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目次
覚悟してください、お嬢様。①
連載始めます!!
今のところ、どんなふうに終わるかも未定!
「覚悟してください、お嬢様」
私の執事レノは、私の手にキスをして不敵に笑った。
私の名前は、メルア・オヴィアーレ。
伯爵の父、元王妃付きの母を持つ。
「お嬢様、読書はその辺にして紅茶でもいかがですか?」
そう聞いたのは、私の執事レノ。
「…もう少し読んでいたいけど、そうね。あなたに小言を言われるのは勘弁したいわ」
冗談めかしてそう言ったが、実際小言になりかねないのがレノだ。
「小言など、あなたがいつも寝る間も惜しんで読書をしているからでしょう」
良い紅茶の香りを漂わせながら、レノが言った。
「そんなだから、ドレスよりも宝石よりも本を貪る"活字喰らいの令嬢"などとよばれるのですよ」
でた、"活字喰らいの令嬢"。
「本当に誰よ、そんなこと言い出したやつ」
毒づきながら、紅茶を啜った。
今まで、私は3人に婚約破棄された。それも全員、真実の愛を見つけたーとかなんとかで。
"婚約者の煌びやかなプレゼントには目もくれず、今日も活字を読み尽くす"
今、巷ではそんなふうに謳われているらしい。
本当に不本意だ。
たしかに"目もくれない"のは事実だが。
それで婚約破棄されたのは事実だが。
「あーもうなんなのよ、みんな。そんなに私のことを騒ぎ立ててどういうつもりかしら」
「人気者ですね、"活字喰らいの令嬢"さま」
…こいつ。
「絶対バカにしてるでしょ」
「…………してませんよ」
なんなのよ、その間は!!
「はぁ、…」
レノといい、そろいもそろって私のことをバカにしすぎでは?
でも私が原因であることが事実なのが悔しい。
「…もうどっかに私の本好きを理解してくれる素敵な人はいないかしら。できれば語り合えるような人がいいけど」
ぼそっとつぶやく私に対して、レノは言った。
「そんな、そうそういないでしょう」
このバカにしたような顔…!!
くッ…!無駄に顔が良い…!
---
「…ふっ、どうしたんですか。お嬢様」
「……今、笑ったわね??」
項垂れる私はゆっくりと顔を上げる。(←めっちゃホラー)
「………………笑ってませんよ…」
「その間は何よ。その間は」
レノはこちらを向かず、肩を震わせている。
あらあらあらあら、絶対笑ってるわね??
ねえ、どこ向いてるのかしらー??
「…っ、で、どうなさったのですか?」
レノの問いかけに私はさらに項垂れる。
「……お父様に…く、…約しろ…言われたのよ」
蚊の鳴くような声で私は言う。
「すみません、お嬢様。なんと?」
ああ、もう!!
私はガバッと起き上がり、叫んだ。
「お父様に早く、婚約しろと言われたのよ!」
ここまで、読んでいただきありがとうございました!!
覚悟してください、お嬢様。②
*お父様に早く、婚約しろと言われたのよ!お父様に早く婚約しろと言われたのよ!お父様に早く婚約しろと言われたのよ!*
レノの頭の中で何度も反響していた。
「ぶふっ…!あっははははは!!」
レノは大笑いしている。
…だから嫌だったのよ!!このッ…
「あはっ、あはははは!」
「もう、笑わないでちょうだい!」
…はぁ、ったく…この執事…絶対バカにしてるわね…
呆れながら私はドサッとたくさんの資料をテーブルの上にのせた。
「…もう、なんて量なの…」
ため息がでる。
「こちらは?」
レノは不思議そうにこの大量な資料を見ている。
「…全て婚約者候補よ。身長から体重、趣味から性格、これまでの功績から今後見込まれる功績まで。1人2人でもこんな詳細な情報集めるのは大変でしょうに。こんな量よ?お父様は暇なのかしら…?」
「…へえ、"リアム・リュカ・キリス"。身長179cm、体重70kg。年齢20歳…お嬢様と4歳も違いますね…旦那様は正気なのでしょうか。
"レオ・ファランド"。身長180cm、体重71.3kg。…小数点以下まで筒抜けとは…末恐ろしい旦那様ですね…」
え、怖っ。………ドン引き。どこまでしてるのお父様。
さすがのレノもこれには引いてる様子ね…
「って!!読み上げないでちょうだい、レノ!!」
「なぜですか?」
いや、きょとん…?じゃなくて…!!
そんな顔もイケメンだけども……!!!
