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なりえない侭
消化不良、、、
まだまだリハビリ中なので不確定だけど、続編書けたら吉賀目線書きたい
作業用BGM 長く短い祭-椎名林檎&浮雲
「一つになりたい、死にたい」
吐息が混じって、声が上擦る。
「…そう思ったよ。あなたとなら絶対に寂しくはないって、信じられた!!」
『ごめんなさい』と『許せない』がうまく消化できずに語気が荒くなる。
ただ、これ以上は僕も責められない。裏切った僕にはもう、彼を_____
不甲斐なく、声を漏らしながら墓の前でただただ、泣き続けている。とめどなく溢れていく涙と嗚咽に、もう僕を慰めてくれる優しい声も温い掌も二度と目の前に現れる事はないのだと痛感した。目の前の光景にあるのは、ただの大きな石でしかないのだ。
日が暮れる前に、家に帰ったがあの後どうやってここまで帰ってきたのかは全く覚えていない。
ただ、道中も彼との日々を頭の中で繰り返し、繰り返し思い出していた。
襖を開ける。カタンと思いのほか、大きな音が響いた。彼の自室に入って着ていたシャツのボタンを一つ、一つ外していく。首元から腰にまであるボタンをベルトを外していけば、赤い内出血の斑点がぽつぽつと身体中に広がっていた。
まだ、こんなにも痒くて熱い。それなのにもう、上書きされていくことも、なぞるように|舐《ねぶ》られることは二度とないのだ。
「嗚呼、もう肩にあるのはほぼ消えかけている_____」
彼の身長はずっと高くて、足も長くて綺麗な骨格だから隣を歩くのは、実は少し嫌だった。
彼はいつも、そういう所を気にする僕を可愛がっていてくれた。この部屋を見渡せば、彼が今までここで寝起きして、窓辺にある机ではきっと物を書いて、読んでは時々部屋の掃除をして、あのベッドでは僕と睦みあっていた。そんな日常が匂いと音、家具の並びから容易く想像できた。
泣き出してしまいそうなのを堪えて、薄手の浴衣を彼の箪笥から適当に取りだして、身に纏う。
「ああ、そうだ。絶対死んでいない」
瞼を瞑ると、頬から垂れて浴衣の襟ぐりに涙が落ちた。
____彼はずっと、この家で生きている。
ああ、もうすぐ庭にある柿の木が実になる時期だ。
「ふふ」
なんだか、笑えてきてしまう。それはきっと、縁側で君がいつもつまづいていた石ころがあるのがあの柿の木の下だからだろう。僕の見ていない時に、いつも転んで、振り返るとズボンの裾が黒くなっていた。おかしいな。君はいつも、僕に困ったように笑って傷を誤魔化していた。
『私はあなたと一緒に死にたかったのに……』
「っ誰だ?」
誰だなんて、聞かずとも確信はある。浮ついていく心を抑えきれずに、あの木の方へ振り返った。
『裏切りましたね、京介さん』
そこには、彼が憎悪を滲ませた顔で涙を流しながら立ち尽くしていた。
「ぁあ、あ……」
熱い、熱い。身体中から熱がふき出しているのに、指先だけがやけに冷たくて震えていた。
『京介さん、京介さん……』
「吉賀………」
力の限り、手を伸ばした。手を伸ばして、声の限りその名を呼んだ。ただ、彼はそれにこたえる事もないまま姿を消して、柿の実が石畳にタンッと弾くような音をたてて落ち、実はぐちゃぐちゃに潰れた。
『あなたが恋しい』
「はぁ!!」
目を開けば、もうとっくに夜は更けていて肌寒いくらいだった。日が短くなっているこの時期に、外で寝てしまっていたようだった。暗い、夜の中で目の前の塀の奥にある竹林が、風で柔らかくしなっている。この中庭も、夜になれば辺りは全く見えない。大人しく縁側の戸を閉めて、自室に籠ることとした。怖くて仕方がない。昼間と違って、夜になるとこの家のそこら中に彼の存在を感じる。戸の閉じた先に、窓の向こうに、布団に包まる枕元に彼が無言で立ち尽くし、じっと見つめ続けている。そういう雰囲気がひしひしと肌で感じる。
さっきのあれは、夢だろうがきっと現実なのだろう。彼を裏切ったのは、僕だ。彼と僕は愛し合っていた。だから、僕たちは心中しようと2人で誓った。決して、僕らが周りの人間から受け入れられなかったとか世の中が嫌になったとかそんな理由ではなかった。ただ、恋しかったんだ。お互いが違う魂で、違う肉体で、違う肺で呼吸して違う心臓で血を全身に巡らせていることがどうしようもなく寂しくなって、悲しくなって、もっと愛が深まった。それなのに僕は、その日彼だけ置いてまだ生き延びてしまった。また彼との距離が、一層開いてしまった。
だから彼は、きっと僕を恨んでいる。恨んで、寂しくしているだろう。1人でひっそりと切ない時間を過ごさせてしまっている。可哀想に、本当にすまない事をしたと思う。だから僕は待ち遠しい。その時が来るのを心待ちにしている。
いつか彼の手で祟り殺してくれる事を。