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バゥムクゥヘン・エンドロゥル 第七話
「私が……最低……?」
羽香の冷徹な一言が、光の頭の中で爆音となって響いた。
蛇惡の頬から流れる赤い血と、クラスメイトたちの怯え、軽蔑、拒絶の視線が光を取り囲む。
「違う……違う! 私は、私は誰も傷つけるつもりなんて……!」
言い訳をしようとした光の視線が、床に伏せて泣いている蛇惡の顔に向いた。その瞬間、光は見てしまった。蛇惡が髪の隙間から、にやりと、見たこともない邪悪な笑みを浮かべて自分を見下しているのを。
(|嵌《は》められた――ッ!!)
すべてを理解した瞬間、光の中で何かが完全に弾けた。
絶望は一瞬で純粋な「殺意」へと裏返る。
「柊……お前がああああああ!!」
光は絶望の叫びをあげながら、手に持ったハサミを再び振り上げた。今度は脅しではない。狂気に染まった目で、本気で蛇惡の胸元へと突き出す。
「ひっ……!?」
その瞬間、蛇惡の顔から余裕の笑みが消え失せた。
計算ずくだったはずの舞台の上で、光が自分の想像を遥かに超える「本物の怪物」に変貌したのだ。初めて感じる本物の死の恐怖に、蛇惡は蛇の髪飾りをガタガタと震わせ、声を失って這いつくばった。
ハサミの刃が蛇惡の喉元に迫る――。
--- 「――そこまでにしなよ、闇宮さん」 ---
ドス、と鈍い音が響いた。
いつの間にか二人の間に割り込んでいた羽香が、光の手首を容赦なく掴んで止めていた。地面から五ミリメートル浮いたままの羽香の身体は、微動だにしない。
「……離せ、光野! そいつが、そいつが全部仕組んだんだ!!」
「もう見苦しい言い訳はやめて。……柊さんも、もう演技はやめたら?」
「え……?」
羽香の冷え切った言葉に、光だけでなく、床で震えていた蛇惡も凍りついた。
羽香は完全に感情の消えたガラス玉の瞳で、見下ろすように蛇惡を睨みつけていた。
「柊さん。あなたが裏で私と光ちゃんにどんな嘘を吹き込んでいたか、あなたのその醜い顔を見て、今やっと全部繋がったよ」
ツインテールの羽の髪飾りが、禍々しい黒色に変色していく。
心を失い、ただ「上の空」だったはずの羽香が、二人の歪んだ悪意を目の当たりにしたことで、冷徹な復讐者として覚醒しようとしていた。
第七話 END
第七話…。来ちゃったよ…。さあ、上の空だった羽香ちゃんは、この後どうなるのか⁉
自作にご期待くださぁい‼