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最高のグループ_12話
静寂に包まれた戦場に、ルアの微かな吐息だけが漂う。
しかしその平穏は長くは続かない。彼女の意識の深淵で、何かが再び動き出していた。
ルアの体が突如として激しく震え、周囲の空気が異常な密度で圧縮される。
それは莉音の回復魔法によって中和されたはずの「異物」への反動か、
あるいは彼女自身の魂が放つ最後の拒絶反応であった。
ルア「……っ、はぁ……! 違う……まだ、終わらせてない……!」
その瞬間、ルアの指先から溢れ出した魔力が、
これまでのウイルス魔法とは全く異なる性質を持って爆発した。
それは破壊のための毒ではなく、自己を再構築するための純粋なエネルギーであった。
彼女の口から紡がれた呪文は、かつて誰も見たことのない未知の術式――『バトル・アライズ』。
ルア「……立て……! 私たちは、まだ……立ち上がる……!」
眩い光がルアを包み込み、その衝撃波で周囲の土砂が舞い上がった。
光が収束した時、そこにはボロボロに引き裂かれ、血に染まった服を着ていたルアの姿はなかった。
代わりに現れたのは、戦場での激闘を耐え抜くための強固な装甲と、
洗練された意匠を持つ「戦闘用」の衣装へと変貌した彼女の姿であった。
悠斗「……!? なんだよ、今の魔法……! 姉貴、すごいよ……!」
ルアは自らの変化に驚きつつも、力強く立ち上がった。
その瞳には先ほどまでの絶望ではなく、強い意志の火が灯っている。
那央「……見事だ。彼女は自分の魔力を『変質』させるのではなく、『再定義』したのか。ルア、今の魔法を維持しろ。それがあればカイトへの道も切り拓けるはずだ」
那央の冷静な分析が飛ぶ。
彼は即座に次なる作戦へと頭を切り替えた。
柚子「……でも注意が必要よ。ルアさんの魔力は極めて高いけれど、この『バトル・アライズ』による変身状態は彼女の生命力を削り続けている可能性が高いわ。莉音、準備をして」
柚子の鋭い指摘に、莉音は頷きながらも拳を握った。
莉音「分かってる! 私が全力で支えるから! ルアさん、無理しすぎちゃダメだよ? 笑顔でいられるまで、私が治してあげるんだから!」
ルアは微笑み、頷いた。
彼女の傍らでは、黒色の狼・ログが低く唸りながら周囲を警戒している。
菜乃「……行くぞ。カイトの元へ向かう。邪魔する奴は私がすべて跳ね返す」
菜乃が巨大な盾を構え、先陣を切る準備をする。
その背中には揺るぎない信頼と、かつての仲間を救えなかったという痛切な後悔への決意が宿っていた。
夜雨「……月はまだ高く、僕たちの道を見守っている。行こう」
夜雨の言葉と共に、一行は再び動き出した。
目的地は数十分前に再会したあの森――カイトが潜伏している場所へと続くルートだ。
しかし、彼らが森の境界に足を踏み入れた瞬間、周囲の木々が異様な音を立てて揺れ始めた。
Red Fangの追手たちが、ルアの変化を察知して包囲網を狭めてきているのだ。
那央「……敵襲だ! 悠斗、菜乃は前衛へ。柚子と夜雨はデバフで足止めを。莉音はルアの魔力供給に集中しろ!」
那央の指示が響く。
悠斗「任せろ! 俺の攻撃、一発も通さねえぞ!!」
悠斗が地を蹴り、爆発的な速度で前方の敵へと突っ込んだ。
彼の放つ一撃は、大地を砕き、迫り来るヴァンパイアたちの防衛線を粉砕する。
その背後では、ルアが再び指先に魔力を集めていた。
彼女の爪から溢れ出すのは、先ほど中和されたはずのウイルス魔法だ。
しかし今、それは「守るための毒」として研ぎ澄まされている。
ルア「……ログ、行け。敵を怯ませろ」
ログが咆哮と共に飛び出し、黒い影となって敵陣へと突っ込む。
その混乱の隙を突き、ルアは自身の爪で空気を切り裂いた。
ルア「……私の仲間を傷つけるなら、このウイルスを受け取ってもらわなきゃいけないわね」
彼女が放った一閃により、周囲のヴァンパイアたちの肉体が瞬時に腐敗し、崩れ落ちていく。
それはかつての仲間の死に対する贖罪であり、今いる仲間を守るための絶対的な拒絶であった。
しかし、森の奥深くからは、さらに強大な魔力の波動が迫りつつあった。
カイトを狙うRed Fangの幹部たちが、ついに姿を現そうとしている。
那央「……来るぞ。全員、最大出力で備えろ! 最高のグループを見せてやる!」
6人の絆は、血塗られた森の中でさらに強く結ばれていく。
救出の旅路はまだ終わらない。
彼らの前に立ちはだかるRed Fangという巨大な壁を打ち砕くための戦いは、今この瞬間から再燃するのだ。