公開中
終焉の鐘 第九話
この世界は、嘘で成り立っている──
誰もが嘘を並べ
誰もが嘘を信じ
誰もが嘘を愛す
この世界は、嘘で成り立っている──
誰もが嘘を並べ
誰もが嘘を信じ
誰もが嘘を愛す
中国裏社会の帝王
【闇雲】
彼の率いる|組織犯罪集団《マフィア》
【|终焉的钟《終焉の鐘》】
彼らもまた、
嘘を信じ
嘘を愛し
そして
闇を愛すものだった
---
第九話 ~てこの原理~
---
「紫雲様。俺は別に、殺されてもいいです。ここまで、俺の身分を偽って匿ってくださっていたのは確かですし」
てこはそう言うと、紫雲の前に出て偶人と向き合う。
「地獄偶人とやらが俺を殺したいのなら、ご自由にどうぞ。闇雲様がそれを許可したのなら、俺はいらない人物でしょうし」
てこはそう言いながらも、殺意を丸出しにして偶人に銃口を向ける。
「今ここでコイツを消します」
「ハハっそうこないとね」
偶人は楽しそうに銃をくるくる回す。
「てこくん、やめておきなよ。地獄偶人は、おそらく、とても強い」
七篠は心配そうにてこにそう言うが、てこは珍しい笑顔を浮かべて七篠に微笑んだ。
「七篠──お前は絶対に次の幹部になるな──お前にこの立場は身が重い」
「てこっ──────‼︎」
七篠の悲鳴のような叫びは、大きな銃声によってかき消された。
「うわぁ──腕に掠ったなぁ」
偶人はそう言うと、紫雲に笑顔を向ける。
「ご協力ありがとね紫雲くん」
偶人の足元に転がっている死体。紫雲はそれを辛そうに眺めた。
「お礼に1ついいことを教えてあげるよ。地獄傀儡は生きている──それじゃあ」
偶人はそう言ってその場を去っていく。偶人がいなくなるのを見てから、紫雲は真顔で通信機を取り出し、誰かに電話をかける。
「闇雲様。紫雲です。ただいまてこが────」
紫雲が通信を切ると同時に、七篠が紫雲に向けて発砲した。紫雲はそれを綺麗に避け、七篠を見つめる。
「なぜ────なぜてこくんを見殺しにした‼︎紫雲様ならアイツにも勝てたはずなのになぜ──────」
「俺には勝てない」
七篠の声を静かに紫雲がそう言って静止する。紫雲のその言葉に、七篠は「え──」と声を漏らした。
「俺は、終焉の鐘のアンダーボスだ。闇雲様の配下だ。そして彼らは闇雲様と仲が良い。まずまず攻撃することは出来ない。それに──彼は俺のことを知っている。弱みを、握られている」
紫雲のその言葉に、七篠だけでなく、黒雪も、レモンも、氷夜も、Lastも絶句した。
「ねぇ、もしかして──地獄傀儡って、紫雲様の昔の恋人────?」
黒雪のその問いに、紫雲は微笑んだ。
「こないだも言っただろう?恋人ではない」
そう言ったが、紫雲は恋人以外のことを否定しなかった。黒雪には、しっかりと伝わる。紫雲が大切にしていた人なのだと。
「七篠──辛いのは分かる。だけど、堂々としなさい。君が次の幹部だ」
七篠がハッと顔を上げると、そこに1人の青年が立っていた。紫雲は青年の姿を見た瞬間に跪く。それを見たLastと氷夜は察したようにすぐに跪いた。
「闇雲様──なぜ、その姿で」
紫雲は緊張したように問いかける。今まで、3年間幹部にさえ本当の姿を見せなかった闇雲が、変装もしていない姿でそこにいた。
「なぜ?それは僕が君に呼ばれたからだよ紫雲。3年間変わらなかった幹部が動くんだ。のろのろ準備するのも趣味じゃない」
「なぜ──?なぜ闇雲様はあんなやつらと仲が良いのですか──?なぜ闇雲様はてこくんを見殺しに──?なぜ闇雲様はあんな奴らと知り合った──?僕には理由がわからない」
闇雲が話終わると同時に、七篠がそう呟く。声は落ち着いているが、いつもの無気力な感じはなく、何か──力強い何かが宿っていた。しかし、七篠は闇雲と目を合わせた瞬間に固まる。綺麗な笑顔で闇雲は七篠を見つめていた。
「七篠──残念ながら僕は自分のことを探られるのが大嫌いなんだ」
冷たくそう言い捨てた闇雲に、その場にいた全員が固まる。殺気だ。闇雲が隠すつもりもない殺気を出している。
「これ以上俺を探るなら、君の命はないと思え」
闇雲の一人称が変わった。ピリッと冷たい空気が流れる。その気まずい雰囲気も場に、1人の青年はのんびり足を踏み入れた。
「七篠くず──てこのソルジャー1の実力だけど──それ以上に異常な行動が多すぎる。こんなのが幹部とは、頼りないね」
その青年は静かに言い捨てた。七篠は顔を上げて、声を発した人物を見つめる。
「はじめまして七篠くん。コンシリエーレの孌朱です」
孌朱はそう言うと、七篠には興味がないかのように口を閉ざし笑顔を浮かべる。七篠は挨拶をするタイミングを逃したことに少し口を動かしてから下を向く。
「紫雲──生憎僕は弱いやつを幹部にするつもりはない。いつも通りにお願いするよ。あんなので死ぬなら、幹部には必要ない。殺して良い」
「────っ御意」
闇雲に対し、紫雲は何か言いかけたが途中で止め立ち上がり、懐から銃を取り出して七篠に向けた。
「本気で俺を殺しに来い七篠──」
七篠は何かを躊躇っているように、紫雲を見つめた。
「こう言ったら君はどうする?俺は地獄傀儡────だ」
紫雲の言葉と同時に、七篠は動いた。黒雪とレモンには、目に負えないような速さで。
「なっ────」
七篠は、そう声を漏らしその場に膝をつく。渾身の速さで攻撃をしたはずなのに、掠りもしなかった。それどころか、七篠からポタポタと血が垂れている。
「その一瞬で、きっと君は死んでいた。幹部には向いてないな──別を当たる」
闇雲の冷たいその言葉に、七篠は呆然としている。紫雲は静かに銃をしまい、黒雪の方を見た。
「黒雪──俺はお前を幹部に推薦する。お前が決めろ。試験を受けるか受けないか──」