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最高のグループ_10話
黒狼、ログの咆哮と共に戦場を支配していた眷属たちが次々と崩れ落ちていく。
柚子が放った防衛的なデバフと、ログの圧倒的な武力が合わさり、
押し寄せるRed Fangの軍勢は瞬く間に瓦解した。
しかし、勝利の歓喜に浸る間もなく、戦場には重苦しい静寂が訪れた。
黒狼――ログはゆっくりとその場に跪き、背後の闇から一人の少女を導き出した。
悠斗「……姉貴……ルア姉貴なのか!?」
悠斗の叫びは震え、涙で視界が滲む。
現れたのは、かつて自分たちを守ってくれた誇り高き仲間であり、
今は亡くしたと思っていた少女――ルアであった。
しかし、その姿は彼らの記憶とはあまりにも異なっていた。
莉音「……嘘……そんなこと、あり得ないよ……」
莉音の顔から血の気が引く。
そこに立っていたのは、かつての輝きを奪われ、
蒼白く変色した肌と、どこか虚空を見つめるような瞳を持つ少女だった。
彼女はRed Fangに捕らえられ、ヴァンパイアへと変貌させられていたのだ。
那央「……ルア。君は……生きているのか。それとも、我々の知るルアなのか……?」
那央の問いに対する答えは、
ルア自身の唇から漏れた言葉よりも先に、彼女の体から放たれる異質な魔力によって示された。
ルアの手先からは、どす黒い霧のようなものが立ち上っている。
それはヴァンパイア特有の禍々しい気配を内包しながらも、
同時にそれを「腐敗」させる毒の性質を持っていた。
柚子「……何なの、この魔力は? 攻撃的なデバフでもないのに、周囲の空気が壊れていく……!」
柚子は冷静に分析しようとするが、その指先が震えるのを抑えられない。
ルアはゆっくりと歩み寄り、悠斗の前に立った。
彼女の手首には、自ら作り出した「ウイルス」を流し込むための特殊な魔力回路が刻まれているかのように脈動していた。
ルア「……みんな、会いたかった……。ごめんね、こんな姿で……。」
その声は掠れ、今にも消え入るかのようであった。
彼女の手のひらには、この世の誰にも扱えない禁忌のウイルスが凝縮されている。
それはヴァンパイアという種族にとっての死神であり、
ルア自身を犠牲にして作り上げた「対抗手段」だった。
夜雨「……待ってくれ。君は自分に……その毒を打っているのか?」
夜雨の鋭い観察眼が、彼女の体内で起きている異変を見抜いた。
ヴァンパイアに変えられたルアの細胞は、
自らが生み出したウイルスによって内側から破壊され続けているのだ。
彼女はその致死的な毒を自身の体に流し込み続けることで、
Red Fangの支配下にある「種族としての特性」を強制的に崩壊させ、自分自身を人間へと繋ぎ止めている。
ルア「……そうよ。このウイルスは、私の体の中でヴァンパイアの細胞を腐らせるわ。私を殺す毒であり、同時にRed Fangから奪い返すための武器でもあるの。」
彼女が指先を動かすたび、その周囲には死の香りが漂う。
ルアは自分の爪に魔力を集中させ、ウイルスを鋭利な刃へと変えた。
それは感染した瞬間に相手の肉体を腐敗させ、体内のヴァンパイア細胞を内側から崩壊させる絶望の魔法。
菜乃「……そんなことまでして……なぜ……。」
菜乃が拳を握りしめ、声を絞り出す。
ルアは悲しい微笑を浮かべ、悠斗の手を取り、その手に自分の爪をそっと触れさせた。
ウイルスが伝播する瞬間、彼女の体から激痛が走り、顔を歪ませる。
ルア「……私だけは、あんな奴ら(Red Fang)に屈したくない。仲間を守りたかった……あの約束を果たすために、私はこの毒で自分を焼き切るわ。」
悠斗「やめろ! そんなの……そんなことしなくていいんだよ!!」
悠斗が叫びながら彼女を抱きしめる。
ルアは苦痛に耐えながらも、その瞳にはかつての輝きを取り戻したかのような強い意志を宿していた。
魔力数3058を超える膨大な力が、ウイルスと共に彼女の生命力を削り取っていく。
那央「……ルア、君は一人で背負いすぎだ。俺たちがいる。指示を出せ、我々が君を支える番だ。」
那央の声に、莉音や柚子も頷く。
彼らはかつて守れなかった仲間への後悔を抱えながら、
今、目の前で命を削って戦う「最高のグループ」の一員を守るために立ち上がった。
ルア「……ふふっ、いいわよ……。でも、まだ終わらない。Red Fangの幹部たちが来るまで、私はこの毒を研ぎ澄ませて待つわ。」
ログが再び低く唸り、主人の意志を受け取ったかのように牙を剥いた。
救済と絶望、そして自己犠牲による反逆。
ルアという名の「最高の盾」と、「最期の毒」を手に入れた六人の戦いは、まだ始まったばかりであった。