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さよなら、幽霊さん(第一章) 7
あれから少女のお願いを聞くことを条件に魂を返してもらい、何とか家に着くことができた。塗装が剝がれかけている古びたトタン屋根の下を進み、ブルーシートに覆われた水瓶の横を過ぎて、裏口の引き戸に手をかけた。しかし、どれだけ力を込めても戸は開かない。
「……じいちゃん、帰ったよ……」
戸を叩いて、中にいる祖父を呼んでみたが応答はない。
「遅くなってごめん………鍵掛かってるんだけど、開けてくれない?………」
焦って、何度呼びかけても、庭に面したカーテンの閉められたガラス戸の向こうからには、人が動く気配はない。次第に焦燥感は消え、鉛のように重くなった足を引きずりながら庭の物置小屋に入り込んだ。暗く、埃にまみれたそこで静かに身体を丸めて微睡む。
「……何も変わんないな、あの頃と」
自嘲しながら|蹲《うずくま》って、静かに夜が明けることを待つことにした。せめて悪夢を見ることがないように。そう願いながら瞼を閉じた。