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弐
旧校舎の廊下、少しひんやりするこの廊下を歩く人影が二人。
「ねぇ、どこ行くの?」
「ん?俺の秘密の場所。」
しばらく僕の手首を掴んだまま、たどり着いた場所は空き教室だった。扉を開けて中に入る。
「ここならバレねーだろ。」
「いいの?勝手に入って?」
「いいんだよ。ここならぜってーバレねーから。」
手首を放してもらえたと思ったら、もみじが僕のことを押し倒す。
「な、なに?」
「⋯お前のその瞳きれーだな。」
僕も、もみじの瞳を見ているとなにか侵食されそうな、そんな気がする⋯。
そしたら急に頬にキスしてきた。更にもみじの指がシャツの隙間に滑り込む。
あ、熱い⋯。
冷たい床のはずなのに彼に触れられているとまるで火が付いたかのように、僕の理性を奪っていく。
「ほんとは俺に壊してほしいんだろ。⋯なぁお前のハジメテ奪っていいか?」
彼の瞳が、暗闇の中に獣のようにギラついた。僕の思考は真っ白になる。
(あぁ気づかなかった。そういうことか。僕は誰のことも好きにならないんじゃなく、もみじくんだけを好きになるためだったんだ⋯。)
彼は首筋に噛みつくような重い、キスをした。僕はもう何もできなくなってしまった。
「⋯怜。もう俺なしじゃいられなくしてやるよ。」
耳元で囁かれたこの言葉は、どんなスィーツよりも甘く聞こえた。これから自分は壊れるんだと感じた。頬に涙が伝う。その涙は壊されて嬉しい涙なのかもしれない。
床は冷たいはずなのに熱く感じる。
嘘、嘘だよ。そんなことはない。で、でも本当は?きっと、いや確実にそう。
静かな教室に、僕の心臓の音が鳴り響く。
「いいよ。僕のこと、壊してよ。」
「⋯怜、ここ触られると可愛い声出すんだな。」
もみじは意地悪く笑う。
「他人に興味ねーとか言っておきながら、こんな体は素直じゃねーか。⋯もっと俺のこと見ろよ。逃げんな。」
顔を向けさせられ、もみじの吐息が聞こえる。僕らしか知らない、逃げ場のない空き教室で、怜は、自分の恥じらいが、もみじによって消えていくのを感じた。
もみじが怜の鎖骨に、わざと深く歯を立てた。痛みに小さく悲鳴を上げると、もみじはその痕を愛おしそうに見る。
「これ、明日には赤くなるな。親に見つかったらどーすんだ。まぁ怜ならうまく誤魔化せるよな。」
怜が必死になって、もみじを振りほどき、身なりを急いで直し、そのまま帰ってしまった。
取り残されたもみじが意地悪そうに笑って独り言を言った。
「⋯アイツはもう俺無しじゃぁ生きられないな。」