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Ⅷ「評論」
昼休みの食堂にて。
やわらかな陽射しが窓から差し込み、テーブルには箸やスプーンの反射が揺れている。
「ほら、言ったでしょう。蒼玉の王子様が一番なのよ」
日頃からシュウのことを紳士の模範と評しているユミの発言である。
同じテーブルに座るチカゼ以外のA組女子がうんうんと頷く。
シュウは生徒会の仕事があるらしく、昼休みになると名残惜しそうに去っていった。
チカゼは適当に相槌を打つ。
デミグラスソースのかかったオムライスを黙々と口へ運ぶ。
卵のふんわりとした優しさと、デミグラスの濃厚な旨味が広がり、口の中で絶妙に絡み合う。
ユミ達は、食よりも転校生に関する噂話に夢中になっている。
女子同士の会話は途切れることなく続き、彼女たちの手元の食事は、ほとんど減っていない。
聞こえてくるのは、ありがちな評価の羅列だ。
「初めは緊張してらっしゃるんだわと思ったけれど、ずーっと無表情で」
「寧ろ不機嫌そうな……挨拶しても、そっけないし」
「騒がしいのがお嫌いにしても、辛い反応だわ」
初日だが、グレンはクラスメイトの約半数から早々に嫌われ始めていた。
彼は終始どこか深刻そうな顔をしていた。
口元は固く、視線は遠くを睨むようで。
誰にどう話しかけられても表情が和らぐことはなく、彼と周囲の間にはまるで分厚い壁が存在するかのようだった。
シュウの王子対応を見慣れたチカゼにとっては、露骨な態度がむしろ新鮮であり、清々しさすら感じられた。
(……彼の目的は、十中八九、庭の中央に封印されている違法な魔道具)
事件直後の庭園の有様からして、察するのは簡単だった。
焦げた芝生の匂い、黒く炭化した石畳を、今でも鮮明に思い出せる。
チカゼやシュウだけでなく多くの人が、不審者は禁庫の中にある魔道具を盗みにやって来て、失敗したのだと理解した。
(だからってどうして、生徒になるのかしら)
ただ、紅い眼光の先にある物が焼けるのではないか、と思えるほど、彼は不服な様子だった。
「カッコいい、より、コワい、が勝るのよ」
「危ない人じゃないよね?」
それがほぼ、グレンに対するクラスメイトの感想。
それは正しい感想だと、チカゼは思った。
彼は実際、中庭で初代学園長像にヒビを入れた張本人であり、安全とは言い切れない。
(でも、グレン君が生徒になったのは、ある程度の安全性が保障されているからだ)
学園がやすやすと問題児を生徒にしたのだとは思えない。
第一、そのような大人が学園にいるとは思いたくなかった。
(知りたいなら、私が自ら確かめればいい)