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The Silent Execution Game~死と裏切りのゲーム~ #04
「ねーねー、沙耶ちゃん!」
戸惑う沙耶の元へめあが駆け寄ってくる。
「何? めあちゃん」
「一緒に朝ごはん食べよ~よ!」
めあの屈託ない笑顔に沙耶の顔も思わず綻んだ。
「じゃあ、食堂に行こうかぁ」
---
———ここはとある一室。
グルルルル……。
心なしかオオカミの|泣き声《・・・》がする———。
---
「んぁ~……幸せぇ、このマカロニサラダおいしい!」
めあはほっぺに手を当てて天を仰ぐ。
「めあちゃんと食べてるとなんだかいつもより美味しい気がするな」
「えぇ、そぉ? めあ、食べるの大好きだからな」
「ねぇ~、本当に! すごくおいしそうに食べますね、めあさん」
沙耶はいくつかあるテーブルのうちの一番奥の椅子に座っていた。
正面にはめあ、右隣は姫奈である。
ここはバイキング形式で、どれもおいしそう。
「沙耶さん、めあさん、私は少しお食事を取ってきますね」
「行ってらっしゃ~い」
めあはマカロニをぱくっと食べると、またほっぺに手を当てる。
「沙耶ちゃん、なんて呼べばい? めあ、ちゃん付けやだな~、なんちって」
「ああ、そう? じゃあ沙耶でも、なんでも……」
「ホント! うれしぃ……。めあ、仲良くない子、みんなちゃん付けだからさ、なんか友達になった気分だねぇ」
なんか率直な子だな、と沙耶は苦笑いを浮かべた。
めあは、(この子なんか“落ちない”なぁ……)と考える。
しかし貼り付けの笑みは崩さない。
彼女は“落とせば”何があってもぼろを出す。
同年代なんだからね。
「じゃあ、沙耶ちゃんは今日からさーや! ねえ、そのサラダ美味し?」
「そーそーかな。私はなんかバイキング来たら義務的にサラダ食べちゃって」
「そうなんだ! めあ、|たいてー《大抵》最初からスイーツ取って怒られちゃうんだよねぇ」
沙耶はそうなんだ、とサラダを食べ進める。
「じゃ、めあはパン取ってこよっかな。どうする? さーや」
「ン、私は自分のタイミングで取るから」
「……そ」
めあはほんの一瞬だけ表情を止めた。
けれど次の瞬間には、またいつもの明るい笑顔に戻る。
「じゃあ行ってくるね」
軽やかに立ち上がると、トレーを持って料理台の方へ向かっていった。
沙耶はその背中を見送りながら、フォークでサラダをつつく。
(元気だなぁ)
不思議な状況なのに、めあはまるで学校の昼休みみたいに振る舞っている。
羨ましいような、少し心配なような。
(……)
めあは考えるよりも先に体が動くタイプを演じているけど、多分すごい考えている。
何か人を飲み込むような……堕とすような絶大な力を持っている、気がする。
(考えすぎかな)
沙耶は首を振った。
こんな状況だ。
誰だって少し変になる。
そうこうしているうちに、パンを山盛りにしたトレーを抱えためあが戻ってくる。
「ただいま~!」
「おかえり」
「取ってきた!」
席に着くなり、めあはクロワッサンに手を伸ばした。
その時。
「失礼します」
姫奈が戻ってきた。
トレーの上には野菜やスープが綺麗に並べられている。
「わぁ、姫奈ちゃんバランスいい!」
「めあさんが偏り過ぎなんですよ」
「えぇ?」
めあが不満そうに頬を膨らませる。
と、すぐに笑顔を取り戻す。
「姫奈ちゃん、めあさ、ちゃん付けあんましたくなくて。ひめちゃんとか、呼んでいい?」
「あ、はい。もちろんです」
沙耶はそこで二人の会話を聞きながらう~ん、と首を傾げた。
何故だか、めあの話し方には特徴がある。
まず相手が自分のことをどれほど警戒しているか。
それによって話し方を変えている。
多分沙耶は何を考えているかよく分からなかったからめあはあのような屈託ない笑みを浮かべ、姫奈には使わない、なんちって、とか、だよねぇとか、そういう言葉を使った。
姫奈はスープを一口飲みながら、少し不思議そうに首を傾げた。
「どうかしましたか? 沙耶さん」
「えっ、あ、ううん」
沙耶は慌てて手を振る。
まさか、めあの話し方を分析していました、なんて言えるわけがない。
「さーや?」
「何でもないよ」
「ふーん?」
めあはクロワッサンをもぐもぐしながら沙耶を見る。
