を下げる。
ルア「……いいわ。なら、全部話すわよ。でも、覚悟はしておいて」
彼女はゆっくりと歩み寄り、仲間たちの前に立った。
その指先には、ヴァンパイアを腐敗させる唯一の毒――ウイルスが脈動している。
ルア「私たちの魔力は、Red Fangとの戦いで生き残るために手に入れたものじゃない。……『彼ら』に成り果てた元仲間たちの魂と引き換えに得た、呪いの産物なのよ」
カイトもまた、一歩前に出た。
カイト「俺のデバフ魔法だってそうだ。自分たちで作り上げたものだと思ってたけど……実際は、犠牲になった仲間の絶望を魔力に変換して形にしたものだったんだ。使うたびに体に刻まれる傷は、彼らの『死』の記憶そのものなんだよ」
莉音「……嘘……そんなこと……」
莉音の声が震え、彼女はその場に崩れ落ちそうになった。
救いたかったはずの仲間たちが、自分たちの力を支えるための糧になっていたという事実。
それが、彼らの誇りであった「最高のグループ」を根底から揺さぶる。
悠斗「……俺たちは、あの日助けられなかったことを後悔してた……。でも、その代償がこれだったのかよ……!」
悠斗の叫びが部屋に響き渡り、彼の魔力が暴走するように周囲を圧迫する。
柚子「……冷静になりなさい、悠斗。今は絶望することじゃないわ」
柚子は涙を堪えながらも、鋭い指示を出した。
彼女の瞳には、この過酷な真実を受け入れた上で、それでも前へ進むという強い決意が宿っていた。
那央「……ルア、カイト。お前たちはこれまでずっと一人で背負ってたのか」
那央は拳を握りしめ、悔しさの混じった声で言った。
那央「俺たちが『最高のグループ』だと言うなら、その呪いも、傷も、全部俺たちで分け合わなきゃならない。……一人で背負わせるなんて許さない」
ルアは涙を流しながら微笑んだ。
ルア「……そうね。約束したわ。私たちは最後まで共にあるって」
しかし、彼らはまだ気づいていない。
自分たちが守ろうとしている元仲間たちの正体が、実はすでにヴァンパイアへと変貌し始めていること。
そして、その真実を知った時、この「最高のグループ」がどれほどの地獄を見ることになるのかを。
扉の向こう側では、Red Fangの影が再び蠢き始めていた。
彼らの旅は、より深く、より暗い深淵へと続いていく。