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さよなら、幽霊さん (第二章)11
〈本編に入る前に必ずお読みください〉
※ 今回より作者である篠崎真唯の逝去に伴い、実弟が代筆を務めさせていただきます。そのため前作と少し異なる解釈や表現の差異等が多少発生する可能性があることをご理解ください。
「なんていうか、つまらないのね。学校生活って」
「それはどうも」
黒板に書かれた化学式をノートに写しながら静かにそう呟く。昼休みが終わった直後の五限目の授業をまともに受けている奴などいないようで、周囲を見渡しても机に突っ伏している者や立てた教科書の裏で顔を隠しながら寝ている者がほとんどだ。真面目に起きている奴なんて僕とお堅い学級委員長くらいだろうか。なんならその学級委員長でさえも先程から眠そうな表情で目を擦っているのだが。
「私も……なんか眠くなってきちゃった……」
真隣の窓から射す光を受けて微睡む麗の様子に呆れて思わず溜息が出る。
「あのなぁ……学校に行きたいとか言い出したのはお前だろうが。せめて最後まで授業聞いて……」
「……城崎君、何故窓に向かって話しかけているのですか……?」
声のする方を向くと、チョークを持ったまま顔を引き|攣《つ》らせて固まる教師とこちらを振り返って苦笑する学級委員長がいた。
「すいません……寝ぼけてました……」
咄嗟に嘘をついて、恥ずかしさから教科書に顔を埋めた。教師と委員長が前を向いたのを確認するとすぐさま隣を睨んだが、麗は気持ちよさそうに眠っている。文句を言おうにも、生殺与奪の権は麗に奪われているため機嫌を損ねるわけにはいかない。小さく溜息を吐いて、チャイムが鳴るのを待った。
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「ねぇ、本当にこんな生活を毎日続けているの?」
斜陽の朱に染まった放課後の教室には僕と透明なもう一人しかいない。揺れるカーテンの傍にいる麗が退屈そうに窓の外を見つめている。
「そうだと言ったら何なんだ?」
「さっきも言ったけどつまらないわね」
窓に映る、グラウンドで練習に励む野球部の姿を見つめる麗の無表情を横目に頬杖をつく。
「そうだな、学校生活はつまらないな」
「……まるで自分以外もそうだとでもいうような物言いね」
「別に僕はつまらないくらいの生活が丁度いいからそれでいいんだ。問題はおま……麗だ。こんなつまらない生活を一日送ったぐらいで未練が消えるものなのか?《《一日高校生体験》》はどうだったんだ?麗が満足してくれないと成仏までの道のりが遠のくだけだぞ」
僕の問いに少しの沈黙が流れた。夕日が濃色に変化しながら没し始め、次第に教室が薄闇に浸食され始める。彼女の表情が見えない。
「別に楽しむことだけが未練解消につながるわけじゃないわ。知らなかったことを知れた、ただそれだけで私は結構満足するタイプよ?けど、あなた視点の生活はつまらなさそうだから、明日は別の子の傍で学校生活を送ってみたいわね」
そう言って彼女は薄く笑みを浮かべながらこちらを振り向く。それと同時に、窓の|下框《しもかまち》の底に陽が没し、空が夜を迎え入れた。小さな彼女の身体が、迫る闇に呑まれていく。
「まさかまた明日も学校に来る気なのか?」
「えっ?駄目なの?」
「そんな面倒な……」
ことは御免だと言いかけたその時、突然浮かび上がった球状の発光体が闇を切り裂きながらふわふわと宙を舞って麗の手中に収まる。その光に照らされた彼女の下卑た笑みを見て、文句は言えなくなってしまった。
「あーもうわかった……わかったからそれをとっとと仕舞ってくれ」
「分かればいいのよ」
再び光は消え、妙な空気と星明り一つない闇だけが辺りに蔓延っていた。
どうもこんにちは。初めての方は初めまして。篠崎真唯の弟です。今回から逝去した兄である篠崎真唯に代わり代筆を始めました。詳しいことは日記の方をご覧いただけると幸いです。
今回から著者が変わるということで、PNを変更するか、それとも兄の篠崎真唯というPNを使わせてもらうかを迷っています。一応前書き欄に注意は書かせていただきましたが、それでも書いている人間が違うのに同じ名前を使うのはどうなのか、と私自身が少し躊躇しています。もしこれを読んで「名前は変えた方がいい!」「いやいや、変えずにそのままでいい!」という意見がございましたら、教えていただけると今後の活動の後押しになります。厚かましいようですが、今まで通りに感想等も送っていただけるとありがたいです。そして、今作を終わりまで見届けていただけるともっと嬉しいです!
それではまた次回でお会いしましょう。