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The Silent Execution Game~死と裏切りのゲーム~ #08
沙耶が自室に戻ると、確かに役職部屋と洗面所の間に新しくドアができていた。
沙耶がドアを開けると、大きなテレビが壁にあり、その前に机があった。
机の上にはヘッドホンとタブレットがあり、マイクがある。
沙耶は椅子に座ると、ヘッドホンをつけ、マイクを口元に当てる。
目の前のタブレットとテレビが点灯した。
その中央に数字が表示される。
『00:00:30』
会議開始まで三十秒。
「わっ」
沙耶は思わず背筋を伸ばした。
同時に、画面の右端へ小さな枠が並ぶ。
全部で十個。
それぞれに名前が表示されていた。
全員の枠が緑色になる。
最後は璃夜だった。
同時にヘッドホンからノイズが聞こえる。
——ザッ。
そして『全参加者の入室を確認しました』と、無機質な音声が流れる。
沙耶は無意識に喉を鳴らした。
『これより第一回会議を開始します』
画面が切り替わる。
真っ黒だったテレビに白文字が浮かび上がった。
---
・自由討論 30分
・追放投票 なし
・全員最低一回発言必須
---
『……聞こえる?』
誰かの声がヘッドホンを通じて鼓膜を揺らす。
と、同時に『聞こえるよー』『聞こえます~』と次々と声が上がった。
「聞こえるよ」
沙耶も言うと、『なんかやばいね。追放の投票なくてよかった~』とめあがため息をつく音が聞こえた。
『ほんそれ』
幸がすぐに同意する。
『初日から投票とか言われたら無理だった』
『私もです』
姫奈の声も聞こえる。
『まだ皆のこと全然知らないですし』
『だよねぇ』
『というか、こうして話していても誰が何をしている人かくらいしか分かりませんわ』
『だから自由討論なんじゃない?』
翠の落ち着いた声が響く。
『今日は情報集めの日ってことだと思う』
すると、ヘッドホンの向こうで椅子を引くような音がした。
『じゃあさ、せっかくだし自己紹介ちゃんとやる?』
璃夜だった。
『え、いいよ!』
『ホールでもやったけど、あの時はまだ全然何もわかってなかったしね』
「じゃあ、誰からにする?」
『じゃあ、言い出しっぺなんで。ウチの趣味はゲームすること。後は、意外だって言われるけど、お菓子作りが好き』
え、そうなんだ。
沙耶は純粋に驚くと同時に『へぇ』と翠が声を挙げた。
『めっちゃ意外。何を作るの?』
『ウチはシュークリームをめっちゃ作るんだけど、たまにクッキーとか、あ、前は弟の誕生日の時にケーキ手作りしたかな』
「えぇ、すご!」
沙耶が感嘆の声を上げると、アーシャが口を開いた。
『私、まったく料理はできませんの……。使用人任せですわ! 今はお父様の出張でインドに住んでおりますの。簡単に雇えましたので、男女1人ずつ……』
『使用人いる生活とか聞いたことないんだけど!?』
『私もです』
姫奈も珍しく驚いていた。
『漫画の中だけの話かと思っていました』
『失礼ですわ!?』
アーシャの抗議に笑い声が広がる。
『でもインドってすごいなぁ』
美都が感心したように言った。
『向こうの学校行ってるの?』
『はい。インターナショナルですわ』
『英語喋れるの?』
幸が反応する。
『少しだけですわ』
『少しだけで住めなくない!?』
『それな』
璃夜が同意した。
アーシャは少し困ったように笑う。
『日本語の方が楽ですわね』
『なんかアーシャちゃん本当にお嬢様なんだね』
めあがしみじみと言った。
『めあ、最初キャラだと思ってた』
『ちょっと!?』
『だってずっと、ですわ、なんだもん!』
『地ですわ!』
ヘッドホンにみんなの笑い声がこだました。
『……じゃ、次はだれにする?』
『ウチ決めてい?』
「いいよ!」
『い~よ』
璃夜は少し小難しい顔をすると、パッと顔を明るくした。
『じゃ、めあ……で』
