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【幕間】ゲームマスターの悪巧み
ネタなくなってきたわけではない。
テスト前だからだ。
だがしかし、短い。
サイバー都市の廃墟を見下ろす、虚空に浮かぶ暗黒の監視ルーム。
そこでは、数十枚のホログラムモニターが明滅し、必死に逃げ惑う35人のプレイヤーたちの脳波データやバイタルサインをリアルタイムで映し出していた。
「――おい。第一ステージの調子はどうだ?」
闇の奥から、歪んだ音声加工を施された低い声が響いた。
このゲームのスポンサーであり、人類の肉体をアバター化しようと企む巨大組織『パノプティコン』の幹部からの通信だ。
監視デスクに両足を乗せ、黒いシルクハットを指先で弄んでいたGMは、大げさに肩をすくめて見せた。
「素晴らしいですよ、お偉いさん。開始わずか5分ですが、恐怖と疑心暗鬼のおかげで、実験体どもの脳波は最高の|ご馳走《データ》に育っています。やはり『身内が敵に寝返る』というルールは、人間の理性を壊すのに最高の手際だ」
「フン……だが、まだ何人かはゲームとして楽しんでいる余裕があるようだな」
幹部が指さしたモニターには、金髪オッドアイの愉快犯・流星が、へらへらとナンパをして客引きと間違えられているマ抜けな映像が映っていた。
「ああ、あの十九歳ですか。根っからの異常ゲーマーですね。他人の生死をエンタメだと思っている。
……ですが、それでいいのです。彼のような異分子が戦場をかき回すほど、周りの『一般人』の絶望は深まる。彼もまた、最高の|人形《アバター》の素体になりますよ」
GMはねっとりとした笑みを浮かべ、手元のフェーダーをゆっくりと押し上げた。
「それに、今回の泥棒側にはとっておきの『毒親切』を仕込んでありますからね。ほら、あの水色のカーディガンの少女です」
モニターに映るまりかは、ハヤトの袖を掴み、今にも泣き出しそうな可憐な表情を作っていた。
しかし、システムが弾き出す彼女の精神状態の数値は、冷酷なまでに「強欲」のインジケーターを振り切っている。
「最初は優しい仲間として信頼させ、最後の10分で『最強の鬼』に反転させ、内側からすべてを食い破らせる……。彼女が牙を剥いた瞬間、あの少年がどんな顔をして精神を崩壊させるか、今から楽しみで仕方がありません」
「ふっ……悪趣味な男だ。では、次のフェーズへ進め。実験の手を緩めるな」
「御意。では、実験体どものケツに火をつけてやりましょう」
GMは立ち上がり、空中にある赤い起動ボタンを愛おしそうに叩いた。
「さあ――|欲のガソリン《一億円》をくれてやる。もっと必死に、醜く、お互いをハメ合いなさい」
えっと⋯⋯
このあとも投稿する予定です((