※換骨奪胎作品。エタった作品です。
※2020年に書いたままどこにも投稿せずに放置していた作品。とある実況者をモチーフに、とある人物が炎上によって古参ファンが離れていく様子を書いた。所々エタった部分があるが、読めるっちゃ読める。ホコリに被ってたのでここに放出する。
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目次
作者による前口上
※劇中劇の形式を取っています。
そのため、小説の所々にて作者(書き手)が出てきて補足説明をしてきます。あとの部分は、「作者による前口上」にて記載してあります。
※過去に書いた作品のため、文章の書き方にクセがあります。ご了承ください。
ト書き、SNS表現、ネットスラングetc。
※ところどころエタッている部分があり、その部分は「略」となっています。予めご了承ください。大筋のストーリーにはそこまで影響はない気がします。
**・作者による前口上**
テーマは炎上。故にこの小説は小説に非ず。
ニュースにはなりはしなかったが、とあるネット界隈を炎上した“とある事件”をモチーフに、作者の虚偽を混ぜ込んだフィクションとなる。
だが、作中に登場する炎上騒動・それに対するファンの反応の一部は、とあるスレッドやSNSで公開されていたメッセージであり、現実に起きた炎上情報を基に作成している。その大部分は削除や非公開になった文章であり、その後、作者の手が加えられた換骨奪胎式の創作文であることをここに記しておく。
それ故、事実と虚偽が至る所で綯交ぜになっているが、当事者が見ればどの炎上事件をモチーフにしたかを特定するのはそこまで難しくないだろう。
この小説は、ゲーム実況の黎明期に颯爽と現れた、とある二人組のゲーム実況者グループ“慧眼グルド”が天下を取った後、“慧眼グルド”から独立したとある人物――以下“X”――が凋落していく様を記した。
そして、炎上騒動を起こし、Xがさらなる落魄ぶりを衆人環視に晒した失態――“Xの悲劇”を記した物語である。
再三申す。
この小説はあくまでフィクション。ノンフィクションではないことだけはご了承願いたい。
参考文献(作者自身、角が立たないよう、わざとあいまいな表示にしている)
・某巨大掲示板
・某SNS呟きサイト
・炎上専門のまとめサイト
・ゲーム実況者系の反応
「5月2日」――卒業ライブ
「5月2日」
「5月28日」
**「5月2日」**
202X年5月2日 「“慧眼グルド”生ラジオ」最終回生配信にて
Y「えー、“慧眼グルド”ライブ、長らくお時間を頂戴しまして、いよいよ名残惜しいものに――いよいよ最後のスライドになり」
X「ちょっと待った!」
Y「えっと……ナニ?」
X「実を言いますと、急遽追加でスライドを作りまして」
Y「え、何? 聞いてないんだけど。……」
(パワーポイントの操作。別のファイルに移転する)
Y「……『卒業前に、俺に一言言わせろや』ってなんなの?」
X「ああ、えっと……まあ、最後ってことなんでちょっとこっそり録音してきたんですよ。聞いてもらえます?」
Y「――え?」
***
(音声ファイル・再生)
おいYちゃんよー、聞いてっか?
卒業する前に、言いてえことがある。
耳かっぽじってよぉく聞いとけよ!
“Y”にこの際一言物申す!
前から言いたかったが、その懇切丁寧な気遣いはなんだ!
介護してんじゃねぇ!
俺は疲れて歩けなくなったんだから、黙って捨ててけ!
おんぶしてんじゃねぇ!
じゃないと、いつまでたっても歩けねぇだろ!
こんなところで止まらず、先に進んでくれっ。
俺もお前に頼らず、今度は自分の力で歩いていく。
今までは二人旅だったが、ここから先は一人旅だ。
これまでよりも俺の歩幅は小さくなる。
――でも……旅を続けてれば、またいつか……何処かで落ち合うべさ。
だから、そのときに……な?
……
――以上発表終わり!
