公開中
すべてが「疑わしい」になる火
約2700文字
おいX、わいの垢が凍結されたぞ。
読み専垢やから、つぶやきとかした覚えがない。凍結に対し、身に覚えがない。
あるとすれば、ブックマーク機能でエロ画像やエロ動画をいっぱい保存したくらいだが、だって成人だもの。
AIに相談してみると、「成人向けコンテンツをブックマークしたこと自体が直接の理由である可能性は低い」と言っていた。規約上、コンテンツの閲覧や保存自体は禁止されていない。
ブラウザ検索より、タイムラインを潜ってみると、どうやら凍結祭りが開催しているらしく、運悪く巻き込まれたらしい。凍結祭りの多くは、スパム一斉検知の誤判定で、AIフィルターに引っ掛かり、「ふーむ、あなたはbotです。凍結~」とされたらしい。
初めての凍結を喰らって、当惑した。それを知ったのは今日の朝のことだ。目覚まし時計に起こされて、うーん、とスマホとともにこんにちわをしていたら、「あなたのアカウントは凍結されています」ときたものだ。寝ぼけまであったから、そのままスルーして、おすすめ欄をみて、特に異常がなかったので、フォローの所を見たら、違和感。閲覧できない。そこで、夢から徐々に起きぬけて、現実に戻ってきたような気がした。
異議申し立てをするページに行った。
それで、短文でのメッセージでケチを付けようとしたら、「短すぎる」とケチを付けられた。舌打ちをして、ネットで何を|贈答《おく》ったらいいのか調べて、それで送ってやったら、送信完了。ブラウザ感知と石の個数を選ばせる「私はロボットではありません」形式をやったら、ようやく完了となった。
その後、自動送信メールが届く……と思いきや、届かない。
みんな異議申し立て送るよなあ、世界規模で。というわけで、自動送信メールが来ない半日が過ぎた。つまり今である。
受理されていない可能性を覚えたため、もう一度異議申し立てを行おうとメッセージを送る。すると、このような注意書き。
「元のケースはすでにキュー内にあります。元のケースに関して弊社からの返答をお待ちください。」
ふむ、そういうことか。
そういえば、米国では夜だったか? まあいいか。時差とかどうでもいいわ。
これも一つの経験……凍結なんて滅多にないものだ。
何ができて、何ができないのだ?
色々と探してみる。
できることは、いわゆる読み取り専用モードであることだ。あと、ミュート登録は適用されており、「おすすめ欄」にて出てくるものには販促やらなんやらの奇態なポストは見当たらない。創作系の美しい作品や芸術品を紹介するもののみが流れてくる。
できないものは、上記のもの以外は大体できない。
いいねやブックマーク機能、その履歴。ミュートワードの新規登録、トレンドの確認、トレンドのニュースなど。横にスライドして次の画像を見る機能ですら封じられている。だからいちいち投稿まで戻って、選ばせる作業が必要だ。めんどい。
あ、Grokの画面は行けるな。いやー、Grok。僕凍結祭りに巻き込まれちゃって散々なるものだよ~、とチャットしたら「できません」と返ってきた。何だできないんだ。残念。
Grokの履歴は見られるようだ。4つくらい残っている。
ここはいつも通りだ。いつも、ある程度調べたら短カフェに。その後チャットは削除しているため、この程度なのである。AIの吐き出した履歴を放置すると、AIは自然とそれを学習して、勝手にパーソナライズしてくる。それがバイアスを助長させるような感じがするため、削除してすっきりさせている。
最近はGeminiに移動してしまったため、Grokのほうはあまり使っていない。Geminiのほうも同様のものだ。無料版で充分である。
まあ、5月くらいまでは使っていたようだな。
一応、全部お引越ししておくことにした。丸コピーしてメモ帳に。
それで、ジャーナリングをしていた。
「ふええ……」
すました顔をした文章を辞めて、紙に書いて、不安を吐き出した。
「ふええ……、ショックだよ~。読み専垢だから、無くしたものは軽微だけどさ、理不尽だよ。突然やられるのはさ、納得いかないよなあ」
メンタルがおとうふになったところで、しろたんむぎゅう。
---
しろたんと、ごろ寝ってしていた。
僕は今、しろたんにひっついているおとうふなのである。だから、おとうふであってよし。でも、でも……。
色々と考え事をしていたら頭が疲れてしまう。やがて「それ、個人化だよ」としろたんに言ってもらった。そうであった。
「考えても仕方がない。無意味だったね」
しろたんから元気回復行動プランを提示してもらい、おとうふから「わい」に戻った。軽く情報を集めることにした。
「日本は世界的に見てもXの利用率が高く、広告効果や閲覧数を稼ぎやすい市場です。そのため、海外のスパム業者が、日本の一般ユーザーに偽垢を大量にフォローさせるという事態が横行しています。
先日X社の幹部は公の場で「過去1〜2年だけで、計8億件以上のスパムを凍結した」と話題になりました。X側が「日本国内でのAIフィルター」の感度を最大まで上げた結果、ボットと同じような動きをしている日本の「読み専」ユーザーが、結構な巻き添えを食らっています」
ふむふむ、どうやら自分だけではないようである。
botと人間のアカウントの違いはもう、見分けがつかない感じだから、疑わしきものは一旦凍結しておいて、人間なら異議申し立てするに違いない……という感じだろう。
噂では青い認証マークの付いたアカウントでさえ、凍結対象にされている噂もある。インプレゾンビたちは、お金を払って青い認証マークを取得して、「お金を払うbotとかラッキー」という運営会社のおこぼれに預かっていたという。
「課金しているから安全」という金銭的信頼の証でもあったこれは、しかし反転した。自動的な大量量産体制に入って、秒速何百、何千と作られるアカウント量によって、もはやぐちゃぐちゃになっているのである。「AIvsAI」のデジタル戦争となっているようである。
「あなたが推測された読みは、現在のAIシステム運用の本質を捉えています。
bot業者は数万のアカウントを同時に運用しているため、凍結されたアカウント1つ1つのためにわざわざ人間が異議申し立ての文章を打つコストを嫌います(※たまに自動で申し立てるbotもいますが、手口は限られます)。
つまり、「面倒な異議申し立ての手続きをわざわざしてくるアカウントは、高確率で生身の人間である」というフィルターの役割を果たしているのです。」
AIに相談した内容を見て、20秒ほど考えた。
飛来めいたものを、紙のメモに。ささっと書き留める。
・疑わしきも罰するAIが、人間らしい基準を定めてくれるはずだ、という一般的信念。
・秘めたるカリスマ性、法治国家元首を刈る『民衆を導く自由』
・滅ぶは群衆。倒壊するは文明。しかし、電子化された概念『群衆心理』と電子化された群衆『SNS』によって、もはや|亡国《ほろ》びようがない。
だから、美しい宮殿に火をつけたがる。外からも、内からも。
それでも宮殿は壊れない。革命に酔いしれるさまは、滑稽。