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黄色の青春、さようなら
「ついたよ!」
少し歩くと、商店街の先にゲームセンターが見えた。
『ゲー セン ー はれぞら 』
看板は少し古くなっていて、ところどころ文字が消えかけている。
「あはは、ちょっと古くなってるけどちゃんと楽しいから安心して!」
彼女はそう言って、嬉しそうに入り口まで駆けていった。
自動ドアが開くと、軽快な音楽が聞こえてきた。
ピコピコというゲームの音や景品が落ちる音。誰かの楽しそうな笑い声。
そんな音を聞きながらプリクラへ向かう。
「私、写真あんまり好きじゃないんだけどなぁ」
思わず口から漏れた。黄色い髪が写るたび、少しだけ気が沈んでしまう。だから、写真にはあまりいい思い出がなかった。
そんな私を見てあおはイタズラっぽく笑った。
「ふっふっふ〜、これめっちゃ加工かかるから安心していいよ」
なぜか誇らしげに胸を張っている。
「ほんとすごいから。めっちゃ目おっきくなってもうもはや誰だかわかんなくなるの」
あおは一生懸命に目を大きく見開くジェスチャーをしている。
真剣な顔ですごくくだらないことを言っているのがかえって面白くて、私はつい笑ってしまった。
「あっ笑ったな〜!!」
口調は怒っているものの、顔は笑っている。
そんな彼女を見て、私は無意識に笑っていた。心から笑ったのはいつぶりだろう。
「あははっ。じゃ、いこっか」
私はあおに続いて、プリクラの機械の中へ入った。
『4』
「って、もう始まってる!?」
「あはは、これもう古いからね〜。ほら、ポーズポーズ!!」
急に言われてもポーズなんて分からない。
え、待って、どうすればいいの?
パシャッ!!
焦って変なピースになってしまった。下手くそなピースをしている私を見て、あおは大笑いしている。
「あっはは!!きさ、焦りすぎ!!」
「仕方ないでしょぉ。急だったんだから」
まったく、ちょっと笑いすぎではないのか。けれど、なぜか私もにやけてしまう。
「あはは、ごめんごめん。さっきの仕返しってことで。ほら、次!!」
「え、まだ撮るの?」
「うん、あと2枚!!」
『次はウインクしてね』
「「ウインク!?」」
『4』
「きさはできる!?ちなみに私は無理!!」
『2』
「ごめん、私もウインクできな……」
パシャッ!!
「……」
撮影が終わったあと、数秒の沈黙が流れた。
画面には、片目を閉じようとして変な顔になった私と、両目をぎゅっと閉じているあおが映っている。
顔を見合わせた次の瞬間、どちらからともなく吹き出した。
「あはははは!!」
狭いプリクラ機の中に明るい声が響く。
「私たち、すんごい顔してる!!」
「ほんと、変な顔なのに加工かかってて余計に変に見えるよ」
「加工、仕事しろー!!」
笑いすぎて目尻に涙がにじむ。あおも涙目になっていて、その顔を見るたびにまた笑いがこみ上げてくる。
「やばっ、次くるよ!!」
『最後はとびきり笑顔で!!』
「あははっ!!このままいくよ!!」
「うんっ」
『5』
「なんか、さっきより遅く感じるね」
『3』
「さっきは急すぎたからかも」
『1』
パシャッ!!
数秒後、プリクラの機械から写真が取り出し口から出てくる。
あおは出てき終わるのをジィっと見つめている。
「見て見て!!」
あおは嬉しそうに出てきた写真を取ると、私に見せてきた。
私は隣から覗き込む。
一枚目は慌てて変なピースをした私と、大笑いしているあお。
二枚目は二人とも変なウインクになっている。
そして、最後の一枚。
画面いっぱいに私たちの笑顔が映っていた。
「んふふ。きさ、めっちゃいい笑顔だね」
「ほんと、こんなふうに笑ったの初めてかも」
「えへへ、じゃあ大成功だね!!」
私はプリクラを見つめた。
写真の中の私は、今までで1番いい笑顔をしていた。
「えーっと、三枚だからどっちが一枚多くもらう?」
あおはプリクラを並べて、うーんと腕を組んだ。
「……私のは、なしでいいよ」
私はそう答えた。
「えっ、いいの?」
「あはは、どうせ見返さないから……」
そう言うと、あおはきょとんと目を丸くした。
「私が全部持ってていいの……?」
私は小さく頷く。
あおはきょとんとした顔でしばらく私を見つめると、にこっと笑った。
「じゃあ、二枚とも大事にするね!」
あおはそう言って笑うと、一枚を私へ差し出した。
「……二枚?」
「これはきさの!!」
「えっ」
……どうして?
「きさにも、持っててほしい!!」
そう言って笑うあおの顔は、なんだか少し照れていた。
私はプリクラを見つめた。
そこには、少し照れたように笑う私と、満面の笑顔のあおが写っている。
「よし、次は巨大パフェだね!!」
「本当に作るんだ……」
「もちろん!!」
あおは私の手を軽く引いて歩き出す。
私は苦笑しながら、その後ろ姿を追いかけた。
手の中のプリクラを、なくさないようにそっと制服のポケットへしまう。
写真に写る黄色い髪も、この瞬間だけは気にならなかった。
この写真だけは、大事にしたい。
そんなふうに思えたのは、生まれて初めてだった。