(音声ファイル・再生終了)
***
Y「……」
X「どうです、これ。いいサプライズになったと思うんですけど」
Y「……」
X「……っw。何で沈黙なんですかw……答えてくださいよw!」
Y「……いや、正直言って、要らなかったかな」
X「ちょ、何でですか!?」
Y「……なーんてな。冗談だよw」
---
**「5月28日」**
・202X年 5月28日 垢名:「Xの先駆者」
こんにちはXです! 今日“つべ”にて無料チャンネル「Xの先駆者」を開設いたしました!
ここで動画投稿をしていこうと思ってます! 投稿頻度はそこまで高くありませんが、私の“緩さ”に共感・応援していきたいと思っている方たちは、ぜひご登録お願いいたします。
あと、フォロワー10万人ありがとうございます! とても励みになります!
***
・無料チャンネル「Xの先駆者」概要欄にて。
Xによる「人生を楽しんで楽しませるチャンネル」
ゲームジャンルは問わない! だって「人生は楽しんだもん勝ちだから!」
連絡先→(PLAミリオンdei*****@co.jp)
***
“慧眼グルド”のX卒業辺りから、某ネット掲示板にて『X卒業を語るスレッド(のちに本スレ)』が出現。実質“慧眼グルド”の解散と、Xの卒業の衝撃により、名残惜しい気持ちの吐露でスレッドが埋め尽くされた。――6月29日の生放送までは。
1「6月29日」
202X年 6月29日 午後7:00 配信プラットフォーム“つべ”突発生放送にて
――聞こえてますかね? 大丈夫そう? ……大丈夫そうですね。
すみません、一人での放送、まだ慣れてなくて……。
えーっと、改めまして皆さんこんばんは。Xです。
今回は「真面目なお話」ということで、急な生放送の告知をして大変申し訳ございませんでした。今回は……お、すごい。突発なのに1万人も視聴者が来ていますね。いつもなら1000人ちょっと来てくれたらいい方なのに……ははは。
こほん。
えっと、今回の……今から話す話は、今まで話す気はなくてですね、私のポリシーに反するというか。その……なんだろ、今から話す物はほんの例え話というかなんというか、えー、このチャンネルを開設してから、不定期でゲーム配信を中心に楽しく、勝手気ままに更新するというので、あんまり過去のことは話さなかったんですよね――『あえて』。
「Xの先駆者」というチャンネル開設前の話は関係ないだろうし、結構昔のことだと自分では思ってるので。
このチャンネルはあくまで私自身のためのチャンネルであり、自分の心を整理するための期間という位置づけですし。ただ、そのせいで視聴者さんの対立を招いたり、様々な憶測が飛び交って混乱しているのかなぁと思い、今から例え話をするんですけど……あ、まだ増えるんですね。1.5万人超えてる。いやー、緊張するなあ。個人的にそんな期待するほどの話をするつもりじゃないんですがね。
……そろそろ本題に行きましょうか。
これはえっと、例えばの話ですよ?
今の仕事に転職するときに、えー、離職するときに“ある契約”を交わすんですよ。転職した経験がない人は分からないとは思うんですが……例えば、前職のことは話さない、とか。男と男の約束に近いかな、やめる時そういう固い契約を交わすんです。
それで私は、その誓いを交わすときに、こう決心したんです。
――『前職のことは沈黙を貫く』と。
いや、ちがうな。沈黙というより、あえて考えないようにした、の方が正しい……ですかね?
