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さよなら、幽霊さん (第二章)10
第二章 『繰り返す戯言』
日の当たる道をゆっくりと下りながら寂れた住宅街を抜け、《《僕たち》》以外に誰もいない道をひたすら歩く。隣にいる、半透明の少女、下柳 麗は浮かれた軽い足取りで、対照的にのっそりと歩く僕の横を微笑みながら歩いている。
「……なぁ、しも……麗……」
先程まで彼女を名字で呼ぶと、『下の名前で呼ばないと魂を蹴り上げる』と脅迫されたことを思い出して、即時訂正して名前を呼んだ。
「…?なに……?」
振り返った麗の顔はあからさまに綻んでおり、相当今日の登校を楽しみにしていたことが見て取れる。
「そういえば、お前って何歳で死んだんだ?」
「……あんたよくデリカシーないって言われない?」
柔らかな表情が一瞬で強張り、ジトっとした目でこちらを睨んでいる。
「デリカシーの欠如を指摘してくる友達なんていないもんでね………死んだ年齢を聞いたのは、単純に僕の中で疑問だったからだよ。見た感じ、九歳か十歳くらいだけど、もしその推測があってるなら、特別な事情がない限り小学校には行ったことがあるだろう?なのに叶えたいことの一つが学校生活を体験するってどういうことなのかって気になってさ。地縛霊って、死んだときの年齢そのままなのか、それとも、死んだのは小学校入学以前で、そこから身体的な容姿が成長したのか、それによってかなり話が変わるからさ」
「……死んだ年齢は……わからない、でも私が死んだのはこの見た目の時よ。本当なら私たち…私も小学校に入学しているはず……だとおもうわ……」
所々歯切れの悪い回答にどこか引っかかる言い回しもあるが、それを訝しむ僕の視線を感じたのか、麗は咄嗟に言葉を付け足した。
「生前は色々あって、自分の年齢はよくわからないの。学校に行けてないのもそのせい。唯一入学式一日行ったぐらいかしら……とにかく、色々あったの。こんな乙女の秘密を暴こうなんてサイテーよ?それに……」
麗は何か言いたげにしたが、何かをぼそぼそと呟くだけで何も聞き取れない。
「…私は……く…いじゃなくて……、はぁ、もういいわ」
曖昧に濁した言葉に隠された意味は解らないまま、いつの間にか目の前に僕の通う高校が現れた。
「着いたぞ、ここが僕の通ってる高校だ」
そう言うと麗は先程までの硬い表情を再び和らげ、スキップのような足取りで下足箱まで歩いていった。