この学校は、きっと何かがおかしい。
これは、わたしの学校生活を綴ったモノ。
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目次
【淡本町私立淡本中学校:1限目】登校、警鐘。
...田舎の中学校だから、当然なのかもしれないが。
クラスは学年ごとにひとつのみ。人数も極めて少ない。
私は、ちらりと横目で周りのクラスメイトの顔を伺う。
どの子も、どこか具合が悪そうな、暗い表情をしていた。
なぜそんな顔をしているのか、自然と理解できた気がする。
そう、この中学校はど田舎育ちの私でもわかるほどに
何かが絶対におかしかったから。
その理由は、まだわからない。
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ガラガラ、と若干建付けの悪いドアが鳴いた。
入ってきたのは、若い...いや、若いというより、もはや高校生なのでは。
そう疑ってしまうほどに、少女のような容姿をした女性。
スーツを着用しているということは、教師なのだろうか。
彼女は教卓の前に立ち、私たちの方を向いた。
だがその視線はウツロで、目が合うようで合わない。
「皆さんの担任になりました、北マツビです。どうぞ呼びやすい呼び方で。
担当教科は理科と数学です。分からないことがあれば、気軽に聞いてください」
そう機械的に告げたあと、楽しいクラスにしましょうねと
決まり文句のようなものを添え、北先生は軽く会釈をする。
釣られて、私たちも頭を下げた。
不意に、何かを思い出したかのように
北先生がぽんと手を叩いた。
「そうだ、自己紹介。皆さん、忘れないうちに自己紹介しましょう」
そう言った後に、先生は口元に細くて白い人差し指を当てた。
黒い瞳はやはり視線を掴めず、ぬらりとした光沢を帯びている。
「ですが、本名を教えてはいけませんよ。名前は大切なものですから」
大切だからこそ、教えるのではないだろうか。
予想外の発言に、わたしは戸惑いの色を隠せなかった。
他のクラスメイトも同じ様子で、まさに混乱状態といった様子。
偽名を考えろ、という意味なのだろうか。
全員、必死に考えているようだ。
少し経った頃、北先生が手を叩いた。
シンキングタイム終了。それを知らせる合図だった。
「遅くなってはいけませんから。まず、あなた」
「は、花子です!」
そう言って、涙目で女子生徒が立ち上がった。
きっと、いい名前が浮かばなかったのだろう。
立たなくて結構ですよ、そう先生に言われ、花子ちゃんはまた涙目で勢いよく座った。
他にも次々と名前を聞かれ、全員が適当な偽名を答えた。
そして、わたしの番が回ってきた。
どうしよう、私は何も思いついていなかった。
「次、あなた」
必死で頭を回す。だって、きっと3年間使われる名前。
悔いのないように決めたかった。
せめて、なるべく今の名前に近い名前を...
「あなたの、なまえは?」
「...あ.........」
急かすような、その一言。
黒い瞳で見つめられると、身体中の細胞が静止してしまったかのように
身体のどこも動かすことができなかった。
口から出た言葉は、喘ぎにも似た呼吸だけ。
だが、北先生はそれを名前だと認識してしまった。
「...独特な名前ですね、”あ”」
「......!」
そう言って笑う北先生を見て、私の額に嫌な汗が伝った。
このひとは、何かがおかしい。
そうだ、このひとには何もない。
中身がない。ただの器...?
だからだ、どこを見ているのかもわからない。何を考えているのかも...
...北先生の周囲を浮遊している、
天使の羽が生えた目のオブジェクトと目があった。
多分、こっちが北先生。
教師名簿[北マツビ]
右目が髪で隠れた、小柄な教師。
多分この学校で一番頭が良く、A先生のメンテナンスを任されている。
白髪に赤色のメッシュが入っているのが特徴。
...実は彼女の周りを浮遊しているオブジェクトこそが北先生。
生徒はメカクレの方を北先生だと認識している。
教員はみんなそのことを知っていながら、生徒には話さない。
身長:154cm(メカクレ)10cm(北先生)
体重:46kg(メカクレ) 200g(北先生)
性別:女性(メカクレ) 不明。そもそも性別ある?(北先生)
年齢:下手すれば18歳前後に見える(メカクレ) 不明(北先生)
性格:わからん。何こいつ?????
