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不壊の壁は刃を持たない 第十話
SAKUTARO777
シンゴの過去。
クエストの帰り道。曇り空の下をみんなで並んで歩く。※ただしタートルは担がれている。
「ひー! 疲れたな〜!」
「まさかあんなにスライムが出るなんて…。」
「でもスライムがいっぱいいたおかげで7万ペールも貰えたじゃないですか! そこにキングスライムも付け足して87万ペール……**ウッヒョオオオオオオ!!!**」
「お前ってペールのことになると豹変するよな。」
「そうですかね?」
「うーん……よし! 今日は焼き鳥屋に行こうか!! 87万ペール使いまくるぞ!!」
「やったー!!!」
みんなが笑ってる。楽しい。もう『あの頃』みたいにはなりたくないな。シンゴの顔が、一瞬くもる。それに気づいたのか、マルチが言う。
「どうかしたか?」
「……なんでもない。」
「あっそ。ならいいけど。」
焼き鳥屋にて。
「じゃ、とりあえず1人1つ好きなの頼んでいいぞ!!」
「やった!! じゃあねぎま!! 大将!! ねぎま1つちょーだい!!!」
「私は軟骨を1つ。」
「俺は皮にしようかな♪ 大将、皮1つ!」
「オレハスナギモ!!! スナギモ5コチョーダイ!!!」
「1つだっつの!!! 大将!! 砂肝1つね!!!」
「あいよ。」
「ナンデダヨ!!!」
「シンゴは何にするんだ?」
「え〜と……じゃ、ももを『2つ』お願いします。」
「1つだっつの!!! お前もかよ!!」
「…あ、すいません。1つで。」
「うっま!!! ここめっちゃうまいじゃん!!!」
「レビュー星5なだけありますね。」
「ウメェ!!!」
「めっちゃうまいぞ。ほら、シンゴも食えよ。」
「ありがとうございます。」
やがてぽつ、ぽつと雨が降り出した。
「ゲッ!! 傘持ってきてねーじゃん!!」
「全力ダッシュなら行けるんじゃね!?」
「無理でしょ。」
「傘がわりになりそうな魔法ないのかよ。」
「うーん……。|風凪爪《ウィンドクロー》を頭上に展開…いや、|壁魔法《バリア》の方が……でも、そのその頭上展開なんてやったことないしな……いや、待てよ? アバーヴの原理を使えば……。」
「大変そうだしやっぱりいいよ。」
「ダッシュ!!!」
「無理だっつの。」
「あの…。」
「なんだ? シンゴ。」
「折り畳み傘なら持ってますよ。」
「まじか!!」
「シンゴ天才!!!」
そうだ。九年前のあの日も、雨が降っていた。あの日の雨も、こんな匂いがした。びしょ濡れの交差点、赤く染まった水たまり、ひたすら叫ぶ自分の声。だから雨は嫌いなんだ。
「おい、大丈夫か?濡れるぞ?」
ハッと振り返ると、ガルフさんが笑顔で傘を差し出してくれていた。
「ありがとうございます。」
ぼくは作り笑いを顔に貼り付けて傘を受け取った。
「明日も9時集合な!!」
「OK!」
「わかりました。」
ぼくらは雨の中、それぞれの帰途に着いた。
翌日の朝9時20分。冒険者ギルドの集合場所にて。
「よっしゃ!! 今日もクエストするぞー!!!」
「おー!!」
「今日のクエストクリアしたら寿司屋いくぜ!!」
「やったー!!!」
「その分難易度高めのクエストクリアしてペールを稼がないとな!!」
「うーん……じゃああれ!! あれ!!!」
「いや…流石にあれは難しすぎるだろ。だってSランクだろ?」
「え〜…。」
いや見えない!! ガルフさんがデカすぎて見えない!!!
「ソノラトルの群れと戦ったときなんかシンゴの作戦がなけりゃ全滅してたかもしれないんだぞ!?」
「でも今回は1匹だし。」
「でも強いんだろ!?」
「そのクエストがいいです。」
「オレモソレガイイ。」
「え゛!? じゃ、じゃあシンゴ!! シンゴはどう思う!?」
え!? 見えないのにそんなこと言われても知らんがな!!!
「うーん……Sランクって…この前も相当危なかったし…やめた方が……。」
「ほらな!!! シンゴも言ってるだろ!? だからそのクエストはなし!! Aランクくらいのやつにしよう!! な!? 安全第一だろ!?」
「でもそんなんじゃ寿司代稼げなくなるだろ?」
「え!?」
「すーし!!! すーし!!! すーし!!! ビッくらポン!!! ビッくらポン!!! ビッくらポン!!!」
「……ああもう!! わかった!! わかったよ!!! じゃあそのクエストにするから!!!」
「いえーい! 寿司食いまくるぜ!!」
「それで、そのクエストってどんなやつですか? ガルフさんがデカすぎて見えないんですけど。」
「ああ、これだよこれ。」
ガルフさんが掲示板からクエストの内容が書かれた紙をヒラッとはがし、見せてくれた。
**「……へ!?」**
今回は結構分けましたね。