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【淡本町私立淡本中学校:2限目 】不具合、それにまつわるハルシネーション。
自己紹介が終わり、北先生が何やら話している。
だが、今のわたしには全く耳に入ってはこなかった。
ずっと、あの目に見られているような不安感が拭えない。
もしかすると、これは気がつくべきではないことだったのかもしれない。
それどころか、タブーとされる部類のものに触れてしまったのかもしれない。
きっと、目に見られているのも勘違いではない。
冷や汗が止まらず、きっと周囲から見れば私は具合が悪そうだったのだろう。
隣の席の男子生徒が、大丈夫かと声をかけてきた。
確か...名前はカラと言ったか。
カラ君は、中1にしては背がとても高く、わたしより頭2つ分程度高い。
きれいな銀髪は肩口で雑に切りそろえられていて、中性的な雰囲気を感じさせる。
「本当に具合悪そうだけど。絶対保健室行ったほうがいいって」
「いや、大丈夫...」
「北先生!えっと、この子が具合悪そうで。保健室ってどこですか!」
カラ君は、勢いよく手を上げてそう言った。
北先生は少しわたしの顔色を見てから、保健室の場所を伝える。
「下駄箱がありますね。まずそこに行って、そこから右に進んでいくと職員室です。
そして職員室の右隣が保健室です。”あ”さん、顔色がとても悪いので、よく休んでくださいね」
「は、はい」
そう言われ、わたしは椅子から立ち上がった。
が、たちくらみが酷く、すぐには動き出すことができなかった。
「キミ、ひとりで行ける?なんならおれも...」
「いや...!そんなの申し訳ないから...」
ふらふらとした足取りで、わたしは教室を後にした。
こんなときでもやはり扉は不快な音を立て、わたしの精神をひどく逆立てた。
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なんとか保健室の前までついた。
わたしは、少し震える手で真っ白な扉をノックする。
すると、間を置かずにすぐ扉が開いた。
出てきたのは、端正な顔立ちをした男の人。
この人が養護教諭の人なのだろうか、男性は珍しい...と思う。
肌は白衣と同じくらい真っ白で、まるで白雪姫のよう。
金色の髪は、毛先から赤いグラデーションがかかっていて、
ベリーショートくらいの長さ。若干クセ毛なのか、所々で毛がはねている。
「君は、一年一組の......これ、名前?」
恐らく、”あ”という偽名のことを指しているのだろう。
私だって、これが名前だと認めたくはない。
ここは否定すべきだ。
「いえ...違います。本当はもっとちゃんとしたのを付けたくて...」
「もたもたしていたら、北先生にやられたんだね。
彼女は、そういうところがあるから...前にも似たようなことをしていたよ」
「変更とか、出来ないんですか?」
私の問いに、彼は手を顎に当てて考える素振りをする。
何か、この名前をどうにかすることができるかもしれない。
そう思い回答を待ってみたものの、第一声は”ごめんね”だった。
「申し訳ないけど、それはもう変更が出来ないんだ」
「そうですか...」
「あだ名、ということであれば擬似的な変更は可能だけど」
「...!本当ですか...!」
それを聞いて、わたしは少しほっとしたと同時に、
今まで気張っていた分力が抜けてしまったようだ。
足に力が入らなくなり、倒れ込みそうになる。
それをすかさず先生が受け止めてくれた。
「君、大丈夫かい?少し横になったほうがいい、今運ぶから」
そう言って、先生はわたしを軽々と持ち上げてみせた。
そういえば、このひとは身長も高い。180以上あるのではないだろうか。
私は、少しの安心感を覚えた。
保健室の先生というのは、きっとそういう雰囲気を持ち合わせているのだろう。
だが、何か肩のあたりに違和感がある。柔らかいものが当たっているような...
見ると、北先生よりは小さいものの、
世間一般的に見れば”巨”の部類に入ると思われる胸が。
でも、声は明らかに男性だった。手も骨ばっていて男性らしい...このひとは一体?
そう考えていると、それを見透かしたかのように先生が口を開いた。
「私は旧量産型タイプA。気軽にA先生とでも呼んでくれたら嬉しいよ」
「旧量産型...?」
「こう見えても、私は医療用ロボットなんだ。昔は量産可能な個体だったんだけど、
工場の老朽化だったり資源の高騰だったりで、もうタイプAは私が最後の1体だ」
このひとが、ロボットなんて。
言われても信じられないほどに、人間そっくりだと思った。
性別についても、ロボットなら納得がいく。
きっと、男女問わずに安心感を与えるため、両性という形でデザインされたのだろう。
一通り謎が解けた私は、先程運んでもらったベッドの上でため息をついた。
なかなかに疲れる1日だ、正直早く家に帰りたい。
「そういえば、具合が悪くなった原因に心当たりはあるかな。
カルテに書かないといけないんだ」
そう言いながら、A先生がくるりと椅子を回転させて
こちらの方を向いた。その姿は、何気ない行動なのにも関わらずすごく絵になる。
わたしはすこしドキドキしながらも、ひとつしかない心当たりを話すことにした。
話すべきではない、とは考えなかった。
きっと、冷静な判断を欠いていたのだろう。
「あの、北先生のことで...北先生って」
そこまで言いかけたところで、急に立ち上がり駆け寄ってきた
A先生に口を塞がれた。きっとタブーだったんだ、そう思い、軽率な行動を後悔した。
先生の力は強くなかった。ただ、わたしの口から
こぼれ出そうだった言葉のみを押し返すようだった。
「言っちゃダメだ...校長は、いつ会話を聞いているのか分からないから...」
「すっ、すみません...」
「大丈夫...君が謝る必要は無いんだ。ただ、ここの教師について
何か変だと感じることがあっても、絶対に口に出してはダメだ」
...やはりここは、普通ではないのだろう。
変なことばかりで、ずっと保健室にいたいくらいだ。
わたしのことを庇ってくれた。
A先生は、きっとまともなひとだ。
「先生、ひとついいですか」
「...何だい?」
「この学校は、なんですか?」
バチッ、と一際大きい電子音が聞こえた。
一瞬先生の目が赤色に光ったが、本人はそれを気にせず、
はたまた何も知らずに口を開いた。
「当然...ただの中学校だよ」
教師名簿[旧量産型タイプA]
毛先から赤いグラデーションがかかった金髪が特徴の、背が高い養護教諭。
北先生に度々メンテナンスをしてもらっているが、忘れっぽいのが悩み。多分ギガ足りてない。
美人揃いの淡本中学校でも、かなり上位に位置する容姿の持ち主で、
さらに両性ということから一部の男女に熱狂的な人気がある。ちなみに名前はAだが胸はEカップ。
体育の教師がシャトルランしかできないバカであるため、保健の授業も担当している。
昔この学校で問題を起こして初期化されたらしい。
身長:182cm
体重:82kg
性別:両性
年齢:前回の初期化から6ヶ月
性格:思いやりが強く、優しい性格。…とプログラムされている。
備考:実は西先生の専属医だったり。