備考:たまにメカクレだけで歩いてる。怖い。
【淡本町私立淡本中学校:2限目 】不具合、それにまつわるハルシネーション。
自己紹介が終わり、北先生が何やら話している。
だが、今のわたしには全く耳に入ってはこなかった。
ずっと、あの目に見られているような不安感が拭えない。
もしかすると、これは気がつくべきではないことだったのかもしれない。
それどころか、タブーとされる部類のものに触れてしまったのかもしれない。
きっと、目に見られているのも勘違いではない。
冷や汗が止まらず、きっと周囲から見れば私は具合が悪そうだったのだろう。
隣の席の男子生徒が、大丈夫かと声をかけてきた。
確か...名前はカラと言ったか。
カラ君は、中1にしては背がとても高く、わたしより頭2つ分程度高い。
きれいな銀髪は肩口で雑に切りそろえられていて、中性的な雰囲気を感じさせる。
「本当に具合悪そうだけど。絶対保健室行ったほうがいいって」
「いや、大丈夫...」
「北先生!えっと、この子が具合悪そうで。保健室ってどこですか!」
カラ君は、勢いよく手を上げてそう言った。
北先生は少しわたしの顔色を見てから、保健室の場所を伝える。
「下駄箱がありますね。まずそこに行って、そこから右に進んでいくと職員室です。
そして職員室の右隣が保健室です。”あ”さん、顔色がとても悪いので、よく休んでくださいね」
「は、はい」
そう言われ、わたしは椅子から立ち上がった。
が、たちくらみが酷く、すぐには動き出すことができなかった。
「キミ、ひとりで行ける?なんならおれも...」
「いや...!そんなの申し訳ないから...」
ふらふらとした足取りで、わたしは教室を後にした。
こんなときでもやはり扉は不快な音を立て、わたしの精神をひどく逆立てた。
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なんとか保健室の前までついた。
わたしは、少し震える手で真っ白な扉をノックする。
すると、間を置かずにすぐ扉が開いた。
出てきたのは、端正な顔立ちをした男の人。
この人が養護教諭の人なのだろうか、男性は珍しい...と思う。
肌は白衣と同じくらい真っ白で、まるで白雪姫のよう。
金色の髪は、毛先から赤いグラデーションがかかっていて、
ベリーショートくらいの長さ。若干クセ毛なのか、所々で毛がはねている。
「君は、一年一組の......これ、名前?」
恐らく、”あ”という偽名のことを指しているのだろう。
私だって、これが名前だと認めたくはない。
ここは否定すべきだ。
「いえ...違います。本当はもっとちゃんとしたのを付けたくて...」
「もたもたしていたら、北先生にやられたんだね。
彼女は、そういうところがあるから...前にも似たようなことをしていたよ」
「変更とか、出来ないんですか?」
私の問いに、彼は手を顎に当てて考える素振りをする。
何か、この名前をどうにかすることができるかもしれない。
そう思い回答を待ってみたものの、第一声は”ごめんね”だった。
「申し訳ないけど、それはもう変更が出来ないんだ」
「そうですか...」
「あだ名、ということであれば擬似的な変更は可能だけど」
「...!本当ですか...!」
それを聞いて、わたしは少しほっとしたと同時に、
今まで気張っていた分力が抜けてしまったようだ。
足に力が入らなくなり、倒れ込みそうになる。
それをすかさず先生が受け止めてくれた。
「君、大丈夫かい?少し横になったほうがいい、今運ぶから」
そう言って、先生はわたしを軽々と持ち上げてみせた。
そういえば、このひとは身長も高い。180以上あるのではないだろうか。
私は、少しの安心感を覚えた。
保健室の先生というのは、きっとそういう雰囲気を持ち合わせているのだろう。
だが、何か肩のあたりに違和感がある。柔らかいものが当たっているような...