ホームぺージをあえて見なかったり、イベント開催の日時をあえて見なかったり、前職の更新内容ややXNXなどの告知を見ないという行動をあえてしました。
なるべく前職から離れて、一度俯瞰して自分を見つめなおそうかと意図せず思ったのかもしれません。ただそういうことを3か月ほど続けると、突然軽率で極めてトチ狂ったような暴言を吐いたり、愚痴をこぼしたり泣いたりしてしまいました。
生放送でそんなことがありましたよね?! いやぁ、あの時はどうもすみませんでした。
あのときの発作的な衝動を見て、視聴者さんはどう思ったのかはさておき、自分としては未練があるみたいなことは現時点では思ってません。ただ、時々こう思うことがあります。
――もしかして、今やっていることが周囲の人間を困らせたり、今進んでいる道が正しいのかな、と。
もっと悪くとらえると、今の自分は地獄に通ずる道を選んでしまったがため、そのせいで……今まで後片付けをしていた大事な人にまで心配をかけているのかなぁって思ってしまう、そういうときだってたまにあります、生放送の時とかに……。
なんだかわかりにくい話をしていることは自分でもわかります。
とにかく今はっきり言いたいのは……「わざと」だとか……「故意に」だとかで、日程を合わせたりだとか、邪魔しよう……とかいう悪意は全くないです。自分そんなに賢くありませんし、ただ単にミスしただけなんです。迷惑をかけるつもりなんてこれっぽっちもありません。だから対立を生むような事実はないんです。ただすれ違っただけ、自分の配慮がほんの少し足りなかっただけなんです。
あと恨んだりとかもありません。
例えば、例えばですよ。自分が座っていた席に誰かが引き継いで、楽しそうに仕事していることに嫉妬とかもありません。ましてやよく知った人物ならなおのことです。自分にとって“あの席”は、自ら手放したもの。いつまでも空席にする必要なんてどこにもないんです。そもそも私は休職ではなく辞めたんです。そう契約した……と、自分では考えてます。それに、過ぎてしまった栄光はもう……。
フワフワして大変申し訳ありません。こんな例え話、おそらく視聴者さんの大半はもうどうでもいいことですよね。だからこの放送に来てくれたんですよね、“あっち”ではなく。今度からはもう少し配慮したいと思います。
あとは一部の視聴者さんに一つ言いたいことがありましてね。図々しいことは百も承知なんですが、今の私は病人ではないということです。只の風邪みたいなもので、だるけだったりノイローゼだったりはもうどこかへ行ってます。だから元気です。あ、元気というのはうそですね、今ちょっと舌の横にでっかい口内炎が……て、これもどうでもいいですね。
だから、
「朝までゲームやってて大丈夫」――だとか、
「ちゃんとご飯食べてる?」――だとか、そういう心配はいりません。
皆さん、私の年齢知ってますよね? 大人ですから、そういう最低限のことはできてますし、人並みですけど自分の身体は自分がよく知ってます。まあ、栄養士並みの栄養管理は意識したことはないですけど、まあ大丈夫ですって。
あとは、そうですね。視聴者の皆さん、甘やかすではなくもう少し厳しくお願いします。面白いことは面白いと、つまらないならつまらないと、そう割り切れる視聴者さんだけついてきてください。まあ、こんなことは言うまでもないとは思うんですが……一応。
現状コラボとかも考えてません。今は一人の時間を大切にして、続ける。これだけです。今の目標は、チャンネル登録者数を10万とかにしましょうかね。できるかな、これ。ははは。
えっと、始めて大体15分ですかね。短いですけど、これにて生放送は終了したいと思います。自分の過去のことはこの放送以降話すことはないと思ってください。そういう暗いことってこのチャンネルには不必要ですから。もちろん例え話なので、直近の話ではなくて、今から十年前の話なのかもしれませんし、架空の話かもしれないってことで視聴者さんの想像に任せます。
言いたいことは全部言えました。何故だろう、なんだか今清々しい気分です。視聴者さんはそうではないのかもしれませんけど。今一度整理の上改めて応援の程お願いします。
それでは、失礼しまーす。
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202X年 6月29日(月)午後8:40 垢名“慧眼グルド”公式垢
迷惑かけるつもりがないなんて僕が一番わかってます。
“簡単に”手を差し伸べてしまうのが優しさではないのも理解してます。
ただ、隣に配慮しなくていいのでやりたいこと全力でやって下さい。頑張って。
――という独り言です!
