公開中
The Silent Execution Game~死と裏切りのゲーム~ #05
朝食も取り終わり、沙耶はめあと一緒にホールへ移動した。
ちなみに姫奈は部屋に戻ってしまった。
「制限時間延ばしたのってご飯食べるの遅いからだよね、みんな。まあめあもいつもテレビ見ながら食べてるから、人のこと言えないんだけど」
「なんのテレビ見てるの?」
「日によってだけどアニメかな」
「え、本当? アニメ好き?」
「うん! めあは漫画のほうが好きなんだけどね」
沙耶の目がきらりと光る。
「へぇ。何読むの?」
めあはほんの少し目を細めた。
好きな話題を振られた子どもみたいな顔だ。
「悪役令嬢ものとか異世界転生ものとか、恋愛漫画も読むし、ホラー系も読むよ」
「え、本当!? 私もめっちゃ読む!」
沙耶の食いつきにめあはぐいっと近づいた。
「何読む感じですか?? めあ結構なろう読むんだけど」
「え、がち!? 私も! 転スラとか?」
二人の会話は一気に加速した。
さっきまで初対面同士だったはずなのに、共通の趣味を見つけた途端に距離が縮まる。
沙耶もめあも、どちらかと言えば漫画や小説の話をする時の方が饒舌なタイプらしい。
「あ~……、めあはちょっと有名どころは読んでなくてですね……。薬屋も読んでないし……。でもあのさ、痛いのは嫌なのでとか、歴史に残る悪女になるぞとかレベル99とか……」
「え、本当! 私もめっちゃ読む! 私レベル99の新刊持ってなくて……。貸してくれない?」
「おっけ~! 次会ったときね」
「あ、そっか」
二人は同時に口を閉じた。
ここには本棚もなければ、自分の部屋に置いてきた私物もない。
そもそも元の世界に帰れるかどうかすら分からないのだ。
さっきまで弾んでいた会話に、ほんの少しだけ影が落ちた。
「ま、帰れたらの話だね」
先に口を開いたのはめあだった。
けれど無理に明るくしているわけでもなかった。
「帰れたら絶対貸す」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
めあは笑う。
「めあ、人に本貸すの結構好きだもん」
「へぇ」
「反応聞くの楽しいんだよねぇ」
その言葉に沙耶は少しだけ安心した。
「じゃ、めあちょっと部屋戻るね。眠くなっちゃった」
「あ、うん」
---
めあの部屋は、沙耶と同じくドレッサー、勉強机、大きな窓の前のベッドは変わらなかったが、壁紙はピンク色で、かわいらしい雰囲気が漂っていた。
「ふぅ、疲れちゃったな」
めあはなんとなく`役職部屋`のドアを開けた。
「あれ?」
『`|物《ブツ》`』が置いてある机の奥に、本棚が増えていた。
「え、噓ぉ、めあ達が漫画の話、してたから家の本棚が置かれてる!」
めあはさっそく沙耶に貸す漫画を手に取ると、部屋から出た。
「眠い眠い。さっさと寝よ」
会議まで、あと15分。
---
幸は109号室の扉を閉めると、小さく息を吐いた。
「ふわぁ、疲れたなぁ」
幸は口元に手を当てると大きく|欠伸《あくび》をする。
「なんで皆あんなに本気になるんだか……」
洗面所に行くとコップに水を汲み、一口飲む。
「食欲なんかわかないでしょ、普通……。あのめあって子ちょっと苦手かも……。なんかムードメーカーにでもなりたいのかな」
幸はバッとベッドに大の字になった。
「眠い……寝ようかな。いやでもさすがにおなかに入れといたほうがいいかな……。でも危ないよな」
とはいえ、自分も洗面所の水を飲んでるのだが。
幸はベッドから立ち上がると、玄関の扉に手をかけた。
---
(正直、姫奈ちゃんと美都ちゃんうらやましすぎる……。友達なんかみんないないのに……って!)
もう沙耶と姫奈、それにめあは山盛りのパンをみんなで分けているようだったし、アーシャや美都は二人で談笑している。
(これは……まずいかもね)
璃夜と翠は一人で食べているからさすがに同席しないほうがいいかも。
まだ来ていないのはあかりとまどからしい。
確か二人はそれぞれ102と105だった気がする。
どうしよう。呼ぼうか。
(いや友達じゃないし絶対変だよ!)
しかし、一人で食べるのはそれで気が引ける。
誰かと食べなければ一向に話は進まない。
じゃあ翠? 璃夜?