『え、めあ!? めあはね、知ってる子もいると思うんだけど、合唱を小学一年生の時からやってて、絵を描くのが好き! で、最近は手芸と刺繍にハマってます』
「刺繍もするんだ」
『うん、結構暇つぶしになるよ』
沙耶がはぁ、と感嘆のため息をつくと、『じゃ、次はさーやね!』と指名されてしまった。
「あ、私? 私は小説とか漫画を読むのが好きで、アニメを見るのが好き。小説家になろうをよく見てるよ」
『あ、私も読むよ』
そこで控えめに美都が手を挙げた。
「え、何読……」
『はいじゃあさーや? 次の人指名して~』
「……じゃ、美都ちゃんで」
『今言ったけど、なろう系漫画、アニメ、小説を結構見るのと、あとは手話できます。後、ディズニー月一で行きます』
『手話できるんだ!』
『うん、まあ一応。私は大丈夫なんだけど、おばあちゃんと姉と弟が耳聞こえなくて』
ミューティング室が少し静かになった。
『手話ってすごいね、私出来ないよ』
静寂をぱたりとなくしたのは翠だった。
『ねーねー美都ちゃん、好きってどうやってやるの??』
『好き? あ、Love?』
『うん』
『えっと……』
美都は人差し指と親指を立てた形で顎に手を当て、二本の指の間を縮めながら胸の方へ手を引いた。
『これが、好き』
『へぇ~』
めあが感心した声を上げる。
『なんか可愛い動きだね』
『確かに』
翠も頷いた。
『覚えられそう』
『えへへ』
美都は少し照れたように笑う。
『じゃあ、次は姫奈ね』
『あ、はい。私は自分で言うのもあれですが、帰宅部なので、ずっと勉強してます。おすすめの教材はシリウスです』
『ウチ新中問のほうが好き~。でも国語はシリウス!』
『へぇ、そうなんですね』
姫奈の声は少し嬉しそうだった。
勉強の話題になると、やはり食いつきが違う。
『えっ、皆教材の名前とかで通じるの?』
幸が驚いたように言う。
『私は全然わからないんだけど』
『めあも』
めあも続く。
『めあ、シリウスって星の名前だと思ってた』
『それはシリウス違いです』
姫奈が即座に訂正する。
『ですよねー』
会議室に小さな笑い声が響いた。
『でも姫奈ちゃん、ずっと勉強ってすごいね』
翠が感心したように言う。
『私だったら無理』
『私もですわ』
アーシャも同意した。
『勉強は嫌いじゃないだけですよ』
姫奈は少し照れたように答える。
『じゃあ、あとはあかりさんとまどかさんと翠さん、幸さんアーシャさんですね。じゃあ、あかりさんで』
『あ、私。私は中3で、絵を描くのが好き。最近は自作アニメ作ってる……』
『えっ』
幸が声を上げる。
『アニメ!?』
『自作!?』
めあも食いついた。
『うん』
あかりは相変わらず淡々としていた。
『たまに』
『たまにで作れるものなの!?』
『作れるよ』
『すご』
翠が素直に感心する。
「どんなの作るの?」
『大体旅人の物語かな』
『なんかいいね』
翠が言う。
『私そういうの好きかも』
『私も』
美都も続く。
『タイトルあるの?』
めあが尋ねた。
『……「荒れ果てた野原で」……かな』
『タイトルだけで気になる』
『うん』
あかりは短く答えた。
『主人公がずっと歩いてる話だから』
『ずっと?』
幸が聞き返す。
『うん』
『目的地もなく?』
『一応、ある。じゃあ、つぎアーシャちゃんね』
『え、あ、私?』
少し慌てたようなアーシャの声が聞こえる。
『104号室のアーシャですわ。先ほども申した通り、今はインドに住んでおります。好きなものは紅茶と読書ですわ!』
『優雅だなぁ』
璃夜がしみじみと言う。
『ほんとそれ』
幸も頷いた。
『紅茶飲みながら読書してそう』
『しておりますわ』
『してるんだ!』
会議室に笑い声が広がる。
アーシャも少し楽しそうに笑った。
『歴史書も読みますし、小説も読みますわ』
『どんな小説?』
翠が尋ねる。
『恋愛小説ですわね』
『やっぱり』
『予想通り』
『むしろ安心した』
一斉に返ってきて、アーシャがむっとする。
『皆様、わたくしを何だと思ってますの!?』
『お嬢様かな』
いつもは無口なあかりが答えたことで爆笑が起こった。
