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Ⅴ「外」Ⅴ
私は思わず目を細める。目前に広がる雪景色は、涙が出るほど美しい。
外の光は、ひどく白くて、網膜を焼くように眩しかった。
葉の落ちた木々が点々と広がっていて、雲の切れ間から冬の陽光が惜しみなく降り注いでいる。足元には真新しい雪原が広がり、太陽の光を反射してきらきらと輝いていた。
自分が本当にあの狭い箱から出たのだと、ひりつくような実感とともに理解した。
「ナ、ナナヤさん、あなた、何者ですか……⁉︎」
私が泣きながら口をぱくぱくさせると、彼は優しく微笑んだ。
「私は鬼人ではありません。しかし、人間にも稀に、怪物が潜んでいるのです」
「怪物?」
「他の人間からすれば、私も彼らの言う『怪物』と大差ないということです。……こんな力を持って隠れ住んでいる身ですから、貴女が私と行くと仰らない限り、手の内を明かさないつもりでした」
ナナヤは私を抱き上げたまま、どこまでも広がる雪原を歩いた。
裸足の私は、おろしてください、と言うわけにもいかなかった。
外套の中に小さく包まるようにして、時が過ぎるのを大人しく待つことにする。
彼が一歩踏み出す度に、こつ、こつ、と硬い足音が鳴った。
それを聞きながら、私は遠ざかる日々を想う。
何か変だ。
そう思って、私は通ってきた道を見た。
足跡がない。
「雪を透過させてます?」
雪ではなく、硬い地面を踏んでいる音。
ナナヤは前を見据えたまま、静かに答える。
「その通りです」
私は感心した。これなら、脱獄がばれて探されたとしても、追跡が困難になる。
「いいですね、その異能」
ふと、十年前の私にもその力があれば、などという愚かな空想が胸をよぎった。
もしあの夜、鬼狩りの包囲をすり抜けることができていれば、救えた同胞がいたかもしれない。奪われずに済んだ命があったかもしれない。
けれど時間は川ではなく傷跡だ。一度刻まれたものは、たとえ魔法でも消せはしないだろう。
今ここにあるもの。それは、鬼人の女王とは名ばかりで、多くの同胞を死なせてしまったという事実。どうしようもない後悔だけだった。