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第零話 冷酷王子と、ポンコツ姫の戴冠
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その男は、戦場において『黒髪の死神』と恐れられていた。
バルバトス帝国第一王子、レオン。
漆黒の鎧を身に纏い、一振りの大剣で数多の敵陣を壊滅させてきた、帝国史上最強の武人である。
「レオン殿下! 宿敵たるローゼンタール王国の前線基地を制圧いたしました!」
「ふん……。抵抗する者はすべて捕らえよ。我が軍の進撃を阻むものは、何であれ容赦はせん」
冷徹な声で淡々と命令を下すレオン。
その瞳には一切の容赦がなく、大陸中の誰もが「彼が通った後には草一本残らない」と噂していた。
冷酷無比、鉄の意志を持つ完璧な王子。それがレオンという男のパブリックイメージだった。
だが、そんな彼にも一つだけ、誰にも言えない秘密があった。
「はぁ……。今日も胃が痛い。ハンス、例の薬を」
「はい殿下、いつもの特製胃薬でございます。……しかし殿下、いくら冷酷な侵略者を演じるためとはいえ、毎晩徹夜で完璧な進軍計画を立てるのはお体に障りますよ」
「黙れ。私は不器用なのだ。これくらい綿密に計算して、さらに恐怖で敵を威圧しなければ、無駄な流血が増えるだろう。私はただ、早くこの戦争を終わらせて実家でサボテンの世話がしたいだけなのだ……」
そう、彼は「見た目と才能がシリアスすぎて、中身の生真面目さと優しさが完全に隠れてしまっている超苦労人」だったのだ。
そんなレオン率いる帝国軍が、ついに宿敵の王都へ王手をかけたその日。
ローゼンタール王国の王城では、まさに歴史的な「大事件」が起きていた。
「王が……! 先代の王が、好物のビーフジャーキーを喉に詰まらせて急死なされたーーー!?」
国のトップがまさかのマヌケすぎる理由で崩御。
しかも、帝国軍が目の前まで迫っているという絶体絶命の危機である。
普通なら国中が大パニックになるところだが、王国の重臣たち、特に宰相のオズワルドは違った。
「……フッ。これぞ好機。先代の遺志(?)を継ぎ、直ちにルル様を新たな女王として即位させるのだ!」
「しかし宰相閣下! ルル様はまだお若く、まともな帝王学も、国の歴史も、何一つ教育を施されておりませんぞ!?」
「バカ者が。教育など後からついてくる。見よ、あの神聖にして愛くるしい、我が国の宝を……!」
重臣たちが振り返った先には、王城の中庭でちょうちょを追いかけて転び、泥だらけの顔で「えへへ、つかまえたー!」と笑っている金髪の少女——ルルがいた。
「「「お、お可愛い……っ!!!」」」
王国のトップたちは、全員が重度の親バカ(姫バカ)だった。
こうして、敵国が目の前に迫る中、まともな書類の読み方すら知らないポンコツお姫様が、ノリと勢いだけで女王に即位してしまったのである。
そしてその翌日。
レオンは
「ついに長年の宿敵との最終決戦だ。どれほど壮絶な罠が待ち受けているか分からん、死力を尽くすぞ……!」
と、決死の覚悟で王城の玉座の間へと足を踏み入れた。
——それが、あの「クッキーを食べるポンコツ女王」と、その脳内で顔を真っ赤にする「のじゃ口調の堕神」との、世界の運命を賭けた出会いへと繋がるとも知らずに。
ローゼンタール王国ではビーフジャーキーを喉につまらせて王はタヒんだため、若い(15歳ぐらい)姫があとを継ぎました(これ大事)
次回!カオス度が増します!
以上!