「私はお嬢様に似合わないご令息をバッサバッサ却下しているだけですが…?」
「……待って私がいつまでも婚約できないのコイツのせいかもしれない…!!」
---
「レノ、どうやらメルア嬢の父上が本格的に婚約者探しを始めたようだね」
暗闇の中で、かの御仁は不敵に微笑んだ。
「……はあ、せっかく敵がいなくなったかと思った矢先…」
「ははっ、君はまだ僕のことを恨めしく思っているのかい?」
「当たり前だろう…」
「ははっ…それはそうと、もう数日でナーダレアの王子が到着する」
「…………はっ、アイツ…」
「それに伴って舞踏会が行われるが……君は出席しない方が良さそうかな…?」
「…お嬢様は、出席するんだろう?」
「ああ、というかほぼ全ての家の者が出席する大規模なものだ。父王…いやこの国は、事実上ナーダレアと同盟関係にあるからな」
「…………偽王子め」
「まあ、そうピリピリするな。だから言っただろう?君は
"今やナーダレア国と呼ばれる、かつてルネサンダ帝国によって滅ぼされた国ディメアルテから亡国してきた王子"なんだから…
なあ、レノ・ルズベ・ディメアルテ」
そう言われた彼の後ろで雷が光った。
その光に照らされた綺麗な青眼もまた、共鳴するように静かな迫力をもって光った。
覚悟してください、お嬢様。③
「ふんふんふんふーん♪」
「………お嬢様、鼻歌を歌わないでください。はしたないです」
今日も今日とて、レノの小言が炸裂している。
…ふっ、でも今日の私は機嫌がいいから言い返したりなどしないわ!!
「お嬢様、どうせ"今の私は機嫌がいいから"…とか考えてるんでしょうけど」
「下っっ手な演技ねぇ!?でも、いいわ。今の私は機嫌がいいから」
「……言うと思いました」
レノの呆れ顔を無視しつつ、私は歩き続ける。
なぜ、私の機嫌が良いか。
それは今私たちが向かっている場所に関係がある。
ふっふっふっ…
君は、私たちがどこに向かっているか分かるかね??
今、私たちが向かっているのは王城内にある王立図書館なのだよ!!!
王立図書館…とは。
右も左も、上から下まで。見渡す限りの本、本、本!!
ああ、なんて最高な空間なのでしょう!!
「お嬢様、前見てください」
…え?
「柱にぶつかります」
「うわっ!」
私は柱に激突した。
「いったぁ…もう、レノ言ってくれてもいいじゃない」
「言いましたけど」
「もっと早く言いなさいよ!」
「いや、だから何度も言いましたけど。全く聞こえていないようでしたけど?」
…くっ!レノが言うのだから本当なのでしょうね。……悔しいけれど。
「王立図書館ですから、舞い上がっているのは…ふっ、"活字喰らいの令嬢"なら当然でしょうけど」
…あら今、鼻で笑ったわね??
己の主人を鼻で笑ったわね??
おーっとぉ?これは、これは。ねえ…?
「あ…お嬢様、また」
ふん、まったく。私の執事は…ぁ?!
「……遅かったか…」
また、私は柱に激突した。
「…………………もうッ!!なんなの今日は!」
柱にぶつかるわ、レノに鼻で笑われるわ、柱にぶつかるわ……
---
「…んふっ…ふふ…ふへへぇ」
「お嬢様、奇声を発さないでください。はしたないです」
…しょうがないでしょう。なんたってこの本の量!!
さっすが我がネザリオス王国、王立図書館!!
もう、なんて量なの!!!
上から下まで………
「うへへ…んふっ…ふ」
「…………これは、言っても意味ないですね」
またもレノの呆れ顔を無視しつつ、私は本を手に取る。
「…おや、メルア嬢」
あら、こちらの金髪に金色の瞳をもつ御仁は…
「ご機嫌麗しく存じますわ、ルシアン・ノアール・ネザリオス殿下」
覚悟してください、お嬢様。④
「ご機嫌麗しく存じますわ、ルシアン・ノアール・ネザリオス殿下」
私は、優雅なカーテシーを披露してやった。
「うん、今日も元気そうだね。君は」
「ええ、絶好調でございます。……………おほほほほほほ」
「ああ、それはよかった。……………ははははははは」
レノは、眉を寄せてなんだかよくわからない顔をしている。
「ルシアン殿下…」
殿下付きの方がそっとルシアン殿下に耳打ちする。
「…………………それでは、メルア嬢。また、一緒にお話ししよう」
一瞬、殿下は不服そうな顔をしたがそう言って去っていった。
「………………はあ、やっとどっかいったわね」
「……………その物言いは、はしたないです。…ぶふっ……」
あらぁ??今日も今日とて笑ってるのかしら?
