――自分は、恋愛なんてしないと思っていた。ただ、あの子にあうまで。
高校一年の桜宮怜は自分は恋愛ができないと思っていた。だが、ある日を境に少しずつ恋心が芽生えて⋯⋯!学園モノ✕和風ファンタジーBL!
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目次
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*昔々のその昔。|時雨《しぐれ》という|狐神《こしん》が丁度1000年生きた年、とある神社に後の|怜《れい》と|灯《あかり》の先祖にあたる|男巫《おとこみこ》が居た。彼は|犬神《いぬがみ》の|番《つがい》を持っていた。犬神が暴走したときも彼が事を収めたものだ。そんな子孫たちはどこで間違えてしまったのだろうか⋯。*
序章
自分は恋愛なんてしないと思っていた。ただ、あの子に会うまで。
僕は昔っから恋愛なんてしてこなかった。中3のときなんか、卒業式の後に告白したりとか、そういうのが出来るのが逆に羨ましく、感じていた。恋心を抱くとか、アノコが可愛いとか、そういうのもあまり感じられなかった。なぜかは自分でもわからない。ただ、これだけは言える。みんなには普通に見える世界が、きっと、僕にとってはキラキラして見えて、でも今はモノクロの世界ってこと。
「これだからモテないんですよ」
と、灯さんにもからかわれていた。
でも情況が変わった。
転校生が来た。僕はその子に恋をした。
壱
今日も家の神社の境内の掃除をしていた。手伝いで神社の巫女をしている。男でも巫女ができる神社なのだ。落ち葉を竹箒ではいていたらお客さんがきた。見かけない人だなと思っていたら、最近転校してきた子だった。たしか、犬神もみじだっけ?そんなことを考えていたら、彼が聞いてきた。
「お前、ここでバイトしてんのか?」
「うん。そうだよ、ってまぁ家の手伝いなんだけどね。」
僕が答える。「へえ〜。」という彼。
「どこかに出掛けていたの?」
「いや。この辺に神社があるって聞いた。そんで見に来た。」
「見に来たってどういうこと?」
「俺の実家がここの御本宮だから。」
「へえ〜。」
知らなかった。実家ってことは⋯。
「今って一人暮らし?」
「あぁ。そうだけど?」
久しぶりにこんなに人と話をした。どうしてだろう⋯。今めっちゃどきどきしている⋯。この気持ちはなんだろう⋯。いやいやでも⋯。相手も男だし⋯。よし、ここは冷静を装って⋯。そんなことを考えていたら、
「じゃ、俺帰るわ。」
「う、うん。じゃぁまた明日。」
帰っちゃうんだと少しさみしく思いながら、もみじが階段を下っていくのを見送る。明日少しだけ話してみようかななんて思っていた。
翌日昨日あったことを思い出しながら、僕は学校にむかっていた。学校につくと今日も、もみじくんはみんなに囲まれて話している。その無邪気な笑顔が、いつもより輝いて見えた。昨日みたいな感情が湧いてくる。
なんで⋯。こんなことに⋯。見られたらよけいに⋯。顔が赤くなる。
「おい。大丈夫か?」
「ひゃぁ!」
やばい、やばいやばいやばいやばい!見られた⋯。更に顔が赤くなるのを感じる。単に恥ずかしいだけじゃない。逃げないともみじに飲み込まれてしまいそうだったから。
「な、なんでもない。なんでもないよ。」
「なんでもないって、お前、顔赤いぞ。」
「大丈夫だから⋯。ごめんね!」
「おい!待てって!」
教室から勢いよく抜け出す。誰もいない場所へ⋯。
はぁ⋯。はぁ⋯。結局屋上まで来ちゃったよ⋯。これからどうしよ⋯。
「おい!」
誰かが僕の手首をガッと掴む。僕は振り向いた。それはもみじくんだった。
「え!どうしてここにいるってわかったの?」
「えっと⋯それは⋯そ、そんなことより、急に逃げ出すなよ⋯!俺がなんかしたんだっだらよ、な、なんかごめんな。」
「ううん。僕もごめん⋯。急に逃げ出したりして。」
「⋯今日はこれからどうすんの。」
「あっ⋯。確かに⋯授業、忘れていた⋯。」
「今更戻ったってどーすんだよ。言い訳できんのか?」
