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『最低』になった私
母は厳しい人だった。
「完璧じゃないと、だめよ」「なにもできないやつに、生きている価値なんてないのだから」
物心ついた時からずっと言われ続けたこと。その概念は、琉花の心にしっかり染みついた。
けれど、どうやっても『完璧』にはなれなかった。
なんで?母さんとなにが違う?
そう問うた時に一つの答えが浮かんだ。
優しい心があるから________?
人のために行動して、無駄な労力を使う。有限の時間を無駄にする。
そんなの、意味なくない?
だから、琉花は幼いとき、決めた。
優しい心なんてあっても、捨ててしまおう、と。
それからは簡単だった。取捨選択も早くなったし、勉強時間なども多く取れるようになった分、できるようになった。
まわりの人たちからは「すごい」「天才だ」「完璧ね」などと言われ、称賛された。
琉花は、これで正しかったのだと思うようになった。
五歳のときだった。
車の事故にあって母が死んだ。
ああ、こうなったら、あっけないものだな。
琉花は血まみれの母を見て、そう思った。
あれ?今、私なんて思った__________?
同時にそう思う自分が怖い、という感情が琉花の中で渦巻いた。
怖いなんて思っちゃだめよ。『完璧』な人は、そんなこと思わないよ。
心の中の琉花が言った。そのとき、理解した。
ああ、私は悲しむ心をなくしてしまったのだ。
前に父が死んだときには、涙が出たのに、今は一滴も出ない。
まわりの人達は、そんな琉花を見て怖がった。
当然だろう。『普通』の人は、涙を流すんだから。
琉花は、まわりの人たちの反応を見て、泣いた。母を亡くして悲しみに泣く子供の演技をした。
すると、まわりの人たちは、ほっとしたように息をつき、琉花を慰めた。
こうすれば、まわりの人たちは離れていかないだろう。いずれ、利用しやすくなる。
私はそう生きてきたんだから、今更考え方を変えるなんて、無理だよ…。