笑ってるのねぇ??
「殿下とあんなふうに話すのはお嬢様だけですよ………ふっ、ふふ……」
「…………あの方とは気が合わないのよ…」
いちいち嫌味ったらしいわ、皮肉っぽいわ…
なんだか、読めないのよね…
何考えてるのかよくわかんないし。
内心、腹黒いんじゃないかしら。
「でも、殿下はお嬢様と同じ本の虫ですよね?なら、気が合いそうですけど…?」
「……殿下は専門書が主なのよ」
「……専門書。……………………………あ、ああ。お嬢様は小説専門ですもんね」
すごい間があったけど…
さては一瞬、私が何を言ったのか分からなかったわね?
「あの方は物語の良さを知らないのよ…。専門書ばっかり読んで。専門知識をバンバン増やして、物語からは知識を得られないとお思いなのだわ。だから、気が合わない。一度縁談が持ち上がった時だってそうだったわ」
「そういえば、そうでしたね」
そう言いつつ、レノは遠い目をする。
そのときレノは"活字喰らいの縁談事件"と呼ばれる縁談という名のバトル…のことを思い返していた。
それは、"活字喰らいの令嬢"メルアと"金色の博学王子"ルシアン殿下によるバトル。
---
「ご機嫌麗しく存じますわ、ルシアン・ノアール・ネザリオス殿下。お初にお目にかかります、メルア・オヴィアーレですわ」
お嬢様は、今日も優雅なカーテシーを炸裂させている。
「……綺麗なカーテシーだな」
「お褒めにいただき光栄ですわ」
お嬢様とルシアン殿下は、お互いに静かに微笑んでから会話を始めた。
……………………どうしてこうなった。
初めこそ穏やかな雰囲気だったはずだが。
「小説なんて架空の嘘の羅列。そんなものを読んで何になるんだ?」
「なんですって?!小説こそ、人生・知識の指南書ですわ!!」
どうしよう。だんだん、エスカレートしている気がする。
お嬢様は、ルシアン殿下が本をお読みになられると知ってとても喜んでいらした。
しかしながら、本とひとくくりにされていたからか。
お嬢様は小説派、ルシアン殿下は専門書派。
バッチバチのバトルが始まってしまった。
「愛を語る物語より、農地改革や経済学の専門書のほうがよほど有意義だ」
ブチィっとお嬢様がキレる。
「何をおっしゃいますの!専門書など、ただ知識を得られるだけじゃありませんの。……………ああ、そういうことですのね。知識しかなく頭の硬い殿下は、感受性という人間にとってとても価値のあるものが欠落していらっしゃるのだわ」
今度は、ルシアン殿下の頬が引きつる。
「今までの君の言動をみていると、感受性以前に知性や品性をかけらも感じないがね。これが"活字喰らいの令嬢"なのかね」
「…ッ、その名で呼ばないでくださるかしら?!…それに、殿下も殿下ですわ。"金色の博学王子"など。ただ、頭が硬いだけじゃない」
「…っ君こそ、その名で呼ばないでくれるかな?」
……こんな無礼にもほどがある物言い。
………なんか、お腹痛くなってきた。
そんな俺のことなんかさし置いて、2人はまたガミガミ言い合っている。
結局、言い合いはこの後2時間も続き、お嬢様の父上である旦那様と殿下の父上であり、この国の国王陛下でもある方が止めに入ることとなった。
ちなみに、旦那様と国王陛下は旧友であられるらしい。国王陛下と旧友など、なんとも末恐ろしい旦那様だ。
そんな"活字喰らいの縁談事件"だったのだが、俺がその後しばらく胃痛に悩まされていたのは周知の事実だ。
---
なんというか、レノが私に関する嫌な思い出に浸っている気がするわ…
「はあ、まあつまりはね。専門書ばかりの殿下より、知識もあり、私がおすすめした小説も読んでくれて感想も素晴らしいレノを手放したくないのよ」
「えっ、……」
レノは拍子抜けしたような顔をした。
「お嬢様………それ、無自覚ですか………?」
「はぁ??なんのことを言っているの?」
「無自覚かよ………………」
…いったい、なんなのよ?
私は見当もつかないまま。
レノはほんのり赤く染まった顔を隠すようにそっぽを向いた。
すみません、今回長くなってしまいました!
ただ、メルアとルシアン殿下の過去について詰め込みまくったので、そこそこ濃い内容だったのではないかと思います!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!よければ、感想など送っていただけると嬉しいです。