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#4 ぬいぐるみがくれたもの
目を覚ますといつもの病室だった。
お医者さんに「もう三人は帰った」と言われた。
次会った時怒られたらどうしよう、迷惑かけちゃった。
とぐるぐる悪いことを考える。
すると、誰かが病室に入ってきた。
慌てて布団を深く被って様子を伺う。
「よぉ。引き取りに来た人たちとはどうだったか?」
いつもの警察官さんだ。
少しホッとする。
「パッと見たけどいい人達そうだったな。よかったじゃねえか」
いつものように僕に一方的に話しかけてくれる。
僕から話しかけたりはしない。だって、何か言って怒られたら嫌だから。
警察官さんも僕が話すのが苦手なことを知っているからこうしてずっと話しかけてくれる。
「そろそろ退院できるって聞いたぞ。」
「⋯え?」
知らなかった事実に思わず声が漏れてしまった。
慌てて口を塞いで相手の様子を伺う。
警察官さんは気にしていないのかいつものような優しい顔のままだった。
「お?なんだ?知らなかったのか?一週間後に退院だって話らしいぜ。」
一週間後。結構早い。
どうしよう。退院したら。僕はどこへ行けば⋯。
引き取りに来るって言ったって迷惑なはずだ。
早く出ていかないといけないのだろう。
「ようやく元気になってきたってところだろうな。偉いな。よく頑張った。」
警察官さんはよく僕を褒めてくれる。
僕は別に偉くもないし、褒められるほど頑張ってもいないと思ってる。
だから、こんなに褒められるとちょっと気まずい。
「それに最近ご飯も食べられるようになったって聞いたぞ?すごいじゃないか。」
当たり前のことなのに。
他の人は当たり前のようにできていることなのに僕にはしばらくできなかった。
だからきっと看護師さん達を困らせたし、きっと嫌われているはずだ。
「あ、そうだ。今日はこれを渡そうと思っていたんだ。」
ゴソゴソとカバンから何かを取り出し、ベッドのすぐそばに置いた。
なんだろう、と見てみると、小説本と大きなクマのぬいぐるみだった。
「男にぬいぐるみってのもどうかと思ったんだが、なんだか寝れてないみたいだし、抱き枕みたいなのがあれば安心して寝れるのかなーと思って買ってきたんだ。」
ポリポリと頬を掻きながら警察官さんがボソボソ話す。
僕はぬいぐるみを手繰り寄せるとギュッと手を握ってみた。
モフッとした感触のするぬいぐるみはお日様の匂いで、胸がポカポカした。
「それはもうお前のものだ。好きに使ってくれ。それじゃあ今日は帰るよ」
僕のもの⋯?はじめて。
お礼を言おうと顔を上げたが、もう警察官さんはドアを開けて帰ってしまった。
僕はぬいぐるみを恐る恐る抱いてみる。
柔らかく肌触りのいい感触で、僕の体を包んでくれるぬいぐるみ。
それをギュッと縋るように抱きついた僕は気づけば寝ていた。
久しぶりに深い眠りにつけた僕の体をぬいぐるみは守るように安心させるように包みこんでくれた。