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覚悟してください、お嬢様。④
「ご機嫌麗しく存じますわ、ルシアン・ノアール・ネザリオス殿下」
私は、優雅なカーテシーを披露してやった。
「うん、今日も元気そうだね。君は」
「ええ、絶好調でございます。……………おほほほほほほ」
「ああ、それはよかった。……………ははははははは」
レノは、眉を寄せてなんだかよくわからない顔をしている。
「ルシアン殿下…」
殿下付きの方がそっとルシアン殿下に耳打ちする。
「…………………それでは、メルア嬢。また、一緒にお話ししよう」
一瞬、殿下は不服そうな顔をしたがそう言って去っていった。
「………………はあ、やっとどっかいったわね」
「……………その物言いは、はしたないです。…ぶふっ……」
あらぁ??今日も今日とて笑ってるのかしら?
笑ってるのねぇ??
「殿下とあんなふうに話すのはお嬢様だけですよ………ふっ、ふふ……」
「…………あの方とは気が合わないのよ…」
いちいち嫌味ったらしいわ、皮肉っぽいわ…
なんだか、読めないのよね…
何考えてるのかよくわかんないし。
内心、腹黒いんじゃないかしら。
「でも、殿下はお嬢様と同じ本の虫ですよね?なら、気が合いそうですけど…?」
「……殿下は専門書が主なのよ」
「……専門書。……………………………あ、ああ。お嬢様は小説専門ですもんね」
すごい間があったけど…
さては一瞬、私が何を言ったのか分からなかったわね?
「あの方は物語の良さを知らないのよ…。専門書ばっかり読んで。専門知識をバンバン増やして、物語からは知識を得られないとお思いなのだわ。だから、気が合わない。一度縁談が持ち上がった時だってそうだったわ」
「そういえば、そうでしたね」
そう言いつつ、レノは遠い目をする。
そのときレノは"活字喰らいの縁談事件"と呼ばれる縁談という名のバトル…のことを思い返していた。
それは、"活字喰らいの令嬢"メルアと"金色の博学王子"ルシアン殿下によるバトル。
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「ご機嫌麗しく存じますわ、ルシアン・ノアール・ネザリオス殿下。お初にお目にかかります、メルア・オヴィアーレですわ」
お嬢様は、今日も優雅なカーテシーを炸裂させている。
「……綺麗なカーテシーだな」
「お褒めにいただき光栄ですわ」
お嬢様とルシアン殿下は、お互いに静かに微笑んでから会話を始めた。
……………………どうしてこうなった。
初めこそ穏やかな雰囲気だったはずだが。
「小説なんて架空の嘘の羅列。そんなものを読んで何になるんだ?」
「なんですって?!小説こそ、人生・知識の指南書ですわ!!」
どうしよう。だんだん、エスカレートしている気がする。
お嬢様は、ルシアン殿下が本をお読みになられると知ってとても喜んでいらした。
しかしながら、本とひとくくりにされていたからか。
お嬢様は小説派、ルシアン殿下は専門書派。
バッチバチのバトルが始まってしまった。
「愛を語る物語より、農地改革や経済学の専門書のほうがよほど有意義だ」
ブチィっとお嬢様がキレる。
「何をおっしゃいますの!専門書など、ただ知識を得られるだけじゃありませんの。……………ああ、そういうことですのね。知識しかなく頭の硬い殿下は、感受性という人間にとってとても価値のあるものが欠落していらっしゃるのだわ」
今度は、ルシアン殿下の頬が引きつる。
「今までの君の言動をみていると、感受性以前に知性や品性をかけらも感じないがね。これが"活字喰らいの令嬢"なのかね」
「…ッ、その名で呼ばないでくださるかしら?!…それに、殿下も殿下ですわ。"金色の博学王子"など。ただ、頭が硬いだけじゃない」
「…っ君こそ、その名で呼ばないでくれるかな?」
……こんな無礼にもほどがある物言い。
………なんか、お腹痛くなってきた。
そんな俺のことなんかさし置いて、2人はまたガミガミ言い合っている。
結局、言い合いはこの後2時間も続き、お嬢様の父上である旦那様と殿下の父上であり、この国の国王陛下でもある方が止めに入ることとなった。
ちなみに、旦那様と国王陛下は旧友であられるらしい。国王陛下と旧友など、なんとも末恐ろしい旦那様だ。
そんな"活字喰らいの縁談事件"だったのだが、俺がその後しばらく胃痛に悩まされていたのは周知の事実だ。
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なんというか、レノが私に関する嫌な思い出に浸っている気がするわ…
「はあ、まあつまりはね。専門書ばかりの殿下より、知識もあり、私がおすすめした小説も読んでくれて感想も素晴らしいレノを手放したくないのよ」
「えっ、……」
レノは拍子抜けしたような顔をした。
「お嬢様………それ、無自覚ですか………?」
「はぁ??なんのことを言っているの?」
「無自覚かよ………………」
…いったい、なんなのよ?
私は見当もつかないまま。
レノはほんのり赤く染まった顔を隠すようにそっぽを向いた。
すみません、今回長くなってしまいました!
ただ、メルアとルシアン殿下の過去について詰め込みまくったので、そこそこ濃い内容だったのではないかと思います!
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!!よければ、感想など送っていただけると嬉しいです。