公開中
終焉の鐘 第十四話
この世界は、嘘で成り立っている──
誰もが嘘を並べ
誰もが嘘を信じ
誰もが嘘を愛す
この世界は、嘘で成り立っている──
誰もが嘘を並べ
誰もが嘘を信じ
誰もが嘘を愛す
中国裏社会の帝王
【闇雲】
彼の率いる|組織犯罪集団《マフィア》
【|终焉的钟《終焉の鐘》】
彼らもまた、
嘘を信じ
嘘を愛し
そして
闇を愛すものだった
---
第十四話 ~別れを決意する兄弟~
---
「今日一緒に、出かけないかい?」
「二人で──ですか?」
「そ。ディナー、奢るよ」
終焉の鐘の屋敷の外で、2人の青年は約束を交わす。孌朱とLast。昔から関わりがある2人だった。
「わかりました。行きましょう孌朱さ────」
「今はプライベートだ。様はいらない」
孌朱はそう言ってにっこり微笑むと、Lastと一緒に高級そうなレストランに入る。そして小部屋を貸切にしてもらい、そこに入って行った。
「で、君はどうするんだい?らすと」
ドリンクを飲みながら孌朱はニコニコ笑顔でLastにそう問いかける。Lastは特に何も答えなかった。何かを探るように、孌朱を見つめる。
「思い返せば俺さ、お前のこと嫌いだったな」
突然のその言葉にLastは目を見開く。
「だってさ、急に煤煙がLastを連れてきて、『今日からお前の弟だ。世話をしてやれ』とか言い出すんだよ?一つしか年違わないのにさ。面倒だったし。弟なんていらないって思ってたし」
孌朱は心底面倒そうにそう呟くと、フッと微笑んだ。
「けど──今は違う。俺がLastを愛してたみたいに、君も黒雪を愛してるんだろう?自分と同じ、貧困街で育って、自分と同じような扱いを受けてる黒雪をどうしても助けたかった。だから、今も黒雪のことを大切にしている。そうなんだろう?」
孌朱の言葉に、Lastは頷いた。そして、静かに口を開く。
「俺は、黒雪を──紫雲様を追いかける。なぜか、紫雲様についていくべきだ──と本能が言っているんだ」
Lastのその言葉に、孌朱は安心したように微笑む。そして少しだけ悲しそうに呟いた。
「兄としての、微かな夢なんだけどさ、こっちに残ろうとは、思わないの?」
孌朱の言葉に、Lastは首を振る。そして強い瞳で孌朱を見つめた。
「俺は、俺が信じる道を進んでみたい。それが、孌朱と離れる道だったとしても。今回は、孌朱に任せっきりじゃなくて、自分の意志で進んでいきたい」
Lastの言葉を聞き終わると、孌朱はあぁぁと声を漏らした。
「結局俺は君に一度も兄って呼ばれなかったな」
「孌朱は孌朱ですから」
楽しそうな会話が続く。途中で料理が届いた後も、2人は楽しそうに会話をした。
「ねぇLast──今度会う時、またこうやって話せたら良いね。けど、もし次会う時にお互いが敵だったとしたら──」
孌朱はふんわり微笑んでLastの頭を撫でる。
「敬意を込めて正々堂々お互いを殺し合おう」
孌朱のその言葉に、Lastは軽く目を見開いてから、微笑む。
「はい────兄さん」
Lastのその言葉に、孌朱は嬉しそうに笑った。
「それじゃあ、行ってきます」
レストランを出て、Lastは孌朱と別れる。1人残った孌朱は綺麗な笑顔を浮かべた。
「また幹部を育てないといけない──な」
のんびり歩き出した孌朱は、とある声に足を止める。闇雲の声だった。
「どうしよう──僕は紫雲のことはしっかりわかってるつもりだったのに──。僕は彼がいないと生きている意味がないのに──僕はっ──」
孌朱は建物の影からそっと様子を伺う。闇雲のその、珍しい弱気な声に、呆然とした。そして、闇雲と一緒にいた青年は優しく微笑む。
「大丈夫だよ──俺が君を愛してるから──俺が君も紫雲もしっかり愛してるから。生きてる意味がないなんて言わないで?俺が探し出してあげる」
「地獄偶人──っ」
孌朱はボソッと呟く。顔は見れないが、声で偶人だと孌朱はわかった。闇雲は偶人に懐いている様子だった。孌朱は衝撃の情景に苦笑いをした。
「大丈夫だよ地獄傀儡──俺は君が闇雲って名乗っていても、傀儡って名乗っていても、どっちにしても愛してるから」
「────────っ⁉︎」
孌朱は驚きのあまりに声にならない声を出す。そして逃げるようにその場を去って行った。
「とんでもないものを、見てしまった」
闇雲がひたすら隠していた秘密を孌朱はあっさりと知ってしまう。
「何用だい?」
そして、後ろから感じる微かな殺意に反応して振り向く。そこには、冷たい瞳で孌朱を見据えている偶人と闇雲がいた。
「盗み聞きされたのに最後ようやく気づいて、逃げたやつを追ったら君の所のコンシリエーレじゃないか──どうする?闇雲」
そして後ろで同じように冷たい瞳を向けてくる闇雲に偶人は話を振った。孌朱は苦笑をしながら降参と手を挙げる。
「いやぁ、考えてみてくださいよ。俺はそこまで馬鹿じゃない。氷夜とかに闇雲様の今回のことを言っても、きっと誰も信じない。それどころか、秘密を漏らした物として俺はあなた方に殺される。そんな自殺行為はしませんって」
ニコニコ笑顔でそう言った孌朱は跪き、闇雲に目を向ける。
「俺はあなたに、忠誠を誓ってますから──ね?」
闇雲は面倒そうに孌朱を見てから去って行く。その姿を眺めていた偶人はのんびり口を開いた。
「随分と、君は信頼されているんですね」
嫉妬のような物を感じられる声でそういった偶人は、闇雲と反対の方向に進んでいった──