202X年 6月29日(月)午後8:41 垢名“慧眼グルド”公式垢
まあ、てめぇらはボコボコにしてやるけどな。
覚悟しとけよ。明日の○○時から『視聴者vs Yの大乱闘ましゅーず!SP』の生放送です。
(月額有料チャンネル・“慧眼グルド”会員限定生放送枠 URL添付)
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202X年7月3日、この放送枠のアーカイブは削除された。生放送よりわずか4日後のことである。削除した理由は、
「楽しいチャンネルに暗い話は相応しくない。残しておく理由がないから」――だそうだ。
大部分の視聴者は納得している一方で、突然の削除に戸惑う人もいて、この直後に某ネット掲示板にて「Xアンチスレ」なるものが立てられた。
それによって――
2「7月22日」
202X年 7月22日 深夜3時頃。
5時間にも及ぶ長いゲーム配信が終了し、配信終了間際の雑談タイムにて。
今まで耐久していた視聴者から質問に答えていた。
以下、その抜粋。
視聴者のコメント:「ゲーム中でも常にしゃべり続けてほしい」に対しての返答。
X「『常にしゃべり続けてほしい』?
(息を吸う音)難しいねー。ゲーミング無言入っちゃうねー(笑い声)」
視聴者のコメント:
「うわあ」
「そりゃ頼むわwwwww」
「ホラー無言は怖い」
「配信者のセリフとは思えない」
X:「『ホラー無言は怖い』、確かにね。www、
『配信者の、セリフとは思えない』(笑いながら読み上げる)
配信w、え? 配信者だと思ってんの、俺のこと。ただ、ゲームやってるところを、俺は……(笑)だと思ってんだけど」
視聴者のコメント:
「え?」
「!?」
「違うの?」
「嘘だろ」
「草」
X「実況ぉ、してる覚えは、なかったんだけどなぁ?
基本垂れ流しだから、俺がやってるのは。ただただおっさんが、ゲームやってるところを、っウェブに……ウェブに流してる、垂れ流してるだけっていう……(笑)」
視聴者のコメント:
「??????」
「うわあ、ないわ」
「幻滅」
「ゲーム大好きおじさん」
X:「そう、ゲームおじさん。配信者じゃなくて俺先駆者だからね。「Xの先駆者」っていう先駆者。だから、もう……(ごにょごにょと呟く)できる限り、俺が死ぬときはやってないゲームを少なくしてから死にたいよね。
俺はぁ、単にゲーム楽しみたいだけなんだからさ。(笑いながら)あれを、あれをやりたかったんだよなー、これもやりたかったんだよなー、つって……南無……つっか昇天するのは、後悔が残るからね」
視聴者のコメント:
「すてき」
「そのスタンス好きだわー」
「いいね」
「ゲーム大好きおじさんによる垂れ流し放送」
「そっか、先駆者なんだった」
X:「そう、配信者じゃなくて先駆者。だからちょっとでもやりたいなー、ていうゲームがあったら、できるだけやってから死にたいね。確かにゲームやってるから配信者だけどさ、まあ――ここだけの話、実況とかどうでもいいんだよね。ゆるくゲームができるだけ幸せ。ゲームが楽しければそれでいいんだよ」
