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6 VSひったくり
自慢の四足歩行でゴブリンの村を壊滅させたキリンジは、森を抜け、人間の住む賑やかな国を訪れた。
人間が心の底から嫌いなキリンジであるが、麒麟を救うためなら致し方なしと割り切っているようである。
そもそもの話、何故、麒麟は滅ぼされなくてはならなかったのか?
その理由を探すため、キリンジは人混みの中を飄々と歩きながら、どの人間から麒麟についての話を聞こうかと見極めていた。
__だが、一つ問題点がある。
もし人間が麒麟を滅ぼしたという話が本当だとしたら、この世界の人間が麒麟のことを良く思っていないのは火を見るよりも明らか。
そんな状況の中で麒麟のことを聞く相手を間違えたら、確実に面倒なことになる。
それはキリンジが一番避けたいことだった。
数分、辺りを見回していると、キリンジは一人の女性に目を付けた。
革製のバッグを片手に持った、穏やかそうなポニーテールの女性、走りにくそうなロングスカートを足幅狭めながら歩いている。
「なあ、ちょっ__」
キリンジが女性に近づき声をかけようとする、
__直後、目の前を黒い何かが凄まじい速度で横切った。
キリンジは一瞬それに目を奪われたが、再び女性に視線を戻す。
「ん?」
キリンジは目を疑った。
さっきまで女性が持っていたバッグが消えていたのだ。
バッグの紛失にしばらくして気付いたであろう女性は、切羽詰まった様子で歩いてきた道筋を戻る。
「ウソ、落としちゃったかしら……? あのバッグ、薬草を買うお金が入ってたのに……」
人混みをかき分けながら自分のカバンの行方を探す女性に、ぶっきらぼうな顔のキリンジが声を掛ける。
「なあ、アンタ、ひったくられたな。オレが取り返してくる」
「え……私、ひったくられたんですか? 全然そんな感覚なかったんですけど……」
「いいや、確実にひったくられた。凄い速度でアンタのカバンを奪っていったヤツが見えたもんで」
すると、キリンジは両手をべったりと地面に付け、腰を上げる。
女性と群衆がキリンジの奇行に注目した。
「……あ、あの、何をやってるんですか?」
「もちろん、追いかけるに決まってる」
「そ、そんな、獣じゃあるまいし……」
女性がまばたきする。
すでにキリンジの姿はそこになく、残っていたのは砂ぼこりだけだった。
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「まぁったく、この国のやつらは防犯意識が冬の薄氷みてぇに薄いよなぁ!」
革製のバッグを脇に抱えて国中を疾走する、頭にバンダナを巻いた妙に上機嫌な男。
どうやらひったくりをやった直後らしい。
「ボクちゃん、やっぱ最速ぅ!!」
庭を駆け回る犬のようにハイテンションで走る男。
自分の速さにはかなり自信があるみたいだ。
隣で一緒に並走している四足歩行の|変人《キリンジ》に気づくまでは。
「おい、ひったくり、人の物取るな」
「あ? 誰だオメェ!? ってか何でついてこれんだよぉ!?」
「オレも速さに自信があってな。お前如きのスピード、すぐに見切れた。というか早く返せ」
「お、テメェ言ったなぁ!? じゃあ勝負しろやぁ! 一対一ッ! もしオメェが勝ったら最速の座は譲ってやる! このカバンも返してやるよぉ!」
「ただしぃ……」と男は続ける。
「オメェが負けたら、ボクちゃんのパシリにしてやるぜぇ!」
一瞬の沈黙。
「……ああ、すまん、最後だけ聞こえなかった」
「テンメェ……舐めやがってぇ!!」