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#2 温かい水
外へと運び出された僕はパトカーの荷台に座らせられて毛布を被せられた僕は家に入っていく人々をぼんやりと見守っていた。
と、いうよりやることがなかった。
ただ、あまり家の外に出たことがなかったので、少しだけワクワクする。
すると、一人の女性が近づいてきた。
「大変だったね。白湯だけど、飲む?」
「⋯わん。」
差し出された紙コップを受け取って口に含む。
一応この言葉を言うのを忘れない。ただ、この言葉を言ったら女性は少し眉を下げた。
舌が痺れないことを確認してゆっくり飲む。
ちょっとぬるいぐらいのお湯は僕の体をポカポカと温めてくれた。
「ねぇ、名前言える?」
「⋯。」
困ったような女性の様子を見つつ、僕は考える。
名前、名前⋯?名前とは立派な人だけにつけられるものなんじゃないのか?
とりあえず、飼い主さんが言ってた言葉の中で一番多かったものを言うことにした。
「どれい⋯?」
驚いたような女性の態度に焦る。
どうやら答えを間違えたらしい。
どうしよう、何か他に⋯。
「ごみ、いぬ、だけん、のろま、ぐず」
挙げ連ねていくが、どんどん女性の顔が陰っていく。
間違えてるんだ、僕は。何か、何か他になかったか。
焦って呼吸が荒くなる。
「⋯ごめ、なさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
わからない。なら、謝らないと。
壊れたからくり人形のように謝罪を繰り返す。
すると、女性はそっと隣に座って背中に触る。
「⋯っ!?わん!」
この人もさっきの言葉聞こえてなかったんだ。
僕は飛び跳ねて女性から離れると、僕が従順な犬であることを示した。
女性は突然のことに目を丸くする。
僕はその場を離れるべく走ろうとするが、最近走るどころか歩くこともしていなかったので、その場にべしゃりとコケた。
女性がオロオロとした様子でこちらに歩み寄ってくる。
怖い。逃げたい。
「ごめんね。びっくりしたね。」
「ぅ、ぁ」
ヒョイッと僕を抱き上げた女性はもう一度荷台に座らせる。
しかし、今度は隣には座ってこなかった。
僕が震えだしたからだ。
目を限界まで見開いて、次何かされても対処できるように目を逸らさない。
女性は辛そうな顔でまた白湯をくれた。
今度は受け取らなかった。
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病院につき、いくつかの診断が下された僕は入院することになった。
僕が怯えるので個室にしてもらった部屋は柔らかい日差しに包まれている。
なんでも胃がびっくりしちゃうからと言われてジュースと点滴が主食の生活。
背中と手の火傷の状態があまり良くないみたいで、看護師さんが包帯を頻繁に取り替えに来る。
そんな生活に慣れ、食事に固形物が出てくるようになった頃、一人の男性が来た。
僕を最初に見つけた警察官さんだ。
「君のお母さんの親戚の家が引き取ってくれることになったよ」
優しい顔で告げられた言葉に、僕は顔に絶望の色を浮かべた。