***
この時、Xのソロ配信は2か月目に突入しており、2日前の配信でも7時間半を超す深夜配信がなされていた。気が抜けていたのか、あるいは思ったことがすぐ口に出てしまう性格が祟ったのか……。
上記の「配信者だと思ってたの?」発言に関して、ファン層の中でも騒動となり、それに対して後日、配信の冒頭にて、笑いながらこう弁明している。
「おちゃらけのつもりだった」
「冗談だよ」
「つい口が滑っただけ」
「気にしないでほしい」
その後、視聴者からの擁護的なコメントを拾い、その返答をするだけの放送が続く。
ゲーム配信に移ると二千人いた視聴者の大部分――千二百ほどが退出。熱狂的な信者たちが見守る、長時間配信が垂れ流されることとなる。
この頃から、ネット掲示板にて建てられた「Xアンチスレ」が活発化。スレは次々消化され始める……
---
***
---
≪「Xアンチスレ」注意事項≫
このスレはXを語る本スレではありません。Xアンチスレです。
Xについて「面白い」「素晴らしい」「稀代の存在だ」以外のコメントをしたい場合には、このスレに書き込んでください。
アンチスレはもともと、
「Xに『面白い』以外のコメントする奴は全員アンチ! アンチスレ立ててやったからそこにいけ!」
――というX信者の声明により、ほとんどの方が移住したスレッドです。
なので、このスレはX信者のみ出禁です。本スレに帰ってください。
※ アンチスレなので、少なからず憶測で喋っている部分があります。ネットリテラシーの低い荒らしや、誹謗中傷を書き込む野郎は無視推奨です。反応する奴は総じて荒らしか、内部分裂を企んでるX信者です。注意しましょう。
***
202X年7月22日 午前9:30頃 「Xアンチスレ」にて。
「Xアンチスレ」には今日も、Xの生放送を観覧した匿名の書き込みがスレッドに書き込まれる。その殆どは愚痴や雑言で満たされていた。
「昨日の――いや、今日か?――生放送の奴、頑張って最初の5分だけ見たんだが、やっぱりクソつまらん。これが5時間もあるとか拷問なんだが」
「同意。俺も一回アーカイブ見たが、トークはつまらないうえに自分はいきなり笑いだして視聴者置いてきぼりだからな。何も面白いところはなかった」
「面白いところあった?」
「終盤以外は全部飛ばしていい。最後のピロートークだけ見どころがある」
「詳細」
「Xの本音をポロっと吐き出してる。『ゲーム実況はゆるくやりたい』んだとよ」
「Xがいう『ゆるくやりたい』発言ってさ、実況とかやらないし配信とかしないし、視聴者のこと全く顧みないで面白くする努力もしない延々とつまんないう〇こ垂れ流し放送しとくけど、金稼ぎだけはやらせてねーってことだろ。クソ屑じゃん」
「もとからだぞ。知らなかったのか」
「そもそもの話、こいつのソロ配信とか求めてたやついた? X卒業後、待望の配信って感じで垂れ流すけど、そもそも平日深夜に徹夜放送なんてニート用かよって思うわ。長げえし、面白くもねえし、実力ないし、何なのコイツ?」
「昔からクズ野郎だと思ってたが、まさかここまでクズだとはな」
「信者がクズ化を加速させてるからね。
アンチスレが建てられる前にXの本スレでさ、Xの動画を見た俺が普通に『面白くない』って感想言ったらどう反応したと思う?
