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蓬生
呆気なく終わった千代と清美の時間。その後、また生きるだけ、通うだけの生活が訪れる。何かを楽しみに、何かに胸を躍らせながら生きることは、しばらくないだろう。
6月下旬、いつの間にか遠いと思っていたテスト期間がやって来ていた。下等連中が、部活やら何やらができないと苦しむ中、わたしは淡々と図書室へ通った。
1人でただ勉強する時間は苦ではなかった。放課後に開放される図書室で、ただシャープペンシルを走らせた。
ときどき、源さんがいた。ただお団子を揺らしながら本を選んでいた。テスト期間なのに、そんな悠長な。でも、わたしも休憩がてらショートショートを読んでしまう。
入り浸りは少なく、源さんとわたしのみの時間が過ぎていた。遅くなった西日が差し掛かっていた。
2年生ということもあって、源さんはときどき勉強を教えてくれた。ある程度はわかりやすかったが、教師レベルというところまでは行かない。本に載っていることをそのまま読み上げたような、そんなわかりやすさ、わかりにくさがあった。
源さんとはほぼ会話を交わさなかった。まともに会話したことなんて、数えるほどぐらいだ。最後に会話したのは何時だろう。取り敢えず目の前の問題に集中した。
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休み時間はただ1人で本を読むことにしていた。別にそれで良かったし、何ならそのほうが良いまである。変に気を使うほうが嫌いだ。
そういえば。
源さんは、確か2年生だ。どうだったっけ。2年生のはずだけど、記憶が曖昧な感じがする。あと1年、関わる猶予がある。そう思うと、少しだけ気が楽だ。1年。関わって、話すには十分な時間。
期末テストが終わったら、もう夏休みだという。蒸し暑いのも当たり前だし、学校は少しずつ夏に移行しはじめている。夏服が散見されて、日焼けした茶色い肌がぽつぽつと現れ始めた。
築100年。古い校舎に手をかけて、窓を見た。景色は見ずに、反射する自分の顔を見つめた。