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好きな男の子
「はーーっ、、掃除疲れたー」
掃除が終わり、廊下を友達と歩く。
「ななはゆうとがいるからいいじゃん!はやく付き合いなよ〜」
「両思いからの付き合うってだいぶ難しいからね?!」
私には、好きな男の子がいた。
坂本ゆうと。学級委員で、運動も勉強もできて、いつもは冷たいけどいざというときはすごく優しい。友達にゆうとって優しいよねって言うと、ななにだけだよって言われる。
わたしとゆうとは両思い。そう分かったけど、付き合うまでが難しかった。
教室に着くと、やけに騒がしかった。
なんだろうと思いゆうとの方を見ると、ゆうとにはづきがバックハグをしていた。
「……え?」
「なな…!」
同じクラスのさゆりが私のもとへ駆け寄った。
「なな…!どうしよう、私、はづきにゆうとにはづきの気持ちを伝えてくれって言われて、ゆうとに『はづきが付き合ってほしいらしい』って伝えたの。ゆうとはななが好きだから振ってこれではづきも諦めると思って…そしたらゆうとは『別にいいよ』って…。ほんとごめん!ななは3年前からずっと……」
「え……?うそ……」
はづきは元々不登校で、学級委員のゆうとが家にプリントを届けに行った日から、学校に来るようになった。
元不登校で、サボり癖があって、勉強も運動も出来なくて、くせっ毛で、ガタイが良くて、力も強くて、女っ気なんてないはづき。
わたしは毎日部活にも学校にも行ってるし、運動も平均以上、テストだって学年3位。サラサラの髪をキープしてるし、モデル体型も簡単に維持してるわけじゃない。力もか弱くて、ハンカチと絆創膏を常に持っている。
わたしは3年前からゆうとのことが好き。小学生の頃、毎日のように遊んで、バレンタインだって毎年あげてるし家族ぐるみの付き合い。心のどこかで優しさを持ってるゆうとがずっと大好き。一緒に微笑んでたのは私。
私なのに_____
その日、はづきとゆうとが付き合ったという噂が、学年中に広まった。
その噂を聞いた友達が沢山、私の元へ来た。
「うそだよね」なんて言葉じゃなくて「次の恋があるよ」って言葉ばっかり。
私は諦めてない。ゆうとははづきの事なんて好きじゃない。ただ付き合っただけ。別れたら、私が告白して、結婚までいってみせる。
涙が頬を伝う。
インスタのノートには失恋ソング。
みんなからまた沢山の励ましが来た。
負けヒロイン…?違う。まだ負けてないよ…。あんな不登校に負けたくない。
ずっと一途に好きだったのは私。なにもかも頑張ってたのは私。
私の努力を奪わないでよ……。
失恋なんてしたことがなかった。
だって初恋はゆうとで、そのゆうととは両思いだった訳だし、自分で言えないかも知れないけど、かなりモテていた方だと思う。
だから私には無理か、とか諦めようなんて気持ちが出てくることはなかったの。
次の日の朝、私は母親の声で目覚めた。
「なな……!ゆうとくんが……!」
「……え?」
ゆうとは、死んだ。交通事故だった。
はづきを助けようとして、トラックに跳ねられて死んだらしい。
涙は、止まらない。止まるわけがなかった。
5日程が経って、ゆうとのお葬式が開かれた。
参列者を迎えるゆうとの親戚のみんな。大体は私が知っている人で、みんなが「ななちゃん」って私を抱きしめてくれた。その胸で、沢山、沢山泣いた。
初めて出会った5年前の春。一緒にプールへ行った夏。紅葉を集めた秋。雪だるまを作った冬。ゆうとが強すぎたドッヂボール。私が弱すぎたゲーム。ゆうとから沢山借りた漫画。一緒に図書館へ行った時の図書カード。誕生日にくれたおもちゃのネックレス。
ゆうととの思い出は、頭の中を離れない。
同じクラスになれた今年の春。やっと両思いだったのが分かったこの夏。だけど、ゆうとははづきと付き合って____。
はづきは、親族のみんなに涙ぐみながら「ゆうとの彼女です」なんて自己紹介をしていた。すると「辛いわよねえ、ゆうと、あなたの事を助けたんでしょう。あなたの中でゆうとは生き続けるわよ」ってゆうとのママ。
はづきの中で生きないで。私のところへ来て、ゆうと。お願い___。
ゆうと。ゆうと。
また一緒に、川沿いをお散歩したいよ。また一緒に、ゲームがしたいよ。
どうして思いを伝えられなかったんだろう。もう、二度と会えないのに……。
ゆうと。ゆうと。大好きだよ。
誰よりも、ずっと、ずっと。
帰ると、LINEの通知が1件。はづきからだった。
『なな、ゆうとと仲良かったよね。辛かったよね。こんな写真しかないけど、良かったら…』
送られてきたのは、はづきとゆうとが恋人繋ぎをしている写真。
見慣れた焼けた血管の見える大きな手と、白い決して女らしくはない手。
こんな写真送って、何になるのだろう。
私の写真フォルダにいるゆうとは、どれも笑っていた。
ゆうと、気持ちを伝えられなくてごめんね。
死んでも、何年経っても、ずっと大好きだよ。ゆうとがはづきを選んだのはなんでなの?私の方がゆうとを大好き。
ねえお願い。行かないで。次はちゃんと伝えるから…。
ゆうと、大好きだよ、