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幸せの元へ −2−
桜木ミント
気絶していた私が目を覚ますと、お母さんが必死に私を揺すっている。意識がはっきりしてくると、全身を強い痛みが襲う。私はお母さんに視線を向けた。私はお母さんの姿を見て、とても驚いた。顔の右半分が黒く焼けただれている。目はもはや開いていない。
「お母さん!どうしたの、ねえ、何があったの!お母さん、顔どうしたの!」
お母さんは私が目を覚ますと、涙を流しながら抱きしめる。
「菊子!よかった、生きてたのね。よかった…」
私はお母さんに抱きしめられながら辺りを見回す。そこは、今まで見たことのない景色が広がっていた。家が倒壊して、瓦礫が燃えている。植物はなく、全てが黒い灰のようになっていた。よく見ると。人のような形をしているものもある。痛みで転げ回る人、瓦礫に挟まれて血を流している人、黒焦げになった赤ちゃんを抱いて泣き叫ぶ人、狂ったように叫んでいる人。私はみんなの姿を見て、例えようのない恐怖を感じた。みんなが、見たこともないようなひどい火傷や怪我をしていたからだ。
「菊子、さあ、壕に行きましょう!立てる?あ、なんてこと…」
お母さんの言葉を聞いて正気に戻る。立ち上がろうとすると、左足に強い痛みを感じる。足を見ると、いろいろな破片が刺さっている。多くの傷があり、血がどんどん流れていく。
「痛い痛い!なんで…私の…?」
私はお母さんの肩を借りて怪我をした足を引きずって歩く。その時、お母さんが弟を抱いていることに気がつく。弟は、切り傷はあるものの、目立った火傷は無く、私は少し安心する。壕へ着くまでの道は地獄のようだった。もう誰だかわからないような死体がいくつも転がっていた。私はそこに知り合いがいないか気が気じゃなかった。壕に着くと、そこにはたくさんの怪我人がいた。もうすでに息を引き取っている人もいて、私はできるだけ見ないようにしようとしたが、それは無理なほどの人がいる。怪我の治療をしてもらうときに、お母さんを見ると、背中に大きな火傷がある。私も自分の腕を見ると、ひどい火傷がある。黒くなっていて、痛みは感じなくなっていた。私たちは治療を受け、包帯をまき、暗い壕の中でひっそりと影のように座っていた。それから数時間がたち、夜になった。人が死んでいく中で、私の心はどんどん弱っていった。
傷跡を見ようと包帯を外すと、私は吐き気を感じた。私の腕には、うじが湧き、色もおかしくなっていた。まるで自分のものではないような腕を見て、私は言葉を失う。
(嘘…。これが…私の…?信じられない。信じたくない)
時間がたつにつれて体調も悪くなる。もう動く元気すらでない。
その時、お母さんの悲しみに溢れた叫び声が聞こえて、私はかろうじてお母さんのもとに向かった。そこには、泣いている母と、もう息をしていない弟の姿があった。私は泣きながら弟に抱きつく。
「うわああっ…。ねえ、待ってよ。お姉ちゃん置いてかないでよぉ…」
弟は、まだ二歳だっために、急激な環境の変化に対応できなかったのだ。