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花火の形14
初流
射的屋の列に並んでいると、周りの子どもたちの楽しそうな声や、コルク弾が的に当たる乾いた音が聞こえてくる。志喜を見ると、子どものように目を輝かせて楽しそうな笑顔を浮かべていた。
前の客がお菓子を腕いっぱいに抱えて列を離れる。
「よし、やっと僕たちの番だね。何狙う?」
「んー……あの、大きいぬいぐるみが欲しいな!」
志喜が指さしたのは、一番上の棚に飾られた、あきらかに重そうで取れそうにない大きなぬいぐるみだった。
「ああいうのは大体、台座に固定されてて取れないようになってるんだよ。……まあ、でも安心しろよ。この僕がいるからね。『田舎のゴルゴ』と呼ばれた僕の腕前を見せてやるぜ」
ちょっと格好をつけて弾を込め、銃を構える。
――が、現実は甘くなかった。
パン、パンと弾を弾かれ、気づけば最後の1発まで追い込まれていた。
(くっそ……ここでバシッと落としてカッコいいところ見せたかったのに……!)
ラスト一発を装填する。
一度深呼吸をして、しっかりと的を見つめた。……いや、僕はもう真っ直ぐぬいぐるみは狙わない。
カチャ、と引き金を引く。
勢いよく飛び出したコルク弾は、狙い通りぬいぐるみのすぐ隣にあったプラスチックの瓶を撃ち抜いた。
(ふっ、想定通り……!)
弾かれた瓶が狙い過ちなく大きなぬいぐるみにぶつかり、その勢いでぬいぐるみがバランスを崩してドサッと下に落ちた。
「おおーっ!!!」
周りの客や子どもたちから一斉に歓声が上がる。
店主のおじさんが「参ったな」というように手を叩きながら、ぬいぐるみ拾い上げて差し出してくれた。
「いやぁお見事! 一番難しいやつをよく落としたなぁ小僧! ほら持ってきな、彼女さんを大切にするんだぞー?」
店主は僕たちを完全にカップルだと思っているらしい。まあ、そんな誤解はどうでもいい。
ぬいぐるみを受け取り、そのまま志喜に差し出した。
「はいどうぞ。僕は射的が得意だからさ、欲しいものはちゃんと取れるんだよ。僕はいらないから貰って」
「あ、ありがと……っ」
志喜は顔を真っ赤にしてぬいぐるみを受け取ると、そのまま顔を隠すようにぎゅっと抱きかかえた。可愛すぎるだろ。
「さあ、次はどこ行く? お腹減ったし何か食べようか」
「あ、あの綿あめとか食べたい……っ!」
いつもより一段と大きな声で答える志喜。
(※後で「顔が赤いのを誤魔化そうとして恥ずかしくて声が大きくなっちゃったの!」と教えられた時は、思わず笑ってしまった)
2人で綿あめをかじりながら食べ歩きをしていると、ポツポツと頬に冷たいものが当たった。
「あ……雨……?」
急いで周りを見渡すと、広場の中央に大きな集会用のテントが張られているのが見えた。
「志喜、あっち走ろう!」
急な夕立に追われるように、2人で走ってテントの下へ滑り込む。
同じように雨宿りをしようと大勢の人が押し寄せてきたため、狭いテントの中はすし詰め状態になり、自然と人と人との距離が近くなる。
バチバチとテントの屋根を叩く雨音が、やけに大きく耳に響いた。
その時、不意に誰かの手が僕の腕に触れた。
「あ、すみません――」
謝りながら顔を上げると、そこにいたのは志喜だった。
至近距離で目と目が合い、狭いところで慌てるお互いの顔がおかしくて、思わず2人でクスクスと笑い合ってしまう。
――だが、その次の瞬間だった。
後ろから走って逃げ込んできた人に強く背中を押され、僕は志喜のほうへガクンと倒れ込んでしまった。
(やべっ……!)
咄嗟に志喜の肩を抱きかかえるような形で密着してしまう。
慌てて体を離し、「ごめん!」と謝ろうと志喜の顔を見ると――志喜の顔は耳までみるみるうちに真っ赤に染まっていった。
「ゆ……許さないからね……っ」
打ち付ける雨音に消されそうなほど小さな声で、志喜は消え入りそうに呟いた。