『面白い以外のコメントする奴はアンチ! アンチスレ立ててやったからそっち行け!』
だってよ。面白い以外のレスができないならアンチでいいわって信者がキレ散らかした結果、本スレは廃墟スレになった」
この投稿コメントの末尾に、同ネット掲示板内最新のX応援スレである本スレのURLが貼られる。
最新は『X卒業を語るスレ2』で、投稿されたコメは100すらない。既に過去ログ倉庫(上限まで投稿されたスレッドまたは一定時間内に全く投稿されなかったスレッドが、半永久的に保存される場所)に移動されている。
「今ではX信者がここ(アンチスレ)に来て、叩きにくる始末。X信者こそ害悪だよ。注意喚起も無視するしな」
「害悪が集まってる親玉はもっと害悪だけどな。多額の契約金につられて、“ミリオンdeil”の公認配信者になったんだから」
“ミリオンdeil”公認配信者とは、動画プラットフォーム“ミリオンdeil”の運営者および企業と契約を交わしている配信者のことである。“ミリオンdeil”内の配信者人気ランキングの上位3位以内を半年間キープした場合のみ、晴れて“ミリオンdeil”から公認配信者になることができる狭き門だ。公認配信者になると時給が発生――時間単価は秘匿――し、生放送アーカイブやサブスクリプションサービスが解放される。
また、“ミリオンdeil”自らが外部の有名配信者を「スカウト」し、公認配信者として看板を授けることもあるようだ。Xは後者のタイプの公認配信者であり、噂では多額の契約金が支払われたのではないかとのタレコミがある。
なお、“ミリオンdeil”は日本国内の企業ではなく中国企業で、数年前に日本へ参入してきた新興企業であることも付言しておこう。昨今の情勢より中国企業は勢いがあり、多額の資金でもって別の動画投稿サイトから人を引き抜くという強引技で、多少のルールは目をつぶってでも、ゲーム実況界を牽引したいという姿勢を崩さない。
「でもX本人は言ってたじゃない。公認だからといって契約金は貰ってないって」
「建前だろう、どうせ。5月末に“つべ”でチャンネル作って、2週間足らずで
『“ミリオンdeil”の公認配信者になりました。みんな応援してください』は突拍子すぎる」
「突然だったもんね。『デンツー』でも絡んでるもんかと思うぐらい、スムーズなムーブだよね」
「中国企業だからと言って、“ミリオンdeil”の公認配信者になるのも段階っていうもんがある。
“慧眼グルド”を卒業したのは5月上旬。“つべ”を開設したのは5月下旬。で、“ミリオンdeil”の公認配信者を発表したのはその2週間後の6月。で、Xの古巣である“慧眼グルド”の活動再開告知生放送が6月26日にあり、それに反応した『真面目なお話』――消されちまったけどな――生放送が29日……ここまで2か月しか経ってない」
Xが“ミリオンdeil”の公認配信者になるなら“つべ”はどうして開設したのだろう。
昨今の動画サイトの中では今波に乗っている動画配信サイトである“つべ”は、主に視聴者の視聴数(再生数)と動画視聴前に30秒程度の短い広告を入れることで投稿者および配信者に収益が付与される。一方“ミリオンdeil”では広告はなく、すべての動画投稿者が収入をもらえる資格があるわけではないことは事実だ。“つべ”のように広範囲に対象があるわけではなく、特定の上位陣か、“ミリオンdeil”直々に「スカウト」された公認配信者だけ時給が付与される仕組みを取っている。
公認配信者になると配信ノルマが付与されるといううわさがある。月50時間だとか、月25日以上だとか、定かではないが、動画投稿サイトを並行してできるほど甘いものではないらしい。となるとどうして“つべ”でチャンネルを開いたのか?
――無料で配信でき、無料で視聴でき、さらにサブスクリプションも投げ銭機能もある。だからか?――いや、それらの要素はすべて“ミリオンdeil”でできる。ただ“ミリオンdeil”は小規模の界隈なので人口が少なく旨みもない。でも、Xは公認配信者になった――それも突然。
“つべ”1本でやればいい。だが、Xはそうしなかった。
“ミリオンdeil”から何かを提示されたので、そちらに移ったのだ。なぜ? それは多額の契約金ではないだろうか。
Xの行動に不可解さが募り、アンチスレはますます活況を呈する――。
約4000文字
3「8月10日」
202X年8月10日 午前。動画投稿サイト“つべ”にて、1本の動画が投稿される。
タイトルは『今密かに話題沸騰中! クッションの穴にテニスボールを入れるゲーム やってみた』。
『動画内容詳細』
タイトル通りである。痔緩和用の円形で黒いクッションが床に置かれており、中央に開けられた穴に向かってテニスボールを投げ入れるというもの。再生時間は7分もある。
概要欄にはこう記載してある。
『意味のないことを楽しい時間に変換する――これがうちの暇つぶしだ!』
※202X年4月2日にて、Xアカウントの動画投稿機能を用いて投稿した動画のノーカット版です。
この動画の公開コメントを以下に載せる。
・何を見せられているの……?