見ると、北先生よりは小さいものの、
世間一般的に見れば”巨”の部類に入ると思われる胸が。
でも、声は明らかに男性だった。手も骨ばっていて男性らしい...このひとは一体?
そう考えていると、それを見透かしたかのように先生が口を開いた。
「私は旧量産型タイプA。気軽にA先生とでも呼んでくれたら嬉しいよ」
「旧量産型...?」
「こう見えても、私は医療用ロボットなんだ。昔は量産可能な個体だったんだけど、
工場の老朽化だったり資源の高騰だったりで、もうタイプAは私が最後の1体だ」
このひとが、ロボットなんて。
言われても信じられないほどに、人間そっくりだと思った。
性別についても、ロボットなら納得がいく。
きっと、男女問わずに安心感を与えるため、両性という形でデザインされたのだろう。
一通り謎が解けた私は、先程運んでもらったベッドの上でため息をついた。
なかなかに疲れる1日だ、正直早く家に帰りたい。
「そういえば、具合が悪くなった原因に心当たりはあるかな。
カルテに書かないといけないんだ」
そう言いながら、A先生がくるりと椅子を回転させて
こちらの方を向いた。その姿は、何気ない行動なのにも関わらずすごく絵になる。
わたしはすこしドキドキしながらも、ひとつしかない心当たりを話すことにした。
話すべきではない、とは考えなかった。
きっと、冷静な判断を欠いていたのだろう。
「あの、北先生のことで...北先生って」
そこまで言いかけたところで、急に立ち上がり駆け寄ってきた
A先生に口を塞がれた。きっとタブーだったんだ、そう思い、軽率な行動を後悔した。
先生の力は強くなかった。ただ、わたしの口から
こぼれ出そうだった言葉のみを押し返すようだった。
「言っちゃダメだ...校長は、いつ会話を聞いているのか分からないから...」
「すっ、すみません...」
「大丈夫...君が謝る必要は無いんだ。ただ、ここの教師について
何か変だと感じることがあっても、絶対に口に出してはダメだ」
...やはりここは、普通ではないのだろう。
変なことばかりで、ずっと保健室にいたいくらいだ。
わたしのことを庇ってくれた。
A先生は、きっとまともなひとだ。
「先生、ひとついいですか」
「...何だい?」
「この学校は、なんですか?」
バチッ、と一際大きい電子音が聞こえた。
一瞬先生の目が赤色に光ったが、本人はそれを気にせず、
はたまた何も知らずに口を開いた。
「当然...ただの中学校だよ」
教師名簿[旧量産型タイプA]
毛先から赤いグラデーションがかかった金髪が特徴の、背が高い養護教諭。
北先生に度々メンテナンスをしてもらっているが、忘れっぽいのが悩み。多分ギガ足りてない。
美人揃いの淡本中学校でも、かなり上位に位置する容姿の持ち主で、
さらに両性ということから一部の男女に熱狂的な人気がある。ちなみに名前はAだが胸はEカップ。
体育の教師がシャトルランしかできないバカであるため、保健の授業も担当している。
昔この学校で問題を起こして初期化されたらしい。
身長:182cm
体重:82kg
性別:両性
年齢:前回の初期化から6ヶ月
性格:思いやりが強く、優しい性格。…とプログラムされている。
備考:実は西先生の専属医だったり。
【淡本町私立淡本中学校:3限目】探検、露出する異常性。
学校探検...3限目の内容は、それだった。
学校内のマップが手渡され、北先生を先頭に校舎内を見て回る。
まず、北先生は1年1組の教室の隣にある空き教室を見せた。
「ここの教室は使われていないので、着替えなどの際に使用します。
ですが、放課後にはあまり立ち入らないようにしてくださいね」
「先生、それはなぜですか?」
カラくんが手を上げ、そう質問した。
この子は、空気が読めないタイプなのだろうか。
悪い子ではないのだが...
