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最高のグループ_16話
扉の外から押し寄せた不穏な気配は、一瞬にして凍りついたかのように静止した。
ルアの傍らに控える黒い狼・ログが鋭く吠え、その咆哮と共に部屋の空気が激変する。
カイトとルアは、まるで最初からそこに敵など存在しなかったかのような速度で動いた。
一閃。
ルアの指先から放たれたウイルス魔力が、襲撃者の武器を瞬時に腐食させ、彼らの動きを完全に封殺した。
同時にカイトが手をかざすと、空間そのものが重く歪み、押し寄せていた敵たちの体は地面に叩きつけられた。
莉音「……え?」
莉音の絶句が響く。
わずか数秒のことだった。
Red Fangの追跡者たちは、戦うことすら許されず、無残にも戦闘不能へと追い込まれたのだ。
静寂が戻った室内で、那央は呆然と立ち尽くし、カイトとルアを見上げた。
那央「……おい、今の何だ? 一瞬で終わらせるなんて……カイト、お前、そんな魔法を使いこなせるのか?」
カイトは肩をすくめ、少し困ったような笑みを浮かべた。
しかし、その笑顔の裏にある魔力の奔流は、明らかに常軌を逸していた。
那央「……いや、おかしい。計算が合わない。お前たちの魔力数……異常だ。僕たちが知っている数値とは全く違う。カイト、ルア、あんたたちは一体何なんだ?」
その問いに、ルアは静かに一歩前に出た。
彼女の瞳には、冷徹なまでの意志と、隠しきれない強大な力が宿っている。
彼女は悠斗を背後に庇いながら、那央を見つめた。
ルア「……異常? そうかもしれないわね。でも、それは私たちがこの地獄を生き抜くために手に入れた力よ」
莉音「違うよ! 異常なのはカイトとルアだけじゃないわ!」
莉音は叫びながら、自分の手のひらを見つめた。
彼女の魔力数は896。一般人の平均である150から200を遥かに凌駕している。
莉音「那央、見てよ! 私たち全員……このグループの全員が異常なのよ! 一般人の魔力が150から200だって言うなら、私たちはもう『人間』の枠を外れているわ!」
菜乃は盾を握り直し、重い口調で言葉を継いだ。
菜乃「……ルアの言う通りだ。私たちがこれほどまでの強さを得たのは、Red Fangとの戦いで生き残るためだった。だが、その代償として私たちが何を失ったのか……まだ正確には把握できていない」
悠斗は震える声で姉に問いかけた。
悠斗「……姉貴。俺たちは、あの日死んだはずの仲間たちを助けられなかったことをずっと後悔してる。でも、今のカイトとルアの力……あれは、本当に『正義』のために手に入れたものなのか?」
その問いに答えられる者は誰もいなかった。
カイトは無言で自分の手を見つめ、ルアはログを撫でながら視線を落とした。
柚子「……冷静になりなさい。今は敵の正体を暴くことよりも、自分たちの身に何が起きているのかを知るべきよ」
柚子は鋭い眼光で一同を見渡した。
彼女は攻撃サポーターとして常に最前線の危険を察知するが、
今この瞬間、最も危険なものは外敵ではなく、彼ら自身の内側に潜む「変化」であることに気づいていた。
夜雨「……月が見えない場所でもわかるよ。僕たちの魔力が変質しているのは。まるで、自分たちの魂の一部を差し出して、強大な力を引き出しているような感覚だ……」
夜雨は自身の膨大な魔力――1846という数値を誇りながらも、
その源泉がどこにあるのかに怯えるように呟いた。
那央「……ルア、カイト。お前たちの本当の正体は何だ? なぜこれほどの魔力を宿している? そして、なぜあの日死んだはずの仲間たちが、今も私たちの影に潜んでいるような気がするんだ」
ルアはゆっくりと顔を上げた。
彼女の指先には、ヴァンパイアを腐敗させる唯一のウイルスが脈動している。
ルア「……那央。本当のことを話すのは、まだ早いかもしれないわね。でも一つだけ約束して。どんなことが分かろうとも、私たちは『最高のグループ』として、最後まで共にあること」
その言葉は温かくもあり、同時に逃れられない呪いのように響いた。
彼らはまだ知らない。
自分たちが守るべき「元仲間」の正体も、そしてカイトとルアが手に入れた異常な魔力の代償についても。
莉音「……約束するよ。私たちがここにいる限り、誰も一人で背負わせたりしない!」
再び静寂が訪れる中、暖炉の火は激しく揺れ、影を長く伸ばした。
彼らの旅はまだ終わらない。
むしろ、真実という名の地獄へと足を踏み入れたばかりであった。