幸が食堂の扉の前で棒立ちしているのを見たのか、翠が「ここ、座る?」と声をかけてくれた。
「あ、ありがとう!」
幸が「ちょっとご飯取ってくるね」と言うと、「どうぞ」と手元の料理を食べ進める。
(翠ちゃんがとってたのは、サラダとスパゲッティだった……。同じやつ取ったらどう思うかな? あれはあれですごい美味しそうなんだけど、もし真似してるこいつ……。って思われたらやばいし……)
とはいえ、食べたい。
幸はまずマカロニサラダとポテトサラダを取ると、レタスをイイ感じで盛り付ける。
(まずまずの出来……。これならなんか会話できそうかな?)
幸はちらりとデザートコーナーを覗く。
(うわぁ、あのショートケーキおいしそぉ……。チョコケーキも食べたいし……。え、あれモンブラン!? シュークリームもある……。チョコレート我慢するか……取ろ)
幸はショートケーキとモンブラン、シュークリームを盛り付けた。
一旦自分の席に戻ると、スープと紅茶を取ってくる。
「失礼しまーす……」
幸が座ってサラダを食べ始めるが、一向に会話が始まらない。
(き、気まずい!)
「……あのさ、幸ちゃん」
「なに?」
「えっと、私もそのマカロニサラダ気になってるんだけど、感想を教えてほしくて」
幸は固まった。
(何て言えばいい?)
これはテイストについて聞かれているのか、おいしいよ~、だけでいいのか本当に読めない。
「結構、私はおいしいと、思う」
「そう! じゃあ取ってくるね」
「あ、いってらっしゃい……」
翠が立ち上がって取りに行ったのを見送ると、ふぅーっと溜息を吐いた。
(よかった……。大丈夫だった……)
幸がポテトサラダとマカロニサラダを食べ終わり、デザート等に手を付け始めたときに翠は戻ってきた。
「ちょっと気になったのあってさ。メロンパン取ってきちゃった」
翠がふわっとほほ笑んだ。
(み、翠ちゃんってこんな笑い方するんだ……。同性でもフツーに惚れる!)
「そっか。じゃあ私もパン取ってこよっかな~」
幸は一口サイズのショートケーキをぱくっと口に放り込む。
「ん、これ美味しい!」
「ほんと! 私も食べよ~」
幸はうんうん、とうなづくと、シュークリームを一口かじる。
(これもおいしいな……)
翠はメロンパンを食べ始めたようだ。
「それ、おいしい?」
「うん!」
満面の笑みで返される。
「あ、そういえば、翠ちゃんって何年生?」
「私? 私は高1」
「へえ、じゃあ先輩だ。私中3」
「え、見えない! 大人っぽいね」
「ありがと」
幸はぐっとスープを飲み干し、モンブランを食べる。
(自分食べるの早いと思ってたけど、翠ちゃんも相当早いな……。よかった、変に思われなくて)
「じゃあ、幸ちゃんは何か部活入ってる?」
「あ、私軽音部。ほら、あのバンドのやつね。私はボーカルなんだけど」
「あ~、そうなんだ。私はESSなんだけど……。英語のミュージカルやるやつ」
「そうなんだ~! え、じゃあ歌うたうじゃん!」
「そうだよ! ……じゃあ、私デザートはいろうかな?」
「あ、私も取ってくる!」
幸はパンのところに行く。
(おすすめしてもらったし、メロンパンとチュロスか……。あと、ドーナツも取ろ)
幸が席に戻ると、もう翠は席についていた。
「翠ちゃん、何取ってきたの?」
「抹茶ムースとリンゴ、ショートケーキ」
「おー、おいしそう!」
幸は席につき、メロンパンを一口食べる。
「これ、めっちゃおいしいね!」
「ねぇー」
---
私たちが食べ終わったころ、タイマーが鳴った。
『朝食の時間を延長します』
00:10:00と表示されていたパネルが00:30:00になる。
「私たち、食べるの早いかもね……」
幸の声掛けに翠はあはは、と笑う。
「何かまだ食べる?」
「もういいかな」
「じゃあ、ホール行こうか」
「うん」
幸が頷くと、翠は食堂のドアを開けてくれる。
ありがと、と感謝を述べると翠と共にホールに入る。
まだ誰もいなかったため、幸等は丸い机の周りにおいてある椅子に腰かけた。
「翠ちゃんは今、何の曲してるの? わたしあんまわからないんだけどさ」
「メリーポピンズだよ。幸ちゃんは?」
「私はミセス。いまはライラックかな」
