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#3 ベッドのうえで
「来てってどこに…」
「ホテル」
初恋のひと。大好きだった、ゆきむ。
今思えばゆきむのあの真剣な眼差しは、下心とか変な意味なんて無くて、ただわたしを頼ってくれていたんだと思う。それにもっとはやく気づければよかったのに。
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「えっ、まって、ゆきむ」
「なに」
わたしはゆきむに連れていかれたホテルを見上げた。
「ほ、ホテルって……ラブホ……?!」
「だってこの辺で1番安いんだもん。絶対家族探しに来ないし」
ゆきむは澄ました顔で言う。女の子をこんなホテルに連れてきていいのだろうか…。
「てゆうか、まだ16歳だよ私たち」
「大丈夫。俺もお前も大人っぽいし。もう2日泊まってる」
「ラブホに2日って中々だね……」
「ね。大丈夫」
そうは言われても、やっぱり少し足が竦む。
「わたし、まだ優等生な方だし、バレたらまずいよ……。あと、なんかこわい……」
「大丈夫。俺がなんとかする」
「なんとかってなに……わっ」
ゆきむに手を引かれて、渋々ホテルに入った。少し、強引になったな。強引にわたしを引くては、6年前に手比べをしたきよりもなんかごつくて、男の子の手って感じだった。
部屋に入ると、意外と内装は普通だった。
わたしは慣れないベッドに座る。
「相談って、なに?」
ゆきむはわたしの隣に座ると、ため息をついた。
「お前さ、むかし……、6年前、俺の事好きだった?」
「えっ……し、知らない」
わたしは顔を伏せた。好きだったよ。大好きだったよ。
「俺はさ、好きだったよ」
「……!」
「お前はどうなの?」
「す、すき……。すきだったよ」
「じゃあ、両思いだったんだね。ガキの両思いなんて、しょぼいもんだけど」
両思いだったんだ。赤らむ顔を手で抑えた。なんともいえない空気が部屋に充満している。
「ねえ、俺さ……」
「うん」
「余命宣告、されたんだよ……」
「……え?」
ゆきむは顔を伏せた。伸びた髪のせいで顔が見えない。
「ちょっと待って、どういうこと?」
「るな…………」
顔を上げたゆきむは、涙ぐんでいた。
「俺、少し前に倒れちゃってさ、病院行ったら余命2ヶ月だってさ」
「なにそれ……」
ゆきむがあと2ヶ月しか生きられない。2ヶ月後、ゆきむはいない。冬を迎えることはできないんだ。最後の、夏なんだ……。
ゆきむが、死ぬ……。そんなこと、考えたことなんて無かった。考えないよ。初恋のひとが死んじゃうとか。うそ。うそでしょ?
わたしは自然と困り顔になっていたようで、ゆきむが心配そうにわたしを見つめていた。
「話してくれて、ありがとう……」
「話すなら、るなとしもだ、りんかしかいないと思った。俺が1番楽しかったのは、お前らと過ごしたあの夏だから……」
ゆきむも、そうだったんだ。
私が1番楽しかったあの夏。大好きなみんな。
「ほんとうに、死んじゃうの?」
わたしの手を握った大きなゆきむの手。まるで生きている証。これからもずっと生きている証みたいだったのに。
「死ぬよ」
「っ…………。それだけじゃないでしょ、相談」
「うん。俺さ、無理だよ、無理な話だけどさ、どうしても死ぬ前にまたみんなで、彗星見たい。あの高原で」
ゆきむは、見た事のない顔でわたしにせがんだ。
「見るよ。見よう。また、みんなで。あの高原で」
3000年に一度の彗星を6年ぶりにまた見ようって約束してしまった。