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黄色の青春、さようなら
私はコンビニを出て新しいノートをカバンにしまうと、駅のベンチに座った。自然と足元に視線が落ちる。
学校帰りの高校生の笑い声や、電車の到着を知らせるアナウンス。にぎやかなはずの駅の音が、今日はどこか遠く聞こえる気がする。
そう思ったとき、不意に携帯が震えた。画面にはバイト先の祓い屋から届いたメールが表示されている。
【怪異視察依頼】
対象怪異:異世界行きの電車
危険度:不明
発生条件:誰もいない車両へ乗車
怪異の情報:乗車後しばらくすると一人の乗客が現れる。
来週まで視察を行い、報告書を提出すること。
私は届いたメールを無言で読んでいく。
「情報、少ないな……」
怪異の情報が少ないのは、いつものことだ。けれど、今回は違う。危険度さえ「不明」としか書かれていない。
もし、対策法がない怪異だったら?もし、その怪異の中でずっと、ずうっと生き続けることになったら?
そう考えただけで背中に冷たい何かが走った。
怪異に対策法がないことなんて珍しいことじゃない。有名な「八尺様」だって一度気に入られてしまったら、どこまでも追いかけてくる。
逃げ方も、倒し方も分からない時、私はどうすればいいんだろう。
「……ほんと、怖いなぁ」
いつもなら絶対に口にしない弱音が、思わず漏れた。私は危険度を測るためだけに送り込まれる人間。ただの捨て駒として使われる。
もし私が帰ってこなかったとしても、誰も悲しんではくれない。
きっと世間は言う。
__おかしなことをして死んでしまった人。
__変なことをした結果。
そう歪んだ視点で、私の気持ちなんて考えずに悪く言うのだろう。
「はぁ」
私の口からため息が漏れた。
どう世間に思われても、バイトを辞めるわけにはいかない。私のことを見てくれなかった両親が今さら私の生活費を払ってくれるなんて期待はしない。私に、頼れる人なんていない。
私は俯いていた顔を上げた。ここで辞めたら、待っているのは飢え死にだ。このバイトが危険だなんて、最初から分かっていた。
もう、覚悟はとっくにできている。
__稼がないと、自分で。
私は深く息をはいて乱れた気持ちを切り替えた。