もみじが少し意地悪そうに笑った。手首をまだ放してもらえない。なんならさっきより掴む力が強くなった気がする。
「っ痛いよ⋯。ちょっと放して⋯。」
「いいじゃん。このままで。いい場所教えてやるよ。」
弐
旧校舎の廊下、少しひんやりするこの廊下を歩く人影が二人。
「ねぇ、どこ行くの?」
「ん?俺の秘密の場所。」
しばらく僕の手首を掴んだまま、たどり着いた場所は空き教室だった。扉を開けて中に入る。
「ここならバレねーだろ。」
「いいの?勝手に入って?」
「いいんだよ。ここならぜってーバレねーから。」
手首を放してもらえたと思ったら、もみじが僕のことを押し倒す。
「な、なに?」
「⋯お前のその瞳きれーだな。」
僕も、もみじの瞳を見ているとなにか侵食されそうな、そんな気がする⋯。
そしたら急に頬にキスしてきた。更にもみじの指がシャツの隙間に滑り込む。
あ、熱い⋯。
冷たい床のはずなのに彼に触れられているとまるで火が付いたかのように、僕の理性を奪っていく。
「ほんとは俺に壊してほしいんだろ。⋯なぁお前のハジメテ奪っていいか?」
彼の瞳が、暗闇の中に獣のようにギラついた。僕の思考は真っ白になる。
(あぁ気づかなかった。そういうことか。僕は誰のことも好きにならないんじゃなく、もみじくんだけを好きになるためだったんだ⋯。)
彼は首筋に噛みつくような重い、キスをした。僕はもう何もできなくなってしまった。
「⋯怜。もう俺なしじゃいられなくしてやるよ。」
耳元で囁かれたこの言葉は、どんなスィーツよりも甘く聞こえた。これから自分は壊れるんだと感じた。頬に涙が伝う。その涙は壊されて嬉しい涙なのかもしれない。
床は冷たいはずなのに熱く感じる。
嘘、嘘だよ。そんなことはない。で、でも本当は?きっと、いや確実にそう。
静かな教室に、僕の心臓の音が鳴り響く。
「いいよ。僕のこと、壊してよ。」
「⋯怜、ここ触られると可愛い声出すんだな。」
もみじは意地悪く笑う。
「他人に興味ねーとか言っておきながら、こんな体は素直じゃねーか。⋯もっと俺のこと見ろよ。逃げんな。」
顔を向けさせられ、もみじの吐息が聞こえる。僕らしか知らない、逃げ場のない空き教室で、怜は、自分の恥じらいが、もみじによって消えていくのを感じた。
もみじが怜の鎖骨に、わざと深く歯を立てた。痛みに小さく悲鳴を上げると、もみじはその痕を愛おしそうに見る。
「これ、明日には赤くなるな。親に見つかったらどーすんだ。まぁ怜ならうまく誤魔化せるよな。」
怜が必死になって、もみじを振りほどき、身なりを急いで直し、そのまま帰ってしまった。
取り残されたもみじが意地悪そうに笑って独り言を言った。
「⋯アイツはもう俺無しじゃぁ生きられないな。」
参
桜宮神社に戻ってきたのはいいんだけど⋯。どぉしよ⋯。灯さんがいる⋯。
「お帰りなさい。」
灯さんが僕のことを見つけて、やってきた
「あっうんただいま⋯。」
「どうなさったんですか。」
灯が怜の首筋を見て言う。
「そういうことか⋯。」
「なんか言った?」
「いえ。なんでもありません。それより早く着替えてください。今日は僕しか居ないので。」
怜は更衣室に行く。
「やっぱりあの時に伝えておくべきだったな⋯。」
灯が呟いた。
怜が更衣室で巫女装束に着替えていると、灯が来た。
「怜くん。襟、曲がってますよ。自他ともに綺麗に和服を着こなせる怜くんがこんなことあるんですね。」
そういって灯が怜の襟を直す。
「⋯その〝痕〟どうしたんですか?」
「あっ⋯えっと⋯。なんでもないよ。なにかに噛まれただけ⋯。ってちょっと!!また開けるの!ピアス、開け過ぎだよ!」
「ふふ。ごめんねぇ。あんまり気にしないでくださいよ。」
「気にするよ!!」
「怜がそんなことしなければいいんだがな⋯。」
「またなんか言った?」
「言ってないですよ。そんなに言うのなら⋯。」
灯が怜にキスをする。
「もぉ〜灯さん!なんでするの!」
怜が更衣室を出ていった。
「⋯それは、貴方のことが好きですから⋯。」
怜に聞こえないように灯が言った。
肆は制作中です。お楽しみに。