『じゃ、じゃあ次はまどかさんですわ!』
『あ、はい。私は神社の娘なので、霊感が強めです。そんなことあるの、って感じですが、幼少期は霊力が制御ができなくて、よく魔界? みたいなところに行ってました』
「えー。今はどうなの?」
沙耶が聞くと、『まあ、いこうと思えば』と曖昧な答えが返ってきた。
『魔界って何!?』
めあが食いついた。
『なんか、赤い空で、大きい鳥居がいっぱいあって、人はいなくて』
そこで言葉を途切らせる。
『影? みたいなのがうようよ居ます。まあ、千と千尋の人がいない版です』
『怖い怖い怖い』
幸が慌てて言った。
『ホラーじゃん』
『行きたくないです、私』
姫奈が珍しく同意する。
『私も絶対行きたくありませんわ』
アーシャの声も震えていた。
『でも』
まどかは続ける。
『慣れるとそんなに怖くないです』
『……すごいなぁ。アーシャのインドより迫力あったわ』
と、今まで黙っていた璃夜が挟んだ。
『負けた気分ですわ』
まどかがふふっと笑うと、沙耶の背筋に冷たい汗が湧いた。
『では次は翠さんで』
『はい。私は高校一年生で、ESSに入ってます。あと、小説と漫画書くよ。あとはポケモンが好き』
『……ポケモン好きなの?』
そこで美都が零す。
『うん、めっちゃ好き』
『え、私も! え、まってガチ勢?』
『まー……、普通より上ぐらい? お母さんがめっちゃ好きで』
『あ、そうなんだ! 私は途中からなんだけど、ピカブイからガチでやり始めて……』
『へぇ~! じゃあさ』
「はい、そこまで。明日話してよ」
『『……ごめん』』
二人の息がそろった謝罪に思わずフッと笑う。
『じゃあ、最後は幸ちゃんね』
『はい! 私は中学三年で、軽音部のボーカルやってます。ミセスが好きで、甘いものを食べるのが好き。質問どうぞ』
『雑だなぁ』
璃夜が笑う。
『まあ全部話したし! まあ質問する人いないし、これで終わり!』
『ほんとだ、あと5分しかない』
と、そこでモニターに『継続してください』と文字が表示された。
『わあ、ゲームマスターも人間味があるなぁ』
めあが感嘆の声を上げる。
「それはそう。私みんなに聞きたいんだけど、どこ住んでる? 私は東京」
『めあも~』
『私は千葉』
聞く限り、東京はめあ、沙耶、あかり、まどか。千葉は璃夜、翠。埼玉は幸。群馬に美都と姫奈。インドはアーシャだけだったが、1年前までは東京に住んでいたらしい。
『へぇ~、結構近いんだね』
幸が感心したように言った。
『確かに』
翠も頷く。
『インドだけ急にスケール違うけど』
『本当にそれですわ』
アーシャがため息をつく。
『まあ一年前までは東京でしたし』
『じゃあ普通に会えてたかもしれないんだ』
沙耶が言う。
『そう考えると不思議ですわね』
アーシャは少し笑った。
『同じ駅を使っていた可能性もありますし』
『怖』
『いや怖くはないでしょ』
璃夜が突っ込む。
『あの、聞いてもよろしいでしょうか』
「何?」
『みんなは、西暦何年ですか?』
誰かが息をのんだ。
確かに、同じ年に生きているかなんてわからない。
「私は2026年だけど……」
『めあも~。寝る前が8/26だったから、今日は27じゃない?』
「めあちゃんと一緒」
『私も一緒』
翠が肯定し、みんなが安堵の息をつく。
『私もですわ』
『私もです』
『ウチも』
次々と声が重なる。
どうやら全員同じらしい。
会議室にほっとした空気が流れた。
『よかったぁ』
めあが大きく息を吐く。
『正直、三百年後とか言われたらどうしようかと思った』
『それはそれで面白そう』
翠が笑う。
『面白くないよ!?』
『スマホあるかな』
『そこ心配するんだ』
璃夜が呆れる。
と、そこでポーン、と電子音が鳴る。
『会議は終了です。役職のある人は役職部屋へ集まってください。』
と表示され、みんなの画面が真っ暗になる。
沙耶はヘッドホンを外すと、ミューティング室のドアを開けた。
アーシャちゃんの私はわたくしってよんでね