「ねえねえ、ひめちゃんってさ、学校とかで委員長やってそう!」
「え?」
姫奈は目をぱちくりさせる。
「そんなことありませんよ……。まあ、私は首席っちゃ首席でしたが……ふふっ。……って聞いてます!?」
「ん~、聞いてる」
めあはクロワッサンをもぐもぐしながら適当に返事をした。
「聞いてる聞いてる。ひめちゃん首席なんでしょ? すごいじゃん」
「だからその反応が適当なんです!」
「えへへ」
めあは笑うだけだった。
「めあさんってちょっと不思議ですね」
「ええ、そぉ?」
「というか、そういうめあさんはどうなんです? 成績」
「ん~、まあまあかな」
「はぐらかさないでくださいよー」
姫奈はむすーっと頬を膨らませる。
「ええ、まあずっと一番かな……」
「はぁっ!? めあさん頭よかったんですか!?」
立ち上がった姫奈の声が食堂に木魂する。
一斉に視線が集中して、姫奈は顔を赤らめて椅子に座る。
「頭よかったんですか、って……失礼だなぁ」
めあはじとーっとした目で姫奈を見る。
「だ、だって!」
姫奈は慌てて両手を振った。
「めあさん、そういう風に見えなくて……」
「それもっと失礼じゃない?」
「うっ」
図星を突かれた姫奈が言葉に詰まる。
沙耶は思わず笑ってしまった。
「確かにめあちゃんって勉強より体育って感じかも」
「さーやまでぇ?」
めあはがっくりと肩を落とす。
「めあ運動得意じゃなくてさ。テストも授業中に覚えちゃうタイプだから、残りはずっと絵描いたり、手芸したりしてる」
「しゅ、手芸!?」
「あとめあ全国レベルの合唱部だから、ずっと歌うたってるかも」
「はぁ……。なんか、めあさんって天才なんですねぇ」
姫奈は半ば呆れたようにため息をついた。
「ん~?」
めあは首を傾げる。
「天才かなぁ」
「天才ですよ!」
「授業中に覚えるんですよね!?」
「覚えるけどでも……」
「合唱も全国レベルなんですよね!?」
「まあ合唱は皆で作……」
「しかも手芸も絵もやるんですよね!?」
「いやそれは趣味……」
「ほら!」
姫奈はびしっとめあを指差した。
「でもねぇ」
クロワッサンをちぎりながら、めあが言った。
「ひめちゃんの方がすごいと思うな」
「え?」
「だって努力できるもん」
その言葉に姫奈が固まる。
「めあ、努力って苦手だから」
「そうなんですか?」
「うん」
めあはあっさり頷いた。
「めあはつまんないの嫌い。だから合唱は小学1年からやってるけど、空手は一日でやめた。そういうことだよ」
めあはそう言いながら新しくとったメロンパンをぱくりとかじった。
「一日!?」
姫奈がまた声を上げる。
「いやだってさぁ」
めあは悪びれもせず肩をすくめる。
「先生が『返事!』って言った瞬間、めあ向いてないなって思ったし」
「早すぎませんか!?」
「マジで。やる気なくて5回ぐらい返事させられたし。同じ声使うでも、合唱と空手は違うんですね~」
「そんなのは知ってますけど……」
姫奈は少しあきれたように笑う。
と、そこで沙耶が口を開いた。
「じゃあこの三人で頭悪いの私だけじゃん」
「頭悪かないって」
沙耶は「そういってるめあちゃんが頭いいんでしょーが」とつっこむ。
と、そこでポーン、とタイマーが鳴った。
『朝食の時間を延長します』
と、00:10:00と表示されていたパネルが一気に00:30:00まで延びる。
「ね~、めあ短いと思ってたんだよ」
「それは私も思ってた」
沙耶が頷く。
「ねえ……めあパン取りすぎたから、食べる?」
「言わんこっちゃない」
「私食べますよ?」
姫奈が手を伸ばして、……まあ結構とる。
「おう、ひめちゃん結構食べるんだ」
「あ……あはは。よく言われます。今日はちょっと我慢してたらおなかすいちゃって……」
「……首席って頭おかしいのか……」
沙耶のつぶやきに「うわ~。さーや、聞こえてるよ?」とめあが突っ込んだ。
「あ、でもひめちゃん、ここ来てからずっと我慢してたんでしょ?」
「まあ、少し」
「少しじゃないじゃん」
皿の上には既にクロワッサンが二つ、ロールパンが二つ、メロンパンが半分。
姫奈は視線を逸らした。
「……緊張していたので」
「あー」
それは沙耶も納得だった。
「てかそれめあの食べかけだけど大丈夫そ?」
「いや、めあさんがいらないって言ったんでしょーが」
あはは、とめあは笑った。