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ひだまりの処方箋
「緊張せんでも大丈夫やで。喋りたくない時は、ぼーっとしてるだけでも立派な治療やからな」 精神科医の川西拓実は、長年染みついた関西弁で、いじめに怯える17歳の少女・ここなに優しく微笑みかけた。
「帰り道、コンビニで一番好きなアイスでも買うて帰り? 拓実ドクターからの業務命令な」 彼の温もりに触れ、ここなは頬を赤らめ、消え入りそうな声で「ありがとうございました」と告げて診察室を後にした。
――それが、彼女との最初で最後の会話になった。
数日後、彼女が自ら命を絶ったという報せが届く。 「俺がSOSを見落としたんや!」と激しく泣き崩れる拓実のもとに、遺族から一冊の日記が届いた。そこには、彼女の最後の本音が遺されていた。
『先生の関西弁、すごくあったかかった。世界は怖いことばかりじゃないって思えた。ありがとう』
「あの日、嬉しそうにアイスを食べて帰ってきたんです。あの子の最期は絶望だけじゃなかった」と母は泣いた。
拓実は日記の文字を愛おしそうになぞり、新たな決意を胸に前を向く。 「ここなさん、俺、命懸けでみんなの心、守っていくからな」
診察室に差し込む光は、あの日と同じように優しく、拓実の背中を包んでいた。