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【淡本町私立淡本中学校:CPあり】記憶がひとつもなくたって
A先生×北先生
逆だと思っても見れます。
北先生を見ると、懐かしい気持ちになる。
そんなこと、私にはプログラムされていないはずなのに。
私とオリジナルの青年は、もはや別個体。
記憶の引き継ぎなどもないはず。
なのに、なぜか思い出してしまう。
文化祭のとき、演劇部だった彼女は
なんとか出し物の劇での主役を勝ち取ろうと奮闘した。
そして、彼女は念願通り主役になれた。
一緒に喜んだ。
私は、彼女が頑張っているところをいつも見ていたから。
なぜこんなにも、鮮明に思い出してしまうのだろう。
思い出すもなにも、私は知らない光景。
体験したことのない場面。再現性すらないはずなのに...
誰もいない、深夜の保健室。
すでに時刻は0時を回っている中、私は頭を抱えた。
私が、知ってしまっていいのだろうか...
彼の大切な記憶を、無関係の私が。
今すぐにでも、記憶に鍵をかけてしまいたい気分だった。
そんなとき、誰かが保健室の戸を叩いた。
こんな夜更けに...緊急だろうか?
私はすぐに扉を開けた。
すると扉の前にいたのは、北先生だ。
どうかしたのか聞こうと思った。
だがその瞬間、彼女は涙を流しながら私を抱き寄せた。
小さな背中は、小刻みに震えている。
「ごめんなさい...悪い夢を見てしまって、
またあなたがいなくなってしまう夢を見てしまって」
そう言いながら、北先生はさらに強く私を抱きしめた。
泣かないでほしい...彼女が泣くと、私もひどく悲しくなった。
彼女は何も悪くない...なのに今までひとりで抱え込んで、
身体を勝手に乗っ取られて好き放題されて...
どんなに辛かっただろう。どんなに寂しかっただろう。
私は、彼女のことを抱きしめ返した。
私には、こんなことしかできない。
「あなたは救えなかったものを、指折り数えてしまうんですね。
でも、私はあなたのおかげで救われましたよ。
私が今、こうやって稼働できているのは...あなたのおかげです」
そう言って、北先生の背中をさすった。
こうやって他人を安心させるのも、医療用ロボである私に
プログラムされた行為なのかもしれない。
結局はすべてプログラム通りで、
私が私の意思で動くことはないのかもしれない。
だが、彼女に幸せになってほしいという思いは、私の意思。
もう辛い思いは、絶対にさせない。
私は...アサヒは、笑っているあなたが好き。
「記憶がひとつもなくたって、あなたのこと...
心がちゃんと憶えている」