・需要が分からん。どこ層を狙っているんだ?
・ボールがバウンドする時はとても煩い。でもXの声は小さい。調整してほしい。
・ゴミゲー。
……など。
これを視聴したアンチスレの反応を以下(「」内)に載せる。
(かなり見どころのない動画だったため、暴言注意)
***
「ねえ、クッションの穴にテニスボールを入れる動画みたけど、あれ7分もいるか? 3分位に圧縮しろや」
「3分も見てられねえわ」
「10秒もいらん」
「てか、あれ撮ったのって4月って書いてあるけど、その頃ってXが病んでた時期と被るじゃん」
「だよな、俺も気になったわ」
Xが今のソロ実況をし始めたことの発端は、“慧眼グルド”というとある有名動画投稿者兼、ラジオ風生放送配信者グループを卒業したことである。
“慧眼グルド”は日本のゲーム実況界の黎明期を支えた立役者のうちの1つで、結成以来Xは12年前から活動を続けている実況界の巨匠とも名高いグループに所属していた。グループといっても集団という意味ではなく、実況は2人組のコンビで行っており、その凝縮された笑いのエッセンスと中毒性のあるクオリティの高さから、近年話題沸騰中のゲーム実況ジャンルにて再生数ランキング1位の動画『大乱闘ましゅーず!』は金字塔であり、少なく見積もっても1700万再生はゆうに超えている。
Xはその2人組の一人であったのだ。
ただ、2人しかいないコンビであるにもかかわらず、Xも、その相方であるYも笑いにストイックだったため、活動年数にしては投稿した動画本数は少なめ。5年前から月額有料チャンネルを開設し、週に1回のラジオ風生放送配信を行い、引き続き動画投稿も継続。しかし、30半ばを過ぎて、そのストイックな配信スタイルが牙をむいた。
先にXの精神に不調をきたし始め、ついに202X年1月にXが疲労で入院したという衝撃的な知らせが発表、ファンを震撼させる。Xは4月上旬まで休養に専念し、徐々に生放送に参加するなどして再び日常に馴染んできたかに思えた4月26日、Xの口から“慧眼グルド”の卒業を宣言する。翌月5月2日にはX卒業ライブを敢行し、Yとともに温かく彼を送った――という経緯(いきさつ)がある。
“慧眼グルド”卒業後、今までの活動がストイックだったためか、固く守っていた過去の信条に反発するかのように現在は“つべ”・“ミリオンdeil”双方の概要欄には「実況としてのゆるさ」を掲げて活動を行っている。
「結局ノイローゼって言って“慧眼グルド”の生放送休んで養生してたのに、その裏でこんなつまらない動画撮ってたんだな」
アンチスレには、なおもXが投稿した動画の批評が流れた。
「動画から迸るクソさと相まって、新たなクソ要素が発掘されるなんて朗報じゃねえか」
「満を持して出した感が強いのは分かるが、あんな中身のない動画を今まで温めてたとは思えん。アップする動画が思いつかなくて、つなぎとして新たなう〇こひねり出した感じじゃないの」
「長い、つまらない、聞こえないの糞三拍子揃ってるXさんの動画。
まあ、配信者じゃないからねwww。
ただのおっさんの独り言プレイ動画だから仕方ないよねwwww。せめてアーカイブは何回も再生できるんだから、今の視聴者の総数をぶち抜くくらいの再生数いったれよ信者さんwww」
余談だが、“ミリオンdeil”生放送配信時の視聴者数は平均して800を超えるかどうか。
そして、動画投稿から7時間が経過した段階で、この動画はわずか23回しか視聴されてなかったという。
当時のファンであるX信者――Xアンチと対比して熱狂的過ぎるファンのことを『X信者』と呼んでいた――の数を露骨に示した、何とも言えない再生数である。