「ほへぇ」
翠はあまりわからなそうにしていたので、「翠ちゃんはほかに何か好きなものとかある?」と聞いた。
「ポケモンが好きかな。結構ブイズの漫画描いたりとか、ストーリー作るのが好きなんだよね」
「え、あ、小説書いたりするの!?」
「うん、書くよ。でも二次創作は嫌いなんだよね」
「そうなんだ~! かっこいいね!」
幸が目を輝かせると、翠はあはは、と頭を掻いた。
「小説書くのかっこいいなんていわれたことないからなー。ありがとう」
翠は柔らかい笑みで返す。
(可愛い……)
「すごい話変わるんだけど、翠ちゃんって彼氏いる?」
「か、彼氏? いるにはいるけど……」
「だよね~? 可愛いもん」
「ありがと……」
翠は照れたのか、顔を真っ赤にする。
と、そこで姫奈とめあと沙耶がホールに入ってきた。
「じゃ、翠ちゃんは何か漫画読む?」
「あ、私はどちらかといえば小説かな。やっぱり、学校に行く時の電車とかで読んでるよ」
「へえ。何を読んでるの?」
「ほぼ小説家になろうの短編かな」
「ははーん。漫画は読まないの?」
幸が聞くと、翠はうーん、と顔をかしげる。
「令嬢漫画をたまに読むかなー。あ、あと普通に鬼滅とか、約ネバとかは読んでるけど……」
「あー、私は少女漫画読んでるんだよね」
「私読まないわー。ま反対だね」
「ね~」
その話を聞いたらしいめあと分かれた沙耶が話しかけてきた。
キラキラの瞳で。
「えっ、翠ちゃんもなろう読むの!?」
「うわっ」
翠は思わず身を引いた。
近い。
とにかく近い。
「読むけど……」
「おすすめは!? ねえおすすめ!?」
「沙耶ちゃん、落ち着いて」
幸が苦笑する。
だが沙耶は止まらない。
「なんかない?」
「私、タイトルよりかは、ランキング上位の小説しか読まないから……」
「あー、そっか……」
沙耶は露骨に肩を落とした。
その様子があまりにも分かりやすくて、幸は思わず笑ってしまう。
「落ち込みすぎじゃない?」
「だってぇ」
沙耶は椅子へぐったりともたれた。
「おすすめ聞けると思ったのに」
「ごめんごめん」
翠が苦笑する。
「私、読むときランキング眺めて、その時面白そうなのを読むタイプだから」
「分かるかも」
幸が頷いた。
「私も動画とかそんな感じ」
「あー」
翠は納得したように笑う。
「さーや! レベル99持ってきたよ~」
後ろから大きな声が聞こえ、振り向くと新刊を持ってめあが駆けてくるところだった。
「え、どこにあったの? てか、ありがとう!」
「いや、全然大丈夫! なんか本棚が生えてて……」
「本棚が生える!?」
「いや、冗談冗談。おかれてたの。自分の部屋にある本棚がね」
「へえ、すごい! 家の本棚そのまま来てるの?」
「うん」
めあはけろっと頷く。
「めあの部屋、役職部屋の奥に本棚増えてた」
「私のところも増えてたりするかな」
幸がぽつりと呟いた。
そこで、戻ってきていた姫奈が反応した。
「実は私の部屋も少し変わっていました」
「えっ」
みんなが姫奈を見る。
「本棚じゃないですけど……勉強机の上に参考書が増えていて」
「なるほど」
翠が腕を組む。
「趣味とか生活に関係ある物が増えてるのか」
「そうかもしれません」
姫奈は頷いた。
「私が普段使っているシリーズの問題集でした」
「こわ」
幸が即答する。
「それもう個人情報握られてるじゃん」
「確かに」
翠が苦笑する。
「何の話?」
新しい声が聞こえた。
振り向くと、あかりが立っていた。
「部屋に物が増えてたんだって。姫奈ちゃんとめあちゃん」
「ああ」
あかりは短く返事をする。
「増えてたよ、こっちも」
「何があったの?」
「画材」
一同が静かになる。
「絵描くの?」
「まあ。嫌いじゃない」
あかりはそれ以上説明しなかった。
相変わらず必要最低限しか喋らない。
そこで、ポーンとタイマーが鳴った。
『あと10分で会議開始です』
最近めっちゃ聖女読んでファンレターくださる方が多いんだけど、あれ一年前に書き始めたからすごい設定ごちゃごちゃで、え? 伏線回収しないの? みたいなところが多くて、普通に恥ずかしい、、、。
ファンレターありがとうございます、名前もよろしくお願いします!