この学校の異常性を、嫌というほど肌で感じている勘のいい女子生徒はもちろん、
他の男子生徒までが彼を変な目で見る。
そんなの聞いてどうするんだ、ろくな答えは返ってこないぞ、と。
「それは...どこにでも、見てはいけないものというのがあるからです」
やはり、先生の口から出てきたのはそんな返事。
それでは、次に行きましょう。そう言って、また歩き出した。
次に、北先生は職員室の前で止まった。
2回軽くノックをして、扉を開ける。
「みなさんも、もし職員室に用事がある際はノックを忘れないように。
まぁ...よほど緊急の場合なら、ノックをしない程度どうということはありませんが」
少し、他の教師の方も紹介しておきましょう。
そう言って、職員室にいた教師を呼んできた。
「こちらが西先生、国語の教師の方です」
「...」
西先生は一言も喋らず、胸ポケットからメモ帳を取り出す。
そして机の上で何かを書いてから、私たちに見せた。
...達筆すぎて読みづらいが、恐らく書いてある文字は”よろしくお願いします”。
「西先生は喋るのが苦手なので、基本筆談です」
一言も喋らず、包帯やガーゼなどがあてられた頭や頬。
そして、切断されたように綺麗さっぱりなくなっている右手にも、
同様に包帯が巻かれていた。
私は、改めてこの学校は異常だと感じた。
日常生活もままならないような怪我なのに、働かせるなんておかしい。
普通、休みを与えるはずなのだから。
「こちらが南先生、社会の教師です」
「よ、よろしくお願いします...えへへ」
明るい黄土色の髪の毛を、二本に束ねた女性教師。
この人は、特に何もおかしい部分がない気がする。
むしろ、私が見た教師の中で1番人間味がある。
「これで、以上になります」
「英語の先生や、体育の先生は?」
またしても、カラくんが質問した。
「お二人とも、今日はお休みなんですよ」
そう北先生が言うも、それ抜きにしてもこの教師の少なさはおかしい。
だって、こんなにも広い職員室に、椅子が5個しかなかったのだから。
そこには特に触れることもなく、次に連れられたのは保健室。
2限目に私がお世話になった、A先生がいる場所だ。
「ここは保健室です。具合が悪くなったら、ここに来てくださいね。
具合が悪くなくても、悩みがあるのなら彼に聞いてもらうといいでしょう。
...A先生、いらっしゃいますか?」
北先生がそう尋ねると、A先生が扉を開けて出てきた。
「A先生、お時間大丈夫でしょうか」
「構いませんよ」
改めて見ても、A先生はものすごく背が高い。
背が小さめの北先生は、首を痛めてしまいそうな角度でA先生を見ている。
「A先生はこう見えて医療用のロボットです。
両性タイプですので、女子の方も男子の方も安心して悩みを話していただけます」
「よろしくお願いします」
そう言って、A先生は軽く会釈をする。
女子も男子も、若干ざわついているのが聞こえた。
この学校は異常性だけでなく、教員の顔面偏差値も目立っていたりする。
男子生徒は北先生、女子生徒は西先生に若干ざわついてはいたが...
A先生はその中でもひときわ美形だ。
そんなことは置いといて、次は校長室に向かっているようだ。
北先生は、校長室の扉を2回ノックする。
すると、中から出てきたのは若い教師。
糸目の男性で、長い黒髪を束ねている。
「皆さん、こちらが校長先生です」
私たちは、そう言われた瞬間目と耳、いや五感のすべてを疑った。
こんな20代前半に見える人が、本当に校長なのだろうか。
「みんなよろしくー」
テンションも軽く、この人が校長であることが
心配になるほどだった。
多分、この学校の異常性の元凶はこの校長だ。
教師名簿[校長]
校長なので、名前も校長であるのは当然。校が名字で長が名前???
校長のくせにこの学校の教師陣で最年少。
本人はちょっぴりそれを気にしているらしく、話し方を若干爺臭くしている。
A先生をゴミ捨て場から拾ってきたり、国語教師を保護してきたりなど、
ここの教師は校長に恩がある人が多い。
身長:175cm
体重:63kg
性別:男性
年齢:23歳、若過ぎ。
性格:明るくフレンドリー。
備考:資格とか持ってなさそうだよね???